冷や汁って何? 材料や作り方、宮崎の有名店まで紹介

冷や汁

「冷や汁(ひやじる)」とは宮崎県の代表的な郷土料理の1つで、近年は知名度が上がり、すっかり全国区となっています。しかし、「聞いたことはあるけどなかなか食べる機会がない!」そんな人も多いのではないでしょうか。

「要するに、冷たいお味噌汁でしょ?」といわれることもある冷や汁ですが、それは実は大きな誤解。シンプルで素朴に見えながら、暑い夏でも栄養がたっぷり摂れるように工夫が凝らされた冷や汁は、一般の味噌汁とは全くの別物なのです。知ればその魅力に惹き込まれる人も少なくありません。

この記事では、そんな実は奥の深い冷や汁について、そのルーツから作り方までまとめて紹介します。知らないままではもったいないですよ!

目次

<1. 冷や汁とは~夏においしく栄養がとれる!~>

<2. 冷や汁の具材~きゅうり、アジ、ミョウガなど~>

<3. 冷や汁の味噌とご飯~麦味噌?麦ごはん?~>

<4. 実は宮崎以外の郷土料理でもある>

<5. 冷や汁の作り方~基本となるレシピとは~>

<6. ちょっと気になる冷や汁の温度~どれくらい"冷や"なの?~>

<7. 本場の冷や汁はどこで食べられる?>

<8. 冷や汁がおいしい宮崎県のお店>

<9. 冷や汁と合わせて食べたい宮崎の郷土料理グルメ>

<10. 宮崎以外で冷や汁を食べたい! 東京近郊の冷や汁がおいしいお店>

1. 冷や汁とは~夏においしく栄養がとれる!~

まずは、冷や汁の歴史や食べられている地域について紹介します。

冷や汁とはこんな料理!

「冷や汁」と聞くと、お椀に入ってすする汁物を思い浮かべるかもしれません。しかし実は冷や汁は、単品で食べるものではなく、基本的に常にご飯とセットになる料理、つまり「汁かけご飯」の一種なのです。

その味付けは味噌がベース。そこに、魚や野菜、薬味をたっぷり投入します。もともとは、農民が忙しいお昼どきに、ご飯に味噌、さらに水をかけてザザっとかきこんだともいわれているダイナミックな料理ですが、歴史を経た今は、魚は焼いてほぐし入れ、味噌は焦げ目をつけて香ばしく...と、徐々に手間をかけたものになってきました。味わいの面からも、栄養の面からも、完成度の高い一品といえるでしょう。

冷や汁の歴史

冷や汁の始まりは、今から800年以上も前の鎌倉時代にまで遡ります。当時の書物には「冷汁」という味噌を調味料とした汁物の記載があり、この食べ物が僧侶などを介して徐々に全国に伝わり、最終的に地理や気候的に適した場所で食べられ続けてきたと考えられています。

中でも、現在に至るまで冷や汁の本場として残ってきたのが宮崎県。

宮崎県は、冷や汁の具材である野菜や魚が豊富に採れる自然豊かな県でもあり、さらに、その気候は高温多湿。ひんやり、サッパリと食べやすく、手軽に栄養を取れる冷や汁はうってつけの料理だったわけですね。

冷や汁が食べられる地域

昭和40年代くらいまでは、宮崎県の中でも、冷や汁を食していた地域はもともと宮崎平野(県中央部の海沿いの一帯)のあたりに限られていて、その他の地域ではあまりメジャーな料理とはいえなかったようです。

しかしその後、情報化社会が進展するにしたがって冷や汁の文化は県内全域に伝わるようになり、現在では県内の多くの地域で食べられるようになっています。ただし、目ぼしいお店の多くはやはり現在でも宮崎市内に集中しています。

2. 冷や汁の具材~きゅうり、アジ、ミョウガなど~

冷や汁 薬味
<出典元:写真AC

冷や汁の具材で欠かせないものをまず3つ挙げるとしたら、だしにも具にもなるアジ、歯ざわり抜群のきゅうり、そして風味を底上げするミョウガでしょう。これらの豊かな具材を、調味料の味噌がまとめ上げます。

