

野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。
今回は、札幌から約2時間の距離に位置する洞爺湖を目指して出かけました。湖周辺のちょい学びの旅をご紹介します。
目次
洞爺湖への旅のきっかけ!
今回は、洞爺湖に面した壮瞥町の「フジモリ果樹園」の藤盛さんに、今どきのリンゴ栽培のお話を伺うのが旅のきっかけです。
その前に、リンゴ栽培の歴史を紐解きましょう。
リンゴの原産地は中央アジアの山岳地帯またはコーカサス地域の寒冷地といわれ、そこからアジアとヨーロッパの2つのルートに分かれて広まったと考えられています。約8,000年前に建てられたヨーロッパにある遺跡から炭化したリンゴが見つかっており、すでにそのころには食べられていたのではないかと推測されています。
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<9月下旬の収穫期のリンゴ>
リンゴが日本に伝わったのは、平安時代の中期頃で、中国からとされています。当時のリンゴは「和リンゴ」と呼ばれる小ぶりの野生種で、酸味が強く、主に観賞用だったようです。明治7年、北海道開拓使によって、アメリカから75品種の西洋リンゴが導入されました。大きくて美味しい西洋リンゴが日本でも栽培されるようになり、和リンゴの生産は一気に廃れました。北海道の余市町は、日本で初めてリンゴの民間栽培が成功し、日本のリンゴの歴史が始まった地として知られています。
壮瞥町は道内有数のくだものの産地
洞爺湖畔に位置する壮瞥町には、明治13年にリンゴの苗木300本が配布されました。その後、明治19年にアメリカに留学していた橋口文蔵氏(札幌農学校初代校長・現北海道大学)が、壮瞥に農場を開設し、リンゴづくりの指導にあたったことから本格的に栽培が始まりました。先人の努力により、明治30年頃にはリンゴを中心にウメやサクランボ、西洋ナシなどが栽培されるようになりました。近くにある昭和新山の噴火による降灰や、有珠山噴火などいくつもの苦難を乗り越えて、今では果樹農家が30軒以上に増え、道内有数のくだものの産地として知られるようになりました。
お客様との触れ合いを大切にする壮瞥町「フジモリ果樹園」
同町の「フジモリ果樹園」は、1890(明治23)年、香川県から入植して以来、5代にわたって果樹栽培を続けてきました。約6ヘクタールの園地で、サクランボやリンゴ、ブドウ、プルーンなどを栽培しています。有珠山の火山活動に由来した土地は水はけが良く、リン酸などの養分も豊富で、実が締まり、味わいのある果物が育ちます。
同園は、主に園内の直売所での販売とくだもの狩りを通じて、来園者と直接触れ合う販売スタイルを大切にしています。
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<多くの来店者が訪れるフジモリ果樹園の直売所>
私がここを訪れた理由のひとつは、2021年から取り組んでいる「高密植栽培」のリンゴの話をお聞きすること。この栽培方法は、現在、世界的に主流となってきており、日本国内にも広まってきました。高度な剪定技術を必要とせず、わい化栽培以上の早期多収、均質生産、作業効率の向上を目標とした栽培方法です。
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<8月初めに訪れた時の高密植栽培のリンゴの木々。このようにリンゴの苗木を密植して植えていきます>
「この方法はまだ過渡期。10年後くらいに結果が見えると思う」と藤盛元さん。果樹は野菜と異なり、苗木が大きくなるまでに時間がかかり、その後、たくさんの実をつけるまでにさらに時間がかかるものですものね。
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<高度な剪定技術は必要ないものの、大きく実を着ける前に枝ぶりの様子を見て行う作業中の藤盛さん>
この日はまだリンゴは小さく青いものでしたが、サクランボがギリギリありゲット!
