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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~富山への旅(初めての富山県)
<TOP画像:新千歳空港から富山きときと空港へ。宿泊するホテルで最初に食べたランチは特産のシロエビを使ったパスタ>
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回はいつもとは違って、富山の野菜ソムリエ仲間からお声がけいただいた「富山のミリョクに出会う」旅をしました。
目次
旅のきっかけ
私が去年、北海道の南西部に位置する厚真町(あつまちょう)の旅をお誘いした野菜ソムリエ仲間から「富山もすばらしいところよ」と、1年前からお声がけされていました。
富山は北海道とは繋がりのある県。その前の江戸時代、「北前船」という日本海や北海道の港から江戸や大坂(大阪)へ、米や魚などが船で運ばれていました。
江戸時代から明治時代にかけ、富山県東岩瀬では多くの商人が北前船交易で財を成したといいます。1878年に建築された旧森家住宅は、その代表的な北前船主・廻船問屋の家です。
<東岩瀬にある北前船のブロンズ像>
150年ほど前までは、先住民のアイヌの人々が生活していた北海道。開拓という形で、日本各地から多くの人が移住して開墾されていきました。
北海道になじみのある富山からも多くの人が移住してきました。私の祖先もその1人です。
自分が生きているうちに富山にも行きたい。そのきっかけをいただきました。
コンパクトシティを実感
富山県は、南北にのびる日本列島の中心、本州の中央北部に位置しています。
東京からは北陸新幹線で2時間ちょっと、大阪からは3時間ちょっとで富山市に到着します。富山駅は新幹線や市電の乗り場がひとつにまとまっていて便利。
三方を北アルプス立山連峰など急峻な山岳地帯に囲まれ、深い湾を抱くように大きく平野が広がる、まとまりのよい地形をしています。富山市から県内各地へは、ほぼ1時間圏内で移動できます。そこがコンパクトシティと言われる所以です。
<山々に囲まれているのがわかる、ホテル最上階から見た富山駅周辺>
富山を大きく分けると、北側が「海・平野部」で、南側が「山・山間部」という地形になっているそうです。
北側にある富山湾は「天然のいけす」と称されるほどの魚介の宝庫。寒ぶりやシロエビ、ホタルイカなどが水揚げされ、漁港から港までの距離が近いので、魚売り場には新鮮で豊富な種類の魚が並びます。
急峻な河川の流れが作った富山平野では米作りが盛んに行われています。南側の方には自然豊かな里山が広がっており、そこでもすばらしい営みが行われていました。
里山とともに生きる人たち
今回一番印象に残り、一番ご紹介したいのが、富山市土という場所にある「土遊野農場」です。
『土と遊ぶ野原のように。五感で"生きていること"を実感できる里山、いただく命と食べてくださるパートナーに「ありがとう」。この支え合う農の営みを、次世代にも繋げていきたい。
土遊野(どゆうの)では農薬・化学肥料を一切使わず、人にも環境にもやさしい作物を育てています。家畜と農作物を同時に育てることで、農場内での自然な循環が成り立つような仕組みを作っています。』
<緑が濃い森の間に、段々畑が広がる里山>
「土遊野は、里山をフィールドに持続可能な有畜複合循環型農業に取り組んでいます。ここは、いわゆる"限界集落"。
でも、ここには豊かな四季と土壌があり、みずみずしい森や田畑が残っています。この豊かな土地で、人の支えになる安心して食べられる農産物を育てています」と、2代目経営者の河上めぐみさんは言います。
<里山の入口で、里山の魅力を説明するめぐみさん>
めぐみさんは、両親からよく「種をまき作るところから、食べるところまでが農業」であること、「生産者と消費者じゃない。食べてくれる方は作り手の応援団、パートナー」であることを教えられてきました。この言葉に、私もハッとさせられました。"生産者と生活者をつなげる役割=野菜ソムリエ"であると思って活動してきましたが、もう少し自分の軸を変えないといけないと気づかされました。
養鶏の発酵鶏糞堆肥は田畑に送られ、野草や飼料米を鶏の餌にする。この繰り返しで有機物を土壌に還して循環のサイクルが完成します。
平飼い鶏舎の目の前で産み落とされた卵。産みたくなったら自ら産卵箱に入って産むそう。「土遊野」では、卵の出荷だけではなく、肉も提供しています。以前は業者に委託していましたが、今は、最後まで命としてつなぎたいと思い、自ら解体して出荷するところまで一貫して行っています。
お話を聞きながら、私たち人間は地球の生き物の一員に過ぎず、今、その場所を使わせていただいて生きているのだと再確認。温暖化だからとか、海が汚れているとかそういう次元でなく、"使わせてもらっている"のだからていねいな生活をする必要があると反省しました。
めぐみさんたちが作っているのはお米や卵、肉だけではありません。ほかにもいろいろあるので、詳細はこちらを参考にしてください。
