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南米チリでおにぎりを売る
チリに移り住んで13年、街の週末マーケットでおにぎりを売り出して11年。今や日本でも世界でも大人気のおにぎりですが、私がチリで売っているおにぎりは、日本のおにぎりとは結構違います。
チリ人の好み、現地のお米や手に入る具など、今回はチリでのおにぎりをめぐる事情について書いてみたいと思います。
目次
なぜおにぎりを売ることに?
以前、チリでの青空市場(フェリア)について書きましたが、チリでは青空市場(フェリア)が開かれ、そこで買い物をするという習慣がまだ残っています。
>>過去記事『チリのferia libre青空市場』はこちら
フェリアは野菜が新鮮だし安い。フリーマーケットのスペースでは色々ながらくたも売っているので、毎週のように買い物に行っていたのですが、あまりにも色々な人が色々なものを売っているので、「私も売ってみたい」と思い、11年前のとある週末、おにぎり30個を持って行ってみました。
当時、SUSHI(お寿司:主にカリフォルニアロールみたいにクリームチーズやアボカドが入っている巻きずし)人気が絶頂だったチリですが、おにぎりの知名度はありませんでした。
おにぎりを知っている人といえば、アニメファンで、主に子どもや若者。「NARUTOが食べていたあの食べ物」ということで、最初におにぎりを買ってくれたのは、子どもにせがまれたお母さんや好奇心旺盛な食いしん坊の皆さんでした。
当時何十回も繰り返された会話は、
お客「これはなあに?」
私「SUSHIの親戚で、おにぎりというものです」
(笑)
最初は気が向いた時だけ少し持って行き売っていただけですが、売れるので量を増やし、中身の具もバージョンアップしていくことにしました。
当時は本業の日本語を教える仕事があったので、「おにぎりを売ったお金で、1週間分の食料が買えたらいいよね」程度でした。
チリのお米とSUSHIの人気
チリの主食はパンとじゃがいもですが、もちろんお米やパスタも食べます。チリ人の習慣的なお米の食べ方は日本でいえば、ピラフ。最初にお米を炒めてから炊くので、パラパラとしていて、お箸では食べられないものです。
日本人がやっている日本料理店以外で、SUSHI(日本の鮨とは違うのであえてローマ字表記をさせてもらいます)がアメリカ経由で入ってきたのは今から20年くらい前と思われますが、当時は高価なものでした。
それに人気が出てお店が増え、だんだん庶民の手に届くような値段になり、今ではデリバリーやテイクアウトのSUSHI屋がたくさんあります。
SUSHIの中身は、クリームチーズ、アボカド、エビ、カニカマ(でも全然美味しくない)、鶏肉などで、さらに、ここ5年くらい人気があるのが「ハンドロール」という巻きずしにパン粉をつけて揚げたもの。
中にはSUSHIと同じクリームチーズや鶏肉が入っていますが、これはこれで美味しいです。さらにGOHANという日本でいえばどんぶりみたいな下に白いご飯があって上にトッピングがされているものも、今後のブレイクが予想されます。
じゃあチリのお米は美味しいの?という疑問があると思います。
もちろん、日本と比べたらお米は美味しくありません。首都に住んでいる日本人の中で、アジアショップで売られている日本米やカリフォルニアで作られた日本のお米の品種を食べている人は多いと思います。でも、地方都市では手に入らないし何より高い。
というわけで、私はチリの米農家に直接注文するか、現地のスーパーで売っているお米を使っています。
チリのお米にはグレードがあって、一番良いグレードだとそれなりに美味しいです。
そのお米をしっかり研いで、炊く前に一晩浸水させると、ちゃんとおにぎりが作れる粒がくっつくご飯が炊きあがります。
具のあれこれ
チリ人が好きだからといって、クリームチーズやアボカドを具にするのは誰でもできます。日本らしい味付けで、チリ人にも受けいれてもらえるものを考えなければなりません。
さらに原価が安くて、簡単に手に入るもの、と頭をひねり試行錯誤のうえ、定番のおにぎりになったのは、人気のある順に、
- ピーナッツ味噌(手作りの味噌とピーナツバターを混ぜたもの)
- ナスとマッシュルーム、赤ピーマンの味噌炒め
- ツナ缶と、セロリの辛みそ炒め
- おこわにシソの塩漬けを入れたもの
です。
種類の違うおにぎりを分けてタッパーに入れています。
これらのおにぎりを渡す時に海苔をつけます。味噌味が多いのは、私が味噌を生産していて、日本が誇る健康食「味噌」を広めたいからです。
また4種類のうち3種類はいつもビーガン(動物性のものを一切使わない)にしています。というのも、今、チリの若い人の間では動物愛護や健康食という視点からビーガンやベジタリアンとして肉を食べない主義が流行っていて、いつもおにぎりを買ってくれる人のうち半分くらいが肉を食べないからです。
健康志向の人向きに手作りの梅干しと玄米ご飯おにぎりも売ってみましたが、反応はいまいち。鮭やマヨネーズだとビーガンの人は買ってくれないので作れません。
いつも同じ具だと飽きるので、たまに高菜漬けみたいな漬物をゴマ油で炒めたものや、ダシを取り終わったシイタケを醤油で煮たものなども作っています。
大人気!おにぎりのタレ
日本人の感覚では「おにぎりにタレ??」ですよね。私もこれを導入することに抵抗しましたが、あまりにもおにぎりを買ってくれた人に「タレはないの?」と聞かれるので、泣く泣く導入することにしました。
というのも、SUSHIには醤油やあまじょっぱい中国料理のタマリンドソースのようなものをつけて食べるのが普通で、チリ人は味の濃いものが大好きだからです。
ただ醤油をつけるのもつまらないので、おにぎりのたれとしてネギ醤油、人参醤油を置いたら、売り上げが倍増!今や私のおにぎりはタレなしでは売れません。
ネギまたは人参を細かくしたものを醤油に入れてごま油と数滴たらしただけ、というシンプルなものですが、みんなこれが大のお気に入りで、リピーターこそ、このたれをおにぎりにつけて食べています。
どうも、チリの人たちは醤油のしょっぱさを「しょっぱい」とは感じないらしく、あまりにも多くたれをかけるので、おにぎりのご飯に塩を入れるのはやめました。
そもそもSUSHIが人気なのは「みんな醤油が大好きで、それを思いっきりつけて食べられるからではないか」と言う人もいるくらい。「そんなにタレをかけたら具の味なんてわからないじゃん!」と内心思いながら、お客さんがおにぎりを美味しそうに頬張るのを見ています。
日本のふんわりとしたおにぎりとは随分違いますが、チリにはチリの事情あり。さまざまな工夫とInstagramでの集客のおかげで、ありがたいことにお客さんが増え、今や毎週100個以上のおにぎりが売れるようになりました。
本業の日本語を教える仕事を失ってしまったので(泣)、今後はますます工夫を重ねて、チリ人に愛されるおにぎりを売っていきたいと思います。
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IZUKAWAUSO
- 日本青年海外協力隊員。チリ南部の田舎暮らしも8年半になります。趣味は旅行(特に屋台めぐりと温泉)と料理。地元の週末フリーマーケットでおにぎりと味噌汁売ってます。