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ディーンヴィレッジ:世界遺産の美しい街エジンバラの最も絵になる村
エジンバラという街をご存知ですか?
エジンバラは英国のスコットランドの首都です。街に着くと、街の真ん中の岩山に聳え立つエジンバラ城がまず目に飛び込んできます。歴史的建物が街中にあり、どこを歩いても絵になる美しい街です。
エジンバラ城を中心とする中世の旧市街と、18世紀に計画的に建設された都市計画の最高傑作と言われるジョージアン様式の建物と庭園が、整然と配置された新市街は、1995年にユネスコの世界遺産に登録されています。
<エジンバラ城>
毎年8月には、世界的な音楽家やダンサーが集うエジンバラ・インターナショナル・フェスティバルを中心に、ブック・フェスティバル、フリンジ・フェスティバルが開催され、世界中から多くの観光客が訪れます。
そんなエジンバラの街の北西の入り口にある小さな村、ディーンヴィレッジ(Dean Village)が、最近エジンバラの最も絵になる美しい村として、人気になっています。
ディーンヴィレッジは、つい最近までエジンバラの住民の中でも知る人ぞ知る場所で、ガイドブックに載ることはありませんでしたが、YouTuberやインスタグラマーの中で絶景スポットとして人気急上昇中です。
目抜き通りから徒歩5分の場所にある静かな歴史的な美しい村、ディーンヴィレッジをご紹介します。
目次
ディーンビレッジとは
<ディーンヴィレッジの美しい田舎風景>
ディーンビレッジは、エジンバラの目抜き通りのプリンシズストリートから北西へ徒歩5分の谷にある小川(Water of Leith)沿いの歴史的な集落です。石畳の道に穀物製粉所や石作りの家屋が小川沿いに立ち並ぶ昔ながらの田園風景が広がっています。静かな狭い石畳の道を歩いていると中世の街に迷い込んだような気持ちになります。
【ディーンヴィレッジ(Dean Village)】
- 住所:Dean Path, Edinburgh EH4 3AY
- 公式サイト:ディーンヴィレッジ
ディーンヴィレッジの歴史
ディーンヴィレッジ(Dean Village)の名前は、深い谷を意味するデーン(Dene)に由来しています。
ディーンヴィレッジの歴史は1145年のデイヴィッド1世の時代まで遡り、デイヴィット1世が穀物製粉所を所有していたという記録があります。
そして19世紀になりエジンバラに組み込まれるまで、800年以上穀物製粉所の村として独自に栄えていました。ウォーター・オブ・リース(Water of Leith)の流れを利用して11以上の製粉所が稼働し、エジンバラの街の全てのパン屋に小麦を供給していたそうです。
製粉所は今は稼働していませんが、狭い石畳の道、石臼、パン屋の使うオーブンシャベルの掘られた石碑、かつて製粉所だった家などの建築物など、昔ながらの景色がディーンヴィレッジに残されています。
ディーンヴィレッジの見所
ウェルコート(Well Court)
<ウェルコートの中庭>
ディーンヴィレッジで最も印象的な建物はウェルコートです。2007年にエジンバラ世界遺産の助けを借りて復元された、村で最も象徴的な建物です。
ウェルコートは、スコッツマン新聞のオーナーであったジョン・フィンドレイ卿によって1880年代に、ディーンヴィレッジの労働者のためのモデル住宅として委託建設され、建築家シドニー・ミッチェルが設計したヴィクトリア時代の建物です。
ウェルコートは、共同ホール、広い中庭、個々のアパートに台所そして仕事場のある快適な集合住宅ですが、 夜間外出禁止令があり、共同ホールで開催される日曜日の宗教集会への出席が義務付けられていたそうです。
一説によると、この時期のディーンヴィレッジはスラム街のようで、峡谷の上にあるフィンドレイ卿の自宅から見える景色を良くするために、ディーンヴィレッジの一角を買い取り、この集合住宅を建てたと言われています。
<ウェルコートの時計塔>
<ウェルコートの入り口>
■建物の特徴
- 建物は赤い砂岩で作られ、飾り額が多く刻まれた4階また5階建ての2・3部屋の集合住宅
- 共同の中庭
- ステンドグラスの丸い窓で飾られたコミュニティーホール
- 時計塔
- 噴水:外からは見えにくいのですが、小川の近くのプライベートガーデンにあり、ベルフォード(Belford)教会の洗礼盤を移したものだそうです
