アイルランドの国立博物館ナショナル・ミュージアム・オブ・アイルランド - カントリー・ライフを紹介!レンタル自転車でサイクリングできる広大なお庭やお洒落なカフェなど見どころがいっぱい!

アイルランドメイヨー県のカソルバーから車で10分の場所に、国立博物館「ナショナル・ミュージアム・オブ・アイルランド - カントリー・ライフ」はあります。この博物館はアイルランドの現代史を知るうえでとても重要な資料が展示されており、文学やアートで美化されがちな側面とはまた違う、リアリティ満載のアイルランドを見れます。

この記事では、ナショナル・ミュージアム・オブ・アイルランド - カントリー・ライフの魅力をご紹介します。

目次

敷地内にある立派なお屋敷の謎

Turlough Park House

国立博物館の敷地内に入るとまず目に入るこのお屋敷は、実は博物館ではありません。国がこの広大な敷地を購入したときには、すでに建っていたそうです。お屋敷の玄関には、豪華な家紋と、猪?のような石づくりのロゴの下に1865年と刻まれています。

玄関のアーチ形はいわゆる古典的な丸いアーチではなく、少しとがっており割と近代的なデザインになっています。年代もデザインも、Period houseのなかではわりと新しい方に入るようです。Period houseについて特に年代を示す定義はありませんが、通常は第一次世界大戦前の時代を指します。特に、ビクトリア朝、ジョージ王朝時代、エドワード朝時代の物件は、Period houseと呼ばれることが多いようですね。

Turlough Park House

こちらのお屋敷は「ターロック・パーク・ハウス(Turlough Park House)」と呼ばれており、有名な建築家のトーマス・ニューナム・ディーン卿(Sir Thomas Newenham Deane)がデザインした建物だそうです。ディーン卿は、ダブリンのトリニティ・カレッジの建物もいくつかデザインしていることで有名です。

しかし、ウェブサイトなどで調べてみると、もともとの所有者についてはほとんど述べられていません。これだけしっかりとしたお屋敷なのに、何の説明も敷地内に書いておらず、一般公開していないのはなんだか不思議に感じられました。

気になってさらにローカル紙の記事などを調べたところ、ちょっとここでは書けないような特定の人々に不快感を与えかねない内容の記事を見つけました。また、その史実に関する本も出版されているそうですが、今の段階ではそれが真実かどうかを検証できないので、ここでは執筆を控えます。

Turlough Park House

何はともあれ、トーマス・ニューナム・ディーン卿の素晴らしい建築であることには変わりはありません。内装を見れないのは残念ですが、現在はミュージアムのスタッフのオフィスやギフトショップとして使用されています。

広大なお庭ではレンタル自転車でサイクリングが可能!

レンタル自転車

11年前の2012年に訪れたときは、このレンタル自転車はありませんでした。ここはサイクリングのみならず、トレッキングやランニングにもおすすめです◎

ナショナル・ミュージアム・オブ・アイルランド - カントリー・ライフ

また、この敷地はグリーンウェイの始点になっており、ここからカソルバーの終点まで川沿いの遊歩道をたどっていくと、自然あふれる景観を楽しめます。この階段から川辺まで降りることができます。

マップ

敷地内のマップがこちら。敷地内には児童公園や植物を栽培するグリーンハウス、茅葺き屋根のお家などがあります。

奥に佇むモダンな構えの国立博物館

ナショナル・ミュージアム・オブ・アイルランド - カントリー・ライフ

お庭にある標識にしたがって奥へと進むと、EUの旗とアイルランドの国旗が目に入ります。そこにモダンな構えの博物館がありました。ドアは重そうな開閉式の扉で手で押そうとしたところ、いきなり自動で開いたので驚きました。

博物館のテーマは「失われたアイルランドの生活スタイル」!?

