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【オーストリア】コウノトリが頭上を飛び交うマルヒエック城ハイキング
<トップ画像:古城の屋根で一休みするコウノトリ>
大きな鳥が空を飛び交う大自然で癒されたい・・身近に自然を感じてゆっくりしたい・・そんな時ってありませんか?
実はウィーンから車でたった50分のところに、コウノトリの楽園があるんです。
今回紹介する古城では、コウノトリが身近にいる生活を実感できる場所です。もしかしたらコウノトリと心が通じあえるチャンスがあるかもしれません。なぜコウノトリが子どもを運んでくるといわれているのか不思議に思いませんか?ここを訪れると、そんな伝説も納得できてしまうと思います。
目次
春を運んでくるコウノトリ
コウノトリは冬をアフリカで過ごし、春になるとヨーロッパで子育てをする渡り鳥です。コウノトリが多く見られるのは、オーストリア、ドイツ、スイス、ポーランド、フランスのアルザス地方など、一部の地域。その中でもオーストリアは、ハンガリーとの国境近くのブルゲンラント州と、スロバキアとの国境近くのマルヒ川(モラヴァ川)流域の平原がコウノトリの名所で、毎年400組以上のコウノトリが子育てに励んでいます。
ピクニック日和、ハイキング日和となったので、コウノトリの名所マルヒエック城を訪れてみることにしました。今年は例年より早く飛来していたとニュースにもなっていました。
マルヒエック城は、マルヒ川流域のバロック様式の古城です。スロバキアとの国境に近く、13世紀にはチェコの王オトカー二世によって作られた後、戦略上の要所としてさまざまな国の貴族の手に渡りました。16世紀にはサルム家の居城となった後、オスマントルコの侵略で破壊され、18世紀にはハンガリー貴族パルフィ家の居城とり、その後ハプスブルク家の狩猟の館としても使われていました。
現在このお城は別名「コウノトリ城」とも呼ばれ、市役所兼博物館となっていて、館内ではマルヒ川流域の自然とコウノトリに関する展示が開かれているほか、人気の結婚式場にもなっています。
コウノトリの住む古城
お城に到着してすぐ、驚くべき光景を目にしました。写真だけでは伝わりづらいかもしれませんが、わかりますでしょうか?
<マルヒエック城正面>
なんと、お城の煙突全てに、コウノトリが巣を作っているんです。煙突の上にある丸いタイヤのようなものが、コウノトリの巣です。中庭から360度見まわすと、四方の煙突にいくつも巣があり、羽を伸ばすと2m以上にもなる巨大なコウノトリが頭上を飛び交い、私たちの方がコウノトリの世界に迷い込んでしまったようです。
<マルヒエック城中庭。写真だけでも5つのコウノトリの巣が煙突の上に作られているのがわかる>
夫婦で仲良く巣を作ったり、交代で巣を飛び立っていく様子、戻ってきた相手を迎える様子はとてもほほえましく、まさに夫婦円満。コウノトリは、パートナーが巣に戻ってくると、くちばしをカタカタと鳴らすクラッタリングという行動をします。体をそらせてくちばしを鳴らす姿は、パートナーに会えた喜びを全身で表しているようです。
<クラッタリングをするコウノトリ>
このマルヒエック城には大きな庭園が付属しているのですが、ここがコウノトリの楽園になっています。芝生が広がっていて、ピクニックテーブルもあり、日陰を作る大木もある気持ちのいい庭園なのですが、見上げるとなんとその大木には、コウノトリがいたるところに巣を作っています。
建物の屋根の上にいるより、同じ公園で木の上から見下ろされる方が、人間とコウノトリの距離も近く、不思議と親しみを感じます。視界に入るだけでも4~5か所に大きな巣があり、それぞれ1羽が巣を守っていたり、餌を持ち帰ったり、2羽で巣作りをしたりしています。
頭上を何羽も飛び交う巨大なコウノトリを見上げながら、芝生でピクニックしてみると、野鳥サファリに来たような臨場感と迫力です。フランスやオーストリアのコウノトリの名所はいくつか行きましたが、ここほど身近に感じられるところは見たことがありません。
公園を散歩していると、ふと上からの視線を感じ、見上げるとコウノトリが自分のことを観察したりしていて、まるで自分が彼らの王国にお邪魔しているお客さんのような気分になります。巨大ではありますが、人間を襲う鳥ではないので、こちらも笑顔を返したり、挨拶したりして、心が通じている気持になります。
コウノトリが観察できるハイキングコース
古城の裏手には、コウノトリが餌をとる様子が観察できる「コウノトリのハイキングコース」があるとのことで、実際に見に行ってみました。
付近を流れるマルヒ川には、洪水対策の広大な氾濫原があり、原始林のような自然が広がっています。その一部の沼地に、20羽ほどのコウノトリが集まっていました。今までは屋根や木の上にいるコウノトリを見上げていたので、地面の高さにいるのが不思議な感じがします。コウノトリたちは沼地の泥から餌のカエルや魚、トカゲなどを採っているところでした。
<沼地のコウノトリの餌場>
オーストリア人にも人気のスポットのようで、巨大な望遠レンズを付けたホビーカメラマンが何人も訪れていました。
コウノトリが春に飛来するのに最も重要な条件が、この「豊富な餌場があること」です。このマルヒエック城は、広大な庭園とマルヒ川の氾濫原という自然の巨大な沼地のおかげで、オーストリア一のコウノトリの飛来地となったというわけですね。
オーストリアのもう1つのコウノトリの名所で、ノイジードル湖近くのルストという町では、コウノトリは家の屋根や煙突に巣を作ることが多く、2023年には23ペアが44羽の子どもを育てました。一方マルヒ川流域の平原に飛来するコウノトリは、ルストの倍から3倍近い数ということもあり、両方訪れてみると数でも迫力でも軍配が上がります。屋根の上にいるコウノトリより自然の中で過ごすコウノトリの方が、身近に感じるものですね。
<ルストの風景>
まとめ
羽を伸ばすと2m以上にもなる巨大なコウノトリが飛び交う、マルヒエック城。野鳥好きの方は、その迫力を肌で感じることができる珍しいスポットです。芝生の上のピクニックやハイキングがお好きな方も、いつもと違う自然との触れ合いの時間を楽しめることでしょう。
春に飛来し、カップルで巣を作り、子育てをし、仲良くクラッタリングで愛情表現をするコウノトリ。そんな姿を大昔から見てきた欧州人にとっては、「コウノトリが子どもも運んでくる」という伝説は、生活の中で生まれた、とても自然なお話なのだと実感します。
マルヒエック城
- 住所:Im Schloß 1, 2293 Marchegg
- 開館時間:10:00~17:00
- 閉館日:月曜日
- 公式サイト:マルヒエック城
※マルヒ川はオーストリア、チェコ、スロバキアの三国を流れる川で、通常チェコやスロバキアの呼称「モラヴァ川」と呼ばれることもありますが、当記事ではオーストリアでの呼称「マルヒ川」を使用しています。
※日本に飛来するコウノトリはくちばしが黒いですが、欧州のコウノトリは赤いくちばしで、「シュバシコウ」という名で呼ばれることもあります。ドイツ語では、アジアのコウノトリは「黒くちばしコウノトリ」、欧州のものは「白コウノトリ」と分類されていますので、当記事ではどちらも「コウノトリ」と表記しています。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。