【ウェルコート(Well Court)】
- 住所:Damside, Edinburgh EH4 3BB
- 公式サイト:ウェルコート
ベルズブレイ・ハウス(Bell's Brae House)
<橋の横に建つベルズブレイ・ハウス>
<ホートンバンク・レーンからみるベルズブレイ・ハウス>
ベルズブレイ・ハウスは、1597年に建てられた製粉業者の家です。 建物はベルズブレイ橋の角地にあり、小さな窓と屋根の輪郭が残っています。エジンバラで最も古い人が住む国内の建物の1つで、現在の所有者によって最近拡張され、B&Bとして泊まることができます。
【ベルズブレイ・ハウス(Bell's Brae House)】
- 住所:17 Bell's Brae, Dean Village, Edinburgh EH4 3BJ
- 公式サイト:ベルズブレイ・ハウス
オールド・トールブース(The Old Tolbooth)
<左の建物が黄色の壁が目立つオールド・トールブース>
トールブースとは、スコットランドにあった中世から19世紀の自治体の建物です。ディーンヴィレッジのトールブースは、バクスター組合(Baxter' Incorporation)の穀倉として1675年に建てられました。
バクスター(Baxter)は、古いスコットランド語でパン屋のことで、Baxter's Incorporationはパン屋職人の組合(ギルド)のことです。バクスター組合は、19世紀に蒸気を使った製粉所が主流になるまで、全ての製粉所と穀倉を所有し、エジンバラに小麦粉を供給していました。
<オールド・トールブースの石碑>
建物の出入り口の上には、小麦の束、2つの天使の頭、パイと3つのケーキが載った1対の秤、2つの交差したオーブンシャベルが掘られた石碑があります。碑文には、「神はこの家を建てたエジンバラのバクスターを祝福します(God bless the Baxters of Edinburgh who built this house)」と書かれています。
この穀倉は当時としては大きな建物で、村の他の建物より大きく、17世紀のバクスター組合の繁栄がわかります。 1976年にアパートに改築されています。
ベルズブレイ橋(Bell' s Brae Bridge)
<ウォーター・オブ・リースから見えるベルズブレイ橋>
ベルズブライ通りから、ディーンヴィレッジに入るために、ウォーター・オブ・リース(Water of Leith)に架けられた石の橋です。1643年にバクスター組合によって架けられ、オールド・トールブースで橋を渡る市民から使用料を集金していました。
ベルズブレイ橋は、エジンバラへ渡るために最初に作られたシングルアーチの石橋で、馬車が通るのに十分な幅となっています。その後ディーンブリッジが、ディーンヴィレッジから交通の流れをそらすように建設されるまでは、エジンバラから北西のクイーンズフェリーへ渡る主要な橋でした。そのため、オールド・ディーンブリッジとも呼ばれいます。
ホートンバンク・コテージ(Hawthornbank Cottages)
<黄色の壁が印象的なチューダー調のホートンバンク・コテージ>
ウェルコートの反対岸にあるホートンバンク・レーンに沿って1895年に建てられた2/3 階建てのチューダー調の集合住宅です。黄色の壁、赤い屋根とチューダー調の木の組み込まれた趣のある建築物で、ディーンヴィレッジの景観に色合いを加えています。
ディーンブリッジ(Dean Bridge)
<ミラーロウから見えるディーンブリッジ>
有名なスコットランドのエンジニア、トーマス・テルフォードによって建設され、1831年に完成した4つのアーチ型の石橋です。
ディーンブリッジが建設される前は、西から川を渡ってエジンバラに入る唯一の方法は、ディーンヴィレッジのベルズブレイ橋でしたが、この橋の建設により、ディーン峡谷の上を通ることで街へのアクセスが良くなりました。ウォーター・オブ・リースから106フィート(32m)の高さ、長さ447フィート(136m)、幅39フィート(12m)の大きな石橋です。
<ディーンブリッジはミラーロウから見て聳え立つように建っています>
ミラーロウ(Miller Row)に残るバクスター組合の史跡
オールド・トールブースからディーンブリッジに向かうウォーター・オブ・リース沿いの道ミラーロウを進むと2つの史跡があります。
<3つの石臼>
