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ウユニからチリ国境へ。砂漠の中の『宝石の道』

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記事投稿日:2018/07/28
最終更新日:2018/07/28

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【宝石】と聞けば、ダイヤにサファイヤ、ルビーにオパールなど色とりどりに輝く高級な装飾品を頭に浮かべるだろう。今回はそれがどんな道かは知らなくとも、【宝石】と付くだけあってきっと美しい景色が続く道なのだろうと、想像を掻き立てられる名前を冠した道、『宝石の道』をご紹介。

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  • 場所:ボリビア南部 Alota(アロタ)から50㎞西~チリ国境
  • 距離:450km
  • 走行期間:11/27~12/14
  • 移動手段:自転車

砂漠地帯の辺境地を抜ける『宝石の道』

『宝石の道』はボリビア南部の標高4000ⅿから5000mの砂漠地帯に伸び、鏡張りで有名なウユニ塩湖から170km南西に進み、幹線道路を離れた地点からチリとの国境までの450km続く道だ。この450㎞区間は全線未舗装で集落は無く、ツアー客相手のホテルが数軒あるだけの辺境地の中の辺境地、キングオブザ辺境だ。

通常100kmなら頑張れば一日で行ける距離だが、道が悪く進むのに時間がかかる事を考えると、三日はかかると見といたほうが良い。食料補給は期待できないので、ウユニの町で事前に買いだめする必要がある。

実際に用意した食料

先駆者のチャリダー達のブログを参考に、下記の合計約15kgの食料を用意。

(450kmを10日で突破する計算)

  • 米2.5kg
  • パスタ1.2kg
  • パン60個
  • 缶詰13個(ツナ、ランチョンミート、サーディン)2.5kg
  • ハム600g
  • ミートソース3袋
  • ラーメン4袋
  • チーズ2個300g
  • クッキー900g
  • 野菜(人参、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンニク、レモン)5kg

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ホテルで水を補給できるという事前情報はあるが、ホテルも100kmに一軒ほど。湖もあるが塩湖の為飲み水には適さないので、水は最大で12L持てるよう空のペットボトルも乗せた。さらに料理用に使うガソリンも予備で1L積んだため、積載量は今旅最大の90kg、自転車と合わせて110kgになってしまった。

これは自分の体重の2倍にあたり、宝石の道に入る前から不安になる重さだ。

砂漠に描かれた轍を進む

ウユニを抜けるとすぐにアスファルトは無くなり土の道となるが、重機でならしてあるので漕いで進むことができる。

しかし、幹線道路を終え宝石の道に入ると、路面は悪化し荒野に轍が伸びているだけで、最早道路と呼べる代物ではなくなってしまった。

ボリビア人の気質なのか、決まったコースを走らずに好き勝手に荒野を走るもんだから、轍(わだち)が無数にあり、どの道が正解のルートかわからないし、当然ながら看板などはない。

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最終的には国境へ伸びていると思うのでどこを走っても同じなのだが、時折明後日の方向に延びている轍があるので油断はならない。

普段の道なら多少間違えたところで引き返せば挽回できるが、ここで道を間違えて水分補給ができなければ、命にかかわってしまうのでいい迷惑だ。

普段は紙の地図を見てコースを確認しながら走るのだが、流石に宝石の道がある砂漠内の細かい分岐までは書いておらず、携帯ではなくiPodのオフラインアプリを見ながら、進んだ距離を計算して現在位置を確認しながら慎重に走らなければならない。

砂漠の丘の真ん中で高山病に

幹線道から数km走ると最初の関門である急な丘越えがあり、角度と足場の悪さから早くも自転車を降りて、押して登っていたのだが、中腹に差し掛かったころ気分が悪くなり、猛烈な吐き気と下痢に襲われ一歩も動くことができなくなってしまった。

標高4200mと今まで通ってきた道に比べたら、特別高いわけではないが高山病は体調に左右されやすいので、この日は体調が悪かったのかもしれない。

道路わきに自転車を止めうずくまって休んでいたが、一向に良くなる気配はない。むしろ体調はますます悪化し、意識は朦朧として涎(よだれ)を垂れ流しながら、生と死の狭間を漂う。ここは木の一本も生えていない荒野で、運悪く日を遮る事ができる岩陰もない。

日なたにいることで体力を余計に奪われ、脱水症状も加速していくので、自転車に積んだシートなどで日陰を作ればいいのだが、最早動く力もなく、今はじっと強い紫外線に耐えるしかない。

