時が止まった「天井のない美術館」ブルージュ|ベルギー

歴史の波を乗り越え、現代に甦った水の都の魅力を徹底解剖!

ブルージュ

今回は、私が2014年8月23日に訪れたベルギーの美しき古都、ブルージュ(Brugge)の旅の思い出をご紹介します。

ブルージュはその美しい運河の風景から、古くより「北のベニス」と呼ばれてきました。運河の水は決して綺麗とは言えませんが、後期ゴシックやネオゴシックの華麗な装飾に彩られた14世紀の街並みは、一歩足を踏み入れるだけで圧倒されるほどに見応えがあります。

今回は、この街のドラマチックな歴史の歩みとともに、絶対に外せない見どころや絶品グルメをたっぷりとお届けします!

目次

バイキングが築いた港から「生ける屍」へ:ブルージュの歴史

ブルージュ

ブルージュ

ブルージュの歴史は、9世紀にバイキング(スカンジナビアの海賊)がこの地に街を築いたことから始まります。歴史の本によると、「ブルージュ」という語源は、古代スカンジナビア語で「港」や「波止場」を意味する「Brygga(ブリュッガ)」に由来していると記されています。

その名が示す通り、ベニスと同様に14世紀ごろまでは近隣の毛織物を搬出する一大交易港として大繁栄を極めました。北ヨーロッパの経済を牛耳った「ハンザ同盟」の卸問屋のような大役を果たし、街には富と華やかな文化が溢れていたのです。

しかし、栄華は永遠には続きませんでした。15世紀ごろから、運河に土砂が堆積して船が通れなくなり、港としての機能を近隣のアントワーヌ(アントワープ)に奪われてしまいます。ここからブルージュは、歴史の表舞台から消え去り、長い衰退の一途を辿ることになります。

ところが、この「見捨てられた数百年」が奇跡を起こします。開発から取り残されたことで、中世の美しい街並みが奇跡的にそのまま現代へと残されたのです。20世紀になって、その中世の姿がそのまま観光都市として見事に甦った姿は、まさにベニスとよく似た歴史の軌跡をたどっていると言えます。

中世の息吹を感じる!ブルージュの主要観光スポット

街全体が世界遺産に登録されているブルージュ。

徒歩で十分にまわれるコンパクトな街の中に、たくさんの見どころが凝縮されています。

マルクト広場(Grote Markt)

街の中心に位置する、ブルージュ観光のハイライトです。広場を囲むようにカラフルなギルドハウスが立ち並び、まるでおとぎ話の世界。街のシンボルである高さ83mの「鐘楼」がそびえ立ち、定刻になると美しいカリヨンの音色が響き渡ります。

ブルグ広場(Burg)

鐘楼

マルクト広場からすぐの場所にある、ブルージュ発祥の地とされる気品溢れる広場です。

公文書館やゴシック様式の美しい市庁舎、そしてキリストの聖血が納められている「聖血礼拝堂」など、歴史的価値の高い重厚な建築物が集まっています。

運河クルーズ

運河クルーズ

運河クルーズ

運河クルーズ

「北のベニス」を体感するなら、運河クルーズは絶対に欠かせません。船上から見上げる中世の橋や、水面ギリギリに建つレンガ造りの家々は迫力満点。歩いているだけでは見られない、特別な角度からのブルージュを満喫できます。

愛の湖公園(Minnewaterpark)

愛の湖公園

旧市街の南側に位置する、緑豊かでロマンチックな公園です。その昔、悲恋の末に亡くなった少女「ミンナ」の伝説から名付けられました。運河にはたくさんの白い白鳥が優雅に浮かび、まるでおとぎ話の絵本を切り取ったような静けさと美しさに包まれています。

ベギン会修道院(Begijnhof)とオードリー・ヘップバーンの映画

ベギン会修道院

愛の湖公園のすぐ近くにあるのが、世界遺産にも指定されている「ベギン会修道院」です。13世紀、戦争などで夫を亡くした女性たちが共同生活を送るために造られた自立支援の場所です。一歩敷地に入ると、一転して厳かな静寂が広がります。

ここは、あのオードリー・ヘップバーンが主演した名作映画『尼僧物語』(1959年)のロケ地としても有名です。映画のファンならずとも、心が洗われる聖域です。

五感で楽しむ!ベルギー自慢の三大グルメ

ブルージュ散策の合間には、ベルギーを代表する最高の「美食」が旅を彩ってくれます。なかでも絶対に外せない、現地で食べた最高の組み合わせをご紹介します!