ディーンブリッジの真下近くのミラーロウ(Miller Row)にある小さな公園に古い3つの石臼(Mill Stones)が重なって置かれています。この公園の場所は、11の製粉所の1つだったリンジーの製粉所(Lindsay's Mill)があった場所で、この3つの石臼は穀物を粉砕するために使用されていたのものです。 石は地域のものではなく、硬度と耐久性のためにフランスから特別に調達されたものということです。
<バクスター組合の紋章の石碑>
リンジーの製粉所の名残として、ベルズブレイ橋からミラーロウへの入り口に石碑があります。石碑に刻まれているのは、バクスター組合の紋章、パンがのったオーブンシャベルです。
ウォーター・オブ・リースとその遊歩道(Water of Leith / Water of Leith Walkway)
<ベルフォード橋からウォーター・オブ・リース遊歩道への入り口のサイン>
ディーンヴィレッジに沿って静かに流れるウォーター・オブ・リースには遊歩道が整備されています。
ウォーター・オブ・リース遊歩道(Water of Leith Walkway)は、スコットランドのバレルノからエジンバラを通りリースまでのウォーター・オブ・リースに沿って整備された12.25マイル(19.6km)の公共の歩道と自転車道で、市民の憩いの場となっています。 ディーンヴィレッジの他にも、スコットランド国立近代美術館や、ディーンギャラリー、オシャレな街として知られるストックブリッジなどの観光スポットにアクセスできます。
<緑深いウォーター・オブ・リース遊歩道>
緑深い渓谷に流れる小川には、多種多様な野生生物が生息しているそうです。川にはマス、アオサギやセキレイ、カワセミなど様々な鳥の見られ、運が良ければ野生のカワウソを見つけることができるそうです。
ウォーター・オブ・リース堰(Weirs of the Water of Leith)
製粉所に必要な水力を作り出すため、ウォーター・オブ・リースには堰が作られています。小さな滝のように見えますが、立派な史跡でディーンヴィレッジ近くには2つの大きな堰があります。
<勢いよく流れるダムヘッド堰>
ディーンヴィレッジの少し上流にあり、静かなディーンヴィレッジの中で大きな水音を響かせています。
<ベルズブレイ橋の向こう側にみえるワールズエンド堰>
ディーンブリッジの下のミラーロウの公園付近にありますが、残念ながら遊歩道からは見ることはできません。しかし、なぜ世界の果て堰という名がついたかは、ディーンヴィレッジから見るとわかります。ベルズブレイ橋の後にストンと川がなくなるように堰が作られているのがわかりますか?
【ウォーター・オブ・リース(The Water of Leith)】
- 公式サイト:The Water of Leith
【ダムヘッド堰(Damhead Weir)】
まとめ
<渓谷の上から見るディーンヴィレッジ>
エジンバラの市街地の北西の入り口にある渓谷に位置するディーンヴィレッジは、エジンバラの秘宝として最近人気のスポットです。計画的に整然と大きな石造の建物が並ぶエジンバラの新市街とまったく違う、昔ながらの田園地帯の美しい風景が広がっています。
エジンバラに来たらぜひこの歴史的な村を散策してください。エジンバラの違う顔が見えてきます。
この村にある多くの建物は、歴史的な意義のある登録された建物ですので、外観を改造することはできず昔のままの姿で残っています。宿泊施設になっている建物もありますが、ほとんどが今でもプライベートなアパートで、現在も市民が住んでいますので、建物の中をみることはできません。
ディーンヴィレッジは、エジンバラの人々の暮らしを支えてきた歴史的な村です。美しい田園風景を保つ村の景観は昔のままで、今では市民にプライドを与え、また訪れる人々の心を癒してくれる特別な場所になっています。
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Sachiko
- 名古屋市出身、海外滞在歴30年、38カ国490以上の都市を訪れました。多趣味で、アート系のクラッシック鑑賞、バレエ・ダンス鑑賞、美術鑑賞、アンティーク収集から、スポーツ系のテニス・ダイビング、グルメまで色々なことが好きですので、様々な視点で皆様に旅の楽しさがお伝えできればと思っています。捨て猫2匹をインドネシアで拾い、日本まで連れてきました。