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しっぽくうどんって何? 歴史や具材、作り方、香川の有名店まで紹介
「しっぽくうどん」は、うどんの聖地・香川県の郷土料理。おもに秋から冬にかけて食べられる、心も身体も温まるうどん料理です。とはいえ、食べたことがないとなかなかイメージがわきにくい人もいるのではないでしょうか。
そこで「しっぽくうどん」とはどのようなものか、名前の由来や定番の具材なども交えて解説。さらに、おいしい「しっぽくうどん」が食べられる香川県の人気店もご紹介します。
目次
<2. 漢字だと「卓袱」? 「しっぽくうどん」という名前の由来>
<10. 讃岐うどんには「しっぽくうどん」以外にどんなメニューがある?>
1. 「しっぽくうどん」は香川県の郷土料理
<出典元:写真AC>
「しっぽくうどん」とは、うどん県・香川県の郷土料理。おもに冬野菜が出回る秋から冬にかけて食べられ、ゆでたうどんの上に、数種類の季節の野菜と油揚げを煮込んだ「だし」をかけたものです。「けんちん汁をうどんにかけたもの」というとイメージしやすいでしょうか。
だしには煮干しが使われることが多いですが、カツオや昆布を使うこともあり、家庭や店によってさまざまです。
野菜の甘みやうまみに油揚げのコクが加わり、寒い時期に食べると身も心も温めてくれる「しっぽくうどん」。素材そのものの風味が引き出された素朴で優しい味わいは、寒い冬、毎日でも食べたくなるほど飽きのこないメニューです。
香川県の一般家庭では来客時の食事として出されたり、年越そばのかわりに食べられたりすることも。飲食店では、秋から冬にかけての期間限定メニューとして登場することが多くなっています。
2. 漢字だと「卓袱」? 「しっぽくうどん」という名前の由来
「しっぽく」と聞いて、「変わった名前だなぁ」という人もいれば、長崎の卓袱料理(しっぽくりょうり)を思い出す人もいるのではないでしょうか。
そもそも「卓袱」とは、「中国風の食卓」または「その食卓にかける布」を指します。長崎の卓袱料理は、朱塗りの円卓(卓袱)の上に並んだ大皿料理を、好きなように小皿にとって食べるスタイル。「和(日本)」「華(中国)」、「蘭(オランダ)」のテイストが融合した、長崎ならではのおもてなし料理・宴会料理です。
実際のところ、「しっぽくうどん」の「しっぽく」は、長崎の「卓袱料理」と関係があるのでしょうか?
「しっぽくうどん」の「しっぽく」を漢字で書くと「卓袱」。つまり、長崎の「卓袱料理」と同じです。長崎の卓袱料理の中に、何種類もの具材がのった麺料理があったことから、色々な具がのったうどんが「しっぽくうどん」と呼ばれるようになったといわれています。
3. 「けんちんうどん」や「五目うどん」は同じもの?
香川県の「しっぽくうどん」を目にすると、「けんちんうどん」あるいは「五目うどん」と似ていると感じる人もいるかもしれません。「しっぽくうどん」はこれらと同じものなのでしょうか。
「けんちんうどん」はうどんに「けんちん汁」をかけたものですが、「けんちん汁」はもともと鎌倉の建長寺で生まれたといわれる精進料理の一種。大根、にんじん、ごぼう、里芋、豆腐などの具材をごま油で炒め、だしを加えて煮込んでから、醤油で味を調えて作るのが一般的です。
「しっぽくうどん」は大根、にんじん、里芋、油揚げなどが使われることが多いものの、「必ず○○をいれなければならない」という決まりがあるわけではありません。野菜と油揚げに加えて、鶏肉などを入れることもしばしばあります。
「けんちん汁」は精進料理なので、本来お肉は入れませんが、現在では鶏肉や豚肉を使った「けんちん汁」もよく食べらています。つまり、「けんちんうどん」と香川の「しっぽくうどん」を明確に区別するのは困難で、「しっぽくうどんはけんちんうどんの一種」だと言う人もいます。
一方、「五目うどん」は鶏肉、かまぼこ、ほうれん草、しいたけなどさまざまな具を入れたうどん。鶏肉やかまぼこ、ほうれん草が使われることが多いものの、「五目うどん」の具材は作る人によって多種多様だという特徴があります。「けんちんうどん」や「しっぽくうどん」も、家庭ごとあるいは店ごとにさまざまなアレンジが加わるため、具材で明確に区別するのは難しいことも。
「けんちんうどんは根菜が多い」といった特徴はありますが、「しっぽくうどん」「けんちんうどん」「五目うどん」、三者の境界はあいまいだといえるでしょう。
4. 京都にも「しっぽくうどん」がある?
