【宮崎】九州の小京都、飫肥(おび)の江戸情緒あふれる街並みを歩く

宮崎県南部の日南市にある飫肥(おび)は、「九州の小京都」と称される風情ある城下町です。飫肥城を中心とした街並みは江戸時代の面影を色濃く残し、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。美しい城下町を徒歩で散策し、まるでタイムスリップしたような気分を味わってきました!

目次

アクセス 宮崎駅から飫肥駅までJR日南線で70分。無料の大型駐車場もあり

飫肥の旧城下町への最寄り駅はJR飫肥駅。宮崎駅から訪れる場合、JR日南線油津行きに乗り約70分で到着します。駅から飫肥城までは徒歩で15分ほどです。

宮崎駅付近からレンタカーで訪れる場合は約60分で到着します。観光の中心となる飫肥城から徒歩3分のところに無料の飫肥観光駐車場(140台)があるため、車で訪れるのがより便利です。

飫肥観光駐車場の城下町案内図
<飫肥観光駐車場の城下町案内図。主な見どころは歩いて回れる>

飫肥観光駐車場

  • 住所:宮崎県日南市飫肥9丁目1
  • 休日:無休
  • 料金:無料
  • 駐車台数:140台

壮大な石垣が残る「飫肥城」

まずは飫肥の中心、飫肥城の本丸跡に向かいます。東西約750m、南北約500mの広大な敷地にシラス台地の地形を活かして、空堀で区切った曲輪(くるわ)を幾つも並べた、壮大な規模の平山城です。

明治維新後に建造物の大半が取り壊されましたが、1978年に大手門を復元。堂々たる門をくぐると、階段の両脇に端正な石垣と土塀がのびています。足を踏み入れるだけで背筋が伸びるような、力強い眺めです。

飫肥城の大手門
<飫肥城の大手門>

門をくぐると石垣と土塀がのびる
<門をくぐると石垣と土塀がのびる>

飫肥城の戦国時代初期の城主は島津氏。その後、飫肥藩の初代藩主となる伊東祐兵が1587年に豊臣秀吉から飫肥を領地として与えられ、以降、明治時代まで伊東家の居城となりました。

苔むした石垣に囲まれた階段を登りきると、飫肥城旧本丸跡があります。ここは1693年に本丸を東南側へ移転するまでは、藩主の御殿があったところ。現在は苔の絨毯の上に見事な飫肥杉が立つ「いやしの森」になっています。優れた造船材として藩財政を支えた飫肥杉の巨木が、この地の歴史の長さを伝えてくれています。

旧本丸跡へ続く階段
<旧本丸跡へ続く階段>

飫肥杉の「いやしの森」になっている旧本丸跡
<飫肥杉の「いやしの森」になっている旧本丸跡>

「松尾の丸」で城主の暮らしを体感!

旧本丸跡へ至る階段の手前には、飫肥城に配された11の曲輪のひとつ、松尾の丸があります。こちらには、1979年に江戸時代初期の御殿を参考に建てられた「松尾の丸御殿」があり、身分の高い武士の生活を体験することができます。

特に人気があるのは、殿様になった気分で記念撮影ができる「御殿の間」。床の間の違い棚や甲冑を背景に、脇息に寄りかかりながら厚畳の上に座って写真を撮ることができるのです。まるで時代劇の1コマ!筆者が訪れたときも、外国人観光客がノリノリで写真を撮っていました。ぜひ試してみてください!

藩主の暮らしぶりがわかる御殿 松尾の丸
<藩主の暮らしぶりがわかる御殿 松尾の丸>

殿様になったつもりで脇息に肘を置きたい御殿の間
<殿様になったつもりで脇息に肘を置きたい御殿の間>

松尾の丸の湯殿も必見です。こちらは京都の西本願寺、聚楽第から移築されたと言われる飛雲閣にある湯殿を復元したもの。こけら葺き、総檜造りの豪華な蒸し風呂を見ると、殿様はこんなお風呂でくつろいでいたのか...と親近感が湧いてきますよ。

唐破風付きの立派な蒸し風呂
<唐破風付きの立派な蒸し風呂>

松尾の丸御殿

  • 住所: 宮崎県日南市飫肥10丁目1番1
  • 開園時間: 9:30~17:00(最終入園時間 16:30)
  • 定休日: 12/29~12/31
  • 入館料: 大人 300円/高校生・大学生 200円/小・中学生 100円
  • 公式サイト(日南市観光協会):松尾の丸御殿

風情ある武家屋敷通りと小村寿太郎の生家

飫肥城の大手門を出ると、伝統的な建築物が並ぶ武家屋敷通り(横馬場通り)がのびています。城のすぐ近くには日本外交の礎を築いた明治時代の外交官、小村寿太郎の生家があります。立派な石垣に囲まれた情趣のある日本家屋です。

桂太郎内閣で2度も外務大臣をつとめた小村寿太郎ゆかりの建物として、市が改修整備を行い、2004年から公開しています。式台の付いた正玄関と、右側に脇玄関を設けた、伝統的な建築は落ち着いた雰囲気。絵になります。

