【自転車世界一周の旅】世界で最も高いペルー『ワスカラン国立公園』でアンデス山脈をチャリダーが駆ける!動画あり

南米を自転車で縦断する時には、どのコースを選ぼうとも必ず乗り越えなければならない壁がある。それは南アメリカ大陸を南北に貫く世界一長い山脈、アンデス山脈だ。

この長さ7500km幅750kmある山脈は、南米を旅している間幾度も戦いを挑み、倒した倒されながら僕を成長させてくれたライバルのような存在だ。今回はそのライバルのように長い付き合いとなったアンデス山脈に、真っ向勝負に挑んだ時の記録である。

  • 場所 ペルー北部
  • 距離 ワラス~アコチャカ~カルウアス
  • 走行期間 7/12~7/22

目次

世界遺産にも認定された『ワスカラン国立公園』

南米ペルーの首都リマから北東部に位置するアンデス山脈に広がるワスカラン国立公園。公園内には観光客に人気の氷河湖、ラグーナ69や無数にある湖を巡るトレッキングコースが有名だが、チャリダー的にはそこよりも園内に延びる標高4000m後半の峠の方が魅力的に見えてしまう。

これまでに4000mの峠はいくつか越えてきたが、園内の峠は5000m~6000m峰の急峻な山々や氷河や美しい湖の近くを走る事ができるので、景色は抜群に良いとの評判だ。

その中で僕が選んだのが標高2500mユンガイからヤナマ(標高3400m)を結ぶ峠を経由し、ヤナマからアコチャカに南下し、そこから峠を越えてカルウアスに降りるコースだ。地図を見ると、1つ目の峠が4700mで2つ目の峠が4900mと、4000m後半の峠が連続して続くという、なかなか上級者向けの道である。

ワスカラン国立公園に向け出発

7/12、まずはユンガイの町の奥に広がる、ワスカラン国立公園に向け出発。

町を抜けるとすぐに道は未舗装に変わり、凸凹だらけの砂利道となる。道の先には山頂に真っ白な雪を被った6600m~6700mの山が二峰聳(そび)えている。

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進行方向から見て左に聳え黒い岩盤が見えるのがワスカラン北峰で、右側がワスカラン南峰だ。この北峰の北側に伸びている渓谷沿いに道があり、ヤナマへと続いている。でこぼこ道ではあるが、勾配もまだ緩く砂利も浅いのでゆっくりだが走る事ができる。

初日は15km走って1000mアップの標高3400m地点で見つけた、車の侵入ができなくなった旧道の岩陰でテントを設営。国立公園外の人目につかない場所でテントを張れたこともあり、久しぶりに枯れ木を集めて焚き火をする。

焚き火はパチパチと爆ぜながら、小さな火の粉を天へと胞子のように飛ばしている。火の粉の行方を追って空を見上げれば、いつの間にか火の粉は夜空に浮かぶ小さな星へと変わり、闇夜に川を浮かべ、山のシルエットを映しだしている。

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ロマンチックな光景に心を満たしながら、明日に備えて早々に寝袋に包まりアンデスの峠に思いを馳せるのであった。

アンデスの山を登る

野営地から1kmほど走ると国立公園のゲートが見えてくる。園内に入ると急峻な崖が道を挟むようにV字の渓谷を作り、奥へと伸びている。渓谷を進むと透明度の高い清流が道路わきを流れ、その先には湖が広がっていた。

風が強くさざ波が立っているが、湖畔には貸しボート屋さんがいるので、風のない日にボートに揺られてのんびりしたら気持ちが良さそうだ。

湖畔にキャンプ場が広がる2つ目の湖を過ぎると、いよいよ本格的な登坂コースとなる。道幅は狭くなり勾配もきつくなってきた。

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見上げると湖畔から高低差1000mぐらいのありそうな九十九折の道が、崖の上にジグザグに続いており、この日は丁度日が沈むくらいの所で、人目につかない場所でキャンプし、登る途中で汲んだ冷たい雪解け水で食事を作り、食後に温かいお茶を飲んで体を温める。

