【オーストリア】ウィーンの水が美味しいのはなぜ?「皇帝の泉」150年の歴史をたどる

ウィーン水道開通記念噴水

オーストリアは日本と並び、水道水を美味しく飲むことのできる、世界でも数少ない国です。

その理由は、ウィーンの南にあるアルプスの山奥にある源泉から、はるばる送られてくる水。ウィーンの街を歩いていても、各所に飲料水飲み場が設置されていて、町のどこでもおいしい水を飲むことができます。

目次

ウィーンの南にあるアルプスの山奥にある源泉から、はるばる送られてくる水
<街角にある「飲料水」と書かれた水飲み場>

このおいしい飲料水をウィーンに届けてくれるトンネル水路、「ウィーン水道」は今年150周年を迎えます。ウィーンでどこでも蛇口をひねると飲める、アルプスのおいしい水の歴史と秘密をご紹介します。

ウィーンの飲料水事情

ウィーンの街中には、なんと1300もの水飲み場が作られ、おいしい飲料水を飲むことができます。散歩や街歩きの途中でも、道端で水を水筒に入れる人の姿もよく見かけます。(飲み水にはTrinkwasser、非飲料水にはKein Trinkwasserと表示があり、水を循環させるタイプの噴水は飲料には適しません)

レストランで「水道水をください(Leitungswasser, Bitte!)」というと、おいしい水道水がコップになみなみと注がれて出てきます。以前は水道水は基本無料でしたが、最近は少額ですが有料になった店が多いようです。それでも、伝統的なウィーンのカフェなどで、コーヒーに必ず水がついてくる、ウィーンならではのサービスは健在です。

伝統的なウィーンのカフェなどで、コーヒーに必ず水がついてくる
<コーヒーは必ず水と一緒に>

また、ウィーンにはヨーロッパ最大の水の遊び場があり、1910年まで使用されていた給水塔を背景に、水の歴史を学びながら水遊びができます。

歴史的な給水塔の足元にある水の遊び場
<歴史的な給水塔の足元にある水の遊び場>

アルプスの源泉から市民の蛇口へ

ウィーンには第一水道と第二水道があり、源泉はどちらもウィーンから南へ90km~180km離れたアルプスの山奥にあります。第一、第二水道でほぼ半分ずつの水量を賄い、それぞれ16時間と36時間以内に、合計で毎日40万リットルの水をウィーンの貯水槽に運ぶことができます。

そのうち、ウィーン第一水道は今から150年前の1873年に開通したというから驚きです。

第一水道の水源から流れるシュヴァルツァ川
<第一水道の水源から流れるシュヴァルツァ川>

19世紀前半まで、ウィーン市民は井戸水を飲料水としていたため、たびたび伝染病に苦しめられていました。水の危険を避けるため、貴族たちは町の外に安全な水源を探し、ハプスブルク家の皇族に至っては、わざわざアルプスの水を馬で運ばせて飲料水としていました。

19世紀半ばに市民に安全な飲み水を確保する都市計画が立ち上がった時、時の皇帝フランツ・ヨーゼフは、アルプスの皇族専用水源をウィーン市民に「贈る」決定を下します。この「皇帝の泉」の最大の利点は、その安定した水量と水質だけではなく、ウィーンまで一度もポンプで水をくみ上げることなく、高低差のみでウィーンまで水を届けることができるという点でした。

「皇帝の泉」の源泉
<「皇帝の泉」の源泉>

ウィーン万博で世界中からウィーンが注目された1873年、4年の工事期間を経て、ウィーン第一水道が開通します。水路の長さは100km。数えきれないほどのトンネルと、30の水道橋を含む大プロジェクトでした。

開通記念式典は1873年10月24日に行われ、この式典のために作られたシュヴァルツェンベルク広場の巨大な噴水で、皇帝フランツ・ヨーゼフ自らが開通を宣言しました。それだけ大きな国家プロジェクトだったということですね。

ウィーン水道開通記念噴水
<ウィーン水道開通記念噴水>

この噴水は、暦をテーマに作られていて、真ん中に大きな岩の島からは、それぞれ12本、24本、30本の三種類の噴水が上がり、周りは7つの島で囲まれています。噴水の淵からは365本の水の筋が中央に向かって流れ込むという構成です。また、この噴水のある広場の片隅には、このウィーン水道の提案者であり、スエズ運河にその名が残るエドゥアルト・スエズの像が立っています。

1910年にはウィーン第二水道が開通し、現在でもこの二本の水道を通って、安全でおいしい水がウィーンに届けられています。

ウィーン水道をもっと知るには

ウィーン第一水道の水源である「皇帝の泉」と第二水道の水源であるヴィルトアルペンにはそれぞれ水道博物館があり、水道やその建築の歴史について展示がされています。また、第一水道沿いにはハイキングコースもあり、水道の歴史に親しむことができます。

さらに、100km以上にわたる水路には、飲料水を運ぶ以外にも用途があり、水路には高低差を利用した水力発電所が15か所も設けられていてます。

バーデン周辺の水道橋
<バーデン周辺の水道橋>

まとめ

以前はハプスブルク家の皇族しか飲むことができなかった「皇帝の泉」。今はウィーンの蛇口をひねれば、どこでもアルプスの新鮮な水を好きなだけ楽しむことができます。

ぜひウィーンを訪れた際には、おいしい水道水を味わってみてくださいね。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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