<出典元:写真AC>
香川県の郷土料理として知られる「しっぽくうどん」ですが、実は京都にも「しっぽくうどん」があります。ただし、使用する具材が異なるため、見た目の印象はずいぶん変わってきます。
お店や家庭によって異なりますが、京都の「しっぽくうどん」は、しいたけやゆば、かまぼこ、板麩、三つ葉などを使い、見た目も味も上品に仕上げているのが特徴。お店によっては、タケノコやほうれん草、卵焼きなどを入れることもあります。
京都にも独特の「うどん文化」があるので、機会があれば香川と京都の「しっぽくうどん」を食べ比べてみるのもいいのではないでしょうか。
5. 「しっぽくうどん」で定番の具材とは
前述の通り、香川県の「しっぽくうどん」は、おもに寒い時期に食べられる郷土料理。そのため具材は、大根、にんじん、里芋、ごぼうなどの根菜類に、油揚げやねぎを加えるのが一般的です。
そのほか、シイタケや豆腐、鶏もも肉や豚バラ肉などを入れることも。香川県の「しっぽくうどん」は、「○○を入れなければならない」「○○を入れてはいけない」という決まりはないので、家にある食材や好みに合わせてさまざまなアレンジが可能です。
野菜だけでなく、豆腐やお肉を入れることでたんぱく質もしっかり摂れますし、ボリュームもアップしますね。
お店で食べる場合、店ごとに具材やレシピが異なるので、色々な店で「しっぽくうどん」を食べ比べてみたくなります。
6. 香川県がうどん県なわけ
<出典元:写真AC>
「しっぽくうどん」が食べられる香川県は、名実ともに日本ナンバーワンの「うどん県」。日本で最も面積が小さい県でありながら、うどん屋さんの数は全国一を誇っています。
「讃岐」(さぬき)うどん」が全国で最も有名なご当地うどんであることは言わずもがなですが、そもそもなぜ香川県が「うどん県」なのかご存じでしょうか。
香川県でうどんの生産や消費が盛んになった背景に「気候」があります。瀬戸内海に面した香川県は、日本で最も雨が少ない地域のひとつ。大量の水を必要とする米作りには適さないため、うどん作りに欠かせない小麦の栽培が盛んになりました。
また、香川県を含む瀬戸内地域は、うどんを打つときに必要な塩の生産にも適した土地。江戸時代には全国トップクラスの塩の生産地となり、今も伝統的な塩作りが受け継がれています。
このように、香川県はうどんの材料の生産に適した気候・風土であったことから、うどんの生産や消費が活発になったのです。小豆島を中心に、讃岐うどんに欠かせないしょうゆの生産が盛んであることも、香川県の「うどん文化」に一役買っています。
7. 「しっぽくうどん」の作り方~基本のレシピ~
うどん県・香川の背景を知ると、ますますうどんが食べたくなるというもの。ここで、「しっぽくうどん」の基本の作り方をご紹介しましょう。
材料(2人分)
- うどん:2玉
- 鶏もも肉:60g
- 大根:80g
- にんじん:30g
- 里芋:2個
- 油揚げ:2分の1枚
- ねぎ:適量
- 煮干しだし:4カップ
- しょうゆ:大さじ1.5
- みりん:大さじ1
- 酒:大さじ1
- 塩:少々
作り方
- 具材を食べやすい大きさにカットする(油揚げは必要に応じて油抜きをし、里芋は皮をむき、塩もみした後、水洗いしてぬめりを落としておく)
- 鍋に煮干しだしと根菜、油揚げを入れて火にかけ、沸騰したら鶏肉を加える
- 弱火で根菜が柔らかくなるまで煮たら、調味料をすべて加えて味を調える
- うどんをゆでて器に盛り、3のだしを具ごとうどんにかける
- ねぎをトッピングしたらできあがり