もう少ししたらプルーンが出始め、早い品種のブドウやリンゴが9月上旬くらいから店頭に並びます。
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<「サミット」という品種のサクランボをゲットできました!>
フジモリ果樹園
- 所在地(住所):北海道有珠郡壮瞥町滝之町455-5
- TEL:0142-66-2160
- 営業時間:直売所9:00~16:00/くだもの狩り9:00~16:00(入園最終受付15:00まで)
- 定休日:火曜(くだもの狩り期間中は休まず営業)
- 公式サイト:フジモリ果樹園
洞爺湖の見どころと楽しみ方
洞爺湖といえば、2008年7月7日~9日にかけて、「北海道洞爺湖サミット」が開催されたところです。また、2012年に公開された『しあわせのパン』と、2024年に公開された『一月の声に歓びを刻め』の2つの映画は、どちらも「とうや湖観光大使」として活躍している映画監督・三島有紀子氏の作品で、洞爺湖が舞台となっています。
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<人々を魅了する神秘の湖・洞爺湖>
神秘的な青い水が人々を魅了する洞爺湖は、11万年ほど前の噴火で誕生した巨大カルデラ湖です。支笏洞爺国立公園の中心となる湖で、周囲約43キロメートル、面積は約7,000ヘクタール。支笏湖、摩周湖に次いで北海道では3番目、全国でも6番目の水深をもち、支笏湖同様、北海道の厳しい寒さの中でも湖面が凍ることのない「不凍湖」として知られています。湖の透明度は年平均約14メートルで、中央に浮かぶ原生林に囲まれた中島付近では、湖底の流木がはっきりと見られるほどの透明度を誇ります。
湖畔の遊歩道には「とうや湖ぐるっと彫刻公園」があり、58基の彫刻アートが点在。澄み切った青い湖面と芸術が織りなす景色を楽しむことができます。
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<「湖渡る風」というタイトルの「坂 坦道」氏の作品(洞爺湖遊覧船乗り場付近)>
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<「イゴール・ミトライ」の「月の光」という作品(有珠山噴火記念公園付近)>
周囲が43キロメートルという洞爺湖。本格的に、またはゆるやかに、自転車やランニングを楽しむ人も多い。そういう方の休憩やランチスポットにもおすすめの「とうや・水の駅」には、ぜひ立ち寄ってほしい。
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<「とうや・水の駅」外観>
館内には地元の農産物の販売コーナーのほか、食堂や飲食スペースなどがあります。入口の反対側には広いガラス戸があり、湖を眺めながら食事ができるほか、湖畔にもすぐに出られます。
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<この日の私は食堂「TSUDOU(つどう)」で「伊達めぐみのからあげカレー」をセレクト>
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<建物の向こうに広がるまるで海のような洞爺湖。寄せては返す波と戯れることができます>
とうや 水の駅(NPO法人洞爺まちづくり観光協会)
- 所在地(住所):北海道虻田郡洞爺湖町洞爺町100番地
- TEL:0142-82-5277
- 営業時間:4月1日~10月31日/9:00~18:00(休館日なし)、11月1日~3月31日/9:00~17:00(定休日/火曜)
- 年末年始の休館日:12月30日~1月5日
- 公式サイト:とうや 水の駅
洞爺湖ビジターセンター火山科学館で有珠山の噴火を学ぶ
2026年7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュードMj7.1・Mw6.8(最大震度7)の大きな地震が発生しました。
せっかく近くに行ったので、そのような時だからこそと「洞爺湖ビジターセンター火山科学館」にも立ち寄りました。
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<洞爺湖ビジターセンター火山科学館の外観>
前述のとおり、洞爺湖は約11万年前の巨大噴火によってできたと考えられています。また、約2万年前の火山活動によって「有珠山」ができました。その有珠山は、20~50年に一度、噴火を繰り返す活火山として知られています。
伺ったこの施設は、太古から続く有珠山の噴火の様子や、一番最近起こった噴火(2000年3月)の貴重な映像を中心に紹介しており、繰り返される火山活動により変動する大地の姿を体感することができます。また、縄文の人々の暮らしが分かる遺跡やアイヌの人々の生活の証なども多く残され、火山と共生してきた人々の歴史を見ることもできます。
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<活動の歴史がわかる資料>
2000年3月31日に起こった噴火は、噴煙の高度は上空3,500メートルにまで達し、灰は東北東へ運ばれ、約80キロメートル離れた千歳市でも観測されたといいます。噴火は翌4月1日以降も発生していくつもの火口が開き、火山活動は7月まで続きました。一連の火山活動により発生した噴石や泥流、地殻変動による家屋やライフラインへの損害は多数出ましたが、幸いなことに人的被害はありませんでした。特に、JR洞爺駅と洞爺湖温泉を結ぶ国道230号上に噴火口が開いたり、同道路は噴石で埋め尽くされたりと、温泉街の被害も大きいものでした。しかし、有珠山はこれまでの噴火履歴から特徴が把握されており、噴火の兆候からいち早く周辺住民への避難を呼びかけることができたため、人的被害に至らなかったのだといわれています。
噴火の影響で一時、観光客の足が止まった時期もありましたが、現在は多くの国内外からの観光客が訪れ、湖をバックに記念撮影をしている様子も多数見られます。
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<シアター内は撮影不可ですが、2000年3月の噴火の様子など迫力ある映像を見ることができます>
洞爺湖ビジターセンター火山科学館
- 所在地(住所):北海道虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉142番5
- TEL:0142-75-2555
- 営業時間:4月1日~9月30日/9:00~17:00、10月1日~3月31日/10:00~16:00
- 定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
- 公式サイト:洞爺湖ビジターセンター火山科学館
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。































