【埼玉県】ぶらり街歩きで行田市の足袋文化と歴史を巡る1日モデルコース|週末日本遺産旅

江戸時代から続く蔵や工場、店蔵を今も街のあちこちで見られる埼玉県行田市。かつて全国の足袋づくりを支えたこの街では、足袋をつくる場所だけでなく、商品を保管する蔵や商いの場にも産業の歴史が刻まれています。

今回は、埼玉県出身の日本遺産ソムリエ仲間・縁記和也さんと街歩き。足袋づくりの歴史を伝える施設から、今もカフェやセレクトショップ、菓子店として使われる建物まで、行田の今を楽しみながら足袋文化をたどります。

目次

足袋のまち「行田」とは

埼玉県北部に位置する行田市。忍城の城下町として知られる一方、江戸時代から足袋づくりが盛んに行われてきた「足袋のまち」でもあります。

行田の足袋づくりは約300年前に始まり、やがて町を代表する産業へと発展。最盛期には全国の約8割の足袋を生産する一大産地となりました。足袋産業の発展とともに、町には足袋をつくる工場だけでなく、商品を保管する蔵や商いを営む店など、さまざまな建物が生まれました。

現在も市内を歩くと、素材の異なる蔵など、当時の産業を伝える建物に出会うことができます。足袋だけではなく、足袋づくりによって育まれた街並みまで楽しめるのが、行田歩きの面白さです。

足袋蔵を通して感じる行田の日本遺産

全国で104件認定されている日本遺産。日本遺産は、地域に残る文化財を単体で見るのではなく、その土地の歴史や文化をひとつのストーリーとして捉えるものです。行田市の足袋文化は「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」として認定されています。

足袋そのものはもちろん、足袋をつくった工場、商品を保管した蔵、商売を支えた建物などが、足袋産業の歴史を伝える構成文化財となっています。一つ一つの建物を見ていくと、足袋がどのようにつくられ、保管され、町の中で商われてきたのかが少しずつ見えてきます。

今回は、そんな行田のストーリーを感じながら、歴史的な建物を巡りました。

足袋蔵まちづくりミュージアム

明治時代の重厚な土蔵造りが印象的な足袋蔵まちづくりミュージアムの内観

行田の街歩きは、まず「足袋蔵まちづくりミュージアム」から。1906年に建てられた、元栗原代八商店の土蔵造りの足袋蔵を活用した施設です。現在は観光案内所やまちづくり情報センターとして利用され、2階には日本遺産ガイダンスセンターも設けられています。

立派な造りの蔵の壁一面には、日本遺産と行田の街の成り立ちが分かるパネル、歴史を感じさせる看板などを展示されています。行田と足袋がどれほど密接な関係にあるのかがとても分かりやすく展示されているので、まずはここを訪れることを強くおすすめします。

私自身知らないことばかりで勉強になりました。ここで行田のストーリーの始まりを感じれば、街歩きが一層楽しくなること間違いなしです。1階では足袋の販売もされています。

si行田市限定の御周印帳
<行田市限定の御周印帳>

忘れてはいけないのが日本遺産を巡って集める「御周印」。行田市で御周印を押せるのは「足袋蔵まちづくりミュージアム」のみなので、あわせて立ち寄っておきたいところです。 また、御周印帳を持っていない方はここで購入することもできるので、ぜひ御周印集めをスタートしてみてはいかがでしょうか。

足袋蔵まちづくりミュージアム

  • 所在地:埼玉県行田市行田5-15
  • 電話番号:048-552-1010
  • 営業時間:10:00~16:00
  • 入館料:無料

足袋とくらしの博物館

続いて訪れたのは「足袋とくらしの博物館」。訪問時には知らなかったのですが、こちらは2026年10月31日をもって閉館することが決まったそうです。とても印象に残った場所なので、今回の旅の記録としてご紹介します。

旧足袋工場を活用したノスタルジックな足袋とくらしの博物館の内覧

「足袋とくらしの博物館」はかつて足袋商店「牧野本店」が使っていた足袋工場を活用し、2005年に博物館として生まれ変わりました。

足袋職人の使用したミシン、当時の様子が感じられる

館内では足袋づくりに使われていた道具や資料を見ることができ、足袋職人による実演も行われており、実際の工場だった場所だからこそ、足袋づくりが盛んだった頃の空気を感じられました。入るとすぐに目に入るのは、ずらりと並んだミシンの数々。

