【天狗に必勝祈願&奇跡のパワーライン】 阿賀神社(太郎坊宮)と聖徳太子

阿賀神社

琵琶湖が雄大に在する滋賀県の東近江市には、オリンピックで金メダルを取ったスポーツ選手や、政治家、アイドルまでも、必勝祈願に訪れるという最強パワースポットがあります。

勝負事やコロナなど、何かに"勝ちたい"時に訪問すると、古来よりその山に存在する巨石や、その山に住むと言われる天狗様からパワーをいただけるという「天空の宮」です。私は以前より天狗様を敬っていますので、あちこちに点在する天狗像に触れるたびに、興奮を隠せませんでした。

今回は、『阿賀神社(太郎坊宮)』の魅力と、近辺に伝わる聖徳太子伝説などを、ご紹介したく思います。

目次

阿賀神社(太郎坊宮)の起源

三重県と滋賀県を結ぶ国道421号は、八風街道と呼ばれ、八風峠越えで伊勢と近江を結ぶ道として古くから栄えてきたルート。

その道を行くと、東近江市の霊山「赤神山」(標高350m)が見えます。その中腹に位置する鳥居やら古い建物郡が、東近江の最強パワースポットと言われる『阿賀神社(太郎坊宮)』。

「阿賀神社」は、地元では『太郎坊(たろぼう)』として親しまれてきました。古くからある神道を基に、山岳信仰に修験道や天台山嶽仏教が交わった独特の信仰を残す場所です。その歴史は古く、約1400年前の創建と伝わり、山から霊威を感じた「聖徳太子」が、神祀りをされたことに端を発すると言われています。

太郎坊階段

お祀りされている神様は『伊勢神宮』の『天照皇大神の第一皇子神』である、『正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)』です。

神様の名前に「勝」という字が多いことからわかるように、この神様は「勝運の神さま」です。「まさに勝った、私は勝った。朝日が昇るように鮮やかに、速やかに勝利を得た」という、勝利を象徴する意味が込められているそうです。そのご神徳は、家門の繁栄、商売の隆昌、家内安全、延命息災、厄除け、そして勝運授福など。

太郎坊鉾

アスリートや政治家、起業家や受験生など様々な人が多く訪れ祈願に訪れています。オリンピックで金メダルを取ったアスリート達がわざわざ訪問するほど、威力があるようです。

太郎坊勝ち守り

実際には、「阿賀大明神(あがだいみょうじん)」「太郎坊大権現(たろうぼうだいごんげん)」の二つの尊称を使い分け、人々はご加護を願っています。

古くは聖徳太子をはじめ、伝教大師・最澄や源義経、室町幕府近江守護職であった近江源氏である佐々木氏や、その嫡流である六角氏などの尊崇を集めたほどの、特別なパワーを秘めた場所です。

天狗

平安仏教の面影を残す遺跡などもあり、見どころ満載!

お田植え大祭は毎年5月第3日曜、お火焚大祭毎年12月第1日曜に行われています。要チェックです。

太郎坊とは

「太郎坊」という名前は、天狗さまのお名前です。鞍馬の天狗(愛宕山に住んでいるといわれている)は「次郎坊」で、そのお兄さんが「太郎坊」と言われています。(諸説あり)

鞍馬の天狗さまに関しては、以前に執筆した記事がありますので、ぜひ、ご参照ください!

>>【京の最強パワースポット】鞍馬天狗 (護法魔王尊) と牛若丸 in 鞍馬山

比叡山を開山された伝教大師・最澄が延暦18年(799年)、阿賀神社の神徳に感じ入り、 薬師如来を本尊とする成願寺を阿賀神社の神宮寺として麓に建立しました。その際に、修験道の大成者である役行者の兄弟子であり、赤神山に住んでいた天狗の太郎坊『太郎坊宮の社殿』を建立時に、天狗である太郎坊が現れて手助けをしたのだそうです。ご神徳に感銘を受けて、最澄は50余りの社殿・社坊を建立し、阿賀神社と天台宗の成願寺はやがて神仏習合しました。

それから神社を守護する天狗として「太郎坊が守る場所」とされています。江戸時代には「太郎坊宮の夫婦岩は天狗の住まいなので、人間は行ってはいけない」と書いてある書物まであったとか。

境内には畏敬の念を抱かざるを得ないほど、天狗さまがあちこちにいらっしゃいます。実際には麓から742段の石段を登って、本殿までお参りします。

ドライブウェイを登っていくと中腹の祈祷殿前にある、駐車場や参集殿など境内の一角にたどり着きます。そこから本殿までは、259段あります。
まずは、祈祷殿にてご挨拶を。

