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対馬は厳原だけじゃない!対馬北部(西泊、比田勝)の面白さと奥深さ
こんにちは! たびこふれ編集部のシンジーノです。
日本(九州)と韓国を挟む海上に"対馬(つしま)"という島があります。
対馬の中心エリアは、島の中ほどやや南にある厳原(いづはら)という町です。
厳原が行政の中心であり、対馬を約600年間も収めた宗氏の居城跡や墓所もあり、対馬に旅行する際には、このエリアが中心となります。
厳原周辺で対馬観光を終える旅行者も多いようですが、今回ぜひご紹介したいのは、対馬の北部エリア(殿崎、西泊、比田勝)です。
対馬は南北約80kmあり、端から端まで車で約3時間もかかりますので、なかなか島の北部まで足を伸ばしにくいのですが、北部は対馬にとってとても重要な場所です。
この記事では、日露戦争の時、対馬北部で起こった、日本人にあまり知られていない歴史的事実、そして韓国釜山まで約50kmの位置から見える360度の風景が美しい穴場、権現山公園や、静かで心が癒されるなや浜海岸、泊まった民宿がとてもよかったのでご紹介したいと思います。
目次
日露戦争の時に対馬で起こったこととは?
対馬の北部にある上対馬町(かみつしままち)の殿崎(とのさき)という地区に「日露友好の丘」はあります。
<日露友好の丘>
みなさんは日露戦争についてどのくらいご存知でしょうか。
対馬沖は、日露戦争の日本海海戦で連合艦隊司令長官 東郷平八郎がバルチック艦隊を撃破した所です。
その対馬の北の殿崎の地で負傷したロシア人兵士を対馬の人たちが手厚く介抱したという歴史があったことをご存じでしょうか。
明治38年、ロシア艦隊38隻が対馬沖にやってきました。
対馬北部の西泊(にしどまり)という集落に住んでいた農婦たちはちょうどその時、殿崎の麦畑で麦刈りをしていました。
すると沖の方で爆裂音が起こり、黒煙が上がっていました。農婦たちはたまげて農作業をやめて家に帰りました。
翌日、村は平静に戻っていたので、農婦たちは再び畑に来て農作業をしていました。
すると沖の方から船らしきものが見えてきました。その船はどんどん陸地に近づいてきました。
それは4隻の救命ボートでした。日本海海戦で敗れたロシア人兵士143名がボートに乗ってたどり着いたのです。
彼らは上陸して農婦たちに近づいてきました。血を流し、衣服はよごれ、尋常ではない状態であることがわかりました。
しかし彼らが何のために上陸してきたのかわからないため、農婦たちは恐ろしくて後ずさりしました。
<ロシア兵上陸の地>
その中の二人の農婦が勇気を振り絞って尋ねます。「あんたらはなんのために来たんか?」と。
言葉が通じないので意思疎通ができません。
そこで身振り手振りで尋ねてみました。「飯が食いたいのか?」「タバコを吸いたいのか?」彼らは首を振ります。
彼らは両手を前に出して煽るようなしぐさをしました。
「ああ、水が飲みたかったのか」と理解した農婦たちは、近くにある井戸に案内しました。すると彼らは狂ったように水をがぶがぶ飲みました。
ロシア人兵士たちが水を飲んだ井戸跡が今も残っています。
農婦たちは「この外人さんたちは何のためにここに来たかはわからん。でも放っておけばこの人たちは死んでしまうやろう」と思い、自分たちの集落に連れていきます。
そして村中の米、麦、芋をかき集めてにぎり飯を作りました。「さぞかし腹が減ってるやろう、この握り飯を食え」と言いましたが、ロシア人兵士は一切手をつけません。
なぜでしょうか?
彼らはそのにぎり飯に毒が盛ってあると思ったのです。日本とロシアは敵同士。にぎり飯の中に毒を入れ自分たちを殺そうとしているのではないかと。
農婦は握り飯を自分で食べてみせます。それでやっと安心した兵士たちは猛烈な勢いで握り飯を食べました。
そして村の医者を呼び、兵士たちを介抱しました。そして彼らが傷を癒した後、送り出したのです。
日露戦争終結から100年後の2005年、殿崎の地に「日露友好の丘」は建てられました。
レリーフに描かれているシーンは、入院中のロシア軍提督のロゼストベンスキーを東郷平八郎が見舞っている場面です。東郷元帥の後ろにいるには秋山真之(さねゆき)です。「友好」「平和」の文字が刻まれています。
今から110数年前、国境の島 対馬の北の果ての地でそんな出来事があったのです。
殿崎国定公園 日露友好の丘
住所:〒817-1703 長崎県対馬市上対馬町西泊
<西泊にある茂の井戸>
西泊には、ロシア人兵士たちを連れてもどり、汚れた体や衣服を洗ったとされる村の井戸の跡が今も残っています。
釜山まで約50km!360度の絶景が見える権現山公園
日露友好の丘と比田勝を繋ぐ道路から脇に入ると、権現山森林公園へ上ることができます。
権現山は標高188m。さほど高い山ではないですが、山頂は広い芝生広場になっており、上対馬一帯の美しい風景を見渡すことができます。
<権現山森林公園の見取り図>
山頂広場までの道は舗装された道路ですが、かなり狭く普通自動車がぎりぎり通れる道幅です。
「対向車来るなよ~」と思いながらレンタカーで進みました。(途中に何か所かすれ違い退避スペースはあります。)
山頂まではくねくねの狭い道ですが、山頂広場下には広い駐車場とトイレがあります。
