たびこふれ

築地のいい店、酔える店 第2回『長生庵』

記事投稿日:2019/05/12最終更新日:2019/05/12

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心地よい築地の宵を過ごせる、よい店を訪ねて酔いしれるシリーズ。2軒目は初回で登場した『喫茶マコ』つながりの、築地場外市場の人気蕎麦屋さんへとはしごします。

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<『喫茶マコ』で知りあった『長生庵』2代目の「そうさん」こと、松本聰一郎さん(左)>

目次

おいしさを探究する人

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<『喫茶マコ』の水曜日限定・雑煮セット『長生庵』のダシに、築地の上質な食材を合わせている>

桜が咲き誇るころ、築地場外市場の『喫茶マコ』で知り合ったのが近くの蕎麦屋さん『長生庵』(ちょうせいあん)2代目の松本聰一郎さん。「そうさん」と呼ばれている松本さんは水曜日に『喫茶マコ』を任されていて、私はその日にたまたま訪れたのでした。

そうさんは人気メニュー、雑煮のベースとなるダシを納めるほか、フードメニューづくりにも関与。地元の佳い食材を選ぶお手伝いもしています。聞けば、メニュー開発にあたって、いろいろな店を食べ歩いているそう。「たぶん、どこの雑煮にも負けていないと思うんですよね」と控えに自信を覗かせる言葉にはおいしいものへの探究心が感じ取れます。

そうさんは、毎年11月に開催している「築地はしご酒」の委員長を務めてもいて、夜の築地には詳しい方。そんな食いしん坊のそうさんが営む『長生庵』の暖簾を夜にくぐることにしました。

夜も大人気の蕎麦屋さん

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<『長生庵』のテーブル席>

旬素材を採り入れた創作蕎麦料理が特徴の『長生庵』。日々の限定メニュー、お得なメニューなどのtwitterでの情報発信も反響あり、賑わっていますが、夜も2週間前に予約が必要なほど人気。夜は日本酒と地酒、日本ワインなど約30種のお酒全品が2時間飲み放題の3つのコースも用意。私は料理6品の「好(よし)」5,500円(税別)を予約しました。

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<日本酒セラーにストックされる多様な酒。純米吟醸、無濾過生原酒など、身体に優しいお酒を厳選している>

いろいろ呑んでもひたすら気持ちいい!

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<この日に呑んだ日本酒と日本ワイン。左より石川県・吉田酒造店の『u yoshidagura山廃純米無濾過生原酒』、福岡県・井上合名合名会社『三井の寿 純米吟醸 無濾過生酒 La Primavera Quadrifoglio』、福島県・花泉酒造『かすみロ万 純米吟醸 うすにごり生原酒』、山梨県・中央葡萄酒(グレイスワイン)『グレイス ロゼ』。どれも和の料理によく合う。>

私は酔う感覚や、お酒のある情景が大好きなのですが、お酒にあまり強いわけではありません。最近はワインや日本酒を呑むと、頭が痛くなり、翌日に身体が重く、気分が沈むことも多々。そのため、外で呑む機会が減っています。年齢の影響かと思っていたのですが、そうではないようです。

そうさんが選んでテーブルに運んできたフルーティな日本酒や日本のワインはいろいろ呑んでも、ずっと気持ちよく酔え、2日酔いも皆無。妻も日本酒とワインをちゃんぽんして、たくさん呑んでも身体が楽だねと感動していました。

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<乳酸菌の力を借りて造ったアルコール度数13%の『u yoshidagura』。uは「優」の意味。まずは、この優しい度数からと勧めてくれた。日本酒も磁器のお猪口だけでなく、ワイングラスに注ぐと香りが変わりますよとも教わり、試したら本当だった。グレープフルーツを搾ったような酸味が身体に優しく沁みる。>

未来を向いたメニュー

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<春野菜とオレンジの酒粕和え、最中入りを『u yoshidagura』とともに味わう>

