たびこふれ

名画とともに巡るアムステルダムの歴史探訪ルート

記事投稿日:2021/05/01最終更新日:2021/05/01

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ライクスミュージアム(アムステルダム国立美術館)はこのほど、所蔵作品ゆかりの地を巡る「ライクスミュージアムルート」を公開しました。レンブラントやブレイトネルといった巨匠たちの作品を鑑賞しながら、アムステルダムの歴史を探訪できます。

目次

400年の時を超えるライクスミュージアムルート

ライクスミュージアムルート

ライクスミュージアムルートは、アムステルダムの中心地にあるダム広場からスタートし、最終目的地のライクスミュージアムまで6つのスポットを巡ります。およそ3.5kmの距離で、ライクスミュージアムが公開したマップによれば徒歩で1時間半、自転車なら1時間ほどのルートです。携帯電話で名画を眺めながら、アムステルダムの歴史を探訪することができます。ライクスミュージアムルートでピックアップされた6枚の絵画と、6つのスポットをご紹介します。

1. アムステルダム発祥の地「ダム広場」

ダム広場
<Photo: Stadsarchief Amsterdam>

ライクスミュージアムルートのスタート地点は、アムステルダムの中心地にあるダム広場です。王宮新教会、第二次世界大戦戦没者記念塔、百貨店デ・バイエンコルフ、マダム・タッソー蝋人形館などがあり、いつも多くの人で賑わっています。ダム広場の起源は1270年頃にアムステル川の河口に設けられた堰(ダム)で、ここからアムステルダムの町が生まれました。アムステルダムという名前の語源でもあります。

バロック様式の王宮は、オランダの黄金時代の1665年にアムステルダム市庁舎として建造されたもので、当時は世界一豪華な市庁舎と称されていました。1715年にレンブラントの『夜警』がこの市庁舎に移された際、展示室のサイズに合わせるため、カンヴァスの上下左右が切り詰められたというエピソードも有名です。

ダム広場の市庁舎
<ヘリット・ベルクヘイデ 『ダム広場の市庁舎』 53cm x 63.5cm, 1693年>

アムステルダムやデン・ハーグの都市景観画で知られるヘリット・ベルクヘイデ (1638-1698) は、1693年に 『ダム広場の市庁舎』を描きました。絵画と現在の建物と見比べてみると、19世紀に増築されたバルコニー以外は全て、当初の形状が保存されていることがわかります。市庁舎の右隣に描かれた新教会も現在と同じ姿ですが、右端に描かれた計量所は、1808年にホラント王となったルイ・ボナパルトによって取り壊されてしまいました。ヤン・エケルス (1724-1780) の『アムステルダムのダム広場』には別アングルの景観が描かれています。

2. 15世紀の外堀「シンゲル運河」

パレイス通りにあるシンゲル橋
<ヘオルヘ・ヘンドリック・ブレイトネル 『パレイス通りにあるシンゲル橋』100cm x 152cm, 1898年>

2つ目のスポットは、アムステルダムの外堀として中世に築かれたシンゲル運河 (Singel) です。17世紀に建造されたヘーレン運河、ケイザー運河、プリンセン運河なども含めた環状運河地区は、2010年にユネスコの世界遺産に登録されました。シンゲル運河沿いには17世紀の街並みが残り、賑やかなカフェのテラス席や、運河を行き交うボートなど地元の人の暮らしに触れられます。

アムステルダムの日常風景を切り取るように、生き生きとした絵画を描いたのがヘオルヘ・ヘンドリック・ブレイトネル (1857-1923) です。写真家でもあったブレイトネルは、油絵のデッサンに写真を活用し、スナップショットのように動きのある風景画を描きました。私はブレイトネルの作品を見るたび、その巧みな構図や、抑えた色調にリズムを与える黒や朱色、大胆さと緻密さを見事に使い分ける筆さばきに魅了されています。

『パレイス通りあるシンゲル橋』にはシンゲル橋を行き交う人々が描かれ、手前の女性が今にもこちら側に歩いてきそうな臨場感があります。雪道で遊ぶ子ども、スカートの裾を持ち上げる女性、黙々と歩く紳士、さらには犬まで、ふと目にした冬の光景を撮影したかのような、ブレイトネルならではの絵画です。毛皮の縁取り付きのコートなど、人々の服装には当時のパリの最新ファッションも取り入れられています。

3.『夜警』の市民隊の本部「クローフェニールスドゥーレン」

夜警
<レンブラント・ファン・レイン 『夜警』379.5cm x 453.5cm, 1642年>

『夜警』はレンブラント・ファン・レイン (1606-1669) の代表作で、火縄銃手組合の市民隊が出動する瞬間を描いています。絵画は当初、中世の門楼を1638年に増改築した、火縄銃手組合の本部クローフェニールスドゥーレン (Kloveniersdoelen) に飾られていました。躍動感あふれる集団肖像画は異彩を放ち、『夜警』と並べて飾られた絵画は「トランプのカードのように見える」と評されたそうです。