土遊野農園
- 住所:富山県富山市土167
- 営業時間:9:00~16:00
- 定休日:土日・祝日
- 公式サイト:土遊野農園
※農場での農産物直接受取りや見学・体験には事前ご予約が必要です
会いたかったマニアックなジャム職人
「はちみつや」でお会いしたのは、ジャムアーティスト「アプリコッコ」の堀井潤子さん。以前に、私がおつなぎした北海道の赤いルバーブを使ってジャムにしてくださいました。
<受賞した金賞の賞状を持つ堀井潤子さん>
はちみつやでは、彼女のジャムも販売されています。国際マーマレード大会で数々の賞を受賞しています。今年もくねぶ&クラフトジンとレモン&ジン、カボス&クロモジが国際マーマレード大会で金賞を受賞されています。
<黄金色に輝くはちみつやのはちみつと透明感のあるアプリコッコのジャムたち>
堀井潤子さんのジャムづくりにはたくさんのこだわりがあります。まずは素材。ジャム用を購入しない。生で食べて美味しくて美しいフルーツを使用しています。また、使用する鍋や素材を洗う水、加熱温度など想像を越えるこだわりで溢れています。
<私が購入したのはコレ。カカオニブとキルシュを合わせたというところに心が惹かれました>
はちみつや
- 住所:富山県富山市茶屋町206
- 営業時間:10:00~16:00
- 営業日:土・日
- 公式サイト:はつみつや
>>堀井潤子さん「アプリコッコ」のInstagramはこちら
今回の旅は野菜ソムリエが多数参加
今回の旅は、15名を超える野菜ソムリエが参加したツアーになりました(最初はそんなに多くなかったのですが、蓋を開けたらすごい人数に)。
北海道の私、岩手、茨城、東京、神奈川、山梨、金沢、富山、福井、滋賀、大阪、徳島、福岡、熊本、沖縄から。これも、コンパクトシティがなせる業でしょうか。
学びの場も美味しいものを食べる時も、今回は大人数。
<初日、野菜ソムリエがホテル集合!>
旅を終えて、ちょっと時間を置いて感じたことは、同じものを共有する、感動する、共鳴する、反芻する、余韻に浸る、伝える、時間をおいてお取り寄せする...。
1人で旅する時とは異なる共鳴する感動。たまにはこういう旅もいいですね!
2日目のランチは、地元産、県内産食材を使った「食堂NOGI」へ。野菜ソムリエが経営しているだけあって、テーブルに運ばれた料理を見て大きな歓声!
<体が喜ぶ美しいランチ>
たくさんの食材と美しい盛り付け、多彩な味付けで、体の中から綺麗になるような満足感がありました。お腹に余裕があったらデザートも食べたかった! 野菜や調味料の販売も行なっていましたよ。
食堂NOGI
- 住所:富山県富山市開ヶ丘43-1
- 電話番号:076-461-5230
- 公式サイト:食堂NOGI
2日目には忙しい!前述の東岩瀬地区へ。
明治初期に建てられた廻船問屋が立ち並んだノスタルジックで静かな街並みが続いています。その中で私たちが入ったのは、歴史的建造物をブルワリーにした「KOBO Brewery」。
<昔の人はここがブルワリーになるとは思ってもいなかったでしょうね>
10種類もあるクラフトビールから選ぶことが難しくて、私は4種類が飲めるテイスティングセットにしました。
<みんなで飲み比べをしたので、結果的にはいろいろ飲みました!>
KOBO Brewery
- 住所:富山県富山市東岩瀬町107-2
- 営業時間:11:00~18:00
- 定休日:火曜日
- 公式サイト:KOBO Brewery
夕食は、和食の「静月」へ。新鮮な日本海や富山の魚料理満載です。お店からノドグロのたたきもサービスしてもらいました。
<ノドグロたたきは初めて食べました>
創菜酒楽 靜月 (せいげつ 静月)
- 住所:富山県富山市新桜町6-1
- 電話番号:076-411-9898
私のこれまでの富山のイメージは、とにかく「昆布をよく食べる県」、「なんでも昆布締めにする県」。実際、昆布の消費量は常に全国トップクラス。おにぎりにまぶしたり、とろろ昆布をお味噌汁に入れたり、と昆布調理のバリエーションがとにかく豊富です。
<自分用に魚の昆布締めやホタルイカの沖漬けを購入>
おまけ
富山のお隣の福井には同じ野菜ソムリエで青果物ブランディングマイスターがいるため、私は1日延ばして、参加者と別れて金沢へ。「富山とは近いので金沢で飲もうよ」というお誘いがあり、「金沢飲み」しました。
<金沢おでんを突っつきながら飲む!>
金沢おでんを食べ、青果店で加賀野菜なども買い、金沢ブルワリーでビールを飲んで、新幹線で30分もかからず富山に戻りました。
<いつ見てもグラマラスでカッコイイ金沢駅>
そんな副産物のあった富山の旅でした。
改めて、陸続きはいいなー。同じ資格を有しているからこそ、すぐに打ち解ける人たちが全国にたくさんいる、そして学ぶ機会もたくさんできることに感謝です。
>>これまでの「野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~○○への旅」はこちらから
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。