クリスチャン・ルブタンの秘密教えます

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<ルブタンを代表する「ピガール」© Jean-Vincent Simonet>

ため息ができるようなセクシーラインのハイヒールで知られるクリスチャン・ルブタンの展覧会が、パリのポルト・ドレ宮で再開されます。2月末にオープンしたものの、パンデミックによるロックダウンで3か月も閉鎖されていました。再オープンは6月16日。嬉しいことに会期も半年延長され、2021年1月3日までと決まりました!

>>>クリスチャン・ルブタン公式サイトはこちら

目次

セレブの足元に欠かせないルブタン

今では、多くのセレブの足元を飾るルブタンのハイヒール。その存在感を写真で見てみましょう。こちらは、1995年薔薇の舞踏会で、モナコのカロリーヌ公女が履いた「パンジー」という名のハイヒールです。

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<カロリーヌ モナコ公女 © Sipa>

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<「パンジー」1992-93秋冬コレクション © Jean-Vincent Simonet>

冒頭のハイヒール「ピガール」を2019年のパリ・ファッション・ウィークで履いたのは、米国の女優のゼンデイヤです。ルブタンのハイヒールの象徴ともいえる靴裏の赤が効いています。

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<2019年7月パリファッションウィークにて、「ピガール」を履いたゼンデイヤ>

この靴裏の赤は、1992年のある日、工房で作業中にルブタンがふと思いついて、アシスタントのマニキュアを靴裏に塗ったことから始まりました。

クリスチャン・ルブタンの発想の自由さをよく表わすエピソードです。

自らをさらけ出す、初の特別展

クリスチャン・ルブタンはシャルル・ジョルダンなどで、クリスチャン・ディオール向けのハイヒールを作るなどの経験を積んだのち、ハイヒールのデザインで知られたロジェ・ヴィヴィエの下でアシスタントを務めました。その後パリで、自身の名を冠した店を興したのは1991年のことです。

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<ハイヒールを作るにはおよそ100の工程が必要 © Philippe Garcia>

やがて数々のレジェンドを生み出すことになるクリスチャン・ルブタン。彼のインスピレーションの源から製作法まで、すべてをさらけ出す初の展覧会がこの『Christian Louboutin L'Exhibitionniste(クリスチャン・ルブタン、エグジビシオニスト)』展です。

「エグジビシオニスト」は、英語の「Exhibition=展覧会」と、フランス語の「Exhibitionniste=露出趣味」を掛けた言葉で、ルブタン自身「自分自身を他人にさらけだす」覚悟で選んだタイトルだと語っています。

多感な時期を過ごしたパリ12区ポルト・ドレ宮

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<ポルト・ドレ宮のクリスチャン・ルブタン© Courtesy of Christian Louboutin>

クリスチャン・ルブタンはパリに生まれ12区で育ちました。12区は、バスティーユ広場から東に広がる地域で、パリ・リヨン駅やヴァンセンヌの森も含みます。ヴァンセンヌの森の西端にあるのが今回特別展会場となったポルト・ドレ宮です。

ポルト・ドレ宮は、1931年の博覧会のために建てられたアールデコ様式の建物で、歴史建造物の指定を受けています。現在は熱帯水族館と移民歴史博物館が入っており、年間45万人が集う場所です。

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<ポルト・ドレ宮のファサード © Palais de la Porte Dorée, 写真Pascal Lemaître>

元は、「アフリカ・オセアニア美術館」が置かれていたこともあり、ファサード(店舗正面の外観)にも、内部のフレスコ画やモザイクにも、異国の香り漂うモチーフが多く使われています。

ちなみに、ここにあったアフリカとオセアニアの美術品は、2006年当時のシラク大統領が創立したケ・ブランリー美術館に移送されました。

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<ポルト・ドレ宮のフレスコ画 par Pierre-Henri Ducos de la Haille © Cyril Sancereau>

