自分だけのヴェネツィアンマスクを作ろう!本場で仮面作りを体験!

ヴェネチアと聞いて、多くの人がイメージする物のうちのひとつに「仮面」があるのではないでしょうか。今回は、ヴェネチアで仮面作りを体験できるスポットのレポートをお届けしたいと思います。

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ヴェネチアで仮面作りができる工房へ

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仮面作り体験の申し込みは、Webサイトから日本語で簡単にできるので安心です(※)。迷宮都市ヴェネチアならではですが、工房の場所は少々分かりにくいのでしっかり調べてから時間に余裕を持って行きましょう。私と友達が訪ねた工房は、「S.ZULIAN」教会の入り口から裏へ回ったところにあります。

※註:オプショナルツアーなどで、仮面作り体験を提供しているケースがあります。フリープランなどでイタリアを旅されるときは、このような現地ツアーを探してみてはいかがでしょうか?

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なぜヴェネチアは「仮面」なの?

街の中にはたくさんの仮面の店があり、気軽に買えそうなものから高級品までさまざま。そもそもヴェネチアは、なぜ仮面の街になったのでしょうか。仮面作り教室の先生にお話をうかがいました。

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仮面のはじまりはペスト(黒死病)の流行

仮面は13世紀のペストの大流行から感染を防ぐ意味で始まりました。ペストは黒死病と呼ばれ、リンパ節が腫れたり、高熱が出たりなどの症状が現れる感染症の一種で、多くの人が命を落としました。

当時のヨーロッパは不衛生な地域も多くあり、病原菌がネズミやノミを介してあっという間に広まっていったのです。そこで登場したのが「マスク」、すなわち仮面です。

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独特の風貌で知られる「ペストマスク」

最初の仮面は、お医者さんが着用したマスクです。鳥のくちばしのように鼻先が長く尖っていて、異様な風貌をしているのでなかなか印象的ですね。お医者さんは、なぜあのようなマスクを着用したのでしょうか?

これは、診察する際自分に患者の菌がうつらないようにすることが目的なのですが、注目したいのがあの鼻の部分。ここには、殺菌作用があると言われていた薄荷などの精油を含ませた綿や、バラの花びらなどを入れていたそうです。つまり今でいうアロマテラピーのような......。

実際のところはそれでペスト菌から身を守れるというわけではなかったようですが、魔除けのような意味合いも含まれていたそうです。マントをかぶり、帽子をかぶり、あのマスクをかぶった人が運河沿いを歩いていたことが実際にあったということにロマンを感じますね!ますますドラマチックな街だと感じます。

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いろんなマスクが並んでいるけれど...歴史のあるマスクは数種類だけ

1656年には、2度目のペストの大流行が襲います。なんと、この時期は5,000万人の死者を出したと言われています。そのときに登場したのが猫の仮面です。猫、と聞いてピンと来た人は大正解。ペストを広めるネズミを退治するために導入された特別部隊......それが猫だったのです。

エジプトやシリアから連れてこられ、ヴェネチアに放たれた猫は3,400~4,000匹だったとも言われています。猫はネズミを退治し、ヴェネチアの街はペストの流行を抑えることができたというわけです。

そのため、ヴェネチアでは猫はとても大事にされている存在なのだそうですよ。猫を擬人化したようなアートなども残っています。

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もう一つの歴史あるマスク「ザンニ」とは

14世紀になるとZANNI(ザンニ)というマスクをつけた芸人が登場します。ここから「コンメディア・デッラルテ(Commedia dell'arte)」と呼ばれる、仮面を付けた即興演劇が始まったそうです。

ZANNIのマスクはペストの医師マスクと似ていますが、いくぶん鼻先が丸まっています。こちらも歴史あるマスクデザインのうちのひとつです。

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コンメディア・デッラルテの普及に伴い、有力な貴族や権力者たちはお抱えの芸人を仕えさせるようになりました。 工房には、PANTALONE(パンタローネ)という権力者に仕えていたARLECCHINO(アルレッキーノ)のマスクもありました(※)。丸顔で笑いを誘うデザインですね。

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よくあるお芝居のシナリオとしては、パンタローネの恋人はアルレッキーノのことを好きになってしまい、三角関係が繰り広げられる......と言うものがあるそうです。ヴェネチア貴族あるあるといった感じですね。

※註:コンメディア・デッラルテは、仮面によってキャラクターの振舞いがある程度決まっており、「PANTALONE=権力者役」、「ARLECCHINO=道化師役」などが割り当てられています。それぞれに欲深い性格、好色な性格も設定されており、恋愛を主軸とした即興劇が行われていたそうです。時代背景は異なりますが、能面をイメージしていただけると理解しやすいかと思います。

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マスクを作ってみましょう!

