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春先のヴェネトの名産、白アスパラガスと殻付き茹でタマゴ

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記事投稿日:2017/02/27
最終更新日:2017/08/14

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北イタリア、ヴェネト州の春先を代表する野菜が「アスパラガス」です。その中でも特に価値あるものが、バッサーノ・デル・グラッパ産の立派な白アスパラ。

小さな町から発信される希少価値の高い野菜は、地元ならではの美味しい食べ方やこだわりがあります。

春の味覚の代表選手、アスパラガス

長く寒い冬の終焉と待ちに待った春の訪れは、市場の店頭に並ぶ野菜たちの顔ぶれで感じられます。ここ北イタリア・ヴェネト州では春野菜の代表選手として筆頭に揚げられるのは、緑や白のアスパラガスです。

イタリアでも中北部の限られた地域での生育が適しているアスパラガスですが、ヴェネト州は「バッサーノ・デル・グラッパ(Bassano del Grappa)」という町周辺で収穫されているアスパラガスは、他地域とは群を抜いた高級品として扱われる代物です。

なぜならそれは、堂々とした貫禄ある立派な白アスパラガスなのです。

春になると、市場にもたくさんのアスパラが並びます 撮影:Aki Shirahama

春になると、市場にもたくさんのアスパラが並びます 撮影:Aki Shirahama

ドロミーティ(ドロミテ)の麓の小さな街

バッサーノ・デル・グラッパという町は、ヴェネト州ヴィツェンツァ県下の町で、州都ヴェネツィアから約70km北西に位置します。町の北側はアジアーゴ高原へとつながり、その先に続く標高1,800m級のモンテ・グラッパは、ドロミーティ山塊地帯の一部となります。

町のシンボルは、町の中心を流れるブレンタ川に架かった屋根付き木製橋である通称「アルピーノ橋」。山麓から流れる澄み切った川に架かるその橋の美しさはもとより、奥深く続く川の上流方向に、橋の中心に立って見る景色は四季を通じて格別なものです。

バッサーノ・デル・グラッパのシンボル「アルピーノ橋」上から見えるブレンタ川の流れ 撮影:Aki Shirahama

バッサーノ・デル・グラッパのシンボル「アルピーノ橋」上から見えるブレンタ川の流れ 撮影:Aki Shirahama

空気も良く、山と自然に囲まれたこの周辺は、春になると、多くの自転車愛好者やクラシックカー愛好者に好まれる場所でもあり、有名なレースのコースともなります。ちなみにこの土地名の由来は、「グラッパ山(モンテ・グラッパ)の麓(バッサーノ)」という意味を持ちます。

しかし、この町はワイン醸造の際に余ったブドウの皮を原料とした蒸留酒「グラッパ」の産地でもあるため、よく土地名が由来なのか、それとも蒸留酒由来なのかと混同されることがあります。

最高峰の認定を受ける、特別な白アスパラガスとは?

さて、アスパラガスに話を戻しましょう。他のアスパラガスとの価値の違いのひとつには、ヨーロッパ共同体で認められている食物の品質基準において、最高峰の認定を受けていることです。

それは、「D.O.P. ("デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ=保護指定原産地保証" の訳)」といい、同基準を冠する食品としては、チーズ(例:パルミジャーノ・レッジャーノ、ラグザーノチーズ等)、生ハム(例: パルマ産プロシュット等)などがよく知られています。ただし、野菜としてイタリア国内で同認証を受けているものは、そう多くはありません。

堂々たる品格、認定マークつきバッサーノ産白アスパラの束 撮影:Aki Shirahama

堂々たる品格、認定マークつきバッサーノ産白アスパラの束 撮影:Aki Shirahama

畑から収穫されるアスパラガスは、各生産者により規定に沿った方法で束にまとめられます。作業を終えると、その日の収穫分を近くの集積所に持ち寄り、最終的な出荷作業が行われます。

1キログラムにくくられた束は、太いアスパラガスが隙間無く、まっすぐ綺麗に整列しています。そして、チェックに合格したその束には、認定マークと生産者名の記された札が付けられます。

品質チェックを受けた後、マークをひとつひとつ手で付けていきます 撮影:Aki Shirahama

品質チェックを受けた後、マークをひとつひとつ手で付けていきます 撮影:Aki Shirahama

D.O.P.認証を受けるためには、生産及び出荷方法の規定に従う必要があるため、一束一束に対し、重さはもとより、見た目や質なども厳しいチェックを受けています。小さなこの町から出荷される貴重な産物は、イタリア国内の各地へ、そして遠く国外へ、さらに日本へも輸出されています。

地元ならではの、白アスパラガスを使った名物料理

それほどのブランドをつけられた白アスパラガスは、太くキュッとしまり、輝くように鮮やかな、少々クリーム色がかった白色。味は甘くて柔らかい、極上の野菜です。とはいえ、アスパラは新鮮さが命。畑から収穫したその瞬間から劣化が始まる、と言われるくらいデリケートなものなのです。

ですから、この時期にこの土地にいるのであれば、その特権を利用して季節ならではの美味しさを新鮮なうちにいただきたいものです。地元であるバッサーノには代表的な一皿があります。料理名はその土地のごとく、「アッラ・バッサネーゼ(バッサーノ風)」。

野菜の区分とされるアスパラガスですが、バッサーノのアスパラガスに限っては、セコンド・ピアット(主菜となる皿)にもなり得る堂々とした品格があります。地元の人たちで賑わう地元のレストランでは、8割以上の客がオーダーする、まさに名物メニューです。

シンプルだからこそ、美味しい!