赤星(サッポロラガービール)の中瓶で喉を潤したあと、洒落た瓶を傾け、お猪口とワイングラスで1杯、2杯。華やかに高揚する頃合いを絶妙にはかるように、最初の料理が運ばれてきました。最中に吉田酒造店の酒粕を和えた春野菜が載る小粋な一皿にときめきます。続く料理も魚介、野菜や肉を取り混ぜ、多彩な構成。土地柄から魚介中心なのではという想像が良い意味で反していました。
じつは私、魚介類を率先して食べず、せっかくの料理がもったいないと、この日は魚介好きな妻を同伴。そんな偏食の私でも魚介の料理に感じ入り、お酒も進みました。また、酒粕や白味噌を和えるなど伝統食材をふんだんに活かしているためか、身体がほんわりと心地よくなり、快楽的な宴を満喫できたのでした。

「食の街と謳うならば、安心で本当においしいもの、食べやすいものを提供したいです。子供たちにも安心して出せるものを食べてもらえる未来に向かったお店を目指しています」とそうさん。保存料などの添加物を用いていない良質で安心な食材を探し、選び抜いて、今日より明日、さらにおいしくと前を向いて商いされています。
その心意気にも陶然と酔いしれました。ちなみにコースでどんな料理を出したかをお客さんごとに記録していて、次にそのお客さんがコースを頼んだときに同じものにしないよう配慮。そのメニューを考えるのにじっくり時間をかけているとか。そうした誠実で真摯な姿勢も、リピーターが多い理由なのだろうと合点がいったのでした。

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<「ヨーロッパの大間」ことアイルランドの天然鮪の中トロと赤身、ボタンエビ。ダシ醤油と蔵元に分けてもらった醤油でいただいた。合わせたのは円みがあり、ふくよかな三重県・元坂酒造の無濾過生原酒『酒屋八兵衛 山廃純米』>

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<築地場外市場『菅商店』の親鶏シューマイを蒸したもの。鶏油と鴨脂を敷いている>

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<シューマイに合う赤ワイン、大阪府・仲村わいん工房の『ゴールドがんこ』。この工房は天然素材本来の力だけでおいしいワインを造るためにブドウの栽培から手がける。>

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<チーズフォンデュ用の具材。春野菜とソーセージ、プリプリっとした食感のホタルイカ>

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<酒粕と白味噌を和えたチーズフォンデュの優しくコクがある味わいを『La Primavera Quadrifoglio』で愉しむ。>

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<マグロと春野菜のフライ。白く薄く濁った生原酒『かすみロ万』のぬる燗が味を引き立てる。>

心憎い締め

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<軽快な味わいが身体に優しい長野・宮坂醸造の『YAWARAKA TYPE-1』を呑みつつ、おいしい蕎麦をすする。至福!>

お酒とコース料理のハーモニーをたっぷり堪能した後に運ばれてきたのが蕎麦。しっかりと食べて締めくくりたいという気分に嬉しく応えてくれます。これぞ、お蕎麦屋さんで呑む醍醐味。しかも大盛りを頼むこともできちゃうのが嬉しいのです。合わせるのは通常よりアルコール度数が12度と低めの優しい日本酒。じつに心憎いチョイスなのです。

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<蕎麦つゆにチーズフォンデュのソースをブレンド。締め蕎麦の幸せな余韻に浸りつつ、まろやかなスープが身体に沁みていく。最後に栃木県・小林酒造のリキュール『鳳凰美田 完熟もも』でフレッシュな桃の味わいに恍惚となる。>

身体も心も満ち足りて、くつろぎながら蕎麦湯を呑んでいたら、そうさんが蕎麦つゆにチーズフォンデュのソースをブレンドしてくれました。ダシと酒粕、白味噌、チーズが合わさったこの和風スープがまた驚きのおいしさ。はじめから最後まで身体が感じるままに言葉が素直に、端的に出ます。
本当に佳いお酒は気持ちよく酔えるということを知ったこの晩。私はお酒との付き合いを変えようと考えを改めました。身体に優しいものを選び、毎日は無理でも愉しんでいこうと。『長生庵』は日々の暮らしにたいせつなことも気づかせてくれる名店。また呑みに行こうと思います。

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<1972年創業「長生庵」のスタッフ。左からワイン・日本酒・ホール担当の石崎さん。料理長の米倉さん、副料理長の高倉さん>

『長生庵』

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