マスクに隠された歴史や意味をひと通り理解しすると、マスク作り体験がまたひと味違ったものになります。こちらの工房では2種類の体験をすることができるとか。

ひとつは出来上がった白いマスクに絵付けをしていくもの、もうひとつはイチからマスクを作る体験です。どちらも所要時間は1時間半ほどですが、後者は伝統的な紙を用いた技法を用いるため、マスクが乾くまで待つ必要があり、引き取りは翌日になります。

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店頭には様々なデザインのマスクが並んでいるので、インスピレーションの参考にしてみてはいかがでしょうか。なかにはレースをあしらった女性好みのデザインや、ゴージャスな羽根付きのものまで幅広くあります。

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今回、私たちは絵付け体験をチョイス。この中から好きなデザインのマスクを選びます(下の写真を参照)。

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形が面白い「月」を表現したマスクを選びました。

こちらに、絵の具で色を塗っていきます。最初にデザインを考えて、鉛筆でうっすらと下絵を描いてからイメージを作っていきます。カラーブロッキングをハッキリさせたい場合や立体的な装飾を付けたいときは、特殊なボンドのような素材を使うこともできますよ。

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また、「デコパージュ(※)」という新聞や楽譜などをニスで転写させる技法も使うことができます。こちらも引き取りが翌日になりますが、凝ったものを作ってみたいという方はトライしてみても面白いかもしれませんね。

※註:デコパージュと言う言葉はフランス語の「切り裂く」「切り抜く」から来ているそう。しかし、技法自体はイタリア・ヴェネチアが発祥とされています。

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絵の具はアクリル絵の具を使います。

絵の具はカラーバリエーションが豊富に用意されていますが、欲しい色が見当たらないときは先生に言ってみましょう。奥から出してきてくれることもあります!

黙々と作業を続ける私たちに先生は、「日本人が一番器用で絵がうまいんだよね」と嬉しい一言を。手先が器用な日本人アピールに成功したようです。先生は、日本人の子供にも丁寧に色を塗ったり絵を描いたりするのが得意だという印象をお持ちのようでした。参加者の中には、日本に帰ってからさらにネイルパーツなどを使って、デコレーションする方もいるそうです。

通常1時間半ほどの所要時間のはずが、夢中になって話を聞いたり、色を塗り直したりしているとあっという間に2時間が経過。「ゆっくり描いていいよ」と言ってくださいましたが、次のお客さんの予約の時間になってしまったので、ひとまず切り上げました。

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プライスレスな経験ができたと思います。

出来上がった仮面をホテルの部屋に持ち帰り、友達と記念撮影。同じデザインのマスクを選びましたがそれぞれテイストが違うのが面白いですね。

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もうちょっと手を加えたいところもありますが、お互いに概ね満足です!

マスクをかぶったらダメな日がある?!

さて、この日は偶然ヴェネチアの「あるお祭りの日」でした。マスクが完成したとき、先生に「今日はお祭りだからかぶっていこうかな!」と気軽な気持ちで言ったのですが、「今日はマスクかぶったらダメな日なんだよ」と衝撃の一言が。

1年に1度だけ、マスクをかぶってはいけない日がまさかの今日だそうで......。 なぜマスクをかぶってはいけないのでしょうか。それは冒頭にお話ししたとおり、マスクの由来に関係します。この日に開催されていたお祭りは「救世主のお祭り(レデントーレ)」で、ペストの終焉と人々の健康を祝うお祭りなのだそうです。

つまり、ペストを治療するペスト医師に由来を持つマスクは着用不要、ということ。マスクをつけなくてもペストにかからない世の中に万歳!というお祭りなのです。レデントーレは、7月の第3週の土曜日に開催されるお祭りで花火があがり、出店が出たり、提灯でデコレーションがされたりと、ヴェネチアの雰囲気もいつもと少し違っています。

先生に教わったとおり、花火を観に行くときは仮面ナシで出かけました。お祭りに参加するにしても、どういうお祭りなのか、何を祝っているのか、と歴史や背景を知っているとより感慨深くなります。

それにしても手作りの仮面は愛着が湧きます! いつかどこかで使ってみたいのですが、日本だとなかなか難しいですね!

撮影:yukaco

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17歳のときに初めてフィレンツェ、ヴェネチアへ行ってからすっかりイタリア贔屓に。定期的にイタリアへ旅行。
食、ファッション、アートが得意分野。興味があればどこへでも行くフットワークの軽さでハードスケジュールな取材も敢行。
イタリアの中で一番好きな場所はミラノ・スカラ座。好きな食べ物はラヴィオリ。

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