2021年、年明けには東近江名物の大凧が飾られていました。「新型コロナウイルス終息と東京オリンピックの大成功を祈願」です。

太郎坊大凧

階段を登り始めると絵馬殿と社務所が見えます。社務所では、お守りなどを拝見しながらも、かつて訪問した著名人の写真やサインが飾られているのを見るのも楽しいですね。

太郎坊著名人

数年前に、真夏にコンサートを終えたミュージシャンらを連れ、最強パワーを頂きながら太郎坊天狗詣でをしました。山から降りた時には、全員が達成感に燃えたいい顔をしながらも、汗だくになっていました。帰り際には「キンキンに冷えたビールが欲しい〜!」と叫んでいたのがいい思い出です。

太郎坊

夫婦岩

本殿に到着する前に、有名な巨岩『夫婦岩』が見えてきます。

太郎坊 夫婦岩

「善良な人が通れば願いが叶い、悪心ある人が通れば挟まれる」という言い伝えもある「夫婦岩(めおといわ)」は壮大。

ここの夫婦岩を始めとする巨岩を『磐座』として欽明天皇の時代には祭祀が行われていたと言われています。入り口には「磐境信仰発祥の地、近江高天原」と書かれた看板がありました。

夫婦岩は、20mに迫る大岩の間に、わずか幅80cmの間道が通ります。ここが「磐境信仰発祥の地」とされ、東近江市の天然記念物と定められてます。

大きい方が男岩、小さい方が女岩。言い伝えによると、大神の神力によって幅約80cm、長さ12mにわたり真二つに押し開かれたといいます。夫婦岩の間道は、東西より約10度のずれがあり、春分や秋分前後の「日の出」、「日の入り」の「太陽の通り道」と同じだそうです。

その巨岩の間を通り抜ける前に、挟まれないように悪心がないか、自分への再確認が必要ですね。子どもには悪戯をしたり嘘をついたら岩に挟まれると教え、戒めの場ともなっていたそうですよ。

両親と一緒にこの夫婦岩に挑んだとき、二人はお互いが挟まれないか、"注目"しながら無事通れたことに安堵していました。笑

ここを無事通過すると、七福神の中の数名と天狗さまの絵が書かれた絵の前で、自らお祓いを済ませ、本殿にたどり着きます。

太郎坊 七福神一部と天狗

太郎坊 本殿

表参道(表坂)と裏参道(裏坂)

太郎坊参道マップ

祈祷殿から、有名な夫婦岩を経て、本殿までが『表参道(表坂)』、本殿から「一眼成就殿」を経て、祈祷殿までが『裏参道(裏坂)』です。

数多くの社殿や神々がそこかしこに存在し、岩肌に沿って歩みつつ下界に見える万葉ロマンの世界を見下ろすと、そこが「天空の宮(パワースポット)」であることを実感します。

表参道(表坂)

祈祷殿→長楽殿→拝殿永安殿→龍神舎御霊水→愛宕社→稲荷社→二見稲荷社→夫婦岩→本殿

本殿まで最短で上るコースで、多少階段がきつくなっています。まず絵馬殿の横の十二支のご神像を通りすぎながら石段を歩みます。

太郎坊干支

それぞれの大きな絵馬には意味があるようですね。在原業平の絵や足利と新田義貞の合戦絵、桃太郎などいろんな絵馬が奉納されていました。

太郎坊 在原業平

太郎坊 一願成就社の裏側

  • 子:子授
  • 丑:根気
  • 寅:決断
  • 卯:飛躍
  • 辰:信頼
  • 巳:貫徹
  • 午:勝利
  • 未:安泰
  • 申:学芸
  • 酉:繁栄
  • 戌:恩義
  • 亥:勇気

裏参道(裏坂)

本殿→地主→一願成就社→お百度参詣道→絵馬殿→祈祷殿 (各所に七福神と福助さんがいらっしゃる比較的楽なコースです)

一願成就社の横の道を入ると、紫微社にたどりつきます。これが「お百度参詣道」です。

太郎坊 お百度参り

太郎坊 一願成就社

その参道途中でお迎えしてくださるのが「行者像」と「天狗」さま。

太郎坊 役行者

「必願10倍石」なるものもあり、なんとも霊山「赤神山」の威力を感じざるを得ない場所になっています。

一願成就社と紫微社の間を何度も往復する「お百度参り」をしながら、石段の横にある洞窟内に石を奉納します。その洞窟の上では、弁財天さまが見守ってくださっています。

太郎坊 弁天

牛若丸として有名な、あの源義経も、奥州へ落ち延びる前にここに訪れ、源氏の再興を祈願しました。その時に義経が休憩の際に腰をおろした岩が、今も残されており、義経公腰掛岩と呼ばれています。

