インドには人間の生と死の全てがある。とよく言われますが、それが一番感じられるのが北インド中央部に位置するバラナシです。実際に訪れてみると、人の喧騒とぐちゃぐちゃした街並み、牛や路上生活者の多さに圧倒されることでしょう。

ヒンドゥ教の最大聖地とされるガンジス川には、インド国内外から多くの信者、巡礼者、観光客が訪れて沐浴する様子が見られます。朝日を望むガンジス川の美しさはまた格別で、聖なる川に祈りを捧げて身を清める人々の姿は、神聖で清々しい気持ちにさせてくれます。

ところがそのガンジス川、昼間の明るい日の下で見ると、その淀みの酷さに驚愕してしまいます。人々は生活用水や下水としても川を使用しており、石鹸で体や髪を洗い、洗剤で食器を洗い、服を洗濯し、そこでトイレも済ませ、ゴミも気にせず捨ててしまうのです。

そんなわけで様々なものが混じりあって流れているガンジス川なのですが、先日朝焼けの船に乗っているとき、ドンッと何かにぶつかる音が・・・。振り返って川をのぞくと、なんとサドゥ（インドの放浪修行者）のおじいさんが亡くなって浮いているではありませんか！ 「きゃあっ!!」と驚く私を横目に、周りのインド人たちは「まあ、そんなこともあるよね。」と、いたって平常心。気にする様子もありません。死体が流れているなんて話はさすがにデマだと思っていたのですが、実際この噂は本当だったのです。

「人はいつか死ぬ。ガンジス川で死ねるなんて幸せだよ！」 人間の生と死のありのままを肌で感じることのできるインド。すべての訪問者はここで何かを感じ、ある時には人生観が変わるような経験をするかもしれません。

文：南まい