たびこふれ

世界一標高の高い道。ボリビア『ウトゥルンク火山』を駆ける

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記事投稿日:2018/08/16
最終更新日:2018/08/16

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目次

世界一高い道

「世界一標高の高い道が宝石の道の近くにある」

ボリビアのウユニに居た時、南米を走っている友達の日本人チャリダーからこんな情報が届いた。道の最高地点の標高は5,780m。今まで走って来た道の中での最高地点はペルーのワスカラン国立公園にある峠道の4,900mなので、自身の記録を約900m更新することになる。

ここで重要なのが【道】という部分だ。

自転車に乗らずとも山道を担いで上がれば、6,000m以上にも挑戦することができるので、ここでは、車が通行可能な【道路】の中で世界一高い場所を指している。調べてみた限りこの道を自転車で踏破した日本人はまだおらず、踏破すれば世界一標高の高い道を踏破した初の日本人という称号を得ることができるのだ。

宝石の道の途中という、ただでさえ困難な道をより難易度を上げるコースになるが、こんな面白そうな道を知ったからには、冒険心をくすぐられ行かずにはおられない。未知の道を目指して、高さ世界一への挑戦は始まった。

・場所 ボリビア南部ケテナチコ村
・距離 ケテナチコ村から道の頂上まで30km
・走行期間 2017年12月4日~2017年12月8日

>「宝石の道」を走った記事はこちらをご覧ください!

登頂に向けた準備

場所は宝石の道にある紅く染まるコロラダ湖から東に70km進んだところにある、ケテナチコ村の近くにある標高6,008mのウトゥルンク火山に延びている道だ。

標高4,200mの湖から同じ高さのケテナチコ村までも途中4,800mの峠があり、その間も宝石の道同様未舗装の無人地帯が続いていたが、宝石の道に比べ深い砂地が無いので自転車を押しやすく、湖を出て2日目に到着。

この時、示し合わせた訳ではないが、ばらばらにウユニを出発した日本人チャリダーが村に3人揃うという奇跡が起こる。日本人チャリダーが3人も来るなんて、これはこの村始まって以来の出来事だろう。

村の売店で食料を調達し翌日朝6時半、3人揃って宿を出発。村の標高は4,200m、最頂部の5,780m地点にある第二駐車場までは片道30kmのコースだ。フルパッキングでの登坂となるとかなり過酷なコースだが、日帰りでの踏破を目指すので荷物は最小限にとどめ、水と昼食、そしてクッキー等の軽食と防寒具の軽装で臨む。

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友と一緒に山頂を目指す

村を出ると即砂地となり、荷物のない自転車でも漕ぐのがかなり困難な道で、早くも自転車を押して進む事に。一つ目の難関を越え丘を下ると、道の間を幅10mほどある川が横切っており、車道の上を小魚が泳いでいる。流れがあるので正確な深さは分からないが、間違いなくひざ上以上はあるだろう。

そのまま突き抜けるのは危険なので、道路わきの湿地の上に気持ち程度乗せられた石の道を自転車を担いで渡るのだが、バランスを崩したり踏み場が悪かったりと渡り切る頃には完全に靴が水没してしまっていた。

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川の次は勾配10%以上はあろうかという急坂が伸び、試練の連続で15km地点にある無人の管理ゲートに着くころには出発して5時間経っていた。3人でおしゃべりしながら進んでいたので、遠足のような軽い気分で進んではいたが、悪路の為時速にして3km/hと歩くよりも遅いペースで、中間ポイントについた段階で3人ともすでに肩で呼吸し疲労が顔に出ている。下山の事も考えると無理はできないので、下山開始時刻を14時と決め、ここからは個別に登坂を開始する。

この時点でかなり体力を消費していたが、高度を上げるにつれ体力の消耗は激しくなる。標高5,000mを越えると地上の酸素濃度の1/2になると言われ、数歩進むだけで息が切れ足が思うように進まない。

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13時半、標高5,100m地点まで登った所でこれ以上進むことを断念し、風を避けるため岩陰に隠れて2人が下山するのを待ち、15時に合流して下山した。

2人は第二駐車場までは行けないまでも、5,600m付近の第一駐車場まで登れたそうだが、僕は踏破失敗に終わっているのでこのまま諦めることはできず、翌日村で休息したのち、今度はテントや寝袋の装備をもって一人で再び山頂に挑む。

山頂へ再アタック!

荷物が増えた分速度は落ち、5,100m地点に着いたのが17時過ぎだ。人生初の5,000m地点でのキャンプは、止まぬ暴風がテントを激しく叩いてゆさぶらし、酸素の少なさから息苦しくて熟睡できず、翌朝に全く疲れが取れていない状態であった。

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それでもこの日の登頂を目指し、砂糖たっぷりの温かいお茶を飲んで体を温めて出発。昨日二人が到着した第一駐車場には3時間弱で到着。距離にすれば4km程度なのに、想像以上に酸欠状態というのは体力が出ないものらしい。

ここから第二駐車場までは2kmで160mアップの坂道だ。しかし、道は激しさを増し車で走行できるか怪しいような角度の坂や、落差1,000m以上ある斜面を削ったデスロード、そして黄色い硫黄の地面からは至る所で火山ガスが噴出されている。村人に許可を貰って山岳道に進入してはいるものの、普通に考えたら危険すぎて通行禁止になるようなレベルの道が続き、時折躊躇してしまう。

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5,600m以降は通常の呼吸では肺に酸素が届かず、深い呼吸を繰り返し意識的に酸素を送る。今回は自転車と荷物を足した総重量は30kg強程度だが、標高に比例して重力が上がったかと思うほど、普段よりも重たく感じる。平らな部分なら漕ぐこともできるが、少しでも角度が上がると足に力が入らずペダルを一回転もさせることができないので、結局はほとんどの行程で自転車を押していた。

最高峰に立つ

ふらふらになりながらも、必死に押し続け、2017年12月8日11時30分、遂に世界一標高の高い道に登坂成功。

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この瞬間、道路上にいる車及びバイク、そして自転車乗りの中では、世界一高い所にいる人間となった。

道からははるか地平線まで赤茶色の大地が広がり、標高5,000m以上ある山すらも眼下に見下ろすことが出来、人工物の無いむき出しの乾いた台地は古代の地球のようだ。今まで見たどんな空よりも青い空は、宇宙に近づけた証拠だろうか。

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余力があればここから山頂まで登山したかったが、下山の時間を考えるとぎりぎりの為、ここは無理せずおとなしく下山することに。風は強く、そして冷たいので、体を冷やす前に下山したいし、なによりもここに来れただけで大満足したので、6,000m峰の登山は別の機会に取っておこう。

下山を始めると、達成感で忘れていた疲労がどっと押し寄せ、酸欠が影響してか瞼(まぶた)が非常に重たく、下り坂でもペダルを回す余力も残っていない。その為、村に着いたのは日暮れ1時間前の18時過ぎ。今にも意識が飛びそうなほど疲れきっていたが、日本記録を樹立したことよりも、自分自身の限界に挑戦し目標を達成できたことの方が今の自分には価値があり、この疲れすらも人生の経験値として体に刻み込むのであった。

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