ペルーが誇る13の世界遺産

ペルーは南米有数の観光立国。国内には古代アンデス文明の遺跡や名所が数多く残されており、未だ手つかずの場所も少なくありません。一方、植民地時代に建造された歴史地区をそぞろ歩けば、スペインの片田舎に迷い込んだような錯覚を覚えるでしょう。

海岸砂漠地帯、アンデス山岳地帯、アマゾン熱帯雨林地帯という変化に富んだ気候風土は多種多様な動植物相を育み、世界に17あるメガダイバーシティー(超多様性)国家のひとつにも数えられています。

そんなペルーが誇る13の世界遺産をご紹介しましょう。

目次

1.死ぬまでに一度は訪れたい世界遺産『マチュ・ピチュの歴史保護区』

マチュ・ピチュの歴史保護区

インカ帝国第9代皇帝パチャクティにより1440年頃に建設が始まったとされる、ペルーの秘宝。遺跡はマチュ・ピチュ山とワイナ・ピチュ山を結ぶ標高約2,450mの尾根に位置し、麓からその存在を確認することができないことから、「インカの空中都市」とも称されています。

遺跡内には「インティワタナ(日時計)」や「太陽の神殿」、インカ創生神話に由来すると思われる「3つの窓の神殿」、「コンドルの神殿」のほか、貴族・職人の居住区や石切り場、山の斜面を利用したアンデネス(段々畑)など見どころが多く、周囲に広がる豊かな自然環境や生物相も評価され、1983年に文化遺産と自然遺産を合わせた複合遺産としてユネスコに登録されました。

2.『クスコ市街』

クスコ市街

1983年に世界文化遺産に登録された、インカ帝国の首都クスコ。インカの言葉ケチュア語で"へそ"を意味するこの街は、聖獣ピューマの輪郭を模して設計されています。インカとはもともと王族を指す言葉であり、その国家はタワンティンスーユ(4つの地方の意)と呼ばれていました。

北はコロンビア、南はチリ北部とアルゼンチンの一部に至る広大なエリアを支配していたインカ。その行政・祭祀の中心地であったクスコは、まさに"アンデス世界のへそ"の名にふさわしい場所です。

3.『アンデスの道路網カパック・ニャン』

アンデスの道路網カパック・ニャン

2014年にペルーを含む6か国が共同で世界遺産に推薦し登録されたインカの道路網で、一般には「インカ道」の名で知られています。カパック・ニャンとはケチュア語で「王の道」という意味で、タワンティンスーユ全土を網羅していました。

インカ時代の主要都市や遺跡の周辺だけでなく、茫洋と広がる砂漠にもまっすぐに伸びるカパック・ニャンの痕跡を見つけることができます。

4.『リマ歴史地区』

リマ歴史地区

1988年にリマ市セントロにあるサン・フランシスコ修道院が世界文化遺産に登録され、1991年に対象エリアを拡張、リマ歴史地区として再登録されました。また2023年10月にはリマ歴史地区の範囲外に位置する「プラド邸」や「サン・バルトロメ病院」、「ヌエストラ・セニョーラ・デル・プラド教会と修道院」など、ペルー副王領時代に造られた6つのモニュメントも追加登録されました。

スペインによる南米支配の拠点となった"諸王の都"リマ。その魅力は訪れる人を魅了してやみません。

5.『聖地カラル=スーペ』

聖地カラル=スーペ

紀元前3000~2000年ごろに栄えたカラル文化の遺跡で、世界文化遺産への登録は2009年。アメリカ大陸最古の都市遺構と考えられており、神殿や半地下の円形広場、ピラミッド、居住跡などが残っています。動物の骨で作られたフルートやコルネットなどの楽器のほか、大量のイワシの骨や貝の化石も出土しました。

都北約182kmのスーペ渓谷に位置し、リマから日帰りツアーが催行されています。

6.『ワスカラン国立公園』

ワスカラン国立公園

アンカシュ州に広がるアンデス・ブランカ山系に広がる、世界で最も標高の高い場所にある国立公園。その名は、低緯度地域にある世界最高峰の雪山、ワスカラン山(南峰/標高6,768m)に由来しています。生物多様性に富み、「100年に一度花が咲く」といわれるプーヤ・ライモンディも自生。世界自然遺産の登録は1985年で、毎年多くの登山家やトレッカーがこの地を訪れています。

