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超おすすめ!ペルー産ビーントゥーバー・チョコレート「Maraná」
6月にご紹介した「サロン・デル・カカオ・イ・チョコラテ・ペルー 2019」。
今年も多様性に富むペルー産カカオの実力が再認識された、素晴らしいイベントになりました。また、ペルー産カカオをふんだんに使ったさまざまなビーントゥバー・チョコレートやカカオ由来の商品が紹介され、とても活気にあふれた4日間でした。同時開催の「インターナショナル・チョコレート・アワード(ICA)」ペルー大会では、筆者おすすめのチョコレート「Maraná(マラナ)」が金・銀あわせて7つの賞を受賞。
後ほどご紹介する「クスコ50%」は、総合優勝にも輝いています。そのICAの日本人審査員、さつたにかなこさんがマラナの工房を視察すると聞き、同行させてもらいました。世界的なチョコレートソムリエであるさつたにさんは、各国から選りすぐったビーントゥバー・チョコレートを輸入販売する「Tomoé Saveur(トモエ・サヴール)」の代表も務められています。
>>前回の記事:チョコレートラバー必見!「サロン・デル・カカオ・イ・チョコラテ・ペルー 2019」開催!
目次
カカオの香りに包まれたマラナの工房
リマ市バランコ区にあるマラナ。その工房の扉を開けたとたん、カカオの香りがふわんと漂ってきました。マラナのオーナー夫婦、ジュゼッペさんとスレマさんは、もともと大手企業でマーケティングを担当していました。夫婦そろってMBAホルダーという生粋のビジネスマンでしたが、「いつか自分たちの会社を立ち上げたい、社会的意義のある仕事がしたい」と思っていたそう。
そんな時に出会ったのか、ペルー産のカカオでした。オーガニックカカオで世界第2位の生産量を誇るペルーには、160品種以上のカカオが存在します。2人は国内のカカオ農家を訪ね、その品種や栽培について学ぶうち、もっと生産者に寄り添いたいと思うようになりました。「彼らが手間暇かけて育てた素晴らしいカカオを紹介したい。そのカカオを使ったチョコレートを世界に広めたい」という思いから、「Maraná(マラナ)」が誕生したというわけです。
マラナとはケチュア語で、アンデス世界で古くから使われている石臼"Batan(バタン)"を意味します。カカオ農家にとって、バタンは自家製ホットチョコレートを作るのに欠かせない道具。どの家にも必ず1つはあるバタンは、ペルーのカカオ農家の象徴というわけです。
工房の壁にかけてあるこのボードを見ながら、ビーントゥーバー・チョコレートの作り方を簡単にご説明しましょう。
- 1. カカオの収穫
- 2. カカオポッド(カカオの実)からカカオ豆とパルプ(果肉)を取り出す
- 3. カカオ豆をパルプと一緒に混ぜ合わせ、発酵させる
- 4. 天日で乾燥
- 5. 焙煎
- 6. コンチング(練り上げ)と精錬
- 7. テンパリング
- 8. チョコレートの完成!
テンパリングとは、温度を調整しながらチョコレートに含まれる油脂の結晶を安定化させること。これの良し悪しでチョコレートのツヤや口当たりがぐっと違ってきます。またここには記されていませんが、5と6の間には豆の粉砕やカカオニブと殻をよける工程もあります。
視察中のさつたにさんと、同じくチョコレート専門家のレナさん。2人からの質問にジュゼッペさんが的確に答えていきます。
コンチング中のチョコレート。この状態でもすごく美味しい!