失われたアイルランドの生活スタイル

建物のなかに入ると、まずこちらの大きなガラスのパネルが目に入ります。一瞬通り過ぎてしまいそうなほどシンプルなデザインなのですが、私はアイルランド人の夫に呼ばれて足を止めました。

彼が言うには、これが一番大切なメッセージなのだそうです。見ると、「消えた生き方?」という疑問形の見出しが英語とアイルランド語で書かれてあります。今はほとんど日常生活で使われなくなってしまったアイルランド語で書かれてあるのも何か意味を感じますね。生き方のみならず、ひとつの言語が消えるというのは相当な理由があってのことです。

ここには、次のように書かれてあります。

"ほんの少し前まで、アイルランドの人々は私たちとは異なる生活をしていました。アイルランドの田舎では、ほとんどの人が自分のスキルとリソースに頼って、陸と海から生計を立てていました。この展覧会では、大飢饉から 1950 年代の終わり頃までの 100 年間、そのライフスタイルが本質的になくなるまで、彼らがどのように暮らしていたかを垣間見ることができます。"

私はこの文章に出会ったとき、胸にすとんと落ちた気がしました。実は、アイルランドをはじめて訪れたとき違和感があったのです。それは、アイルランドに脈々と流れているはずの昔からの文化が、どこかで断絶して置き忘れられているかのような不思議な感覚でした。その感覚で捉えるとこのミュージアムは巨大で静謐なお墓のようにも感じられました。

常設展の一部を紹介

常設展

こちらは、ミュージアムの入口付近で出迎えてくれるマネキンたち。当時実際に着用されていた衣服が展示されています。

常設展

こちらは1900年頃にケリー県で撮影された写真です。驚くことに、漁村では女性たちが裸足で魚に塩を振る労働を一日中していたそうです。写真をみるとスカートも地べたについてしまっていて、だいぶ汚れているようです。写真からは敷物を敷いて作業するような余裕は感じられません。

常設展

こちらは、ゴールウェイ県で実際に着用されていた革製の履物です。家の中で履くような履物かと思えば、こういった履物は屋外用の靴としても使用されるのが普通だったようです。

常設展

こちらの女性はわりと裕福な家庭の女性だったのでしょう。家の中でもちゃんとした靴を履いています。女性は、ベビーベッドのわきで裁縫をしながら暖炉でHearth cookingをし、猫はエサを狙っているのか、それとも暖をとっているのかもしれません。よく見ると、猫の手前には犬が寝転がってリラックスしていますね。

常設展

こちらは、「スライゴ―・チェア(Sligo Chair)」と呼ばれていたようです。藁で編んだ椅子はあまり長持ちすることがなかったようですが、スライゴ―・チェアはしっかりとしていて安定性があったとと書かれてあります。

常設展

藁でつくられた、馬の手綱も発見。皮や木材、布といった素材が手に入りにくかった時代は、藁で様々な物を作って代用したようです。他にも、帽子やベビーベッドなどが展示されてありました。

常設展

こちらは、籐でつくられたエビのしかけです。エビが真ん中の穴からいったん中に入ると、簡単には外には出れないようなしくみになっています。

常設展

こちらのイラストは、メイヨー県の籠を背負った人を描いたスケッチです。こちらのバスケットは1955年にトーマス・バーンズ氏によって作られたものだそうです。一瞬、日本の侍のようにも見えました。時代や国は違っても、似ているように見えるというのが面白いです。

常設展

こちらの農具は、アイルランドの泥炭を切り取るのに使われていたものです。泥炭は、燃料として燃やすことで、ストーブで暖をとったり料理したりすることが可能です。有機物の死骸や植物が腐敗したものが約1万年かけて分解されることで、泥炭ができあがると言われています。20世紀後半からは機械の導入で大量に採りすぎたせいかだいぶ減ってしまい、環境にも影響が出始めていることから今では、EUの規則により泥炭を切り取ることは禁止されました。

