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実践!私のマイクロツーリズム〜隠れ名峰が揃う。長野「阿智セブンサミット」登山〜
気軽に出かけられる距離に、自分の冒険心を満たしてくれるフィールドがある。この幸せを、今のご時世になってより実感するようになりました。
日常から少し身を置き、自然に接していると、本来の感覚を取り戻すような、そんな充実感を感じられます。自分にとって、心の拠り所になってくれた場所が「阿智セブンサミット」。
長野県阿智村にある7つの山の愛称です。あまりメジャーな山ではないのですが、どの山も四季折々に美しく、何度でも登りたくなる魅力で溢れています。
今回はそんな愛知・岐阜・長野からアクセスしやすい、癒しの里山をご紹介しましょう!
目次
- 盟主にして百名山の「恵那山」
- 登山家・深田久弥ゆかりの山「蛇峠山」
- クライマックス展望がすごい「大川入山」
- 旧街道の情緒漂う。静謐な山「高鳥屋山」
- 春が美しい。表情豊かな里山「網掛山」
- 森林限界。アルプスの絶景が待つ「富士見台高原」
- 見事な霧氷に魅力される「南沢山」
- 身近から始める山歩きの旅
盟主にして百名山の「恵那山」
阿智セブンサミットの盟主と言える山が、日本百名山にも選ばれている「恵那山(えなさん、標高2,191m)。長野県阿智村と岐阜県中津川市にまたがって、雄大にそびえています。ゆったりとした櫛(くし)形の山容が特徴です。
登山道はいくつか整備されており、どれも日帰りで5〜8時間ほど。ハイキングというより、しっかり登り応えのある点が魅力と言えるでしょう。
中でもおすすめしたいのは、神坂峠(みさかとうげ、標高1,569m)からの縦走尾根ルート(往復6〜7時間)。中央アルプス最南端を形成するこの区間は、ダイナミックな展望と野趣に富んでいます。特に、途中の大判山から見上げる、恵那山は迫力抜群!この時訪れたのは、10月中旬。紅葉が山全体を彩り、息を呑む絶景が広がっていました。
恵那山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村智里
- アクセス:中津川ICもしくは園原ICから神坂峠まで車で40分、神坂峠から往復6~7時間
- HP:恵那山
登山家・深田久弥ゆかりの山「蛇峠山」
阿智セブンサミットのうち、玄人に知名度の高い山が「蛇峠山(じゃとうげやま、標高1,664m)」。なぜなら、登山愛好家のバイブル・日本百名山を選定した登山家・深田久弥が、最後に登った山として知られているためです。
登山口は、愛知・長野の県境・治部坂峠(じぶざかとうげ)をさらに上がった「馬の背(標高約1,450m)」から。登山道と舗装路を交互に歩いて行くと、約45分ほどで山頂へ着きます。
山頂周辺は、レーダー雨量観測所やアンテナ塔が立ち並び、山奥に来たという感慨深さは薄いですが、展望台からは中央アルプスと南アルプスの絶景を味わえます。
深田も「蛇峠山」山頂での感動を綴っており、きっとその臨場感を共有できるはず。アルプスに囲まれるような、このロケーションこそ「阿智セブンサミット」の醍醐味です。
蛇峠山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村浪合
- アクセス:園原ICから馬の背まで車で1時間弱、馬の背から山頂まで徒歩往復1時間30分
クライマックス展望がすごい「大川入山」
蛇峠山と相対するように佇む山が、「大川入山(おおかわいりやま、標高1,908m)」。日本三百名山にも選出されており、同じくマニアックな登山愛好家に人気があります。
こちらは治部坂峠(じぶざかとうげ、標高約1,200m)から尾根伝いに登っていくコース(往復約6時間)。途中、横岳という山頂を経由します。途中、壁のように立ちはだかる南アルプスの山並みを一望!