魚はアジが定番ですが、タイやカマス、トビウオなどもおすすめです。そもそも冷や汁に魚を使うのは「ぜいたくバージョン」なので、手間と予算を抑えたければ、「いりこ」をすったものを味噌に入れるのでも大丈夫。

また、お豆腐、ツナ、オクラなども良く合います。これらはすべて手軽で栄養価が高く、かさも増してワンボウルで満足するご飯になります。

薬味はミョウガのほか、大葉やネギ、いりごまなどお好みでどうぞ。たっぷり入れるのがポイントです。

3. 冷や汁の味噌とご飯~麦味噌?麦ごはん?~

冷や汁の味のベースとなる味噌。宮崎をはじめとする九州地方は「麦味噌」の主な産地であるため、冷や汁にも基本的には麦味噌が使われています。麦味噌の特徴は、やや甘めに感じる味付けです。しかし実際には、米味噌や信州味噌など、他の地域で一般的に使われる味噌で作られた冷や汁でも、それほど違和感はなく美味しくいただけるという声がほとんどです。

また、冷や汁をかけるご飯は、白米のほか、麦ごはんなどの雑穀米も良く合います。栄養価を高める効果も期待できるので、こちらもおすすめです。また、うどんのつけ汁、かけ汁として使う地域もあります。

4. 実は宮崎以外の郷土料理でもある

宮崎県が定番として知られる冷や汁ですが、実は全国には他にも冷や汁が郷土料理として親しまれている地域があります。

埼玉県の冷や汁

埼玉県では、「冷汁」と書いて「ひやしる」と読むほか、"すりたて"の具材を使うところから、「すったて(つったて)」と呼ぶエリアもあります。

埼玉県では、白味噌、大葉、ごま、砂糖などをすり潰し、だし汁を加えて伸ばします。さらにミョウガ、ショウガ、きゅうりも添えることもあります。宮崎県の冷や汁との違いは、魚を入れないこと。また、ご飯にかけるのではなく、これをうどんのつけ汁にすることです。

喉越しの良い冷汁はつるつるっとうどんと一緒に食べるのも美味しそうですね。埼玉県は、実は香川県に次ぐうどんの一大生産地でもあることから、こうした食べ方が広まったとされています。

山形県の冷や汁

山形県の冷や汁(ひやしるといわれます)は「具だくさんのおひたし」と形容されることが多く、宮崎県や埼玉県の冷や汁とはガラっと変わります。山形県の中でも、上杉謙信公の城下町として知られる米沢市の郷土料理で、季節の野菜をたっぷりのだし汁に浸して食べます。具材となる野菜に決まりはなく、キャベツ、ホウレンソウ、雪菜など、季節によって変わります。

ポイントは、だし汁に干し貝柱や干ししいたけの戻し汁を使い、具材に凍み(乾燥)こんにゃくや乾燥豆を入れること。雪深く気候の厳しいこの地域で、うまみが凝縮して保存の効く乾物をふんだんに取り入れながら、野菜を美味しく食べられるようにと考えられた、知恵の賜物といえるでしょう。

5. 冷や汁の作り方~基本となるレシピとは~

冷や汁
<出典元:写真AC

さて、冷や汁は美味しい上に栄養抜群とくれば、ぜひ食べてみたいですよね。しかしなかなか宮崎県までは行けないという人は、基本のレシピを紹介しますので、家で作ってみてはいかがでしょうか。

味噌汁よりはちょっと手間がかかりますが、ポイントを押さえれば多少手抜きしても美味しくできますよ。

材料(4人分)

  • アジ、タイ、カマス、トビウオなどの魚の干物 1尾
  • きゅうり 1本
  • ミョウガ 1個
  • 味噌 70~80g
  • だし汁 500ml程度
  • 白ごま 適量
  • 大葉 お好みで
  • ご飯