アッラ・バッサネーゼの材料はごくシンプル。茹でたアスパラガスとオイル、塩、胡椒、アチェート(酢)のみを使います。

席につき、カメリエーレ(給仕人)に同メニューを注文すると、しばらくして運ばれてくるのは、熱々のゆで卵。

アスパラガスの登場を待つ間に、ゆで卵が...これも茹でたて熱々です 撮影:Aki Shirahama

アスパラガスの登場を待つ間に、ゆで卵が...これも茹でたて熱々です 撮影:Aki Shirahama

各自はこれをとり、殻をむいて皿の上でフォークの背を使ってつぶします。そこに塩、胡椒、オイルを加えて味を付けていきます。好みで少しアチェートを加えてもよいでしょう。

そうこうしているうちに、茹で上がったアスパラガスを抱えたカメリエーレが、銘々の皿の上にドサッと......。

給仕人がテーブルをまわって、茹でたアスパラガスをサービスします 撮影:Aki Shirahama

給仕人がテーブルをまわって、茹でたアスパラガスをサービスします 撮影:Aki Shirahama

湯気が出ている熱々のそれらを、予めつくっておいた各自オリジナルソースを添えていただきます。実にシンプルなのですが、これが最もアスパラガスを美味しくいただく方法でもあるのです。

アスパラガスとタマゴの相性の良さは周知の通りとはいえ、名産地であるバッサーノならではのお料理。「殻付きゆで卵添え」というのは、なかなかお目にかかれないものと思います。

「アスパラガスと卵のバッサーノ風」の一皿 撮影:Aki Shirahama

「アスパラガスと卵のバッサーノ風」の一皿 撮影:Aki Shirahama

名物料理を支える関連グッズも?!

実は、バッサーノは中世後期から続く伝統として、「バッサーノ焼き」と呼ばれる陶器も有名な町です。街中には陶器博物館もあり、色鮮やかな絵付けのされた陶器の並ぶ店も点在します。そんな町だからこそ、この町の名物料理を盛るためだけの専用皿も存在します。

中央に茹でたてのアスパラを置き、皿の縁部分のつくられたくぼみには......そう、ゆで卵をのせてテーブルに出すように作られています。

バッサーノ焼きを売る店の店頭 撮影:Aki Shirahama

バッサーノ焼きを売る店の店頭 撮影:Aki Shirahama

さらには、調理道具屋では春先になると「アスパラガス専用鍋」と言うものが店頭に並ぶようになります。いわゆる縦長の鍋で、付属品として中に引き上げることが可能な、取手つきのカゴがついています。

これを使って正しい方法でアスパラガスを美味しく茹で、上述の皿を使えば、まさしくバッサーノ風の一皿が完成するかもしれません。

アスパラ専用の縦型鍋 撮影:Aki Shirahama

アスパラ専用の縦型鍋 撮影:Aki Shirahama

アスパラガスを美味しく食べる茹で方のコツ

アスパラガスを茹でるために必要とされる縦長鍋には、美味しく茹でる法則に則るためなのです。それは、次の通り。

  • アスパラガスは必ず縦に茹でる。
  • 穂先まで湯につけてはいけない。なぜなら根本部分と穂先とでは、茹で時間が変わるから。
  • 穂先にはデリケートに火を通すため、調理中は鍋に蓋をし、蒸気で熱するようにする。

アスパラガスの、一番甘くて香りの良い穂先の部分を大切に扱うことが、茹でるときのポイントですが、これらの条件をカバーするには、上述の縦長鍋が重宝する、と言うわけなのです。

しかし、地元のベテランマンマはわざわざアスパラガス専用の鍋を使うようなことは、まずしません。自ら長年愛用してきた愛用の調理道具を利用し、見事なまでに、正しく美味しくアスパラガスを茹で上げるのです。

そんなマンマが自信満々に取り出してきたのは、口の大きさが小さめながら、同様な深型の鍋が2つ。下部にはアスパラを立てるようにして入れ、穂先を傷つけないように気をつけながらもう一つの鍋をかぶせる。これで完璧!

そっと蓋をして、蒸気で柔らかい穂先に火を入れます。これぞ、マンマの技。 撮影:Aki Shirahama

そっと蓋をして、蒸気で柔らかい穂先に火を入れます。これぞ、マンマの技。 撮影:Aki Shirahama

こうして、正しく茹でたアスパラは美味しく皿の上に演出される、と言うわけです。

アスパラの美味しいシーズンは春先、また毎年その年の天候などにも左右されるのですが、おおよそ3月中旬から5月下旬が目安。この時期にヴェネツィア方面にお出かけのチャンスがあれば、ぜひ足を延ばして、旬の美味しさをいただいてみてはいかがでしょうか。

執筆・写真:Aki Shirahama

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