【新型コロナウイルス】アイルランドの現地情報|ロックダウン解除計画(2020年5月12日現在)

アイルランドで新型コロナウイルスに感染した人は、2020年5月12日現在、23,242人で、亡くなった方の合計は1,488人にのぼりました。人口100万人あたりの感染者数は4,707人で、これは世界で8番目に多い数字になります。数週間前までは、一日の新しい感染者数が700人を超えた日もありましたが、最近では100人~200人におさまっています。

この記事では、現在もロックダウン中のアイルランドの様子や、ロックダウン解除計画などについて現地からレポートします。

目次

アイルランドで感染が広まった背景

アイルランドで最初に新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは、2月27日のことでした。北アイルランド出身の女性が子供と一緒にイタリア北部から帰国。ダブリン空港で降り、バスで北アイルランドの自宅まで帰宅したというニュースは、アイルランドを震撼させました。

その13日後の3月11日には、アイルランド共和国で初めての死者が出ました。翌日3月12日に、政府がアイルランド国内の学校をすべて休校にする事を発表すると、いっせいにアイルランド中のスーパーで買占め騒動が起きました。

しかし、この間もパブには毎晩多くの人々が集まり、人々が密集するイベントもロックダウンの前日まで続行されました。私の知る限り、マスクを着けている人は誰もおらず、2月後半からずっとマスクを着けていた私や家族は、周囲から不思議な目で見られることも多かったです。

このように、多くの人々が密閉した空間に無防備で集まり、ゴム手袋を着用する人もあまりいなかったので、感染が広がったことが考えられます。

また、ロックダウンが始まってから感染者が急増し、40以上の介護施設でクラスター感染が確認された原因などについては、いまだ詳しいことが分かっていません。

病院での院内感染と予防強化

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また、3月6日アイルランド南部のコーク大学病院では、原因不明の院内感染が確認され、一部の病棟をすべて閉鎖するとともに感染者に関わった60名の医療スタッフが全員14日間の隔離に入ったというニュースが報道されました。

この事件を受けて、大学病院やクリニックは、予防を強化するべく体制に入ったことが考えられます。

2日後の3月8日日曜日の夜に娘がアレルギー性の頭痛を起こしたので、夫が地方の大学病院に連れて行ったところ、医療スタッフ全員が防毒マスクに防護服姿だったということでした。

また、住んでいる地域のクリニックや薬局では、一人ずつ入れるシステムになりました。持病があり毎回同じ処方箋をリピートしている人は、クリニックに行かなくても電話だけで処方箋がもらえます。

処方箋をかかりつけの薬局にメールで送ってくれるので、院内感染が怖いと感じている人には、とても助かるシステムだと感じました。

アイルランドが体験した一番厳しいロックダウン

アイルランドでは、新型コロナウイルスによる初めての死者が出た3月上旬頃から、ソーシャル・ディスタンスが推奨されてきましたが、ほとんど守られている様子はなく、1日の新たな感染者が250人前後の日々が続いていました。

ロックダウン前日の感染者の合計は2,121人、そのうち医療従事者の感染が25%を越えていました。

これらの状況を受けて、ついに3月29日、一番厳しいロックダウンに入りました。ロックダウンの内容は非常に厳しいものでした。

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  • 散歩は自宅から2km圏内のみ
  • 食品、生活必需品の調達や緊急の場合以外は、外出禁止
  • 食品の調達や移動も、自宅から2km圏内
  • 一緒に住んでいない親族を訪問するのも禁止
  • 食品店や生活必需品を売っているお店(郵便局、銀行、薬局、ガソリンスタンドなど)以外は全て閉鎖
  • ホームセンターや建具屋さんなども閉鎖(農家だけが、飼料などを購入するためにアクセスできます)
  • 役所を含むすべての職場が閉鎖(上記の職場以外)

このような厳しいルールであったため、長い冬を越えて春の訪れが待ち遠しいアイルランド人たちの中には、外出禁止令を守らない人もいました。それは、新しい法律ができて、警察がルールを守らない人を逮捕できる権限を持ってからも、続きました。