そして山頂へ近づけば、森林限界の標高へ。奥三河の山並みの開けた風景、そして大川入山の柔らかな稜線美が伸びており、唯一無二の世界観があります。ここまで来ると、先ほどの南アルプスはもちろんのこと、木曽の御嶽山や遠くには加賀の名峰・白山が眺められることも!クライマックスにつれて、感動もひとしおです。
大川入山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村浪合治部坂
- アクセス:園原ICから治部坂峠(登山口)まで車で40分、治部坂峠から徒歩往復約6時間
旧街道の情緒漂う。静謐な山「高鳥屋山」
阿智セブンサミットの中でも、特にマイナーな「高鳥屋山(たかどやさん、標高1,398m)。一番、飯田市街地の近くに位置している里山です。
登山口はいくつかありますが、最短コースの鳩打峠(標高約1,150m)からであれば、往復2時間で登頂できるため、地元のハイカーに支持されています。
一方で、密かにオススメしたいのが、西側の清内路(せいないじ)から登るコース(往復約5時間)。舗装路の終点近くに車を止め、梨小野峠を経由して山頂を目指します。
古くは清内路街道として利用され、江戸時代には水戸浪士が通過したと伝わる登山道は、歴史情緒がたっぷり。またかつて、織田・徳川連合軍による武田攻めで利用されたとも伝わります。
高鳥屋山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村清内路
- アクセス:園原ICから清内路の登山口周辺まで車で約15分。梨小野峠を経由して山頂まで徒歩往復約5時間
春が美しい。表情豊かな里山「網掛山」
昼神温泉郷の南に位置している「網掛山(あみかけやま、標高1,133m)。現在は、中央自動車道の網掛トンネルでその名が知られています。
入山は「太平神社」から。二つの登山口があり、山頂をつないで一周することができます。山頂の景色は開けていないものの、南アルプスを望む「東展望台」のパノラマは圧巻です。
中でも、ミツバツツジが咲き乱れる春(4月中旬〜5月)がおすすめです。新緑の中に映える、妖艶な紫色に癒されます。
特に、東展望台から太平神社をつなぐ区間は、ミツバツツジのトンネルへ変わります。旧東山道の網掛峠を経由して入山、山頂から東展望台、ミツバツツジのトンネルで下山という時計回りで歩くと良いでしょう。
網掛山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村智里
- アクセス:園原ICから大平神社(登山口付近)まで車で約20分、大平神社の右裏手か、林道終点より入山。徒歩で往復3時間~4時間
森林限界。アルプスの絶景が待つ「富士見台高原」
阿智セブンサミットの中でも、とりわけ人気の高い山が「富士見台高原(ふじみだいこうげん、標高1,739m)。山頂まで黒木が迫る、南信州の山には珍しく、山頂一帯は笹原で覆われており、日本アルプスの山並みが雄大に広がります。
神坂峠(みさかとうげ、標高1,569m)まで車でアクセスできるほか、"ヘブンスそのはら"のロープウェイを利用することで、標高差がほとんどなく、ハイキング感覚で登頂可能です。
年間を通じて人気の高い山ですが、中でもおすすめしたいのが冬です。神坂峠は冬季閉鎖になるので、ヘブンスそのはらのロープウェイを活用しましょう!
気候条件が良ければ、雪山の代名詞「霧氷(むひょう※)」を見ることができます。青空に映える純白の絶景は、言葉を失う美しさです。
※過冷却により空気中の水分が木々へ付着する現象。
富士見台高原
- 住所:長野県下伊那郡阿智村智里
- アクセス:中津川ICもしくは園原ICから神坂峠まで車で40分、神坂峠から山頂まで徒歩往復1時間30分
見事な霧氷に魅了される「南沢山」
最後、阿智セブンサミットの中で一番北にある「南沢山(みなみさわやま、標高1,564m)」。普段は登山者も少ない静かな山ですが、冬(12月〜3月)になると多くの登山愛好家で賑わいます。
その理由は、この青と色が織りなす絶景。降雪直後に訪れれば、せいなの森キャンプ場から徒歩約1時間ほどで、霧氷の森へと迷い込みます。
南沢山の山頂周辺までくれば、モンスター級の霧氷がずらり!中央アルプス最南部の厳しい気候条件が作り上げる冬の芸術品です。
山頂から南の稜線へ取り付けば、霧氷が山肌を覆い尽くす、壮観な風景に出会えます。まさに、阿智の山々のポテンシャルの高さを見せつけてくれる、隠れ名峰と言えるでしょう。
南沢山
- 住所:長野県下伊那郡阿智村智里
- アクセス:園原ICから登山口(せいなの森キャンプ場)まで車で約20分、山頂まで徒歩往復4〜5時間
身近から始める山歩きの旅
いかがでしたでしょうか?今回は私のホーム山域になっている「阿智セブンサミット」をご紹介しました。密を避けた旅として、ハイキングら登山はとても有効ですし、その山々で全く違う一期一会の風景に出会えます。
個人的な話で言えば、山と渓谷社がまとめた日本の主要な山「日本の山1000」のうち、私が歩けているのは約120座。まだまだこれからも、未知の山との出会いが楽しみです!
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土庄雄平
- 1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部文化史学科・英文学科卒。サラリーマンの傍ら、自転車旅&登山スタイルで、日本各地を駆け巡るトラベルライター。春は桜を愛でながらサイクリング、夏は冷涼な北日本へ自転車で大冒険、秋は秘境の紅葉を求めて山登り、冬は輝く樹氷と白銀の世界に魅了される。そんな自然の中へ身を投じる旅がルーティーン。