【オーストリア】皇帝の避暑地バート・イシュルとザルツカンマーグートで欧州文化都市めぐり

音楽の都ウィーンだけでなく、アルプスの山々に囲まれた湖水地方の美しさでも知られるオーストリア。湖水地方は「ザルツカンマーグート」と呼ばれ、その中心地の町バート・イシュルは、ハプスブルク皇帝フランツ・ヨーゼフと美貌の皇妃エリザベートのゆかりの地でもあります。

バート・イシュルとその周辺のザルツカンマーグートの23の町では、欧州連合(EU)に指定された欧州文化と都市として、2024年にさまざまなイベントが行われています。

ハルシュタット湖
<ハルシュタット湖>

塩鉱山として7000年の歴史を持つ世界遺産ハルシュタットや陶器の名産地と知られるグムンデン、芸術家グスタフ・クリムトや作曲家グスタフ・マーラーが避暑地として愛したアッター湖の町なども含まれ、自然だけでなく文化や歴史の豊かさを誇るザルツカンマーグート地方。

ハプスブルク家の避暑地として栄えた温泉地バート・イシュルの見どころを中心に、美しいザルツカンマーグート地方の風景をご紹介します。

欧州文化都市と州の旗
<アルプスの山並みを背景にはためく、欧州文化都市と州の旗>

目次

皇帝の避暑地バート・イシュル

50年近い治世を誇り、オーストリア帝国の最盛期を築いた皇帝フランツ・ヨーゼフは、このザルツカンマーグート地方の温泉地バート・イシュルと深い関係にあります。

先代皇帝の弟であるフランツ・カール大公は、男児が生まれればハプスブルク帝国を継ぐ皇太子になることが約束されていましたが、後継ぎが生まれず悩んでいました。そんなときバート・イシュルでの温泉療法(クア)を主治医に勧められ、毎年夏に避暑に訪れるようになると、連続して4人の王子が生まれます。王子たちはこの地域の塩鉱山にちなんで「塩の王子たち」と呼ばれ、そのうち長男のフランツ・ヨーゼフがめでたく次期皇帝となりました。

皇帝フランツ・ヨーゼフも毎年夏にはバート・イシュルに通い、貴族たちもこぞってヴィラを立てたため、この山間の小さな町は華やかで貴族的な雰囲気に包まれ、この一帯の首都のような趣を持つようになります。

皇帝がのちの皇妃となるエリザベートとお見合いを行ったのも、このバート・イシュルの地。元々エリザベートの姉のヘレネとの婚約が予定されていましたが、同行した妹のエリザベートに一目ぼれした皇帝が押し切り、この地の教会で非公式の婚約披露が行われ、帝国は祝賀ムードとなりました。

聖ニコラウス教会
<エリザベートが皇后となることが明らかになった聖ニコラウス教会>

婚約を記念して、夏の新たな別荘として皇帝とその婚約者に贈られたのが、カイザーヴィラです。皇帝は毎年この離宮に滞在し、趣味の狩猟を楽しんだほか、晩年には第一次世界大戦の宣戦布告を署名した部屋も残されています。現在はガイドツアーでの内部見学が可能ですが(冬季は縮小営業)、館の前の庭園部分は自由に散策することができます。

カイザーヴィラ
<カイザーヴィラ>

カイザーヴィラ

  • 住所:Jainzen 38, 4820 Bad Ischl
  • 営業時間:5月~9月 9:30-17:00,2-4月と10月は不規則。11~1月はクリスマス前後を除き休業。 ガイドツアーのみ

他にもバート・イシュルには、皇帝にまつわる名所が多く残されています。当時舞踏会が開催され、現在は劇場や会議場となっている「クアハウス」、鉱泉を飲む社交場として貴族たちが集まった「トリンクハレ」など、見どころは多く、散歩してのんびり楽しむのにぴったりの町です。

クアハウス
<コンサート会場や劇場、会議場として利用されているクアハウス>

特におすすめは、皇室御用達カフェ「ツァウナー」。ウィーンのカフェと似た貴族的で贅沢な雰囲気満点で、名物の「ツァウナーシュトレン」は人気の逸品です。

バート・イシュルは、ウィーンからも直通電車があり、日帰りも可能です。名所もコンパクトにまとまっていて、ゆっくり半日散策するのにちょうどよいサイズの町です。

バート・イシュル

ザルツカンマーグートの見どころ紹介

バート・イシュルを中心として、ザルツカンマーグートの湖水地方には、小さな美しい町が宝石のようにちりばめられています。

ハルシュタットはその絶景が世界中に知られる世界遺産の町。最近はオーバーツーリズム気味ではありますが、この地域では最も風光明媚なことで知られる街で、一生に一度は行ってみたいと思う人も多いでしょう。正面の山は、氷河や氷の洞窟で有名なダッハシュタイン山。ハルシュタットはダッハシュタインとセットで世界遺産に登録されています。

ハルシュタットについては、過去の記事でも紹介しています。(参考記事:オーストリア世界遺産ハルシュタットの神秘の歴史と冬ナイトウォーク

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<世界遺産ハルシュタット>

ハルシュタット

ザルツカンマーグート地方の知られざる避暑地アッター湖も、静けさと絶景の宝庫。芸術家クリムトや作曲家マーラーが避暑に訪れ、数々の作品を生み出した地でもあります。実はアッター湖の底には、先史時代の「杭上住宅」が残っていて、欧州6か国にまたがる世界遺産にも指定されています。

(参考記事:クリムト生誕150周年に縁の地アッター湖畔を訪れて

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<クリムト絵画そのままのアッター湖>

アッター湖

まとめ

オーストリアの碧玉の絶景が集まるザルツカンマーグート地方。アルプスの山深い地域でありながら、先史時代からハプスブルク帝国の栄光まで、歴史の舞台となり続け、今なお絶景の避暑地・観光地として絶大な人気を誇ります。

欧州文化都市の2024年はさまざまな音楽・芸術イベントが開催されますが、例年、スタフ・マーラー音楽祭、アウスセー・バロック音楽祭、グムンデン音楽祭などが開催される予定ですので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね!

みなさまがオーストリアに来て下さる日を楽しみにしています。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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