街の様子や人々の暮らし 

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ロックダウンに入る以前は、パブで賑っていた夜の町も今では静まりかえっています。人の通りがあるのはお昼時だけで、それ以外は全く人がいなくなりました。

この記事に掲載する写真を撮影するために、人通りが少ない夕方に出かけたのですが、からんできた若者たちが実は何人かいました。その人たちにどこから来たのか?と尋ねると、他の市や他県から来たということでした。

ちなみに、この町に住んでいる人はほとんど全員が私のことを知っているので、からんでくる人はいません。

現在、移動規制が少しゆるくなって5km圏内の移動が可能になったものの、20km~100km以上離れた場所から遊びに来ている人がいる事実に、非常に驚きました。

ロックダウン後に感染者が急増した理由のひとつは、こういうルールを守らない人がいるからなのではないでしょうか?会話中にふつふつと怒りがこみ上げてきて口論になりそうだったので、途中で適当に切り上げて帰ってきました。

そういった人たちがいる一方で、各コミュニティでは、隔離状態にある人を助けるという精神があり、電話によるサポートも整っています。政府からパンフレットが郵送されてきて、その事が分かりました。

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私が住んでいる地域では、個人経営の小さな食品店が、3月上旬から高齢者や隔離生活者向けの配達サービスを開始しています。お店の店主がひとりで配達するのは大変なので、町に住む若者何人かがボランティアで配達を手伝いたいと申し出たそうです。

こういった助け合いの精神があるのは、アイルランドのいいところだと思います。むしろ、小さい町だからこそ結束力が強いのかもしれません。今まで、大小さまざまな町を転々としてきましたが、そのように感じました。

アイルランドのスーパーは品薄状態

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アイルランドのほとんどのスーパーでは、入場制限がされており、朝に開店してから1時間内、または午前中は高齢者に先を譲るという決まりになっています。このためか、朝一に行っても品薄状態で手に入りにくい物があります。

品薄状態が続いている品目(※地域やお店によっても違うようです)

  • アルコール消毒液
  • キッチン用ハイター(ミルトンなど)
  • ハンドソープ
  • ボディーソープ
  • シャンプー
  • ゴム手袋
  • パスタ、米、缶詰などの保存食
  • チーズ

南部の街に住む友人の情報によれば、今現在も消毒液はもちろんのことハンドソープやシャンプーまで手に入らないという状況が続いているようです。私が現在住んでいる場所では、そういった状況はありません。スーパーでは手に入らないミルトンやゴム手袋も、薬局では簡単に手に入ります(少し割高ですが)。

ちなみに、これらにはマスクは当てはまりません。なぜなら、マスクを売っているお店がもともとどこにもないからです。売っているといえば、ハードウェアストアの防塵、防毒マスクぐらいですが、これらのお店もロックダウン中で現在は閉まっています。

アイルランドでのマスクの着用状況

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アイルランドでは、ロックダウンが始まってからもマスクを着用している人はほとんど見受けられませんでした。

私が住んでいる町や周辺地域は、幸い感染者がとても少ないので、マスクをしている人がいないのは理解できましたが、それでも4月上旬に感染者が5,000人を超えたあたりから少しずつマスクをしている高齢者を見かけるようになりました。

しかし、比率としては、マスクをしている人よりもゴム手袋をしている人の方が圧倒的に多いように感じます。それは、飛沫感染よりも、皮膚からの感染がこわいという冷静な知識に基づいた行動ですが、実際には購入したくてもN95マスクなどどこにも売っていないので、買えないというのが実情だと思います。

お隣英国のAmazonでは、3月上旬の時点は、N95マスクをアイルランドまで配達してくれていたようですが、今は注文しても届かないという状況が続いているようです。

私は、1年半前に日本に帰国した際に、実家でバルサンをたくためにN95マスクを購入しました。その時の1箱(50枚)を洗って使いまわしています。

子供たちと大人のステイホーム習慣

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ロックダウンがはじまる以前から、アイルランドの児童公園はすべてが閉鎖されました。これは、遊具に接触することによる感染などを防ぐためです。

