【自転車世界一周の旅】エクアドルからペルーへ、チャリダー泣かせの酷道を駆ける

エクアドルからペルーに向かって走る場合、大きく分けて二つのコースに分けられる。一つは海岸線、もう一つが山岳地帯を行くコースだ。

海岸線は世界遺産の遺跡が多く見どころが多いのだが、途中の道の治安が悪く強盗多発地帯と言われているため、多くのチャリダーは山岳地帯を選んで走っている。しかしこの道、治安は良いが過去最悪レベルの国道であった。

  • 場所:エクアドル ロハ~ペルー ラ・バルサ
  • 距離:200km 
  • 走行期間:5/12~5/18

目次

覚悟完了

世界遺産の町クエンカら、200km南にあるロハ県の県都のロハ。ここに来るまでもアップダウンのキツイ道だったが、本番はこれからだ。

前人のチャリダーのブログを見ていると、この道がいかにひどかったががつらつらと書かれているので、覚悟はすでにできている。辛い道は覚悟の上、ただそれ以上にひどすぎるが故、面白うそうな道でもあるので今はまだワクワクしている自分がいる。

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ロハの夜景

落石中注意

ロハから始まった国道682号線。ビルカバンバまでの50kmは確かに勾配がきつい所もあるが、まだ道は舗装されているのでここまではいつもの山岳コースと言えよう。

ビルカバンバを過ぎると徐々に道が荒れ始める。まずは道路脇の崖が崩れだし、土砂で片面が埋まっているところもあれば、完全に塞いでしまっている場所もあり、そんな場所では迂回路が作られている。この段階で日本なら通行止めか工事車両が入ると思うが、片面が埋まったくらいでは放置しているところを見ると、土砂崩れが日常茶飯事なのでわざわざ直しても徒労に終わってしまうからだろう。

崩れ済みのなら良いのだが、水分補給するため足を止めて休んでいると、目の前を直径10cm大の岩がガラガラと音を立て落ちてきて、道路を転がっていった。落石注意の看板が多い道ではあるが、あれはあくまでも路面上にある落石に注意するのであって、落石中の物体は注意しようがないので最早運だのみである。

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道が悪いほど面白い?

土砂崩れ&落石多発地帯に入るとともに、未舗装部分も増えてくる。

初めこそ、重機で整地されて比較的走りやすい未舗装路だったが、次第に穴が増え始め中には泥が混じってぬかるんだ道になってきた。この荒れた道を走っていると、これぞ世界一周前にイメージしていた発展途上国の悪路という感じがして、きついにはきついが意外と面白いモノだ。

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山越え、谷越え、川を越え

下りの途中、眼下をバスが走っている。非常にゆっくり走っているので、この先ダートになることが安易に想像がつく。
しかしバスが走っていた場所まで降りてみて驚いた。

穴ぼこだらけのダートは想像通りだったが、その先には道の上を川が流れている。

「えっ、川?」

増水して橋の上まで水位が来ているならわかるが、そうではなく純粋に川を横切るように道が伸びているのだ。自然の川なので、川の中は大小さまざまな岩がゴロゴロしており非常に滑りやすい。

深さはすね程度なので荷物を外さなくても濡れない深さではあるが、万が一滑ってコケてもいいよう、貴重品の入ったフロントバッグだけはずして、冷たく澄んだ川の中をじゃぶじゃぶと歩いて渡る。サイドバッグは帆布製のため撥水はできても防水効果は無いので、ここでこけたら一巻の終わりなので、慎重にならざる得ない。

悪路になればなるほど冒険しているようで楽しめる反面、デコボコ道の急な坂を越えるのは体力の消費が激しいものがある。普通の坂ですらしんどいのに、足場が砂や砂利では力が入らず、踏ん張っても足が滑りそのまま自転車ごと倒れてしまうこともしばしば。

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奥義発動

自転車と荷物を足した重さは、僕の体重の1.5倍以上ある80kgに及ぶので、自転車が自分とは反対側に倒れかけると支えきれずに、そのまま倒れてしまうのだ。

こんな急坂を越えるには自転車を坂に対してジグザグに進める事で、少しでも勾配を緩める作戦に出るのだが、道幅が狭いうえ土の道の為斜面が削れて段差になった部分もあり、この作戦でも進めない場所も出てきた。

そんな時は最終手段として、荷台に積んである35リットルのバックパックを外し、荷を軽くしてから押す作戦に。二度手間となるがこうでもしなければ、登り切れないので仕方がない。自転車で移動と言うよりも、なんだか登山をしているような気分になりそうだ。

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登りよりも下りが大変

登りはもちろんこんな悪路では下るのも一苦労。勾配がきつすぎてフルブレーキでもスピードが緩まず、砂利や段差でスリップしたりタイヤが空転したりと制御が効かなくなり、まるで暴れ牛に乗るロデオのようだ。

登りでは体力を下りでは神経をすり減らし、一日の終わりにはヘロヘロになりながらも着実に前進し、ロハをでて7日目ようやくゴールのペルーが近づいてきた。

しかし、本番はここからだった。

今までの勾配がましに思えるほどの急な坂。最後の峠はあまりにも急なため2、3歩歩くごとに休憩が入り、たったの400m進むのに1時間かかってしまった。

峠を越え坂を下りきったところにエクアドルのイミグレがあり手続きを済ませてペルーに入国。コンクリート製の橋に安心感を感じ、ペルーの舗装路に感動すら覚える。

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世界一の酷道

国道でここまでひどいのは類を見ず、多分一定の距離のある国道の中では世界で一番酷い国道、いや酷道であろう。

初めこそ「これぞ、世界一周にふさわしい道だ」なんて喜んでいたが、あまりにも激しすぎたため、この日の日記には道に対しての罵詈雑言で溢れていた。それでも、二年たった今でもあの時の苦労は容易に思い出すことができる、

特別綺麗な景色に出会える道ではないが、国道と名がついてもとんでもない道があると教えてくれた道でもあった。

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