【自転車世界一周の旅】ブラジル高原地帯を駆ける

ブラジルと言えば、アマゾン川に代表されるジャングル地帯や、世界三大瀑布のイグアスの滝、そしてギラギラと日差しが照り付けるビーチ。

そしてリオのカーニバルから連想する陽気な国民性と、治安に対する不安が大きい国。

これがブラジルに対する大まかなイメージで、南米大陸を横断するチャリダーも半数以上が走らない為、意外と知られていない部分が多いブラジルの道路。

今回はその中で、海に近いクリチバからイグアスの間に広がる高原地帯の道をご紹介。

  • 場所:ブラジル クリチバ~フォス・ド・イグアス
  • 距離:650km
  • 走行期間:8/14~8/23

目次

ブラジル南部の地形について

クリチバは旅行者にとっては知名度の低い都市ではあるが、ブラジルの中でもサンパウロに次いで日系人の多い街で、町中では日本庭園のある公園や県民会館などもあり、普通のスーパーで日本の食材も手に入れることができるほどだ。

ブラジル南東部に位置し町の標高は940m、ブラジルには山のイメージが無かった為、想像以上にキツイ坂を登らされて町に到着したので、印象深い街となっている。

パラグアイとアルゼンチンの国境とぶつかる三国国境のイグアスは、クリチバの真西にあり、さらに足を進めればパラグアイの首都アスンシオンに辿り着く。

地図を見る限りイグアスに着くまでにも、いくつかの町が点在しているので、補給や寝床に困る事は無いだろう。どんな景色が広がっているのかワクワクしてくるので、前知識のない道というのはそれだけで楽しいものなのだ。

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嫌よ嫌よも好きの内?

平野に広がっていた町から離れていくほどに坂は増え、丘陵地帯に変わっていくと共に民家が減り畑や森が広がる。そして片側二車線あった道は一車線の道に変わり、交通量も次第に減っていく。

坂の長さは2km前後で勾配は6%前後。これが延々と数百kmと続くのだが、まだ漕ぎ切れる範囲の勾配なので、景色を楽しみながら漕ぐ余裕がある。同じくアップダウンしかなかったウルグアイに比べると、心に余裕をもって走れるのは何故だろうか?

自転車乗りにとって切っても切れない関係の坂に対し、僕は複雑な感情を抱いている。「上り坂はキツイから嫌い。下りは楽だから好き。」なんて簡単なものではない。

上り坂が見えた瞬間は眉を顰(ひそ)め、先の見えない長い登り坂にため息をつき、息を切らして登っている時は呪いの言葉を吐きながら漕いでいるのにも関わらず、その反面、その辛さを心地よく感じ、汗を垂らしながら漕いでる自分かっけー、なんてナルシズムに浸りながら漕いでいる自分がいるのだ。

高度を上げていくほど、相対的に景色は良くなっていく。ご褒美の絶景と山頂に着いた時の物言えぬ達成感で、今までの苦労が報われたように疲れなど吹き飛んでしまう。そして、猛スピードで下る時の快感と言ったら、その為だけに登ったと言っても過言でないほど気持ちいいのである。

嫌よ嫌よと言いながらも、あえて過酷な峠を攻め、文句を言いながら快感を得ている、極めてわがままで変態チックな人種が自転車乗りには多い。そのうちの一人が自分なのだ。

だからと言って、最終的にどんな坂も好きかというと、それはまた別の問題だ。登った達成感が無いまま下りに入り、下りの気持ちよさを感じる前に再び登りがあるといった、中途半端なアップダウンが延々と続く道だけは、疲れるだけなのでどうしても好きにはなれない。

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たまには丘陵地帯もいいもんだ

この道もまさに典型的な嫌なアップダウンの道なのだが、山頂で「まだ(アップダウンが)続くのかよ!いい加減にしてくれー!」と、叫ぶことが事が無い不思議な道であった。

いくつかの条件があったからだと思うが、やはり一番の理由は走りやすさだろう。

治安が悪いという話をよく聞くためか、ブラジルの道は荒れていると勝手に思っていたのだが、ウルグアイからクリチバまでの道を見ても、中南米の中では上位に入るほど綺麗に整備されている。路側帯も広くとられているのでかなり走りやすく、おまけに運転マナーも良いので、クラクションを連発されて腹立つことも無い。イメージとは正反対の快適な走行ができるのも大きい。

やはり、聞いた話だけで作ったイメージなんてアテにはならないものである。

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緑、そして青の世界

小さく実を付けた緑の麦が風にそよぎ、まるで波のようになびいている景色や、見渡す限りの牧草地が続くかと思えば、鬱蒼と木々が茂るジャングルになったりと、景色の変化があるのも大きなポイントだろう。

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眼下に広がる大小無数の丘が連なる光景は、汗をぬぐう一陣の風と共に、丘陵地帯も悪くないと思わせてくれるほどである。

一面の緑、そして視界を邪魔するものなく広がる青空。この平和を絵にかいたような景色に包まれたこの道は、治安の悪さを微塵も感じさせない。クリチバまでは治安面からホテル泊を多用していたが、ここからは野宿でいけると判断し、久しぶりに野宿の日々が始まった。

ただし、安全そうに見えても油断は禁物。安易な場所は避けて、道路から見えない場所を選んでテントを張るのだが、麦畑が続く丘陵地帯では隠れられる場所が無く寝床探しには一苦労。陽が沈んでも見つからないため、ライトをつけて走行した日があったり、テントを張れる場所を探し求めて、自転車を押して野原や未舗装の農道を進んだりと、一筋縄ではいかないことが多かったが、雨が降り続けたため宿を使った一晩以外は、危険な目にあうこともなく野宿することができた。

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実は自転車旅向きの国?

道の途中には100kmに1カ所程度、S.A.U.(Serviço de Atendimento ao Usuário)と呼ばれる小さなサービスエリアがあり、そこでは冷たい水やコーヒーが無料で提供されている。見つけては休憩がてらに寄らせてもらい、冷たい水でのどを潤すこともできるし、飲み水を汲むこともできるので水の心配がいらないのはうれしい。

さらにはブラジルでは、サラミやチョリソーなど加工肉が安く手に入るので、保存がきく加工品を買っとけば野宿中でも毎日肉を食べることができる。キャンプをしながら贅沢な夕食を摂る事もできるのだ。走ってよし、キャンプしてよし、料理してよしの三拍子が揃う道で、ゴールにはイグアスの滝という最高のご褒美付き。

こんないい条件が揃う道もそうは無いので、この記事をきっかけにもっとこの道を走る旅人が増えると嬉しく思います。

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