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タイ東北部イサーンの村の台所に残る暮らしの原点

初めてイサーンの村の台所に足を踏み入れたとき、思わず立ち止まりました。低い作業台、炭火台、タライ、そして壁に並ぶ包丁たち。システムキッチンも、ガスレンジもない。「ここは日本のはるか昔と同じだ」と直感しました。
驚きのあまり、気づけばあちこち写真を撮りまくっていました。タイ東北部・イサーンの村で今も息づく台所の風景は、暮らしの知恵と文化の結晶でした。
目次
土間の台所で座って調理する暮らし
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<しゃがんで炭火台の前で鶏を焼く。この姿勢が炭火調理には一番自然でやりやすい>
イサーンの村の台所は、家の中にある場合もあれば、屋根付きの外スペースにオープンキッチンとして設けられている場合もあります。共通しているのは、作業台が低く、立って使うというより、床に座ったりしゃがんだりしながら調理するスタイルであること。炭火台を使うには、この低い姿勢の方が火加減を見やすく、鍋の様子も確認しやすい。理にかなった形です。
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<流し場は、壁の下の穴から水が地面へ流れていくシンプルな仕組み>
調理場の横には流し場があり、壁の下に穴が開いていて、水はそのまま地面に流れていきます。排水インフラが整っていないため、排水はすべて土の地面へ。断水も日常的に起こります。日本の感覚からすると驚きますが、これが村の当たり前の暮らし。良くも悪くも、超自然です。
炭火と炭を作る男たち
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<村の熱源、炭火台。じっくり火を育てながら調理する>
村の台所の熱源は、炭火が基本です。ガスコンロを使うこともありますが、炭火の方がコストがかからず、火力も安定している。そして何より、炭は自分たちで作ります。
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<燃料の炭も自分たちで作る。土窯に木を積み、数日かけて蒸し焼きにする>
村の男性たちが土窯を作り、木を数日かけてじっくり蒸し焼きにして炭にします。燃料すら自給してしまうこの暮らしは、お金に頼らない知恵の積み重ねです。炭火でゆっくり煮込んだスープは、ガス火とはひと味違う深い味わいになる気がします。炭火を囲みながらの調理は、時間がゆっくり流れるような感覚があり、私はそれが大好きです。
包丁が意外と豊富なさばく文化の台所
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<壁に並ぶ包丁たち。鶏や魚をまるごとさばく台所だから、種類も自然と増えていく>
シンプルな台所の中で、ひとつ意外だったのが包丁の種類の多さです。大きいもの、小さいもの、形の違うものが壁にずらりと並んでいます。考えてみれば当然で、村では鶏も魚も自分たちでさばきます。鶏をさばくための大きな包丁、魚をおろす包丁、細かい作業用の小さな包丁、それぞれに役割があります。スーパーで切り身を買う暮らしとは根本的に違う。食材をまるごと扱う台所だからこそ、包丁への依存度が高く、種類も自然と増えていくのでしょう。道具の数が、その台所の暮らし方を物語っています。
3段階の食器洗いの知恵
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<第一、第二、第三と順番に洗い流すタライ。シンプルだけど、水を無駄にしない知恵がある>
食器洗いも日本とはまったく違います。流し場にタライを2〜3個並べて、順番に洗い流していくスタイルです。第一のタライで大まかな汚れを落とし、第二、第三と水をくぐらせながら仕上げていく。流れ作業のようにシンプルで、無駄がありません。
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<水ガメに水をためて使う家庭も。断水が日常なので、水を蓄える知恵が暮らしに根付いている>
シンクで流しっぱなしにしながら洗う日本のスタイルとは対照的に、水を大切に使う意識が感じられます。外の風に当たりながら、しゃがんでタライに手を入れて洗う姿は、暮らしの一部として自然に溶け込んでいます。これも、長い時間をかけて積み重ねてきた生活の知恵のひとつです。
原始的に見えて実は合理的
土間、炭火、タライ、壁の包丁。初めて見たときは「なんて原始的だ!」と思いました。でも暮らしの中で観察していくうちに、そのひとつひとつに理由があり、長い時間をかけて磨かれた合理性があることに気づきます。
日本でも昔はこうだったはずです。それがこの村では今も当たり前の日常として続いている。台所はその家の暮らし方の縮図です。イサーンの村の台所をのぞいてみると、タイという国の文化と、人々の生きる知恵が見えてきます。
タイを旅する際には、ぜひ食堂や市場だけでなく、村の暮らしにも目を向けてみてください。きっと、旅の奥行きが変わるはずです。
さいごに:イサーン地方への行き方・旅のヒント
バンコクからイサーンへ
バンコクからタイ東北部(イサーン地方)へは、飛行機・夜行バス・電車でアクセスできます。飛行機なら主要都市まで約1時間。
格安航空会社(LCC)も多く運航しており、比較的リーズナブルに移動できます。夜行バスはバンコク北バスターミナル(モーチット)から各都市へ運行。費用を抑えたい方にはバスがおすすめです。
イサーンの主要都市
タイ東北部の主要都市は、コラート(ナコンラーチャシーマー)、ウドンターニー、コンケン、ウボンラーチャターニーなど。それぞれを拠点に周辺の農村エリアへ足を延ばすと、今回ご紹介したような素朴な暮らしの風景に出会えることがあります。
村の暮らしを感じるには
農村の暮らしを垣間見るなら、地方の朝市(タラートチャオ)がおすすめです。地元の人たちが自家製の食材や料理を持ち寄る市場では、イサーンの食文化と日常が凝縮されています。
観光地化されていないローカルな市場ほど、リアルな暮らしの空気を感じられます。
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はるな
- タイ最東部イサーンの村で子育てをしながら、旅と生活の境目にある物語を綴るライター。観光地よりも、人の暮らしや日常の風景に惹かれ、その土地に流れる時間を見つめてきました。暮らしの中から、ふと旅に出てみたくなるような瞬間を言葉にしています



