うどんとはいえ、具材をたっぷり入れた「しっぽくうどん」はそれだけで一食分に。アクセントに七味唐辛子をかけるのもおすすめです。
もっと簡単に「しっぽくうどん」を作りたい場合は、上記で紹介した調味料をめんつゆに置き換えて作ることもできます。鶏肉のかわりに豚肉を入れる、豆腐を入れるなど、自分なりのアレンジを楽しんでみてもいいでしょう。
8. 「しっぽくうどん」がおいしい香川県のお店
「せっかくならお店で食べたい」「現地で食べたい」という人のために、香川県にある「しっぽくうどん」がおいしいお店もあわせてご紹介します。
今回ご紹介するお店に限らず、「しっぽくうどん」は冬季限定メニューとして提供されることが多いので、訪れる際は時季にご注意ください。
上野製麺所
高松市円座町にある「上野製麺所」は、香川県内でも屈指の人気を誇るセルフ形式のうどん屋さん。お客さんの9割が常連客だといい、うどんにうるさい地元客から厚い支持を集めているお店です。
「しっぽくうどん」は、季節限定メニューとして提供。具材は大根、金時にんじん、ごぼう、里芋(セレベス)、椎茸、油揚げ、鶏肉の7種類で、できるだけ香川県産のものを使うようにしているそうです。
野菜の甘みと鶏肉のうまみが混じり合った上野製麺所の「しっぽくうどん」は、常連客も待ちわびる逸品。見た目の彩りも豊かで、お腹も心も満たされます。
- 住所:香川県高松市円座町2289-3
- 公式サイト:上野製麺所
手打ちうどん 上田
「手打ちうどん 上田」は香川県高松市、ことでん太田駅前にあるセルフスタイルのうどん屋さん。昔ながらの製麺所の雰囲気を大切にしていて、のどごしの良いコシのあるうどんは、地元ファンに長く愛されています。
「手打ちうどん 上田」でも、やはり「しっぽくうどん」は冬季限定のメニュー。大根やにんじん、牛肉、ちくわと、具材たっぷりにもかかわらず低価格で「他店とは一線を画す」と称賛されています。
「しっぽくうどんを食べるならここ!」という人も多く、非常に人気が高いため、昼前に売り切れることも。「しっぽくうどん」がお目当てなら、早めの来店がおすすめです。
- 住所:香川県高松市太田上町763-3
- 関連サイト:手打ちうどん 上田(食べログ)
手打ちうどん ひさ枝
「手打ちうどん ひさ枝」は、2016年3月に高松市郷東町にオープンしたセルフスタイルのうどん屋さん。讃岐うどん店としては珍しく「替え玉」を出すお店としても知られています。
看板メニューは、伊吹島産のいりこを使って伝統的な製法で作られるだしと、モチモチした弾力を追求した麺のおいしさがシンプルに味わえる「かけうどん」。
季節限定で提供する「しっぽくうどん」も密かな人気を集めています。大根、にんじん、里芋、しいたけ、ごぼう、鶏肉、こんにゃく、油揚げなど具材たっぷりで、滋味あふれる素材の味が楽しめますよ。
ほかにも、「牡蠣うどん」に「松茸うどん」など、季節ごとに限定のうどんが登場するので、いつ行っても旬の食材を使ったうどんが味わえます。
- 住所:香川県高松市郷東町796-53
- 関連サイト:手打ちうどん ひさ枝(食べログ)
9. 香川県以外でしっぽくうどんを食べるには
「しっぽくうどんを食べてみたいけど香川県は遠い...」という人もいることでしょう。香川県まで行かなくても「しっぽくうどん」を食べる方法はあるのでご安心を。以下の3つの方法から、自分に合った方法を選んでみてください。
自分で作って食べる
