【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵

菊姫

あなたは日本酒、お好きですか?

日本酒の中に熟成酒というものがあります。ひとことでいうと、造ってすぐに出荷するのではなく、一定期間寝かせ、熟成させてから世に出すお酒です。

私は大の日本酒党なのですが、熟成酒はそれほど得意ではありませんでした。

熟成酒というと「濃い、重い、クドい」というイメージです。そして実際そういう熟成酒も多いです。

石川県白山市にある「菊姫」。

今回機会をいただき、菊姫の酒蔵を見学させてもらい、飲んでみて感じました。

「これが・・・本当の熟成酒というものなのか!」という驚き。

今流行りの日本酒造りに乗ることなく、酒造りへのこだわりと信念をもって愚直に本物の日本酒を造り続けている骨太の酒蔵「菊姫」。

その魅力を存分にお伝えします。

社名タンク

目次

菊姫酒蔵外観

鶴来の町並み

菊姫合資会社のある白山市鶴来町の通り。どこか懐かしい歴史ある街並みです。

最近の流行りの日本酒とは?

今の日本酒の流行はいわゆる「甘口フルーティー系」といわれるものです。(少し前は「淡麗辛口」が全盛でした。辛口でないと良い日本酒ではない、とまで言われるほどでした。)このように日本酒はその時代で好まれる酒は変わっていきます。

甘口フルーティーの代表格が山形の「十四代」です。このお酒は本当に美味しいお酒で私も大好きです。十四代の登場でこれまで日本酒が苦手だった人が好きになるということも増えたように思います。ただ、十四代の人気が爆発したことで、残念な現象も起こってきました。

十四代を造っている高木酒造は素晴らしい酒蔵で、自分たちの酒づくりを他の蔵にも惜しげもなく伝えていきました。(日本酒業界の慣習ではありえないお話です。)しかし、我も我もと十四代に倣って酒造りをする蔵が増えたおかげで、似たような甘口フルーティーなお酒ばかりが増えてしまったのです。

菊姫はこのような今流行りの酒造りとは対極にある酒蔵です。

菊姫のこだわり

菊姫のこだわりは大きくいうと2つです。

  • (1) 最上級の酒米を使う
  • (2) 熟成させてから世の中に出す

日本酒を造るお米は酒米(酒造最適米)と言われ、私たちが普段食べるお米とは種類が違います。粒が大きく、稲の背が高く、水分は少なめです。

酒米の王様と言われているのが「山田錦」です。一度は聞いたことがあるでしょう。ただひとくちに山田錦といってもピンからキリまであります。

例えばコシヒカリの王様は新潟県の南魚沼産ですよね。

それと同じように山田錦にも最上級の産地があります。

それが兵庫県三木市の吉川(よかわ)町の山田錦です。

菊姫は、この吉川町産の山田錦を使って酒を醸しています。(お酒の種類によって他の酒米(五百万石など)とのブレンドの場合もあり)熟成期間は1~5年間熟成させています。(最上級の菊理媛(くくりひめ)はなんと10年間熟成)

日常の晩酌に飲まれるリーズナブルな普通酒でさえ、1年以上熟成させてから出荷しています。他の酒蔵ではまず見られないことです。

熟成させるには、お酒を貯蔵するスペースももちろん必要ですが、熟成に耐えうるしっかりした米、麹を使った酒造りをしていなければ酒が変質してしまいます。

例えば、他の酒蔵で(名前は出せませんが)、今ブレークしている人気のお酒があります。流行りの甘口フルーティー、香りが立ち、飲みやすい。白ワインのような軽やかなお酒です。新酒の季節にはお店に開店前から行列ができるほどの人気の蔵です。そのお酒は飲んでみると確かに美味しい。しかし封を開けて数日経ってから改めて飲んでみると「ん、あれ?」と感じるほど味が変わっているのです。

こういうお酒は熟成には耐えられないのです。

「熟成して出す」と簡単にいいますが、それは熟成に負けない、逆に熟成によってまろやかに、旨みがのって更に美味しくなる、そういう酒を作らないとだめなのです。

菊姫の酒造り工程

日本酒造りにはいくつもの工程があります。その工程を詳しく説明しているサイトはたくさんありますのでこの記事では詳しく触れませんが、洗米・浸漬→麹造り→もろみ→上漕→熟成などです。

麹室
<麹室>

もろみ

発酵中のお酒の香りが鼻にとどきます。

社名

蔵のあちこちにこのようなしめ飾りが。もともと日本酒は神社に奉納するものですからね。

菊姫の公式サイトは、酒造りの理念・解説がとても詳しく書かれていて内容が濃いので、ぜひご覧ください。

>>>菊姫公式サイト

熟成酒の旨さとは

何度も言いますが、最近の日本酒の流行りは「甘口フルーティー系」です。香り華やか、やや甘めで飲みやすく、いわゆる日本酒らしさがあまり感じられない、白ワインのような飲み口です。

ひと口飲むと「えっ これが日本酒?」と言われることもあり、日本酒が苦手な人もこれで日本酒ファンになった方もいらっしゃると思います。私も決して嫌いではありません。飲むことも多いです。ただこういうお酒はせいぜい飲んで1~2杯までかな、と私は感じています。飲み続けると飽きてくるのです。

日本酒はそもそも食中酒です。料理に寄り添い、料理を引き立て、食事を美味しくいただく、そのための伴走者が日本酒だと思います。(個人の考えです)

香りが強めのフルーティーな酒は、料理とけんかしてしまうのです。お互いを引き立てあうのではなく主張が強すぎる。ですから私は香りが強い酒は食中酒としては合わないように思います。

