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世界一の新型コロナ感染地ニューヨーク、外出禁止令下の生活(2020年5月20日現在)
ニューヨーク市で最初の新型コロナウイルス感染者が3月1日に報告されて以来、ニューヨーク州では感染者数が爆発的増加を続け、瞬く間に世界一のホットスポットになってしまいました。
コロナのおかげでマスコミ露出度が増え知名度が上がったアンドリュー・クオモ知事が同月に外出禁止令を発令しましたが、それ以来、期日の延長が繰り返されました。5月15日にようやく解除かと思いきや、経済活動再開となったのは、7つの基準を満たした一部の地域のみ。その後、少しして、他の地域に対しても、一部の職種に限った段階的な再開が発表されて行きました。
全米のすべての州で5月20日から、一部の経済活動の再開が開始されました。お隣のコネチカット州ではさっそく、レストランの屋外席や美容室などがオープン、ニュージャージー州では入口で受け取るスタイルで小売店がオープンしました。
これから全米で、経済活動再開がどんどん進められるため、第二波が懸念されています。食肉加工施設などの工場や教会など、クラスターが発生しているところもあります。ビーチやクラブなどでの社会的距離をまったく無視した行動も見られ、多くの州で感染者が減っているものの、いまだに感染者が増加している州もあり、一体いつになったらおさまるものやら予想もつきません。
アメリカは合衆国である上に、多様な人種、異なった宗教を信仰する人々が暮らし、トランプ政権下で国民が真っ二つに分かれてしまっているため、全国民をまとめるのは容易ではないということが改めて確認された次第です。
今回は、ニューヨークに在住する私ナツコ・Hが、ニューヨークの現状についてお伝えしたいと思います。
目次
外出禁止令下の外出
外出禁止令とはいっても、買い物や気分転換のための散歩に行くことは許可されていました。
しかし、外出禁止令が出た当初は、私が住むウエストチェスター郡の2つ隣の町のユダヤ人コミュニティーで大規模な集団感染が起きており、テレビでは死者がどんどん増加しているといった恐ろしいニュースばかりが流れていた為、マスクと手袋をして、ドキドキしながら食料品の買い出しやドラッグストアへ行くのがやっと。それ以外はずっと家にこもり、窓から手を出して太陽に当たるなど、外に出る事にかすかな恐怖感を覚えて暮らしていました。
窓から青空を見ていると、何故か松山千春さんの「窓」という曲が繰り返し頭に浮かび、また、「刑務所に入るともっと辛いのだろうな」、などとおかしな想像を巡らせていました。
しかし、しばらくすると、太陽に当たらないことで免疫力が下がることや運動不足が気になりだし、家から徒歩数分で行ける公園やビーチを散歩することにしました。初めて買い物以外で出かけた時は、やはり勇気がいりましたが、いざ出かけてみると、普段はほとんど人がおらず静かな近所の公園やビーチに、いつもよりも多く人がいることに驚きました。車で別のエリアから来ている人たちが多いようで、公園沿いの道路には路上駐車している車が並んでいました。
みんな平日は在宅勤務をしているせいか、やはり人が多いのは土日だったので、土日を避けることにしましたが、週末と比べ人は少ないものの、平日でもやはり以前と比べると、遥かに多くの人が歩いています。しかし、マスクをして他人との距離をうんとあけると心配することもないので、それからは晴れた日は必ず、公園やビーチを散歩することにしました。
ニューヨーク郊外に住む私の買い物事情
外出禁止令が出た当初は、あらゆる物が棚から消えていたようですが、最近ではトイレットペーパー、ペーパータオル、マスク、ハンドサニタイザー、アルコール系の消毒液やスプレー、クリーナー以外は、結構商品は揃っています。
コロナ以前、いつも買い物に行っていたトレーダー・ジョーズなどの人気店では入店制限があって、前後のお客さんとの間隔をあけて外に並ばなければいけないので、最近は普通の大きなスーパーマーケットと日本食料品店だけに行っています。
アメリカのスーパーマーケットは巨大なので、そこそこ人が入っていても社会的距離は保てる上に、最近ではみんなまとめ買いをして買い物に行く回数を減らすように心がけているようで、あまり混んでいることはありません。ただし、私が住んでいるのが郊外だからなのと、買い物に行く時間帯によるのかもしれませんが。
聞いたところによると、外出禁止令が出て以来、買い物はもっぱらネット注文での配達に任せ、2カ月以上、一歩も外に出ていないという人たちも結構いたようです。
