津軽海峡の地域おこし集団「マグ女」とは?観光資源を超える、また会いたくなる女性たち|青森県

<TOP画像:©津軽海峡マグロ女子会>

本州最北端の青森県と北海道の間を流れる津軽海峡。そこには、北国らしい力強く吹き荒ぶ風や、切り立った断崖絶壁に打ちつける荒々しい波しぶきといった、ワイルドで男性的なイメージがある。

津軽海峡を包み込むように、海峡を挟んで向かい合う両地域には「マグ女」と呼ばれる女性たちが存在し、ユニークな地域おこしを展開しているという。

この記事では「マグ女」とは何者なのか、そしてどのような地域おこしを行っているのかを解明するため、実際に彼女たちと会い、実施中のアクティビティに参加した様子をご紹介する。

目次

「マグ女」の正体と誕生秘話とは

津軽海峡マグロ女子会 マグ女 地域おこし
<『津軽海峡マグロ女子会』©津軽海峡マグロ女子会>

実は「マグ女」とは、津軽海峡に面する青森県と北海道の南部エリアを中心に、地域おこしに取り組む『津軽海峡マグロ女子会』のことだ。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 地域おこし 
<青森県側のマグ女とりまとめ役の島さん>

愛称は略して「マグ女」(※マグオンナではなくマグジョ)。「マグ女」立ち上げメンバーの1人であり、青森県側のマグ女とりまとめ役を務めているのが、大間町出身の島康子(しまやすこ)さんだ。

「マグ女」の立ち上げの根底には、島さんの地域を想う強い危機感があった。それは、大間町の地域の足であるフェリー航路を守りたいという想いだ。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 地域おこし 案内版
<地図を見ると大間は半島のてっぺん!函館に近いということは納得だ>

あまり知られていないが、大間地域の人々にとってフェリーは日常の交通手段であり、海峡を渡り函館に行き来することは、生活する上で欠かせないこと。

しかし、2008年に大間~函館間のフェリー航路が撤退の危機に瀕した時があり、その際に島さんは「海峡が壁になってはいけない。ここは両岸の人々が集う広場であるべきだ」と考えた。

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<「津軽海峡マグロ女子会」結成当時の頃 ©津軽海峡マグロ女子会>

以前から親交のあった北海道松前町「温泉旅館 矢野」の若女将、工藤夏子さん(現在の北海道側のマグ女とりまとめ役)と共に「何かやろう!」と一致団結。

その後に、口コミで何か始めるらしいぞ!とさまざまな方面からメンバーが集まり、2014年に行政の枠を超えたプロジェクト「津軽海峡マグロ女子会」が本格始動となった。

最初はわずか十数名から始まった志は、口コミで広がり、今やマグ女メンバーは90名を超える大所帯へと成長した。

楽しむことが地域を救う「マグ女」の地域おこし

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<マグ女プロデュースの手作りツアー>

現在、マグ女たちは青森と函館の"寄り道旅"をプロデュースする「マグ女のセイカン(青函)博覧会」を実施中。

マグ女たちがツアープランを企画し、参加者と一緒に体験し、最終的には仲間のようになれるという、ユニークな体験メニューを数多く展開している。

そこで私は、彼女たちに実際に会いたい!プロデュースされたい!という想いから、今年(2026年)2月21日·22日に開催された「美アップハイスクール」というツアーに応募。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 地域おこし 美アップスクール
<「美アップハイスクール」の名札を掲げたミニバスで奥薬研へ!>

人生で初めてとなる青森県下北半島へ行き、むつ市大畑町にある奥薬研(おくやげん)で、"ヒバの森スノーシュー"のアクティビティに参加してきた。

ちなみに、美アップハイスクールというユニークな名前の背景には、学校の授業に見立てた旅程を通して、五感を満たして女性のウェルビーイング向上を目指そうという目的があった。

マグ女視点で考案した"1時間目の運動授業(スノーシュー)"の他に、2時間目には休息として日頃の疲れを癒す温泉に浸かって、すっぴんのまま冬のご馳走「あんこう鍋」を堪能。

そんでもって夜の課外授業として繁華街散策や、朝活などなど。2日間という短い期間にもかかわらず、地域の人(マグ女)だから考案できる濃厚なプラン内容が組まれていた。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 地域おこし 送迎
<バス到着の時にはわざわざお迎えに出てくれた現地マグ女とイガメンズ(男性メンバーの愛称)>

私は今回の参加について、当初予定が合わず断念しようと思っていたのだが、マグ女の島さんの粋な計らいで、1時間目のスノーシューのみ参加でもOKと調整をしてくれたのだ。これもまた、彼女たちの手作りツアーらしい配慮で感激だった。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<みんなでスノーシューを持ってヒバの森へ出発>

参加したヒバの森スノーシューだが、結論から言うと冬の青森に行ったら絶対体験してほしい!と豪語したいほど、い~い体験だった。何度も撮影した写真を見返してしまうほどだ。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<スノーシューの扱いに段々と慣れてくると楽しさ二倍>

青森の深~い自然の営みから育まれたヒバの森の香りと、目の前に続く雪の道をスノーシューで踏みつける感触。「ザクッ、ぎゅっ、グググ··」という雪の心地よいBGMを鳴らしながら、グリーン色のヒバの森の中をぐんぐん進んでいく時間は、神秘的で非常に心地よいのだ。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<みんなで雪に寝そべるって楽しいんだ、これが>