分業作業に使われていたさまざまな形状の足袋縫製工程の黒板案内

行田の足袋づくりは細かな工程に分かれた分業制で、ミシンもそれぞれの役割に合わせた形をしています。重厚感と艶やかさのあるミシンを見るだけで、ここから生み出される足袋がどれほど繊細で丈夫であったかを想像することができました。

牧野本店店蔵「日々新た」

歴史ある店蔵をリノベーションしたセレクトショップ「日々新た」の外観

博物館のすぐ隣にある牧野本店の足袋蔵も行田の足袋産業を語るうえで欠かせない場所です。

土間と木調のインテリアが調和する心地よい店内

現在は全国の作り手の想いや技術を伝えるセレクトショップになっています。広々とした土間から、大きな一歩で床にあがる造りに、古き良き日本家屋ならではの工夫が見られます。

日本全国から選りすぐられた温もりある日用品や雑貨

古くから使われてきた木材と、店主がセレクトした日本のものづくりを伝えるプロダクトたちが絶妙に交じり合う空間に豊かさを感じました。

日々新た(牧野本店店蔵)

  • 所在地:埼玉県行田市行田1-2
  • 電話番号:070-6529-5446
  • 営業時間:11:00~17:00
  • 定休日:不定休 ※公式Instagram要確認
  • 公式Instagram:日々新た(牧野本店店蔵)  

忍城

足袋のまちを歩いていると、今度は行田のもう一つの歴史に出会います。行田市のシンボルである「忍城(おしじょう)」は、関東七名城のひとつ。映画にもなった小説『のぼうの城』の舞台としても有名なお城です。

行田市のシンボル・青空に気高くそびえる忍城の御三階櫓

今回は外観だけの見学でしたが、後に訪れるスポットと深いつながりがあるそうです。「足袋のまち」として歩いていた行田ですが、城下町としての側面を知り、一層興味が湧いてきました。

忍城

  • 所在地:埼玉県行田市本丸17-23
  • 入館時間:9:00~16:00
  • 入館料:200円

旧忍町信用組合店舗「ヴェールカフェ」

水城公園に映えるミントグリーンの洋風建造物・ヴェールカフェ

途中でひと休みするなら、水城公園内にある「ヴェールカフェ」へ。現在の建物は、1922年に建てられた旧忍町信用組合店舗を移築したもので、2024年にカフェとしてリニューアルされました。

ここまで和の雰囲気を感じる構成文化財を巡ってきましたが、こちらの「旧忍町信用組合店舗」も構成文化財のひとつ。さまざまな表情を見せてくれる行田の日本遺産ストーリーに、奥深さを感じます。

かつての信用組合カウンターの面影が残るノスタルジックな店内

爽やかなグリーンの外観が目を引き、店内に入るとカウンターの窓口など、信用組合店舗だった当時の面影を感じることができます。

公園の緑を眺めながら味わうハイカラプリンとドリンク

そんなレトロな「ヴェールカフェ」ですが、お店の雰囲気にぴったりなメニューの数々も魅力です。「純情ナポリタン」や「黄昏モンブラン」など、思わず声に出して読みたくなる名前ばかり。窓越しに見える水城公園の景色と、ハイカラなプリンがよく映えます。

ヴェールカフェ(旧忍町信用組合店舗)

  • 所在地:埼玉県行田市水城公園2305
  • 電話番号:048-556-4330
  • 営業時間:10:00~17:00、(18:00~21:00 完全予約制)
  • 定休日:火曜
  • 公式サイト:行田市観光ガイド 行田たびナビ

イサミコーポレーション

続いてやってきたのは「イサミコーポレーション」の足袋工場。1907年創業のイサミ足袋本舗は、足袋づくりから始まり、現在では学生服や靴下なども手がけています。

<自然採光を取り入れるノコギリ屋根が特徴的なイサミコーポレーションの工場>

工場の外観で特徴的なのが、昭和初期に建てられたノコギリ屋根。自然光を取り入れやすいこの形の屋根は、同じく日本遺産に認定されている群馬県桐生市の織物工場などにも見られます。

日本遺産を巡っていると、別の地域で見た建物や産業との共通点に気づくことがあります。そんな発見ができるのも、日本遺産旅の面白さだと感じます。

さらに徒歩3分ほどの場所には、「イサミコーポレーション スクール工場・事務所・土蔵・モルタル蔵・木造倉庫」も。足袋づくりを起点にさまざまな建物が生まれ、この街の風景ができ上がっていった様子を体感できます。