うちでは、外出禁止令が出てからしばらくは時間に余裕ができたため、普段はあまり食べないような肉料理を連日で作ったり、買い物に行く回数を減らすために、保存がきく缶詰やサンドイッチ用のハム、パスタなどを一時期よく買っていました。しかし、肉を頻繁に食べたり、塩分が多い加工食品を食べるようになったりしたせいで、夫の血圧が上がり、私もなんとなく不健康になってきた気がしたので、最近ではスーパーでは水や調味料などを買うだけで、食料はもっぱら日本食料品店で買い物をして、以前通りの健康的な和食生活に戻しました。
ちょっとドキドキしながら久しぶりのマンハッタンへ
いつもの食料品店とドラッグストア、公園とビーチという限られた場所へ行くことは平気になりましたが、先日、仕事でマンハッタンへ行かなければならなくなった時は、ちょっと恐怖を感じました。郊外に住みながらも、私のプレイグラウンドはマンハッタンですが、マンハッタンには、2月末以来一度も行っていませんでした。マンハッタンに住む友達から、セントラルパークや川沿いの遊歩道は散歩する人が多いと聞いていましたが、ニュースで見るタイムズスクエアなどの観光地はガラガラでひっそりしていたので、疫病の打撃を受け、人っ子一人いなくなった大都市といった映画のシーンのような感じを想像していました。
マンハッタンへは車で向かいましたが、ハイウェイには思いのほか、たくさんの車が走っていました。外出禁止令が出て以来、私の行動範囲は近所だけとものすごく狭くなっていたのでハイウェイを利用することはなく、てっきりハイウェイはガラガラで、下手をすると警察に止められて「どこへ行くのか?」と質問されるのではなどと心配していましたが、取り越し苦労でした。
ハーレムの辺りまで来てハドソン川沿いを見ると、たくさんの人たちが散歩やジョギングをしています。普段だと、この辺りの川沿いでこれだけたくさんの人を見ることはあまりありません。
105丁目のブロードウェイは、まるで普段と変わらないように人々が行き交い、ベーカリーの前では買い物をする人たちの姿が見られました。
レストランは出前とお持ち帰りでの営業は許可されていますが、店内で食べることはできません。お持ち帰りでも店内には入れないようで、入口またはアプリで注文をして、入口で受け取るというスタイルのようです。私は、今は自分の手で家で作ったものしか食べないようにしているので、そういった事情はあまり知りませんでした。スターバックスでも店内に客を入れないそうです。公衆トイレがまわりにない場所でトイレに行きたくなったら、ちょっと大変そうですね。公衆トイレも開いているのかは謎です。
よく行っていたお店の外に「ハッピーアワー」と書かれた看板を発見。まさかバーが開いているのか?と近づいてみると、「To Go」の文字が。ハッピーアワーもお持ち帰り用でした。それにしても、たくさんの人が歩いていますね。最近は、ビレッジなどの人気バーの前で、社会的距離を守らずお持ち帰り用のカクテルを飲む人たちが道路に溢れかえっている事が問題となってニュースになっていました。ここでは、そのようなことはないようです。
この後、ヘルズキッチン(クリントン)へ向かいました。中心から離れているので、普段なら歩いている人の数が比較的少ない10アベニューや11アベニューにも、たくさんの人が歩いていてびっくりしました。みんな、マスクやフェイスカバーをして、犬の散歩をしたり自転車に乗ったり、家族連れで散歩をしたりととても平和で、世界で一番新型コロナウイルスの感染者が多い市とはとても思えませんでした。
ニューヨークが負ったトラウマ
ニューヨーク州では、5月25日のメモリアルデーの翌日から、ニューヨーク市などの被害が特に大きい地域を除きほとんどの地域で、一部の職種について経済活動の再開が徐々に開始されるようで、この記事が掲載される頃には、状態はだいぶ変わっているかもしれません。しかし、自由に外出できるようになっても、行きつけのお店が再オープンしても、当分の間は以前のように出かける気にはならないと思います。世界一の感染者数を出したニューヨークですから、私を含め、複数の知り合いをコロナで亡くした人は大勢います。ニューヨーカーがこのトラウマから立ち直るには、少し時間がかかるかもしれません。
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ナツコ・H
- 世界で活躍するジャズ奏者の夫のマネージメント、CD収録曲の作曲を手がける。NYの日系新聞でニュース記事執筆中。法律翻訳家。93年よりNY在住。