ひとつは自分で作って食べる方法です。「『しっぽくうどん』の作り方~基本のレシピ~」で紹介した通り「しっぽくうどん」の作り方はとっても簡単。使う具材にもよりますが、1食300円前後で作れる、お財布に優しいメニューでもあります。
具材は、必ずしも基本のレシピで紹介したものでなくてもOK。冷凍うどんを常備しておけば、家にある野菜やお肉などで簡単に作って食べることができます。
通販やお店で買って食べる
2つ目は、通販や店舗で購入して食べる方法です。スーパーなどで冷凍の「しっぽくうどん」が販売されていることもあるので、「自分で作るのは面倒」という人は1度チェックしてみては。
「近くにしっぽくうどんを売っているお店がない」という場合は、ネット通販などを利用すれば確実に手に入ります。大手ショッピングサイトでは、そのまま鍋に入れて加熱するだけで食べられる、冷凍の「しっぽくうどん」も販売されています。
お店で食べる
「やっぱりお店で食べたい」という人は、近くに香川風のしっぽくうどんを出すお店がないか、探してみましょう。「讃岐うどん」をうたっているお店を中心に、香川県以外でも「しっぽくうどん」を出している店があります。
香川県外のお店で食べる場合も、やはり期間限定メニューとして出されることが多いので、お店で「しっぽくうどん」を食べたいなら、秋から冬にかけてが狙い目です。
10. 讃岐うどんには「しっぽくうどん」以外にどんなメニューがある?
「しっぽくうどん」が食べられる香川県は、名実ともに日本一のうどん県。「しっぽくうどん」以外にもさまざまな種類のうどんがあります。
香川県民が日常的に食べているうどんは、麺とだしのおいしさをダイレクトに味わえるシンプルなものが中心。「しっぽくうどん」だけでなく、讃岐うどんの基本的なメニューもおさえておきましょう。
かけうどん
讃岐うどんの最もシンプルなスタイルが「かけうどん」。麺にだしつゆをかけたベーシックなうどんで、ねぎや天かすなどをトッピングして食べます。鶏肉や野菜、練り物などの天ぷらと一緒に食べる人も多いです。
ぶっかけうどん
「ぶっかけうどん」は、冷水で締めたうどんの上に、濃いめのつけだしを直接かけたもの。ねぎや大根おろしなどのトッピングと混ぜて食べるのが定番です。
ざるうどん
冷水で締めたうどんをざるの上に盛り、つゆに付けて食べるのが「ざるうどん」。ねぎやしょうが、ごまなどが薬味として添えられることが多いです。
釜玉うどん
<出典元:写真AC>
讃岐うどんブームですっかり全国区となったのが「釜玉うどん」。茹でたての麺に生卵を絡め、だししょうゆをかけて食べる讃岐うどんの定番です。お好みでねぎやかつお節などをトッピングしていただきます。
生じょうゆうどん
香川県らしさ満点の「生じょうゆうどん」は、冷水で締めたうどんの上に直接だししょうゆをかけて食べるスタイル。大根おろしやねぎ、ごまなどの薬味が定番のトッピングとなっているほか、すだちを絞っていただくこともあります。
肉うどん
<出典元:写真AC>
うどんの上に甘く煮た牛肉をのせたものが「肉うどん」。ねぎなどのトッピングのほか、牛肉と一緒に玉ねぎを煮ることもあります。
香川県で「しっぽくうどん」を食べるなら、ほかの種類のうどんにもトライして、讃岐のうどん文化に触れてみたいものですね。
「しっぽく」にまつわるさまざまなエピソードを知れば、「しっぽくうどん」を食べるのがもっと楽しくなりそう。冬の香川に出かける際は、観光の合間に「しっぽくうどん」を食べて、身体を暖めてはいかがでしょうか。
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