ベルギービール × バケツいっぱいのムール貝!

ムール貝

ベルギーの国民食といえば、なんといっても「ムール貝の白ワイン蒸し(Moules)」!

現地のレストランやテラス席で注文すると、文字通りコロンとした小ぶりのバケツ(深鍋)に、溢れんばかりのムール貝がどっさりと入ってサーブされます。セロリや玉ねぎなどの香味野菜と一緒に蒸し上げられたムール貝は、旨味がこれでもかと凝縮されていて、一度食べだしたら手が止まらなくなる美味しさです!

そして、この熱々のムール貝に合わせるのが、数百種類もの銘柄を誇る本場のベルギービール。フルーティーな地ビールをグラスに注ぎ、テラスの心地よい風を感じながら、バケツから豪快に貝を突き崩して食べる時間はまさに至福のひとときです。ベルギーを訪れたら、この「バケツムール貝とビール」の黄金コンビは絶対に外せません!

ベルギーチョコレート

街を歩けば、至る所から甘く香ばしい香りが漂ってきます。誰もが知る有名老舗ブランドから、ブルージュにしかない職人こだわりのショコラティエまで、チョコレートショップがずらり。一粒ずつ選んで購入できるので、自分へのご褒美や食べ歩きにぴったりです。

最後に

かつて「死せる街」とまで呼ばれたブルージュは、今や世界中の人々を魅了する「屋根のない美術館」として素晴らしい輝きを放っています。2014年に私が撮影した写真を見返しても、その美しさは色褪せるどころか、ますます憧れが募るばかりです。

ヨーロッパの中世へタイムスリップしたかのような贅沢な時間を過ごしに、あなたもブルージュを訪れてみませんか?

いつもの余談

ベルギーを旅していると、驚くほどたくさんの種類のビールに出会います。フルーツ味の甘いもの、お城の絵が描かれたもの、ワインのように酸っぱいものなど、銘柄は1,500種類以上。「なぜ、こんなに種類があるの?」という疑問の答えは、中世の「修道院」にあります。

中世ヨーロッパは衛生環境が悪く、生水を飲むとペストなどの伝染病にかかる危険がありました。そこで注目されたのが、醸造の過程で水を一度沸騰させるビールです。アルコール消毒の効果もあり、「水よりも安全な飲み物」として親しまれました。

さらに当時の修道院には、厳しい「断食」の修行がありました。期間中は固形物を食べられませんが、水分補給は許されていました。修道士たちは生きるための栄養源として、大麦の栄養が詰まったビールを「液体のパン」と呼び、自ら作って飲んでいたのです。修道院は知識人が集まる最先端の研究施設でもあったため、ハーブやスパイス、果物(レモンやチェリーなど)を巧みに使い、独自のビール文化を大きく発展させていきました。

ちなみに、今回ご紹介した水の都ブルージュには、そんなビール大国ならではの前代未聞の「面白いスポット」があります。

老舗のドゥ・ハルヴ・マーン醸造所は、歴史地区にある工場から郊外の瓶詰め工場まで、なんと「地下ビールパイプライン」を敷いてしまいました。世界遺産の美しい石畳を守り、トラックの渋滞や振動を避けるための奇策です。街の地下には、毎時4,000リットルもの本場ビールがドボドボと流れています。

この工事の際、クラウドファンディングで資金を募ったところ、「一生分のビールがもらえる権利」を目当てに、大勢の市民やビール愛好家がこぞって出資したそうです。住民たちは「自宅の水道管にこっそり繋いで、蛇口からビールを出せないか」と本気で夢見ていたという、なんともユーモラスで愛すべきエピソードが残っています。

ブルージュを訪れた際は、ぜひ足元の「ビールの川」に思いを馳せながら、乾杯してみてくださいね。

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2003年より2011年までイタリア、2014年から2017年まで英国にいました。

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