目の前には氷河が溶けてできた青白い川がごうごうと流れている。雪解け水でできた川は透明なのに対し、氷河が溶けてできた流れは透明にならないのは何でだろうか?有害そうな見た目から飲むのを躊躇(ためら)い僕は口につけなかったが、この水を浄化させて飲んだ友達のチャリダーは、見事翌日に腹を壊したので見た目通り飲めない代物らしい。

4500mの山中に咲く色彩豊かな高山植物

翌朝、頂上目ざして走り出すも、道は一層激しさを増し、まるでトレッキングで使うようなでこぼこ道の為、ほとんど乗ることはできず、ひたすら押して進むのであった。道は悪いし酸素が足りないのできつい道ではあるのだが、標高を上げるにつれ、目の前に迫りくるのこぎりの様に険しく切り立った山頂が続く山々。

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目を落とせば、色とりどりの高山植物が花を咲かせている。標高はすでに4500mを越えている。極地に近い場所というのは色の種類が希薄のイメージがあったが、ここでは青、白、緑、黄色、紫と色彩豊かな道だ。

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景色に見とれ写真を100mおきぐらいに撮っていたら遅々として進まず、峠の頂上に着くのが18時になってしまった。この時間から下る体力が残っていなかったのもあるが、折角4700mまで登ったことだし記念にとテントの中で目の前の絶景を楽しむのであった。

アップダウンは続く

朝6時、目が覚めると群青色の空が広がっている。360°山に囲まれているので、太陽が顔を出すまで時間がかかり、手がかじかみそうなほど寒い。

太陽が徐々に上りだし、空は群青から薄紫、薄紫から東雲色(しののめいろ)へと変化していく。淡く光る雪山は先端から徐々に明るくなり、時間と共に白さが増すように照らし出されていく。

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空気が温まったころで撤収を終え、岩壁の間を通りアンデス山脈の東側へと抜ける。ユンガイ方面に比べると多少は勾配は緩く、大きくヘアピンを描いた道の間に無数の池が点在している。

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昔氷河で削られてできたような険しい岩肌の道を下り森林限界までおりると、背の高い木々が増えてちらほらと民家も見える。

標高3500m付近まで来るとホテルのある村もあり、山肌に緑も増えてきた。渓谷沿いに延びる道を進み、一度標高を2500mまで下げた後再び標高を上げ2900mのコカチャカという町まで荒れた道を行く。コカチャカで体調を崩してしまい、3泊した後最後の峠へと向かう。

希望としては4900mの峠がある旧道入口まで行きたかったが、病み上がりということもあり4600m地点で力尽き湖のほとりでテントを張ることにした。コカチャカの少し手前から舗装路に変わって走りやすくはなっているが、やはり道がどんなに良かろうと4000m以上にある急な道はどんな条件でもつらい事には変わりはないようだ。

絵の具を溶かしたようなエメラルドグリーンの湖を抜け、最後の峠を越える

最終日。湖から1時間ほど進むと峠の分岐点が現れる。真っすぐ行くとアンデス山脈を貫く全長1.5kmのトンネルがあるのだが、今回は旧道へと進路を取る。

旧道に入り1km程進むと山の谷間に、エメラルドグリーンの湖が広がっている。この湖、綺麗ではあるが絵具でも溶かしたような、自然の色と思えないほどほど濃い色をしている。

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これ程までのインパクトある湖なら観光地になりそうだが、僕以外誰もいない。旧道とは言えここまでは新道からでも四駆なら進んでこられるというのに、勿体無い。

湖から先は大きな岩がゴロゴロと転がっていて、一部は自転車のバッグがひっかかるほど崩れている場所もあるので、車は完全に通ることはできない悪路だ。

岩をどかしながらスペースを開け、自転車を押したり持ち上げたりしながら、4kmを2時間かけて進み、昼過ぎに4900m地点に到着。岩を削ってできた峠の頂き。草の1本も生えぬ岩だらけの極地。そこには冷たい風が吹き抜け、体温を奪っていく。しかし、それとは裏腹に達成感と充実感がふつふつとこみ上げ、寒さが気にならないほど心を満たしていく。

絶景を見られた感動と、悪路でも時間をかければ乗り越えることがでいる自信。世界有数の標高の高い道で得た経験は、この先きっと役に立つだろう。

土砂が覆い原型の無くなった道なき道を、自転車を支えながらゆっくりと感慨に浸りながら下るのであった。

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