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 
<見上げるとヒバの木々に守られているような空間ということに気づく>

普段ならできない雪のベッドに思い切り寝転がって、大地と空を身体中で味わい尽くす時間は、もう、最高だった。こういう時っていうのは特に言葉は出ないもので、みんないい表情をしていた。

奥薬研修景公園レストハウス     

  • 所在地:青森県むつ市大畑町赤滝山1-3
  • 電話:0175-34-2008         
  • 営業時間:4・9~10月 9:00~17:00、5~8月 9:00~18:00、11~3月 10:00~17:00
  • 定休日:火曜(11~4月)、12/29~1/3 ※公式サイト要確認  
  • 料金:無料
  • 公式サイト:奥薬研修景公園レストハウス

※「奥薬研修景公園レストハウス」ではスノーシューの貸出はしていませんので、体験を希望する場合は、マグ女ツアーからご予約が必要になります。スノーシュー体験以外にも、春・夏・秋に散策コースとしてウォーキングが楽しめます。(散策は予約不要、個人申込可)

実際にツアーに参加してわかったマグ女の取り組みの魅力とは?

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<イガメンズの1人でありヒバの森の案内人を務める野呂さん>

答えは「場所」以上に「人」にあった。それは、マグ女の活動には、驚くべき波及効果があり、例えば、マグ女と一緒に活動している男性メンバー「イガメンズ(※マグロの餌になるイカに由来)」の一人は、家族から『(マグ女の)活動を始めてからすごく輝いている』と言われたという。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<マグ女とりまとめ役の島さんは本当に明るくてみんなを巻き込み楽しませてくれる>

地域をよく知るマグ女とイガメンズたち(運営側)が誰よりも楽しみ、輝いていること。そのポジティブなエネルギーが、参加者である「お客さん」を惹きつけ、リピーターを生む。

単なる観光客と主催者という関係を超えて、まるで「友人」のような緩やかな繋がりが生まれているのだ。

増殖中の「マグ女」が目指す地域の未来

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 
<各地のマグ女たち ©津軽海峡マグロ女子会> 

今後の展望について、島さん(青森県側のマグ女とりまとめ役)の答えは軽やかだ。

マグ女の取り組みは、組織として巨大化させるような"野心"よりも、大切にしているのは「自分たちの歩幅で続けること」だという。

それは、マグ女の取り組みはスピードより持続性を大事にしたいということ。名前にちなんだイメージだと、マグロは回遊魚なので泳ぎ続けなければ死んでしまうが、マグ女的には無理をして息切れしては意味がない。そして、ゆるやかな連帯も大切に。

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女
<今年(2026年)3月4日で12周年を迎えた「マグ女」©津軽海峡マグロ女子会)> 

現在(2026年3月時点)約90名のマグ女メンバーがいるが、それぞれの得意分野を活かし、無理のない範囲で関わる「プロジェクト」としての形を維持していきたいという。

島さんの言葉で印象的だったのが「同じ地元民でも地域のことを知らないのは、まずいでしょう」ということ。

地域の人が地元の良さを知らないとどうなるのか?その結果、土地を離れる原因にもなり得るのだ。

だからこそ、マグ女のプロジェクトで同じ青森県内在住の方にも参加してもらい、改めて自分の地域の魅力を知ってもらうきっかけになれたら、地域の未来は明るい。これは日本全国の全ての地域にも言えることだ。

「マグ女」メンバーに会うための方法

青森県  津軽海峡マグロ女子会 マグ女 ビバの森 スノーシュー
<マグ女ツアーは季節ごとに内容も違うから面白い!定員制なので早めにチェックしよう>

公式サイト「マグ女のセイカン(青函)博覧会」からお好みのツアーに応募すると、現地各所にいるマグ女たちに会える。

ツアー企画内容もさまざまで、例えば地元で長く親しまれている料理のワークショップ体験や、踊り、地酒を味わうものなど、探すだけでもすでに楽しすぎて顔がニヤニヤしてしまう。

そして、繰り返しになるが、ツアー内容ももちろん素敵なのだが、マグ女メンバー自体が、このツアーの醍醐味ということを是非覚えていてほしい。

    まとめ 

    今回、マグ女の取り組み内容を体験し、話を聞いた上で思うことは、マグ女たちの活動は地域おこしの枠を超え、人口減少や空き家問題といった過疎地域の課題に対する「一つの回答」のようにも見えた。

    そして彼女たちの周りには、自然と人が集まってくる。それは何より、島さんをはじめとするメンバーが、地域の可能性を誰よりも信じ、心から楽しんでいるからだ。

    "マグ女"という存在に出会えたことで、私自身パワーと刺激をもらい、ツアーから帰ってきてからも感謝の気持ちであふれている。

    津軽海峡の地域おこし集団「マグ女」とは、まぎれもなく観光資源を超える"また会いたくなる女性たち"だった。

    津軽海峡マグロ女子会「マグ女のセイカン博覧会」

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    Molly Chiba

    東北生まれのフリーランス記者です。
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    執筆の傍ら社会人大学生として精神医療と福祉分野を学び中。
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