【フランス】科学者ルイ・パスツールの足跡を辿るジュラの旅:知られざる絶景と歴史を巡る

キュイザンス川水源近く フランス

フランスのルイ・パスツールと言えば、狂犬病などのワクチンを生み出したことで知られる科学者。医学をはじめ、化学、細菌学、獣医学など複数の分野で光る業績を残しています。

ルイ・パスツールが創設したパスツール研究所は、いまも重要な研究機関です。いわば、フランスの偉人のひとりであるルイ・パスツール。

今日はそのパスツールと縁の深いジュラのスポットをご案内します。

目次

ジュラってどこ?

ジュラ県は、フランスの南北で言えばちょうど真ん中あたり、東西でいうと東の端、スイスとの国境に接しています。ジュラという名前は、フランス・スイスの国境をマークする山脈、ジュラ山脈からとられたものです。余談ですが、ジュラ紀(ジュラシック)という呼び名も、このジュラ山脈由来のものです。

ジュラの風景
<ジュラの風景©Kanmuri Yuki>

ジュラ山脈の最高峰は1,700m強。南方に控えるアルプス山脈の最高峰は4,800m以上あることを思えば、ジュラの山々は比較的なだらかで優しい印象を与えます。

ルイ・パスツールのふるさと

ルイ・パスツールは、1822年このジュラ県の町ドールで生まれました。こちらには今もパスツールの生家が残っていて博物館になっています。

ドルのパスツール生家

  • 開館日:2024年は2月17日~11月3日
  • 営業時間:2~4月、10.11月 14:00~18:00/5~9月 9:30~12:30、14:00~18:00
  • 入館料:2024年は大人6ユーロ、学生5.5ユーロ、10~18歳は4.5ユーロ、10歳未満は無料
  • 公式サイト:ドルのパスツールの生家 

パスツール一家はルイが5歳になる年にドールを離れ、その後アルボワという町に落ち着きました。アルボワのパスツール家も、現在博物館になっていて見学可能です。

アルボワのパスツールの家
<アルボワのパスツールの家©Kanmuri Yuki>

アルボワのルイ・パスツールの家

  • 開館日:2024年 2月17日~11月3日
  • 営業時間:2~4月、10.11月 14:00~18:00/5~9月 9:30~12:30、14:00~18:00
  • 入館料:2024年 大人7.5ユーロ、学生6.5ユーロ、10~18歳は5.5ユーロ、10歳未満は無料
  • 公式サイト:アルボワのパスツールの家 

ノートルダム寺院での国葬

ルイ・パスツールの胸像
<リルのパスツール研究所にあるルイ・パスツールの胸像©Kanmuri Yuki>

成長したルイはその後ブザンソンやパリで勉学に励み、ディジョン大学やストラスブール、またリルの大学などで教授職を務めたのち、母校でもあるパリの名門、高等師範学校の理学部長に就任します。

四十代の時、脳卒中を患い半身に後遺症が残りましたが、研究に掛ける情熱は一生消えることがなく、複数の分野で業績を上げ数多くの賞を受賞しました。

1895年パリ郊外で亡くなりましたが、葬儀は国葬となり、パリのノートルダム寺院で執り行われました。その後ルイの遺体は、家族の希望によりパンテオンではなくパリのパスツール博物館になっている建物の地下聖堂に安置されました。

※パリのパスツール博物館は2028年までリニューアル工事のため閉館中

毎年休暇を過ごしたアルボワ

アルボワの町中
<アルボワの町中©Kanmuri Yuki>

一見、成人後はジュラとは縁がなかったように見えるルイですが、実はそうではありません。両親亡き後、上述のアルボワの家を受け継いだルイは、これを改装し、毎年休暇を過ごしに訪れたと言います。

しかも、ラボラトリーまで設け、研究や実験を常に続けられるようにしていました。実際、ルイが発酵に関する研究を行ったのも、有名な低温殺菌法を開発したのも、アルボワでのことでした。

アルボワでルイが実験を行った場所
<アルボワでルイが実験を行った場所©Kanmuri Yuki>

アルボワは、ジュラ県の中ではそこそこ大きいとはいえ、人口は約3,500人とのんびりした雰囲気の町です。ジュラはワインの産地でもあり、アルボワ市には、複数の醸造所の直営店が立ち並んでいます。

町の中心を流れるキュイザンス川を流れる水は、町中とは思えない澄み具合です。前述のパスツールの家もこの川に面して建っています。

まるで陸のフィヨルド?!ジュラのルキュレ

谷を取り巻く崖
<谷を取り巻く崖©Kanmuri Yuki>

キュイザンス川は、アルボワのプランシュ・ルキュレ(袋谷)を水源とする川です。ジュラ地方でいうルキュレとは、高く険しい崖に囲まれた深い谷のことです。奥は行き止まりで、洞窟や地下から水が湧き出ているという特徴があります。

ルキュレを遠くから眺めると、崖が屏風のように立ちはだかって見え、その急峻さには、北欧のフィヨルドを思わせるものがあります。

ジュラのルキュレ
<上方から上の写真の谷間を見下ろす©Kanmuri Yuki>

ジュラの道路沿いには、ルキュレを見渡すことのできるビューポイントが複数ありますから、ドライブの際はぜひ車を停めて景観を楽しんでみてください。

キュイザンス川の水源

さて、毎年休暇をアルボワで過ごしていたルイ一家は、プランシュ・ルキュレを散策し、キュイザンス川のほとりでピクニックすることを楽しみにしていたそうで、その様子を伝える写真も残っています。

また、散歩中でさえ実験のことは頭を離れなかったようで、研究メモの中に、「(フラスコを)プランシュ散策中に振り動かす」と記しています。

キュイザンス川水源近く
<キュイザンス川水源近く©Kanmuri Yuki>

ルイが最後にアルボワを訪れたのは、亡くなる前年1894年の夏のことでしたが、この時にも素晴らしい天候の中プランシュを散策したと、ルイの妻が娘に宛てた手紙の中で語っています。

キュイザンス川の水源への散策路はレ・プランシュ=プレ=アルボワと呼ばれる小さな集落から伸びています。アルボワの街中でさえ澄んでいたキュイザンス川、その水源の美しさはたとえようもないものでした。

神々しささえ感じる水の清さ

キュイザンス川には、石灰岩が沈殿して形成されるチュフという凝灰岩の層ができています。人里離れた森の中、その白い段々の層が透き通った水を静かに湛えるさまには、神々しささえ覚えました。

ちなみに、このチュフ保護のため、キュイザンス水源近くでは、川の中に入ることも、川岸で飲食することも禁じられています。散策をされる際にはお心にお留め置きください。

キュイザンス川のチュフ
<キュイザンス川のチュフ©Kanmuri Yuki>

レ・プランシュ=プレ=アルボワには、いくつか水飲み場があり飲水可能です。季節ともなれば花々が窓や扉を縁取るような家々の中には、ちょっとした飲食店もあります。

レ・プランシュ=プレ=アルボワの水飲み場
<レ・プランシュ=プレ=アルボワの水飲み場©Kanmuri Yuki>

ジュラには、そのほかにも多くの散策路やハイキングコースがあり、いずれもわかりやすく歩きやすいものが多い印象でした。今回は書ききれなかったジュラの魅力紹介、次の記事に続きます。

レ・プランシュ=プレ=アルボワ

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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