

夏の夜、かがり火のほのかな明かりに照らされ、編み笠や黒い頭巾で顔を隠した踊り手たちが、ゆったりと舞います。秋田県羽後町で毎年開催される「西馬音内盆踊り」は、約700年の歴史を持つ伝統行事。
華やかな「端縫い」の衣装や優雅な踊り、独特の囃子と歌声が重なり、まるで別世界に迷い込んだような幻想的な雰囲気を味わえます。
今回は、西馬音内盆踊りの魅力と、歴史ある建物を再生した「盆宿U」で過ごす、西馬音内をめぐる旅をご紹介します。
目次
約700年の歴史を受け継ぐ西馬音内盆踊り
秋田県羽後町西馬音内地区で開催される西馬音内盆踊り。徳島県の阿波おどり、岐阜県の郡上おどりとともに「日本三大盆踊り」の1つに数えられ、1981年には国の重要無形民俗文化財に指定され、さらに2022年に「風流踊(ふりゅうおどり)」の1つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
起源には諸説あり、豊作祈願の踊りと、戦国時代に滅亡した城主を慰める踊りが合わさったとも伝えられています。地域の人々によって、長い年月をかけて受け継がれてきた伝統です。
毎年8月16日から18日までの3日間、西馬音内本町通りを会場に開催されます。2026年は、16日・17日は19時30分から22時30分、最終日は23時まで行われました。
前半は子どもたちが中心となり、21時ごろから大人の踊り手が増えていきます。日が暮れるにつれて、昼間とはまったく違う表情を見せる西馬音内の町。囃子が聞こえ、踊り手が1人、また1人と輪に加わると、通りは次第に盆踊りの世界へと変わっていきます。
編み笠と端縫いの衣装が生み出す幻想的な世界
西馬音内盆踊りの大きな魅力は、踊り手たちの衣装です。女性が身につける「端縫い(はぬい)」は、さまざまな古い絹布を縫い合わせて仕立てた着物です。家々で大切に受け継がれてきた布が使われることもあり、色や柄の組み合わせは1枚ごとに異なります。
藍染めの浴衣も、西馬音内盆踊りを代表する衣装の1つです。そして、もう1つ目を引くのが、顔を覆う「編み笠」や「彦三頭巾」です。深くかぶった編み笠や、目元以外を覆う黒い彦三頭巾によって、踊り手の顔はほとんど見えません。彦三頭巾には亡者を表すという伝承もあり、お盆に先祖の霊を迎える行事とも重なって、独特の幽玄な雰囲気を生み出しています。
踊りは大きく「音頭」と「がんけ」に分けられます。笛や太鼓、三味線、鉦などによる囃子に歌声が重なり、踊り手は流れるような動きで輪の中を舞います。特に目を引くのが、手や指先の繊細な動きです。
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<力強い囃子と、優雅で流れるような踊りの対比が、西馬音内盆踊りの特徴>
大きく腕を振るのではなく、しなやかに手を動かしながら、ゆっくりと進んでいきます。ほのかな明かりの中で白い手がふわりと動く姿は、現実とは思えないほど印象的でした。
羽後町観光物産協会
- 所在地:秋田県雄勝郡羽後町西馬音内字中野200
- 電話:0183-55-8635
- 公式サイト:羽後町観光物産協会
180年以上の旧家を再生した「盆宿U」
西馬音内盆踊りを訪れるなら、町に泊まって、その土地の空気もじっくり味わいたいもの。そこで訪れたいのが「盆宿U(ぼんやどゆう)」です。
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<藍染めがテーマのメゾネットルーム>
盆宿Uは、羽後町西馬音内にある180年以上の歴史を持つ旧家「柴与家」をリノベーションし、2025年4月にオープンした泊まれる文化交流施設です。西馬音内盆踊りをテーマに、宿泊だけではなく、サウナやカフェ&バー、地域の人も利用できるコミュニティスペースなどを備えています。
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<端縫いがテーマのメゾネットルーム>
宿泊エリアでは、秋田県南地方に特徴的な「内蔵」を生かした客室に泊まることができます。客室は4タイプあり、それぞれ西馬音内盆踊りにちなんだテーマが設定されています。
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<バンクドミトリールーム>
ひとり旅なら、ドミトリールームも選択肢の一つ。ボックスタイプとバンクタイプがあり、旅のスタイルに合わせて選べます。
サウナやラウンジで西馬音内の文化を楽しむ
盆宿Uのもう一つの特徴が、「bon-sauna U」です。かつて資材庫として使われていた蔵を改装したフィンランド式サウナで、西馬音内盆踊りの世界観を取り入れているそうです。
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<サウナ入口には旧柴与家の家紋と屋号の入ったのれん>
サウナ室では西馬音内盆踊りのお囃子が流れ、編み笠や藍染めの浴衣をイメージしたオリジナルのサウナハットやウェアも用意されています。西馬音内の地下水を使った水風呂もあり、地域の自然を感じながらサウナを楽しめるのも魅力です。
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<パブリックラウンジ>
かつて米蔵だった建物は「lounge U」に生まれ変わり、カフェ&バーや本、レコードなどを楽しめるパブリックラウンジになっています。母屋には「commons U」というコミュニティスペースも設けられ、展示やイベント、ワークショップなどに活用されています。
盆宿U
- 所在地:秋田県雄勝郡羽後町西馬音内字本町47番地
- 電話:0183-56-7615
- 定休日:水・木曜
- 公式サイト:盆宿U
まとめ
約700年にわたり受け継がれてきた西馬音内盆踊り。華やかな端縫いの衣装、顔を覆う編み笠や彦三頭巾、優雅な踊り、そして西馬音内ならではの歌声。さまざまな要素が重なり合い、夏の夜にしか出会えない幻想的な風景をつくり出しています。
そして、その余韻を味わいながら泊まりたいのが盆宿Uです。旧家を再生した宿で過ごすことで、西馬音内盆踊りを「見る」だけではなく、その土地の暮らしや文化にも目を向けられます。
踊りの輪を眺めるだけでは終わらない。西馬音内の町に泊まって、ゆっくりとその魅力を味わう旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
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ふきのとう編集室
- 秋田県在住のフリーライター。田舎のくらしや人とのつながり、土地のごはんや文化を、やわらかな視点で切り取った記事を執筆しています。“人に会いに行きたくなる”、そんな旅のきっかけを届けられたらうれしいです。
































