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ウィーンではクリスマスに何を食べる?意外なクリスマスの習慣と伝統
ヨーロッパでも日本でも、クリスマス前の年末のワクワク感は格別で、家族や仲間との時間、プレゼントや連休を楽しみする人も多いですね。
実は、クリスマスの習慣や食べ物は、国によって似ているようで、結構違います。
今回は、ウィーンの一般的な家庭での、クリスマスの楽しみ方と習慣をまとめてみました。
目次
クリスマス前の楽しみ
オーストリアにはフォーフロイデ(Vorfreude、事前の楽しみ)という言葉あり、これは、クリスマス前のワクワクする時期を指します。正確には、クリスマスの約4週間前から始まるアドベント(待降節)から、毎週近づいてくるクリスマスを準備する期間です。
この時期は、アドベントクランツと呼ばれる、クリスマスリースの原型のようなものを各家庭で用意します。ろうそくに灯す火を日曜日ごとに一つずつ増やしていき、クリスマスまでには4つ全てに火が灯っている、というのが、アドベントクランツの使い方です。キャンドルの数で、クリスマスまであと何週間か、小さい子供にもわかるようになっています。
<アドベントクランツに4つ火がともったら、クリスマスまでもうすぐ>
また、アドベントカレンダーで、12月1日から25日までカウントダウンするなど、クリスマスを待つための工夫は色々あります。
<カード型のアドベントカレンダー>
クリスマス本番っていつ?
日本では、12月24日がクリスマスイブ、25日がクリスマス当日で、恋人とロマンチックに過ごすと考える人が多いようですが、オーストリアでは、クリスマス本番は24日夜で、家族で静かに過ごす習慣があります。
<クリスマスマーケットに売られたツリー飾り>
オーストリアのクリスマスは、実家に帰省して伝統的な料理を食べ、教会に行き、家族で静かに一年を振り返るための日で、日本のお正月と似た位置づけです。(逆にオーストリアのお正月は、外で爆竹を鳴らしたり、友達と徹夜でパーティーしたりする日になっています。)
そんな、クリスマスの中でも最も重要な12月24日ですが、オーストリアでは祝日ではありません。24日の午前は仕事をして、午後休となる人がほとんどで、25,26日の連休に備えます。クリスマス時期にオーストリアを訪問する方は、24日午後から26日にかけて、お店等休みになりますので、ご注意ください。
プレゼントとツリーはいつ、だれが用意する?
オーストリアの家庭では、クリスマスツリーは、12月24日に初めて飾り付け、家族の前にお目見えします。
クリスマスイブの夕方は、Heiligabend(聖なる夕べ)、もしくはWeihnachtsabend(クリスマスの夕べ)と呼ばれ、クリスマスの中では最も重要な時間帯です。この日の夕方には、家族が集まり、ベシェールング(Bescherung)と呼ばれる、ハイライトの行事が行われます。
この夕方に備え、一家の長は、さまざまな準備をします。まず、街角で生木ツリーを買ってきて、だれにも見つからないようこっそりと、クリスマスツリーの飾りつけをします。暗くなると、仕上げに本物のキャンドルに火をともし、ベルを鳴らします。ベルの音を合図に、部屋の外で待ち構えていた子供たちが扉を開けると、暗い部屋には、火がともされたクリスマスツリーが美しく輝き、歓声が響きます。大人も、ツリーを誰かがこっそり準備したことは知っていても、「わー!」と喜びの声を上げるのがお約束です。
<オーストリアの家庭の伝統的なクリスマスツリー>
そして、ツリーの足元には、プレゼントの山。しかし、プレゼントを持ってくるのは、サンタクロースではありません。オーストリアには、サンタクロースの習慣は存在しないのです(12月6日にお菓子を持ってくる、サンタクロースの起源となった聖ニコラウスはいますが、別物です)。
オーストリアでは、クリストキント(Christkind)と呼ばれる、「赤ちゃんのキリスト」が、プレゼントとツリーを持ってきてくれると言われています。オーストリアは今はカトリックの国ですが、一時期プロテスタント化した時に聖人信仰が否定され、その習慣が現在まで続いているからだそうです。
<キリスト誕生の様子を描いたツリー飾り>
さらに、プレゼントを開ける前に、まだやることがあります。ツリーのキャンドルの明かりを頼りに、家族でクリスマスソングを歌います。ドイツ語のクリスマスソングは、日本のものとは大きく異なりますが、20曲ほどの定番曲があります。「きよしこの夜」は、オーストリア生まれの歌ですので、必ず歌われます。
そして、プレゼントタイムが始まります。プレゼントを開けるときのワクワクは、洋の東西を問いませんね。ちなみに、オーストリア人の平均クリスマスプレゼントの出費額は400ユーロ弱(約5万円)だそうです。
クリスマスの伝統的な料理
クリスマスプレゼントを開けた後は、夕食の時間です。しかしこの日は、クリスマスディナーのような豪勢な食事ではありません。キリストの誕生という宗教的なイベントを祈念し、肉食を避け、シンプルな食事が良いとされています。
ウィーン周辺では、この日は鯉とジャガイモを食べるのが一般的です。(ウィーンから東や南の習慣で、オーストリアでも地方によって異なります。)この地方で貧しい人でも食べられる食材ということから、クリスマスをどんな家庭でも祝うことができる料理とされています。
他にも、鯉の形がお金に似ている、鯉の頭が「生贄」を思わせる、鯉の頭の骨がハトに似てるなど、色んな理由でラッキーアイテムとされているようです。
<魚の内臓とアラのスープ>
<鯉とマスのフライと、ジャガイモサラダ>
鯉は脂っこく、胸焼けしやすいので、マスやパイクパーチなど、ほかの魚で代用する家庭も多いようです。
また、特定のクリスマスケーキはなく、さまざまな種類のクリスマスクッキーをつまむのが、オーストリア流。
<手作りのクリスマスクッキー>
クリスマスイブの夜は、こうやって家族で静かに、質素な食事をして、心温かに過ごすのが、オーストリア流クリスマスの楽しみ方です。
食道楽のクリスマス
さて、静かに家族でクリスマスの夜を過ごした翌日、25日(キリストの祝日、Christtag)からは、パーティームードの食道楽の日々です。この日には、親戚一同が集まり、にぎやかに美味しい食事をいただきます。
この日に食べるのは、ガチョウ。巨大な丸焼きを、親戚一同で分けて食べるのは、クリスマスならではです。
<ガチョウの丸焼きには、赤キャベツを添えて>
翌26日は聖シュテファンの祝日(Stephanitag)ですので、この日もゆっくりとパーティーの残り物を食べたり、親戚を訪問したりしてすごします。まるで日本でいう、元旦の三が日ですね。
日本の正月ムードが1月15日まで続くように、オーストリアのクリスマスムードは、1月6日の三聖王の祝日まで続きます。
まとめ
オーストリアの一般家庭での、クリスマスの過ごし方は、いかがだったでしょうか?
住んでみないと、なかなか実際に体験することはない習慣ですが、観光目的の訪問でも、このような古い習慣を知っていると、街のデコレーションやイベントなどの理解が深まるかもしれません。
この時期にウィーンにいらしたら、レストランなどでも、この時期特有のクリスマスグルメを味わってみてくださいね。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。