半ば意識を失い、気づけば体調を崩してから2時間たっていた。眠れた(?)おかげで少しだけ楽になったので、道端の開けたスペースに移動してテントを設営。

道路から丸見えだが、今はそれどころではない。貴重品だけテントにしまい、寝袋にもぐりこんで、一晩中吐き気と下痢に襲われながら朝を迎える。

最悪の気分で迎えた朝だが、ここで停滞してはこの先の計画に支障が出るので、空っぽの胃袋に正露丸だけ入れて無理して走り出すといった、不調な出だしとなってしまった。

絵画のような景色の中をひたすら進む

ふらふらになりながら自転車を押して丘を越えると、人工物が一つもない無人の荒野が広がっている。

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荒野には5000m級の山々が点在し、濃厚なまでの紺碧(こんぺき)の空の下、その山の間を縫うように灰色の轍がくねくねと伸びている。

紺碧の空、赤茶色の大地に黒く落ちた雲の影と白い塩湖、そして地平線に向かって伸びる灰色の道、そのコントラストは今まで見た景色の中で一番激しく、どこか非現実的でまるでシュールレアリスムの絵画のような景色だ。

非現実的な景色とは裏腹に、未舗装の砂漠の道は重さでタイヤが砂に埋まり、自転車は最早乗り物の役目を放棄し、重たい鉄の塊とし、薄い空気の中ひぃひぃ言いながら、現実的な物理の力に抗って荒野に一人自転車を押している。しかし、その姿も又シュールな光景の一部なのかもしれない。

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押すと言っても、砂が深すぎて両手でハンドルを押して進むこともできず、左手でハンドルを握り、右手でシートポスト(サドルの下)を掴み、後輪を持ち上げるようにして進むので、押すというよりも引くという感覚に近い。

このやり方であれば大抵の悪路は進めるが、非常に疲れるので一時間押しても2㎞進むのがやっとで、ここは自転車で来る道でないと確信した。

襲いかかる紫外線と竜巻

道が悪いうえ気象条件も厳しく、明け方は-10度まで下がるが、日中は日差しがきつく、数日砂漠を歩いただけで、すでに唇は火傷したかのように酷い炎症を起こしている。

おまけに竜巻多発地帯で、ぐるりと見渡せば必ず数本の竜巻が大地を移動しており、数十mクラスの竜巻が近くにある時は、速度を調整しながら距離を測っていく。急激に発生した生まれたての竜巻に不意をくらって数回巻き込まれたが、風を切る豪音と共に砂礫が体中に容赦なく当たり、

「痛たたたた!!」

と叫び声をあげることもしばしばだ。

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そして14時からは嵐のような西風が吹くので、まともに走る事ができない。

風が強いのでテントは岩陰に隠れるように張るのだが、一度風の遮るもののない360度砂漠の中で時間切れとなった事があった。

自立型の風に強い山岳テントを使用しているが、吹きさらしの中テントの設営や料理を作るのは困難なので、この時は風よけの為砂漠に埋もれた薄い岩で石垣を組み、2時間かけて高さ1mの囲いを作る。

風が冷たく震えながらの作業だったが、自分でも納得いく出来栄えで、苦労した甲斐あり風に晒されずに安心して朝を迎えることができた。

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『宝石の道』の見どころ

多様な生物

この道の見どころは雄大な景色だけでなく、塩湖の近くではフラミンゴの群れやビクーニャ、キツネなどを見かけ、岩場ではピスカッチャというウサギにそっくりな耳の長い巨大なネズミなど、過酷な環境に適応した多様な生物を見ることができる事だ。

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ピスカッチャは好奇心が強く、自転車を止めて写真を撮っているとゆっくり近づいてくるので、指を伸ばしてみれば猫のように鼻を寄せクンクンと臭いをかいできて非常にかわいらしい。

星空

そして最大の見どころは、星空であろう。

世界的に有名で、世界一星が綺麗と言われるアタカマ砂漠に隣接しているだけあり、人工物が無い乾燥地帯の星空は、まさに宝石箱をひっくり返したように星が煌めき、まるで宇宙空間に漂っている気分にすらなるほどで、今までの旅で一番見事な星空であった。

宝石の道の由来

宝石の道の由来は、赤や緑、青といった色とりどりの湖を、宝石になぞらえて名付けられたそうだが、カラフルな湖、満天の星空、そして額に流した汗と、『宝石の道』で得た感動の全てが、永遠と心の中で宝石の様に輝くのであった。

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