ピウラ、サン・マルテイン、クスコ。マラナのチョコレートは3つの産地から
マラナのビーントゥーバー・チョコレートは、ペルー北部海岸エリアの「ピウラ」、アマゾンエリアの「サン・マルティン」、そしてアンデス山地の「クスコ」から取り寄せた豆を使ったシングルオリジン(単一産地且つ単一品種のカカオで作ったチョコレート)。カカオ含有量はそれぞれ50%、70%、80%で、クスコ産にはカカオ100%もあります。
こちらはピウラ産ホワイト・カカオを使ったシリーズ。19世紀のペルーを代表する画家パンチョ・フィエロの水彩画をモチーフにしたパッケージは、カカオの収穫から発酵、乾燥までの様子を表しています。希少種が多いペルー産カカオの中でも、特にその生産量が少ないといわれるホワイト・カカオを使用。オレンジやレモン、レーズンなど、ホワイト・カカオ特有の柑橘系の香りが素晴らしい、非常に上質なカカオです。
お次はサン・マルティン州の州都タラポトから車で約7時間、トカチェ地区で栽培されるアマゾンカカオを使ったシリーズ。深いブルーをベースにしたパッケージには、収穫したカカオをカヌーで運ぶ男性や、カカオを愛でるアマゾン川の人魚などが描かれています。テロリストの潜伏先として知られるトカチェ地区には、今も彼らに脅され違法なコカ栽培に手を染める村人が少なくありません。そうした人たちの代替農産物として注目を集めているのが、カカオやコーヒーです。
「トカチェの人たちの暮らしを少しでも支えたい、生きる力やモノを育てる喜びを知ってもらいたいんだ」と、ジュゼッペさん。気候風土に恵まれたトカチェ産のアマゾンカカオはブドウやレーズン、プルーンを彷彿とさせるフルーティーな香りが特徴。品質も安定しており、アメリカやイタリア、スペイン、そして日本にも輸出されています。
最後はクスコ州キジャバンバ地区で栽培されるチュンチョ種を使ったシリーズ。パッケージに描かれたこの牧歌的な画風は、「sarhua(サルワ)」と呼ばれるアンデスの伝統的な板絵をデフォルメしたもの。3シリーズの中で最もペルーらしさを感じられるパッケージとあって、お土産としても人気なんですよ。
ペルーの固有種であるチュンチョは、世界のチョコレート業界が今最も注目するカカオのひとつ。サワーソップやパッションフルーツに似た爽やかな酸味と、アーモンドなどナッツのような風味が特徴の素晴らしいカカオです。
ICAお墨付きのマラナは日本でも入手可能!
ICAから贈られたたくさんの表彰状を前に、「おかげ様で今年もたくさんの賞をもらうことができたよ」と嬉しそうなジュゼッペさん。ペルー大会に先駆けて行われたICAアメリカ大会でもメダルを4つ獲得するなど、マラナは2016年から現在まで合計39もの賞を受賞しています。
国内外で高い評価を得ているマラナのビーントゥバー・チョコレートは、リマ市内に展開するスーパーWongを始め、先月ご紹介したオーガニックショップ「Frora&Fauna」のほかさまざまなお店で購入できます。全種類をお試しいただきたいですが、初めての1枚なら「クスコ70%」がおすすめとのこと。開封と同時にふわっと広がる素晴らしい芳香、食べる前からワクワクしてしまうチョコレートです。また「せっかくペルーを旅行したのに、時間切れで買えなかった!」という方もご安心を。日本では、さつたにさんの「Tomoé Saveur(トモエ・サヴール)」で取り扱っていますよ。
「『ビーントゥバー・チョコレートってどうして高いの?』って聞かれることがよくあるよ。でもそれにはたくさんの理由がある。まずはオーガニック栽培であること。手間暇を惜しまない分、どうしても時間と経費がかかるんだ。ビーントゥバーは農家から直接購入するフェアトレードの精神を大切にしているから、豆の価格も工業向けの2倍以上するしね。無農薬かつ無添加だから、カカオの管理や製造工程の品質管理も難しい。ビーントゥバー・チョコレートの消費量がもっと増えれば、将来的には価格を下げることも可能だと思うよ。ボクたちは『美味しい、また食べたい』って思ってもらえるようなチョコレートを作るだけさ」
ペルー産カカオとチョコレートへの愛にあふれたジュゼッペさんとスレマさん。2人が作るマラナのビーントゥバー・チョコレートで、ペルー産カカオの実力をぜひご確認ください。
Maraná/マラナ
- 公式サイト:https://marana.com.pe/
※リマのほか、クスコやアレキパ、ピウラ、トルヒーヨ、パラカスなどにも拠点あり - 日本でのお求め先:Tomoé Saveur/トモエ・サヴール
公式サイト:http://t-sav.com/
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原田慶子
- ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。