ルブタンは子供のころ、このポルト・ドレ宮近くの学校に通っていました。

「ドーメニル通りの映画館で何時間も過ごしたよ。当時はインドやエジプトの映画を上映していた。週末はよく熱帯水族館で、熱帯魚の色と輝きに魔法をかけられたり、アフリカ・オセアニア美術館へ通ったよ」
とは本人の弁です。その"魔法"が作り出したのが、ごく初期の鯖のハイヒールです。

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<1987年に作ったサバのハイヒール、熱帯水族館前にて © Christian Louboutin>

初めて目にしたハイヒールの絵

また、ルブタンがハイヒールの絵を初めて目にしたのも、ポルト・ドレ宮だったといいます。下は、ルブタンが再現したポルト・ドレ宮にあった「ハイヒールを禁止」するパネルです。

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<ルブタン再現によるポルト・ドレ宮のパネル © Christian Louboutin>

10~12歳のころ見たこのパネルが強烈に意識に刻まれ、のちの「ピガール」というハイヒール(冒頭の写真)を生み出すことになるのです。ハイヒール禁止パネルが、のちのハイヒールブランド、ルブタンを生み出したというのも面白いものです。

いずれにせよ、ポルト・ドレ宮ほど、初のルブタン特別展開催場所に相応しい場所はないと納得できる話です。

幅広いジャンルとのコラボの数々

今回の特別展では、ルブタンの代表的なハイヒールや、初公開の作品、デザイン画を展示するだけでなく、彼のインスピレーションの源となった旅、ポップカルチャー、ショー、ダンス、文学、映画などについても丁寧に紐解かれます。また、ルブタンの思い描く世界を世界各国の職人やアーティストとコラボし、目に見えるものとしました。

例えば、セヴィリアの銀細工、ブータンの彫刻などのオブジェが展示空間を作ります。展示室を鮮やかに彩るステンドグラスの数々はすべてこの特別展のために、ルブタン自身が、パリの工房のメゾン・デュ・ヴィトライユと念入りに打ち合わせて作り上げたものです。

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<ステンドグラスのアトリエで打ち合わせる19世紀のアールデコ専門家、オリヴィエ・ガベとクリスチャン・ルブタン ©Courtesy of Christian Louboutin>

コラボしたアーティストも、映画監督であり写真家でもあるデヴィッド・リンチ、パキスタンのアーティストのイムラン・クレシ、インドの服飾デザイナーのサビヤサチ・ムカージー、ニュージーランドのマルチメディアアーティストのリサ・レイハナ、スペインの振付師のブランカ・リー....と、実に国際色豊か。

彼らの手により、ルブタンとハイヒールをテーマにしたさまざまな形のアート作品が展開されます。例えば下の写真では、モデルのベラ・ハディッドが「ヌード」シリーズの透明なハイヒールを履きこなしています。

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<2019年カンヌ映画祭で「ヌード」を履いたベラ・ハディッド © Getty Images>

この「ヌード」シリーズを下地に、イギリスのアーティスト、ウィテカー・マレムがグラデーションをつけて表現したもののひとつが下の「デグラストラス」です。

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<「デグラストラス」© Jean-Vincent Simonet>

特別展の最後には、ルブタンの想像美術館と題された空間が置かれています。まるでルブタンの脳の中に迷い込むような体験のできる特別展といえるでしょう。

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<永久に続く波 © Jean-Vincent Simonet>

内装のひとつひとつから、ルブタン自身が精魂を傾けて準備したこの特別展。再開と会期延長が決まり、やっとこうして紹介できるのは嬉しい限りです。安全な旅ができるようになって、ひとりでも多くの人が訪れられることを祈っています。

Christian Louboutin L'Exhibitionniste(クリスチャン・ルブタン、エグジビシオニスト)展 基本情報

  • 開催場所:ポルト・ドレ宮
  • 住所:293 Avenue Daumesnil, 75012 Paris 12
  • 最寄り駅:メトロ8番線 Porte Dorée駅
  • 会期:2020年6月16日~2021年1月3日
  • 開館時間:火曜~金曜の10時から17時半、土日の10時~19時
  • 閉館日:月曜日
  • 入場料:大人12ユーロ(約1,450円)
  • URL:https://www.palais-portedoree.fr

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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