太郎坊 義経腰掛岩

そんな時代から強い信仰があったのかと、つくづくこの土地の持つエネルギーやパワーに感嘆します。

聖徳太子と東近江

勝利と幸福を授ける太郎坊宮。そこでは、1人1,500円、だいたい30分くらいでお気に入りの、唯一無二のお守りが作れます。

また、「太郎坊団子」なる近江米から作られたみたらし団子が、絵馬殿で販売されてました。

太郎坊だんご

社務所では、力強い御朱印もいただけます。

太郎坊御朱印

それでは、この近辺の歴史ロマン発掘にも向かいましょう。

東近江近辺には、太郎坊宮以外にも聖徳太子の影響があちこちに見受けられます。

「八日市は四天王寺の瓦を献上したので、お返しに聖徳太子が市場を開いたと伝えられてきた」と言われています。

薬師如来の縁日は8日とされ、その日に聖徳太子が八日市を開いたことから、このあたりの地名が八日市となったとか。最澄が開山した比叡山延暦寺の御本尊も薬師如来ですね。

東近江市によると、聖徳太子の開基とされる寺院は県内に89ヶ所あり、うち27ヶ所が東近江市内にあるそうです。

聖徳太子の足跡マップ

「市宮えびす」として知られる市神神社もその一つ。

神社の古文書には「601年3月8日、聖徳太子が初めてこの地に市店をお開きになり、上下の別なく交易の道を教えたまう」との記録があります。持統天皇の命により「聖徳太子は四天王寺の瓦を作るため、八日市に職人らを集め、そこで市場を開いたらどうかという風になった」という言い伝えもあるそうです。

北花沢・南花沢にある国の天然記念物に指定の「花ノ木」は、1300年ほど前に聖徳太子が百済寺を建立した際に、この地で昼食を取り、その箸を地面にさされ、それが成長してハナノキになったという伝説があります。

また、近くには聖徳太子が山中の土を用いて瓦を106,000枚から108,000枚造らせ、摂津(大阪)四天王寺建立の際にその瓦を用いたのが寺名の由来といわれる瓦屋寺があり、本堂の十一面千手千眼観世音菩薩立像、四天王像四体、地蔵菩薩座像は、寺伝によると聖徳太子作と言われています。

「百済寺」は、606年に渡来人のため創建され、聖徳太子が仏教を広く後世に伝え残すため、法隆寺(奈良)、広隆寺(京都)、百済寺(近江)の3所に分散し、建立した寺院の一つです。

2022年(令和4年)に『聖徳太子薨去1400年』を迎えるにあたり、聖徳太子に関係があったとされる東近江地域(東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町)は活気付いています。

「太郎坊宮は、聖徳太子が国家の安泰と人々の幸福を祈願して創建されたといわれており、いろいろな由来や言い伝えなど物語がありますが、おのおのに受け止めて信仰してもらえればと思っています。」(宮司談)とのこと。実際に訪れることで、何か発見があるかもしれませんね。

奇跡のパワーライン

太郎坊 天狗像

日本地図を眺めていると、西から順に、

  • 龍雲寺(韓国光州)
  • 鞍馬山次郎坊(京都市)
  • 寂光院(京都市)
  • 比叡山延暦寺(大津市)
  • 太郎坊宮(東近江市)
  • 百済寺(東近江市)
  • 熱田神宮(名古屋市)

これらの寺社が、すべて『北緯35.1度線上』に存在するのがわかります。「奇跡のパワーライン」といわれており、必然的に意味があって位置づけられているのでは、と言われています。

大陸パワーが色濃く残るこの箕作山麓周辺の蒲生郡・神崎郡は、万葉集でも分かるとおり、大化の改新で有名な『天智天皇』ともゆかりがあります。

『天智天皇』は655年と669年に1,100名余りの人を、この地に送り込んだと日本書紀に書かれています。近くには高麗寺、百済寺等随所に渡来人との関りを思わせる名称が残っており、窯場跡などを見ると財力や技術の高さに驚かされるようです。

『天智天皇』陵が京都市の山科区御陵という地域にあり、同じ山科に『中臣遺跡』もあります。京都でも、琵琶湖に近い山科を天智天皇は寵愛していたという言い伝えがありますが、そこに渡来人ではないか、と言われる中臣一族が住んでいたのも不思議なご縁ですね。

日本書紀には、渡来人数百人が居住していたと記載があり、ものづくりや土木の先端技術を導入したことで知られています。この東近江地区は早い時代から、豊かで栄えていたことが見て取れます。聖徳太子もその豊かな文化や発展した技術などに注目したのかもしれません。

2022年の聖徳太子薨去1400年に向け、秘仏公開やイベントなども予定されています。

阿賀神社(太郎坊宮)で天狗や天空パワーをいただきつつ、聖徳太子ゆかりの地や奇跡のパワーラインにまつわる場所を巡って、歴史ロマンに耽ってみてはいかがでしょうか。

>>阿賀神社(太郎坊宮)公式ホームページはこちら

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RICA NAKAJIMA

京都生まれ&育ち。世界各地をバックパッカー周遊しながらロンドンに6年、ニューヨークに10年以上滞在。日本のコアな伝統文化や神社仏閣、世界の文化芸術、史実関連を中心に新聞・雑誌などで執筆。また経験に基づく“陰謀説”系の電子書籍出版もあり。ジャーナリストのほか、写真映像家、YouTuber、NY州不動産ブローカー、音楽プロデューサー&イベンター、ヒーラー、日本庭園師などマルチに活躍中。

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