アムステルダム散歩がもっと楽しくなる破風図鑑【前編】

破風建築

アムステルダムの運河沿いに並ぶ家々は、多彩な破風(はふ:屋根の下の三角形の部分)で目を楽しませてくれます。階段状にレンガを積み上げたもの、教会の鐘のような形など、時代とともに変化してきた破風の様式と、アムステルダムに現存する歴史的な破風をご紹介します。

目次

中世アムステルダムの三角破風 puntgevel

木の家
<アムステルダム最古の木造家屋。右写真は1940年頃。Photo: Stadsarchief Amsterdam>

三角屋根の勾配に沿った妻壁は、三角破風(puntgevel)と呼ばれ、中世アムステルダムの木造家屋に用いられました。

アムステルダムの建物はもともと木造が一般的でしたが、1421年と1452年の大火により街の大部分が消失してしまったため、それ以降は木造家屋を建てることが禁じられました。耐火性の高いレンガや瓦が建築材として利用されるようになり、木造の三角破風は次第に姿を消してしまいます。

ベギン会修道院(Begijnhof)の中庭には、1425年建造の『木の家(Het Houten Huys)』 が保存されています。ゴシック様式の整然とした三角破風は、レンガ造りの家々の中で異彩を放ちます。

アムステルダムに現存する木造家屋はこの『木の家』と、1546年頃に建造されたゼーダイク通り1番地(Zeedijk 1)の2軒のみで、ともにオランダの国家遺産に登録されています。

木の家 Het Houten Huys

  • 住所: Begijnhof 34, 1012 WV Amsterdam
  • アクセス:トラム4, 14, 24番Spui下車徒歩2分
  • ベギン会修道院中庭の開園時間:9:00-17:00
  • 外観のみ見学可

フェルメールも描いた階段状破風 trapgevel

階段状破風

レンガ造りの階段状破風(trapgevel)は1600年から1665年にかけて、木造の三角破風と入れ代わるように普及しました。階段状にレンガを積み、各段を砂岩のブロックで覆います。

17世紀のアムステルダムでは最も一般的なスタイルで、デルフトの街でもヨハネス・フェルメールが『小路』に階段状破風を描いています。

18世紀になると、裕福な商人たちが流行の様式を取り入れて破風の改築を行ったため、階段状破風は激減しました。現在のアムステルダムに遺された階段状破風はわずか100軒ほど。散策中に見つけたら、ぜひデザインを鑑賞してみてください。

三本の運河に面した家

『三本の運河に面した家(Huis aan de Drie Grachten)』(上写真)は、1610年建造のルネサンス建築です。東西と南のファサードが運河に面し、それぞれに美しい階段状破風が造られています。

精緻に積み上げられたレンガの壁に、格子窓がバランス良く配され、ぺディメントを冠する凛としたエントランスゲートが全体の印象を引き締めます。

1936年から2002年まで書店として利用され、1909年と2005年には大規模な修復工事が行われました。私はこの周辺の路地裏の雰囲気が好きで、ちょうど近くにギャラリーやカフェ、パンケーキハウスなどもあることから、よく散歩に出かけます。

三本の運河に面した家 Huis aan de Drie Grachten

  • 住所:Oudezijds Voorburgwal 249, 1012 EZ Amsterdam
  • アクセス:トラム4, 14, 24番Rokin下車徒歩3分
  • 外観のみ見学可

バルトロッティ邸

ヘーレン運河沿いの『バルトロッティ邸(Museumhuis Bartolotti)』(上写真)は、精巧に装飾された階段状破風を持つ1620年建造の邸宅です。アムステルダムで最も大きい商人の邸宅のひとつで、建築当初は贅沢なファサードが人々の注目を集めました。現在は博物館として一般公開されています。

バルトロッティ邸 Museumhuis Bartolotti

  • 住所:Herengracht 170-172, 1016 BP AMSTERDAM
  • アクセス:トラム13, 17番Westermarkt下車徒歩3分
  • 開館時間:水~日 10:00-16:00/ 月・火曜休
  • 大人8ユーロ/ 26歳以下5ユーロ/ 12歳未満無料
  • 公式サイト:バルトロッティ邸

質素倹約!商人たちのスパウト破風 tuitgevel

スパウト破風

スパウト破風(tuitgevel)は、漏斗を逆さまにしたような形の簡素な様式で、1620年から1720年頃にかけて普及しました。同時期の階段状破風が家屋に用いられたのに対し、スパウト破風は倉庫や商業用施設の目印として発展しました。

アムステルダムでは、建物正面には豪華な破風、裏面には倹約的なスパウト破風というように、2種類の破風を組合せた家屋も多くあります。

スコーテンバーチ

クロム・ボームススロート運河に面する『スコーテンバーチ(Schottenburch)』(上写真)は、中央で繋がったスパウト破風を持つ二戸建て倉庫です。アムステルダム最古の倉庫で、1595年の地図には既にその名前が記載されています。

二色のレンガを積み上げた壁は、水平のラインや窓上のアーチが印象的で、スパウト破風のシンプルさも相まって落ち着きのある雰囲気です。現在までに内装は改装され、住宅やギャラリー、ワインショップなどとして再利用されてきました。

周辺はアムステルダム中心地とは思えないほど閑静な雰囲気で、1714年建造のアルメニア使徒教会(Armeens-Apostolische Kerk)や、19世紀初頭のアールヌーボー建築『De Branderij』などの歴史建造物もあり、こちらも散歩にお勧めの場所です。

スコーテンバーチ Schottenburch

  • 住所:Kromboomssloot 18-20, 1011 GW Amsterdam
  • アクセス:メトロ53番Nieuwmarkt下車徒歩3分
  • 外観のみ見学可

エントレポトドク
<住宅として再利用されているエントレポトドクの倉庫>

オランダ黄金時代の17世紀に、貿易都市として繁栄したアムステルダムには、数多くの倉庫が遺されています。中でも、エントレポトドク(Entrepotdok)、ブローウェルス運河(Brouwersgracht)、アウデスカンス(Oude Schans)などの運河沿いには、スパウト破風を持つかつての倉庫が立ち並んでいます。

倉庫
<オフィスとして再利用されているエントレポトドクの倉庫>

【後編】に続きます。 

>>「アムステルダム散歩がもっと楽しくなる破風図鑑【後編】」はこちら

※観光施設の詳細やアクセス方法などの情報は2022年4月現在のものです。

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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