作り方

  1. だし汁を作ります。かつお、昆布などの合わせだし、また、和風顆粒だしを水に溶いて、適度に冷やしておきます。ごまはすりごまにします
  2. 魚をグリルなどで軽く焦げ目がつくまで焼き、身をほぐします
  3. きゅうりは薄切りにして、軽く塩(分量外)でもんで、置いておきます
  4. 味噌とごま、さらに2の魚を混ぜ合わせます
  5. 4の味噌を、フライパンに広げ、焼き目がつくまで焼きます。または、アルミホイルに敷いて、オーブントースターで焼きます
  6. 味噌が焼けたら、1で作っただし汁を加えて伸ばしていきます
  7. ご飯に6の冷や汁をかけて、きゅうり・ミョウガ・大葉を載せていただきます

ポイント

  • 味噌は、焦がすと風味がでますが、焼かなくても大丈夫です
  • 魚がないときには、いりこを粉末状にして味噌に加えて作ることもできます
  • すり鉢がなければ、すりごまを買ってきて使いましょう

それでも作る時間がない! という人は、市販されている「冷や汁の素」もおすすめです。お豆腐やきゅうりがあれば、すぐに冷や汁を味わうことができますよ。

6. ちょっと気になる冷や汁の温度~どれくらい"冷や"なの?~

ところで、冷や汁といっても、実際にはどれくらいの「冷やしっぷり」なんでしょうか?

真夏には氷を浮かべた冷や汁の写真が出回ることもあり、キンキンに冷えたイメージがあるかもしれませんが、実は時期によってはそこまで冷やさなくても良いそうです。「ぬるい」くらいの冷や汁でも、その時の気候にマッチし、何より自分が美味しいと感じられることが重要なんだとか。

一方、ご飯のほうの温度はというと、これも決まりはないようです。ホカホカの炊き立てご飯に合わせれば「ひやあつ」の冷や汁定食、あるいはご飯もちょっと冷ましたら「ひやひや」になりますね。お好み次第です。冷や汁の温度に正解はなし。身体が喜ぶ温度で冷や汁を召し上がってください。

7. 本場の冷や汁はどこで食べられる?

もともと冷や汁は、宮崎市を中心とした宮崎平野でよく食べられ、伝わってきました。そのため、宮崎県でも宮崎市外では、専門店はあまり見かけません。本場の冷や汁が食べたいときは、宮崎市内で探すことがおすすめです。

8. 冷や汁がおいしい宮崎県のお店

冷や汁
<出典元:写真AC

宮崎市内で、アクセスがよく冷や汁の評判が高いお店を紹介します。

ふるさと料理 杉の子

昭和45年創業の老舗和食店の「杉の子」は、宮崎の冷や汁を全国区に広めた立役者ともいえるお店です。宮崎の自然素材にこだわり、冷や汁やチキン南蛮、地鶏炭火焼などの定番グルメのほか、伊勢海老や和牛などのハイグレードな食事までオールマイティに楽しむことができます。

店内には、洋室、和室ともに個室を備え、人数やシーンに応じて使い勝手の良いお店です。宮崎市のメインストリートである橘通りに立地しており、アクセスも便利です。

おもてなし 夢かぐら

時間がなくて、郷土料理を食べられないまま、帰りの飛行機の時間になってしまった!そんなときの強い味方が、宮崎ブーゲンビリア空港ビル3階にある「夢かぐら」。冷や汁は、定番のものから海鮮冷や汁、トロピカル冷や汁など、種類も豊富。その他の郷土料理も充実しており、初めての人からリピーターまで大満足することは間違いなしです。

夕方にもなると、滑走路を眺めつつ美味しい料理を食べながら飛行機を待つ旅行客でいっぱいになるこのお店、旅の予定に加えてみてはいかがでしょうか。

  • 住所:宮崎市赤江 宮崎空港内 レストラン街

南風茶屋

南国宮崎の雰囲気を味わいながら冷や汁を食べるなら、ここ南風茶屋が一押し! 海も見える店内は50席とゆとりがあり、市内から青島海岸、鬼の洗濯岩、鵜戸神宮といった名所へ行く際に立ち寄るのにも便利です。

うどんも美味しいお店なので、ここでは冷や汁をうどんにかけて味わうのもおすすめ。また、チキン南蛮などほかの郷土料理とのセット定食もあり、豊かな宮崎の味めぐりを一度に楽しむことができます。