クローフェニールスドゥーレン

クローフェニールスドゥーレンは1815年にドゥーレン・ホテル (Doelen Hotel) に生まれ変わり、1883年には現在のネオルネサンス建築に改装されました。ファサードには火縄銃手組合へのオマージュとして、2人の隊員の像が据えられています。1964年にはヨーロッパツアー中のビートルズが滞在し、ホテル発のクルーズ船で運河パレードが行われると、アムステルダムの街中が興奮と熱狂に包まれました。

ホテルのそばにあるスタール通りは、カフェやショップが並ぶショッピングストリートで、観光客や地元の人で賑わいます。私はこの通りにある昔ながらの2つ跳ね橋が好きで、よく足を運んでは写真を撮っています。ホテルの隣にあるカフェ・デ・ヤーレンのテラス席も、アムステル川を眺めながらゆったり過ごせるお気に入りの場所です。

4. 17世紀の織物産業の中心地「スタール通り」

アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち
<レンブラント・ファン・レイン 『アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち』191.5cm x 279cm, 1662年>

『アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち』は、レンブラントが晩年に描いた集団肖像画の傑作です。織物商組合の幹部5人(無帽の男性は秘書)が、機織り布の品質を鑑定している様子が描かれています。1771年まで織物商組合の会合場所であるスタールホフ (Staalhof) に飾られていました。

一見すると何気ない集団肖像画のように見えますが、構図には匠の技が隠されています。絵画が部屋の高い位置に掲げられることを事前に知らされていたレンブラントは、鑑賞者が机の下から見上げているようなアングルに遠近法を調整しました。その結果、幹部たちの目線は鑑賞者を見下ろし、等身大以上に大きく描かれていることと相まって、彼らの威厳が表現されています。また部屋の左側の窓から差し込む光に合わせて、絵画の光源も左側に置かれました。近年のX線画像分析によって、幹部たちの姿勢や秘書の位置などが数回変更されていることが明らかになっています。

サージホール

スタールホフのうち、1641年に建造されたサージホール (Saaihal) がスタール通りに残っています。ファサードには織物商組合を象徴するように、プリーツのついた布地を模った装飾がほどこされています。

スタール通りから次の目的地まではフォトスポットが満載です。アンティークからお土産物まで揃うワーテルロー蚤の市には、300もの露店が並び圧巻です。アムステル川の広々とした眺望が楽しめるブラウ橋は、パリのセーヌ川に架かるアレクサンドル3世橋を模して1883年に建造されました。ブラウ橋からは、アムステルダムで唯一の木造の跳ね橋、マヘレの跳ね橋も望めます。レンブラント生誕400周年を記念して造られたレンブラント広場では、1852年に建造されたレンブラントの像と記念写真を撮影できます。

5.ヘーレン運河の高級住宅地「ハウデン・ボフト」

ヘーレン運河のハウデン・ボフトの眺望
<ヘリット・ベルクヘイデ 『ヘーレン運河のハウデン・ボフトの眺望』53cm x 63.5cm, 1693年>

『ヘーレン運河のハウデン・ボフトの眺望』は、最初にご紹介したダム広場の絵画と同じく、ヘリット・ベルクヘイデの作品です。アムステルダムには100km 以上の運河が張り巡らされ、主要な運河沿いには1550もの記念建造物群が存在しています。中でもヘーレン運河の、ライゼ通りからファイゼル通りまでの屈曲した区間には豪華な邸宅が並び、ハウデン・ボフト(黄金の屈曲)と称されています。

かつて運河沿いの建物には、間口の幅に基づいて税金が課されたため、建物の多くが縦長になりました。愛らしい家々がぎっしりと並ぶアムステルダムの賑やかな風景は、税金対策によって生まれたものとも言えます。一方で『ヘーレン運河のハウデン・ボフトの眺望』には、間口の広い端正な邸宅と鏡のような運河が描かれ、高級住宅地の静けさをたたえています。

ハウデン・ボフトから南に伸びるニューウェ・シュピーゲル通りは、アートギャラリーやアンティークショップ、ブティックなどが集まる華やかな通りです。デルフト陶器を扱う老舗Kramer Kunst en Antiekなどもあり、私もよくギャラリー巡りやお土産物探しに訪れます。

6. ネオルネサンス様式の壮麗な「ライクスミュージアム」

ライクスミュージアム

ライクスミュージアムはレンブラントの『夜警』を飾るために設計された美術館です。1885年の開館から2013年のリニューアルオープンを経て現在まで、唯一同じ場所に展示されているのが『夜警』です。改修工事のために『夜警』を別の場所に移動する際は、絵画のすぐ下に設けられた細長い隙間を通して搬出されます。「郵便ポスト」と呼ばれるこの隙間は、美術館の南北を貫く通路から見上げることができます。

新型コロナウイルス感染症対策でライクスミュージアムの臨時休館が続くなか、ライクスミュージアムルートは屋外で安全に楽しめるのが魅力です。アムステルダムでは夏時間を迎え木々が芽吹き始めました。新緑の季節にライクスミュージアムルートを巡ってみようと思います。

アムステルダム

ライクスミュージアム(アムステルダム国立美術館)

>>チケット購入はこちら

※2021/5/10まで休業しているため、訪問の際は随時ホームページでご確認ください。

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Kayo Temel
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