イサミコーポレーション

  • 所在地:埼玉県行田市向町4-31

行田八幡神社

街歩きの終盤に訪れるのは「行田八幡神社」。こちらは日本遺産の構成文化財ではありませんが、行田の街をより深く知るうえで、ぜひ立ち寄りたいスポットです。現在は「ぼけ封じ」や「癌封じ」、「眼病平癒」などのご祈願でも広く知られています。

地域の人々に篤く信仰される行田八幡神社の境内

そして、ここでぜひ注目したいのが社殿の向き。神社の本殿は南向きや東向きが一般的ですが、行田八幡神社は西向きです。なぜだか分かりますか?

社殿が向く西側にあるのが、先ほど訪れた「忍城」。その「忍城」を守る意味も込めて西を向いているそうです。この由来から「城主八幡」、「西向き八幡」とも呼ばれています。

特徴的な絵馬、お参りするところ

行田八幡神社の華やかな花手水

足袋の歴史だけではなく、城下町としての物語にもつながっていく行田。境内では、華やかな花手水や特徴的な絵馬などを楽しみながら参拝する人の姿も見られ、街歩きの合間にほっと心が和みました。

行田八幡神社

  • 所在地:埼玉県行田市行田16-23
  • 電話:048-554-5926
  • 公式サイト:行田八幡神社

十万石行田本店

最後に立ち寄るのは、行田を代表する菓子店「十万石」の行田本店。

国の登録有形文化財・重厚感のある「なまこ壁」が美しい十万石行田本店

1883年に建てられた旧山田清兵衛商店の店蔵で、もともとは呉服店だった建物。その後、足袋蔵として使われ、現在は十万石の店舗として活用されています。国の登録有形文化財でもあり、重厚な蔵造りの建物や壁面に見える「なまこ壁」にも風情があります。

棟方志功がデザインを手がけたパッケージの絵の展示

今回案内してくれた縁記さんは埼玉県出身。聞けば、十万石のCMでおなじみの「うまい、うますぎる」というキャッチコピーは、県民なら知らない人はいないほど有名だそう。

「生粋の埼玉県民に『風が語りかけます』と言えば、『うまい、うますぎる』ときっと返ってきますよ」とのこと。埼玉県出身の人にお会いしたら、ぜひ挑戦したいと思います。

店内には棟方志功さんが手がけた、勢いのあるパッケージの絵も飾られています。この「うまい、うますぎる」という言葉を生み出したのも、棟方志功さんなのだそう。

しっとり上品な皮と自然な甘さのあんが絶品の十万石まんじゅう

日本遺産旅の記念には「十万石まんじゅう」を。程よい厚みのある、ふっくらとした白い皮は、ほっとするような味わい。きめ細かな口当たりと、あんのやさしい甘さのバランスも絶妙です。まさに「うまい、うますぎる」十万石まんじゅうでした。

これほど地域の人々に根付いたお菓子があり、そのお店が街の重要な建物を今に引き継いでいることに、行田の文化を大切にする気風を感じました。

十万石行田本店

  • 所在地:埼玉県行田市行田20-15
  • 電話:048-556-1285
  • 営業時間:9:00~18:00

まとめ

今回の街歩きで印象に残ったのは、足袋の歴史が博物館の中だけではなく、今の街の風景の中にも生き続けていること。かつて足袋をつくり、保管していた蔵や工場。それらが時代とともに役割を変え、今も街の人々に親しまれる姿がありました。

土蔵や石蔵、モルタル蔵など、建物の素材や造りにも、それぞれの時代や足袋産業の歩みが刻まれています。

歴史を知ってから街を歩けば、何気なく見ていた景色も少し違って見えてくるもの。ぜひ足袋文化をたどりながら、行田の街をゆっくりと歩いてみてはいかがでしょうか。

今回行田を案内してくださった、日本遺産ソムリエ仲間の縁記さんが開催するイベントは下記のサイトからチェックしていただけます。気になる方はぜひ覗いてみてくださいね。

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水木 彩也子

俳優/トラベルリポーター 旅番組リポーターやラジオパーソナリティーの経験を活かし、実際に訪れて感じた空気感や体験を大切に心を動かす旅の魅力をお届けします。日本遺産のPV出演をきっかけに関心を持ち、日本各地の日本遺産を旅しています。日本遺産ソムリエ。イベント登壇やPodcast「旅と日々とラジオと」でも旅や日本遺産について発信中。

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