  • 住所:宮崎市内海3510-1

ふじ木

宮崎市でも指折りの和食の名店といわれるふじ木ですが、店内の雰囲気は家庭的で落ち着けると評判です。一方、料理は本格派で、特に魚料理へのこだわりはピカイチなので、魚を使った冷や汁のクオリティの高さもいわずもがなです。

地元の人も多く通うふじ木は、どの料理もハズレがないといわれているので、コースなどで宮崎料理全般を味わい、締めを冷や汁にすれば、大満足の食事となることでしょう。

  • 住所:宮崎市千草町1番2号 ABC90ビル2階
  • HP:ふじ木

9. 冷や汁と合わせて食べたい宮崎の郷土料理グルメ

年間平均気温が17度と、とても温暖な宮崎県。日照時間、降水量ともに多く、作物の成長のために必要な条件がそろっています。加えて海の幸も豊富で、美味しいものには事欠きません。せっかく宮崎に行くなら、冷や汁とともに味わってほしいグルメを紹介します。

チキン南蛮

チキン南蛮
<出典元:写真AC

鶏の胸肉(またはモモ肉)に小麦粉をふり、卵をからめて揚げたものに、甘酢とタルタルソースをかけていただくチキン南蛮。もはや全国区の人気者であるこのメニュー、もともとは宮崎県のとある飲食店が開発したものだとされており、発祥地である宮崎県では至るところでお目にかかることができます。あっさりした冷や汁との相性も抜群です。

地鶏炭火焼

宮崎地鶏
<出典元:写真AC

小さめに切った地鶏に塩こしょうで味をつけ、炭火でこんがり焼きます。直火で焼くため、焼き上がりの鶏は真っ黒になってちょっとビックリするかも? しかしこれが美味しさの秘訣なのです。炭火を使うことで、まるで燻製のような独特の風味が広がります。宮崎県を代表する地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」の炭火焼をぜひ試してみてください。

マンゴースイーツ

マンゴー
<出典元:写真AC

南国宮崎は、まさにフルーツ王国! いちご、日向夏、メロン、パパイヤと様々なフルーツが栽培されていますが、中でも特筆すべきはマンゴーです。黄金色のマンゴーは4月~8月くらいまでがシーズン。パフェ、ジュース、かき氷などあらゆるマンゴースイーツが楽しめますので、冷や汁を楽しんだあとのデザートにぜひ食べていきましょう。

その他、宮崎牛、伊勢海老、宮崎ラーメン、うどんなど、美味しいものにあふれた宮崎県でグルメを堪能してください。

10. 宮崎以外で冷や汁を食べたい! 東京近郊の冷や汁がおいしいお店

ぜひ本場の宮崎で食してもらいたい冷や汁ですが、九州までは遠いという人のために、東京で本格的な冷や汁が食べられるお店を紹介します。

宮崎料理 万作

木の香り漂う、高級感ある店内ではコースでもアラカルトでも楽しめるあらゆる宮崎料理をそろえています。食事の締めにはぜひ冷や汁をさらさらと。

魚山亭

渋谷駅からすぐの好アクセスにあるお店が魚山亭。お店の名前は「ぎょっさんてい」と読み、名前の通り、「宮崎の美味しいものがぎょっさん(たくさん)ある」という意味だそう。ランチでは冷や汁とチキン南蛮が人気。夜もちょっと贅沢な居酒屋として楽しめます。

  • 住所:東京都渋谷区道玄坂2丁目23-12 フォンティスビル 2F

宮崎風土 くわんね Quwanne

東京から宮崎県の情報を発信するアンテナショップに併設するレストランで、宮崎の郷土料理を味わうことができます。宮崎県産の「飫肥杉(おびすぎ)」でしつらえられた店内は自然光が入り、気持ちもゆったり。店内ではあらゆる宮崎県の名産品も買えますので、旅行気分でお立ち寄りください。

地元で採れる食材を生かし、暑さを乗り切るために工夫された冷や汁には、先人の知恵や想いがたくさん詰まっています。その歴史や調理法などを知ると、より楽しく、美味しく食べられるのではないでしょうか。特に、宮崎県への観光に出かけられたら、ぜひ現地で良いお店を見つけてローカルの空気に触れながら冷や汁を味わってみましょう。

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