広い敷地に19世紀の村を再現!フランス北部の野外博物館

<TOP画像:1781年築の藁ぶき屋根の家 ©Kanmuri Yuki>

今日はフランス北部の野外博物館、ミュゼ・ドゥ・プラン・エールをご紹介します。場所はリル東方にある町ヴィルヌーヴ・ダスク。約17haという広い敷地内に19世紀のフランス北部の村が再現されています。

目次

緑豊かなヴィルヌーヴ・ダスク

ミュゼ・ドゥ・プラン・エール敷地内
<ミュゼ・ドゥ・プラン・エール敷地内 ©Kanmuri Yuki>

ヴィルヌーヴ・ダスクは大学都市なので若い住民が多く、市内のスポーツや文化施設も多彩です。今夏2024年のオリンピックでもハンドボールなどいくつかの競技はヴィルヌーヴ・ダスクのスタジアムで開催されました。

広く自然も残っており、緑地帯は合計して約200haあり、湖も6つほどあります。

そんな自然の残る一角に2007年誕生したのがこの今日ご紹介する野外博物館というわけです。

19世紀の農村を再現

ボルゼール村の家
<ボルゼール村の家 ©Kanmuri Yuki>

東京ドームの約3.6倍ある敷地内には、約20の建物が点在します。これらは、フランス北部のさまざまな村の典型的な建物を、可能な場合には移転し、傷みがひどく動かせない場合は元通りに再建したものです。

エリンゲンの納屋の説明パネル
<エリンゲンの納屋の説明パネル ©Kanmuri Yuki>

それぞれの建物の前の説明パネルには、なんという村でどういう職種の人が使っていたのか、建築の特徴は何かなどが、わかりやすく簡潔に書かれています。例えば、上のパネルは、エリンゲンという村で使われていた納屋の一種です。

犂(すき)などの農工具を湿気から守るため、農家の入り口に建てられていました。木材が湿気で傷まないよう、木製の柱はレンガの土台の上に置かれています。また片面にだけ出入り口が設けられている二階部分には、藁や干し草のストックが置かれていました。

エリンゲンの納屋
<エリンゲンの納屋 ©Kanmuri Yuki>

この簡素な納屋は19世紀のものですが、パネル説明によれば、16世紀にブラバント公国の画家ブリューゲル(父)の作品にも、同じような納屋が描かれているそうです。

昔の学校、遊び、小動物とのふれあい

フランダース地方の農家
<フランダース地方の農家 ©Kanmuri Yuki>

いくつかの農家は、家具が設置され、当時の生活をそのまま偲べるようになっています。庭には家庭菜園も再現され、ウサギや鶏、ヤギなどがのんびり草を食む様子も見られます。

農家の室内
<農家の室内 ©Kanmuri Yuki>

さらに曜日によっては、19世紀の衣装を身に着けた「村人」による案内のほか、ポニーに乗ってのお散歩や小動物とのふれあいタイム、昔の学校での授業、フランダース地方の伝統的な遊びなども体験できます。

各種イベントの開催スケジュールは、公式サイトで告知されるほか、入り口にも貼りだされます。

アトリエでの職人体験

ミュゼ・ドゥ・プラン・エールに建つのは、農家の建物だけではなく、鍛冶屋の工房、木製家具を作る指物師の工房、羊飼いが使っていた移動式の寝床、家畜小屋、鳩舎などなど多種多様な建築物です。

鍛冶屋のアトリエ
<鍛冶屋のアトリエ ©Kanmuri Yuki>

事前の予約が必要ですが、工房では実際に鍛冶屋や木工細工、陶器づくりなどの体験も可能です。筆者が訪れた時も、ボーボーと燃える炉を前に、マンツーマンで指導を受けながら、丸太の金床の上でカンカンと鉄を打つ方がいらっしゃいました。