武家屋敷通り
<武家屋敷通り>

小村寿太郎の生家
<小村寿太郎の生家>

通りの向かいには、小村寿太郎の生涯や偉業を紹介する「小村寿太郎記念館」もありますよ。国際交流や文化活動にも活用されています。

小村寿太郎記念館
<小村寿太郎記念館>

飫肥で最も格式の高い屋敷「豫章館」

大手門通りに出ると、小村寿太郎記念館の向かい側に格調高い武家屋敷「豫章館(よしょうかん)」があります。ここは、大政奉還後の1869年に飫肥藩第14代藩主の伊東祐帰が藩知事に任命されてから、13代藩主だった父の祐相とともに移り住んだ屋敷。飫肥城内の奥御殿から御殿を移築して改修を行なっており、城の建物の様子を伝える数少ない施設となっています。

千鳥破風の屋根を構えた屋敷の玄関は、元・お城の風格が漂う立派なもの。入り口の庇には「庵木瓜紋(いおりにもっこう)」と呼ばれる、伊東家の家紋が彫られています。屋根のある小屋の中に4弁の唐花を描いたデザインをぜひ探してみてください。

豫章館の立派な玄関
<豫章館の立派な玄関。白い円の中の庵木瓜紋に注目>

建物の南側には武学流の作庭といわれる枯山水式庭園が広がっています。広い庭には飛石がめぐり、庭石や石灯籠の配置も見事。庭木の中には大きなソテツもあり、南国の空気が漂います。庭園から見る屋敷の姿も立派です。

武学流の枯山水式庭園
<武学流の枯山水式庭園>

庭から眺めた屋敷
<庭から眺めた屋敷>

豫章館の敷地の奥には、数寄屋(茶室)があります。風が吹き抜ける茶室の裏には、酒谷川が流れています。こちらで川の流れや豊かな山並みを眺めながら、一服の茶を楽しんだのでしょうか。何とも風流です。

数寄屋
<数寄屋>

豫章館

  • 住所: 宮崎県日南市飫肥9丁目1番地1
  • 開園時間: 9:30~17:00(最終入園時間 16:30)
  • 定休日: 12/29~12/31
  • 入館料: 大人 300円/高校生・大学生 200円/小・中学生 100円
  • 公式サイト(日南市観光協会):豫章館

鯉が水路を泳ぐ後町通り

豫章館から2、3分ほど南へ歩くと、伝統的な建造物が並ぶ後町通りがあります。道の脇には掘割がのびており、清らかな水の中には色とりどりの鯉が泳いでいます。

城下町らしい立派な家々と、どっしりした石垣のかたわらを泳ぐ鯉たちは、優雅そのもの。穏やかな時間が流れる美しい道にいつまでもたたずんでいたくなります。車に注意しながら、風情ある通りの散策を楽しんでくださいね。

後町通り
<後町通り>

掘割
<風情ある道に沿ってのびる掘割>

色鮮やかな鯉
<石垣に色鮮やかな鯉が映える>

飫肥名物「おび天」「厚焼卵」をお屋敷で堪能!

街をひとめぐりしてお腹がすいたら、名物料理を食べてひと休みしましょう。飫肥の郷土料理として有名なのは「おび天」と「厚焼卵」。おび天は魚のすり身に豆腐、黒砂糖、味噌などを混ぜて揚げたもの。厚焼卵は殿様に献上されたもので、飫肥では今でも祝い事には欠かせないものだそう。

城下町には、これらを食べられる店が複数あります。筆者は武家屋敷通り(横馬場通り)にある「服部亭」で、これを食べてみました。飫肥城のすぐ近くにある築100年以上のお屋敷で、日本庭園を眺めながら郷土料理のランチを楽しめるお店です。

服部亭
<武家屋敷通りにある服部亭>

案内された部屋は、一枚板の重厚な座卓が並ぶ広い和室。端正な床の間や窓格子の向こうに広がる美しい庭園が、いかにも城下町の豪奢なお屋敷という雰囲気です。

美しい庭園を眺めながら食事
<美しい庭園を眺めながら食事ができる>

お膳に乗って運ばれてきたお料理は、飫肥すし、お刺身、白和え、おび天、厚焼卵など、盛りだくさん。日南海岸で水揚げされた魚のすり身を使うおび天は、豆腐が入っているためふわっとした食感。優しい甘みと奥深いうまみが口の中で広がります。

厚焼卵は上品な甘さとまろやかな舌触りで、プリンのような美味しさ。これが殿様も食べた味か...!と親しみを覚えました。

伝統の味を歴史ある建物の中で味わえることも飫肥の大きな魅力です!

盛りだくさんのランチ
<服部亭の盛りだくさんのランチ>

左上が厚焼卵、右上がおび天
<左上が厚焼卵、右上がおび天>

まとめ

江戸時代の面影を今に残す飫肥は見どころがいっぱいです。以下の点をお心に留めながら、散策を楽しんでくださいね。

  • JR飫肥駅から飫肥城までは徒歩で15分ほど
  • 飫肥観光駐車場(150台)は無料。飫肥城へは徒歩3分ほどの距離にあり、便利
  • 飫肥城には復元された大手門や往時を偲ばせる石垣がある。江戸時代初期の御殿を参考に建てられた「松尾の丸」では、身分の高い武士の暮らしぶりを体験ができる
  • 飫肥城、豫章館、小村寿太郎生家および記念館、後町通りの鯉の遊泳地などの主な見どころは、徒歩でまわることができる
  • 飫肥で味わいたい郷土料理は「おび天」と「厚焼卵」。城下町にこれらを食べられるお店が複数ある

それでは、江戸情緒あふれる街並みをめぐる素敵な旅を!

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朝茶

ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!

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