アイルランドの各コミュニティには、児童公園のほかにも、グリーンエリアとよばれる遊具がない公園があります。こういった公園や遺跡、トレッキングコースなどは今現在も閉鎖されていないので、家族連れで散歩する光景も見受けられます。

基本的には、ソーシャル・ディスタンスを守りながら、街で通りすがりにご近所の人と会話したりする様子も見受けられます。

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子供は、基本的には、学校から指示を受けた宿題を両親と一緒に毎日勉強し、それ以外は庭で遊ぶか、テレビを見るなどして過ごしていますが、暇をもてあましている児童も多いようです。もちろん、大人にも同じことが言えるでしょう。

そういった状況のなかで、地域が主体となったオンライン講座の計画が動き出しました。具体的には、地域によって違ってきますが、私は町のコミュニティセンターでネイル講師をしていたので、ネイルケアのオンライン講座をZoomというアプリを使って開催してほしいと依頼されました。

これは、政府の教育団体がスポンサーになって開催されます。今後、アイルランド各地でこういった取り組みが増えていくのではないかと感じています。

アイルランド政府からのコロナ補償

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新型コロナウイルスで職を失った人は、政府の機関ソーシャルウェルフェアが提供する失業手当に申し込むことができます。これは、最高で月額15万円ほど支給されるというもの。

しかし、支給対象となるのは職を失った人だけで、解雇されずに会社が存続している場合は、支給の対象にはならないとのことです。

また、自営業者は前年の収入の80%が補償されましたが、これは前年納めた税金をもとに計算されるので、開業してから1年未満の人は全く補償をもらえないという状況です。

一人につき月額で約15万円もらえるというと、かなり待遇がいいように感じるかもしれませんが、実際にはもらえていない人も多く、かなり厳しい生活を強いられている現実があります。

アイルランドのロックダウン解除計画

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アイルランドでは、5月5日から8月10日まで3ヶ月かけて、ビジネスを徐々に再開していく計画がはじまりました。これは、感染の危険度が少ないビジネスから順に再開させていくという計画です。

個人の移動可能な距離については、すでに、自宅から2km圏内だったのが5km圏内に広がっています。今後、20km圏内の移動が可能になり、屋外の施設から順に再開していく予定ですが、パブなど密集する場所は最後の段階まで再開しない予定です。

また、実際の予定通りに再開させるかどうかは、感染者数の推移、ICUの重症患者数など推移をもとに決められるようです。

詳しい情報は、政府のウェブサイトから確認できます。

>>>Roadmap for reopening society and business

アイルランドの新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルスの最新情報は、在アイルランド日本大使館のウェブサイトからも得ることができます。

>>>在アイルランド日本国大使館 新型コロナウイルス関連最新情報

上記のウェブサイトでは、領事メールや、アイルランド政府が緊急に発表した新型コロナウイルスに関する情報を日本語で読むことができます。

また、ヴァラッカー・アイルランド首相の発表やその他アイルランド政府の発表は、以下のウェブサイトからも英語で読めます。

>>>MerrionStreet

まとめ

この記事では、2020年5月12日現在のアイルランドの新型コロナウイルス現地情報とロックダウン解除計画などをご紹介しました。政府はすでに、キャンプ場やグランピングのほかに、ホテルなどの再開計画も発表しているので、今後ソーシャル・ディスタンスと「3密」に気をつけながら、旅行をする人も増えることでしょう。当分の間は国内旅行のみですが、しだいに海外旅行が可能になる日が来ることを、希望を捨てずに待ちたいですね。

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Maroon

アイルランド在住のトラベル・ライター兼YouTuber。アイルランドから「アイルランドの田舎暮らし」の面白さを発信しています。現地では、ネイリストやネイル講師としても活動しています。

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