鍛冶屋アトリエ外壁に飾られた聖エロワ像
<鍛冶屋アトリエ外壁に飾られた聖エロワ像 ©Kanmuri Yuki>

いまは目にすることもない鍛冶屋ですが、当時は農工具や蹄鉄の鍛造や修理など、村の生活になくてはならない存在でした。ほとんど休みなく働いていた鍛冶屋の唯一の休日は、守護聖人である聖エロワの祝日だったと言います。というのも、聖エロワの祝日に金床を叩くと金床が壊れてしまうと信じられていたからです。

ミュゼ・ドゥ・プラン・エールにある鍛冶屋の家はオンショット村に19世紀に建てられたものですが、外壁の奥まったところには、今も聖エロワの像が置かれています。

風車の内部見学

興味深い建築が並ぶ中、特に見逃したくないのが、遠めにも目立つ風車です。これは、1750年頃ヴォードリクール村に建てられたものですが、ここにあるのは、一度すべて解体され老朽化した部分は新しくして組み立て直された姿です。高さ約12mの木造で、八角柱の形をしており、四つの羽根の直径は約17mです。

18世紀につくられた木造風車
<18世紀につくられた木造風車 ©Kanmuri Yuki>

風車の二階には臼が置かれていて、風で回る風車の力を用いて小麦などを挽き粉にします。この仕事をするのはフランス語でムーニエと呼ばれる粉屋さん。粉屋さんの朝は、風向きに合わせて風車の羽根の向きを変えることから始まります。

羽根のついた屋根のような部分は、動かせるとは言っても40tの重さ。木製の器具を使うとはいえ、風車の向きを変えるのは、相当な重労働です。

風車内部二階右にあるのが臼
<風車内部二階右にあるのが臼(うす) ©Kanmuri Yuki>

水曜日や土曜日には、粉屋さんが風車の中を案内してくれます。時期によって時間も変わりますので、訪れる前にサイトでチェックしてみてください。

カレー近くフルタン村の鳩舎
<カレー近くフルタン村の鳩舎 ©Kanmuri Yuki>

風車の近くには、黄色いレンガで出来た細長い建物も目をひきます。これは海沿いの町フルタンに18世紀に建てられた鳩舎で、ユーロトンネルをつくるにあたり移設されたものです。

砂を使ったレンガは赤ではなく黄色みを帯びています。育てられた鳩は伝書鳩として活躍したり、食用にされたりしました。また、その糞は肥料としても利用されました。

昔の農家を利用した喫茶レストラン

エスタミネ入り口
<エスタミネ入り口 ©Kanmuri Yuki>

ミュゼ・ドゥ・プラン・エールには、フランダース地方の裕福な農家を利用した喫茶レストラン、エスタミネがあります。エスタミネというのは、フランス北部で使われる言葉で、カジュアルに飲み食いのできる店を指します。

また敷地内にはピクニック専用のスペースも設けられていますので、お天気の良い日には、弁当持参のお出かけにも適しています。

寛ぎ、体験し、学べる野外博物館、お子さん連れにはもちろんですが、大人も楽しめるお勧めスポットです。

ミュゼ・ドゥ・プラン・エールの園内地図
<ミュゼ・ドゥ・プラン・エールの園内地図 ©Kanmuri Yuki>

ミュゼ・ドゥ・プラン・エール

  • 住所:143 Rue Colbert, 59493 Villeneuve-d'Ascq, フランス
  • 電話番号:+33320631125
  • 入場料:大人5ユーロ、4歳~18歳未満は3ユーロ、3歳以下は無料。
  • 公式サイト:ミュゼ・ドゥ・プラン・エール 

営業日は毎年発表されます。

【2024年度】 

  • 4月20日~5月末:水曜~土曜 10:00~18:00、日祝10:00~19:00
  • 6月: 月曜~金曜 10:00~18:00、日祝 10:00~19:00
  • 7月1日~9月1日: 月曜~日曜の10:00~19:00
  • 9月2日~10月20日:水曜、土曜 10:00~18:00、日曜10:00~19:00

※冬季はお休み

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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