しかし、泥炭の販売はつい15年ぐらいまでは普通に行われていました。私がアイルランドに移住した11年前も、まだ泥炭を売りさばいている人達を見かけたことがありましたが、ここ数年で一気に取り締まりが厳しくなったのかまったく見かけなくなりました。

常設展

こちらの鉄製の車輪がはめられた自転車の名前は、「Bone shaker」。鉄製の車輪だけでタイヤがついておらず乗り心地は最悪だったそうです。これに乗るとまさに、骨の髄まで振動や痛みが伝わるということで、「Bone shaker」はまさにぴったりのネーミングだっと言えます。

常設展

こちらは、SINGERミシンの古いモデルで靴の製造に使用されていたようです。これより新しいモデルは、アンティークショップや展示会などで見かけた方もいることでしょう。しかし、この古いモデルは、私は今まで一度もお目にかかったことがありませんでした。しかも、今でも使えそうなほど良い状態で残っていることが奇跡的で見ているだけでワクワクします。

常設展

アンティーク好きにはたまらない古いボトルたち。勢ぞろいすると、まるで蚤の市にでもいるかのような気分にさせてくれます。

ここでご紹介したのは、全体の展示のほんの一部にすぎません。他にも昔、軍で使われていた古いライフルや、パイプ、鉄製の調理器具、車いす、着物など数えきれないほどの物や写真が展示されていました。

また、展示されていた写真の中にはダブリンの田舎の人々を写したものもあり、ダブリンにも昔は農村地帯があり田舎の生活スタイルがあったことを知りました。

ミュージアムを出て少し歩くとギフトショップを発見!

ギフトショップ

こちらのギフトショップは、足を踏み入れた瞬間とても良い香りに包まれます。というのも、アイルランドで作られたとても香りの良いキャンドルがたくさん売られているからです。また、興味深いタイトルのアイルランドに関する本や、革製のバッグ、アランニットなども売られています。

落ち着いた雰囲気のカフェで休息

カフェ

展示をすべて見終わったあとは、こちらのカフェで休息をするのがおすすめです。

スタッフはとても親切で感じが良く、空いていたせいかいろいろとフレンドリーに話しかけてくれました。こちらは、天候の影響でたまにインターネット回線がつながらなくなるそうで、カードが使えないこともあるのでキャッシュを持ち合わせていた方が良さそうです。

カフェ

カフェラテを注文しました。お洒落な陶器で飲むと一層おいしく感じられました。

カフェ

春から秋にかけて晴れている日は、中庭で軽食をとることも可能です。丸いガラスがはめられた窓が、子どもの頃にどこかで読んだような物語の窓に似ていてワクワクさせられました。

まとめ

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アイルランドの人々は大飢餓や時代の変化によって、日本と比べるとだいぶ急激な変化を求めらました。今では、世界中の多国籍企業がアイルランドに進出し、最新の2021年のIMFの統計では、一人当たりの名目GDPでは、世界で2位になるほどに成長しました。

手に入れたものがあれば、失ったものも多く、それを肯定も否定もせずひたすら突き進む。今回の博物館訪問は、そんなアイルランドの歴史の流れの一部を切り取った世界で、失われた世界の中に光を見つけることができました。

この時代の人々の苦境に耐える姿や何も無いところから物を生み出す姿は、これから、物質的に厳しい時代を生きねばならない未来の人々に生き抜くヒントを与えてくれることでしょう。アイルランドに住んでいる人にも、日本から来た人にもぜひ、おすすめしたい博物館です。

National Museum of Ireland - Country Life

  • 住所: Turlough Park House, Gortnafolla, Castlebar, Co. Mayo, F23 HY31
  • 営業時間:10~17時(日・月曜は13時~)
  • 公式サイト:National Museum of Ireland

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Maroon

アイルランド在住のトラベル・ライター兼YouTuber。アイルランドから「アイルランドの田舎暮らし」の面白さを発信しています。現地では、ネイリストやネイル講師としても活動しています。

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