7.『チャビンの考古遺跡』

チャビンの考古遺跡

アンカシュ州にあるチャビン・デ・ワンタル遺跡は、紀元前1200年頃から200年頃に栄えたチャビン文化を代表する遺跡。石造りの神殿内部は迷路のような構造になっており、その奥には御神体と思われるランソン(大きな槍の意)像が安置されています。前述のワスカラン国立公園同様、1985年に世界文化遺産に登録されました。

8.『チャン・チャン遺跡地帯』

チャン・チャン遺跡地帯

ペルー第3の都市トルヒーヨ郊外に位置するチムー王国の首都遺構で、1985年に文化遺産と危機遺産に登録されました。広さ約20平方キロメートルを有すアメリカ大陸最大の都市遺構で、高い壁で囲まれたシウダデーラ(城塞)が10か所確認されています。現在はそのうちの1つである「ニカン」のみ公開されており、壁に彫られたラッコや魚、ペリカンなどのレリーフは一見の価値あり。儀式の広場やチムーの最高神とされる月を崇めた池、王の墓地などがあります。

9.『ナスカとパルパの地上絵』

ナスカとパルパの地上絵

1994年に世界遺産に登録された、ペルーを代表する世界遺産のひとつ。イカ州ナスカ台地とパルパ平原に広がる大地のアートは、ナスカ文化(紀元前100年~紀元700年ごろ)のものだけでなく、近年その前身とされるパラカス期(紀元前700年~100年ごろ)のデザインも次々に発見されています。多くの地上絵が上空からしか確認できないほど巨大であったことから、「宇宙人によって描かれた」など荒唐無稽な説も登場しましたが、現在では拡大法で描けることが証明されています。ナスカを始め、イカやピスコからもナスカの地上絵見学フライトが就航。

10.『アレキパ市の歴史地区』

アレキパ市の歴史地区

2000年、ユネスコの文化遺産に登録。街には近郊の火山から採取されたシジャールという白い火山岩を建材に用いた建物が並んでおり、その美しさから「白い街」と呼ばれ親しまれています。白亜の「アレキパ大聖堂」や「シエナのサンタ・カタリナ修道院」、「サン・ラサロ地区」などの見どころのほか、シジャール造りの屋敷を利用したピカンテリアと呼ばれる郷土料理店が軒を並べ、地元市民のみならず旅行者の胃袋を捉えて離しません。また、コンドルの聖地として有名なコルカ渓谷への拠点にもなっています。

11.『マヌー国立公園』

マヌー国立公園

マードレ・デ・ディオス州とクスコ州にまたがる国内最大の国立公園で、1987年にユネスコの自然遺産に登録。アマゾンから標高4,000mのアンデスにまたがる1万5,328Kmの広大なエリアに、ほ乳類約220種、鳥類約1,000種、15,000種以上の植物など数々の動植物相を擁し、世界屈指の生物多様性を誇っています。またマヌー川流域にはアマゾン先住民マチゲンガの集落が点在、中には外界との接触を完全に拒む者もいます。

マヌー国立公園へはマードレ・デ・ディオス州の州都プエルト・マルドナードから、もしくはクスコからアクセスできます。

12.『リオ・アビセオ国立公園』

サン・マルティン州にある国立公園。希少種・絶滅危惧種が多く、生物多様性に優れたエリアです。1990年に自然遺産に登録、また30以上のも遺跡が残っていることから1992年には文化的な側面も評価され、複合遺産として再登録されました。その生態系と遺跡を保護するため、1986年以降は残念ながらは非公開扱いとなっています。

13.『日本にはまったく知られていない第13の世界遺産『チャンキーヨの天文考古学遺産群』

チャンキーヨはアンカシュ州沿岸部のカスマ渓谷にあるアメリカ大陸最古の天文台遺構で、紀元前250~200年頃のものと考えられています。砂丘の上には13基の塔が一定の間隔で並んでおり、太陽が昇る位置と沈む位置から正確な暦を数えていたといわれています。その存在は古くから知られていましたが、2021年に晴れて世界文化遺産に登録されました。

まとめ

これら13の世界遺産以外にも、ペルーには魅力的な観光資源がたくさんあります。ティティカカ湖を有するプーノや、インカ皇帝の温泉があるカハマルカ、ペルー最大のアマゾン都市イキトスなど枚挙にいとまがありません。さらに、ここ数年大人気のクスコのレインボーマウンテンを始め、新たな観光スポットの開発も進められています。

ペルー

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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