「熟成酒はどっしりしてて重く濃い酒なら、主張が強すぎるんじゃないの?」「余計に料理のじゃまをするんじゃないの?」と感じられたかもしれません。

はい、私が菊姫を飲んで「えっ!」と感じたのは、これまで私が感じていた熟成酒に対する誤解からでした。

菊姫の熟成酒を飲んで驚いたのは、「角が取れて丸くなり、おだやかでまろやかな優しい酒だった」からです。

口に含むと身体のすみずみまで日本酒の旨さがじんわりと染みとおっていくような感覚です。身体に溶け込んでいく。

これが私が「!!!」と感じた正体です。

今流行りの酒造りには目もくれず、ホンモノの日本酒を造り続ける骨太の酒蔵。

菊姫のお酒は透明ではありません。やや黄色味がかっています。これを見ると「古酒っぽいな~」と感じてしまうのですが、そもそも日本酒というのは、色がついているものだそうです。それを活性炭などで濾すことにより、色を透明にする蔵が多いのだそうです。ろ過することによって透明にはなるけれども、酒の旨みも一緒に濾されてしまう。だから菊姫は、色を透明にするためのろ過はしません。

山廃盃

菊姫 山廃純米の色です。これが菊姫の特徴でもあります。

菊姫の酒を飲み比べ

では、いよいよ菊姫のお酒をいくつか紹介しましょう。

品棚
<蔵の売店で売っているラインナップ>

品棚

「お買い上げは現金で」というホーローの看板がレトロでいい感じです。

鶴乃里
<鶴乃里 4合瓶(720ml)2,200円(税込)>

今回、蔵の売店で買うのなら、とおすすめされたのがこの鶴乃里です。IWC(インターナショナルワインチャレンジ)2007年に初代チャンピオンサケを受賞。山廃の力強さと熟成のまろやかさ、きめ細かさが合体したレベルの高いお酒です。角がとれて丸くこなれた優しい味です。

この後は、東京に戻り、酒屋やスーパーをあちこち探し回って買って飲んだお酒をどどーんとご紹介しましょう。

日本酒勢ぞろい

左から特撰純米、山廃純米、金劔純米、菊、姫の面々。いや~飲みました~。

特選純米
<特撰 純米 3,300円(税込)1,800ml>※写真は4合瓶720ml

濃厚で柔らかい米の旨みがたっぷり味わえる。まろやかで旨みのある深い味。しっかりした造りを感じます。

山廃純米
<菊姫 山廃純米 3,080円(税込)1,800ml>

これぞ「ザ・菊姫」の代名詞のような酒です。山廃らしいガツーンと来る酸の強さと濃醇な深み。菊姫では「男酒」と言われます。

これは日本酒好きの中でも好き嫌いが分かれるほどはっきりした酒で、いきなりこれを飲むのはやめた方がいいかも。もしかすると菊姫を嫌いになるかもしれません。ただ、日本酒が本当に好きな方はこの山廃純米を好まれるそうです。

酒米
<山廃で作られた酒母>

「山廃」とは酒母の作り方昔ながらの酒造り法で、今主流の安定して効率的に速く造る「速醸」に比べ安定せず、造るのがとても難しいと言われています。

>>>山廃とは・・・

金剣 純米
<金劔 純米 3,080円(税込)1800ml>

お米の柔らかさが生きた、やや甘めのお酒です。菊姫の中では「女酒」と言われています。男酒の山廃純米と対照的。

菊
<普通酒 菊 2,200円(税込) 1800ml>

日常的にリーズナブルに味わえる普通酒でも菊姫は手を抜きません。こういうところに酒蔵の姿勢が出ます。「菊」もしっかり熟成させてから世に出します。「冷や良し、燗良し、燗冷(かんざ)良し」普通酒であっても菊姫堂々のクリーンナップです。

姫

<普通酒 姫 1,870円(税込)1800ml>

こちらが普通酒「姫」。毎日の晩酌にぴったりのマイルドで飲み飽きしないお酒。菊姫の中ではさっぱり系。誤解を恐れず言えば、上質の出汁のようにも感じられます。

いきなり「山廃純米」から入ると菊姫を嫌いになってしまうかもしれない(笑)ので、まずはこの「姫」から入るのが良いでしょう。しっかりした酒造りをしている菊姫の良さがよくわかることでしょう。

値段もとてもお手頃。これだけきちんと造っているのに,、一升で1,870円とはコスパ良すぎです。私も晩酌の定番酒にします!

最後に

菊姫の想いは以下のことばに集約されています。

菊姫は、飲みやすいだけの酒や、万人受けする酒、あるいは目新しさを狙った奇抜な酒を造ることは全く考えていません。

一言で言えば、米の旨みがしっかり感じられる酒、一口飲んで違いがわかる酒、世の中の流行り廃りに左右されない酒を目指しています。

気に入っていただけるかどうか、はっきり分かれる酒であるとも言えます。

酒は嗜好品です。だからこそ、他の酒にはない米から造った酒ならではの旨さ、五臓六腑と心に沁みわたるような味わい深さにこだわりたい。

菊姫は、そう考えます。(菊姫公式サイトより引用)

いかがでしたか?

本物の日本酒が飲みたいなら、菊姫、推しです。

>>>菊姫の想いとこだわりがこもった公式サイトはこちら

菊姫でお酒を買ったお土産に酒粕をいただきましたので甘酒を作ってみました。

甘酒

甘酒もまろやかで芯があって美味しかったです。最近甘酒は麹で作ったものが人気ですが、酒粕で作った甘酒は子供の頃を思い出す懐かしい味でした。

菊姫

  • 住所:石川県白山市鶴来新町タ8番地
  • 電話:076-272-1234(代表)
  • 公式サイト:菊姫

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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