駐車場からこの長い階段を登っていくと・・・ぜひ動画でご覧ください。
展望所には広ーい芝生広場が現れます。
山頂広場にはベンチや東屋があり、休憩したり、ランチを食べるには絶好の場所です。大海原が眼前に広がります。
空気が澄んでいる時は韓国の釜山の街が見えるそうです(この日はやや霞んでいて見えませんでした)。釜山花火も見えるのだとか。
「え~っ、こんなに広くて気持ちいい場所があるなんて途中の道からは想像もつかなかった」と訪れた人は感じると思います、きっと。
上のベンチの逆側の景色がこちら。
では、権現山山頂からの風景もほぼ360度の動画でどうぞ~。
西泊海水浴場(なや浜海岸)
西泊は小さな漁村といった雰囲気が漂っています。昔は対馬北部の中心地だったそうです。
西泊の中心から少し歩いたところ(泊まった宿から歩いて7~8分)にとっても素敵な浜がありました。
西泊海水浴場(なや浜海岸)です。
訪れたのは夜明けすぎの朝6時半頃です。
静かです。とっても静か。浜をひとりじめ。
西泊海水浴場には散策路が整備されています。
朝、静かにここを散歩する、なんて贅沢な時間でしょう。
散策路からの風景も動画でどうぞ~。
西泊海水浴場(なや浜海岸)
〒817-1703 長崎県対馬市上対馬町西泊428
西泊は人が少なくて本当に静かで落ちつく町でした。
民宿 西泊
さて、今回泊まったお宿がこちらです。
西泊地区の中心。入り江の真ん中辺りに位置する民宿 西泊です。
建物が新しくてとってもきれいです(新装オープンは2017年)。檜の木をふんだんに使った内装で落ち着けます。
お部屋の窓からの景色です。静かな漁村っていう雰囲気が伝わるでしょうか。。。
夕刻、部屋の窓を開けて撮った写真。絵になる風景です。
民宿ですので、トイレ、洗面所、お風呂は共同です。とってもきれいで清潔に保たれていました。
お風呂は個人のお宅のお風呂という感じです。
ゲストが泊る宿泊棟の奥に母屋があります。ご主人のご家族はこちらにお住まいのようです。
築百数十年のどっしりした造りの母屋。歴史を刻んだ太い梁が安心感を与えます。食事はこちらでいただきました。
田舎のおばあちゃん家に帰省したような懐かしい気分に浸れます。
民宿 西泊のご主人 修行さん。西泊、殿崎の見どころを丁寧に教えてくださいました。
日露友好の丘、権現山公園、西泊海水浴場も、すべて修行さんに薦められて訪れました。
修行さんは西泊で生まれ育ち、島を出て東京でお仕事をなさっていたそうですが、故郷を離れてみて改めて対馬の魅力と価値がわかり、実家の民宿を受け継ぐことを決めたそうです。
「対馬北部の魅力を一人でも多くの人たちに知ってもらいたい」と、ドローンを使った映像を作られたり、地域の活性化に積極的に活動されています。
見せていただいた映像はとても見ごたえがありました。
<民宿 西泊の夕食>
魚が中心ですが、新鮮な刺身だけじゃなく、良い素材にひと手間加えた、心温かい料理でした。味付けもちょうどよく美味しかったです。
ごはんは自分で好きなだけよそえます。お代わりもご自由に。食後のコーヒーが本格的で美味しかったです。
<民宿 西泊の朝食>
朝食前に歩いて西泊海水浴場への散歩がお薦めです。「この宿に泊まってよかった」ときっと思うことでしょう。
民宿 西泊の魅力
民宿は料金がリーズナブルなのはありがたいのですが正直、当たり外れが大きいという印象があるのではないでしょうか。
建物が古い、設備面で快適でない所がある、宿のご主人が親切なのは良いがプライベートが保てない(そこが良いという面もあります。私の個人的感想です。)という面で施設によって随分差があるかと思います。
そういう観点から見ると「民宿 西泊」はとても快適に過ごすことができました。
- 施設が新しい
- 機能的設備が揃っている
- 雰囲気が良い
- 立地が良い
- 宿の方との適度な距離感が良い
- ご主人の地元愛が好感持てる
などなど。
対馬北部に泊まるなら「民宿 西泊」をおすすめしたい。静かな旅情をたっぷり味わえます。
民宿 西泊
- 住所:〒817-1703 長崎県対馬市上対馬町西泊267
- 電話:0920-86-2685
- 公式サイト:民宿 西泊
比田勝
現在の対馬北部の中心は比田勝(ひたかつ)です。船の国際ターミナルがあり、九州や韓国釜山との交通を結んでいます。
<比田勝港国際ターミナル>
韓国の釜山から約50kmの距離なので、多くの韓国人観光客が訪れています。比田勝にはハングル併記の看板も多く、まるで外国にいるかのようです。
港ターミナル周辺には、お寿司屋さんや飲食店街がありますが、コロナ以前の賑わいに比べるとまだ静かなようでした。(釜山航路は復活していて、韓国からの旅行者はずいぶん戻っているようです。)
今回は寄れませんでしたが、昨年お会いした対馬の熱き3兄弟が営む「すし処 慎一」「島めし家 北斗」などのお店(驚くほど美味しい)も比田勝港ターミナルから歩いてすぐの場所にあります。
対馬グルメの記事「【国境の島】対馬のグルメ(穴子、対州そば、ろくべえetc)を食べまくる!」でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
商店街の一角に見るからに懐かしい佇まいのパン屋さんがあったので思わずパチリ。
ここの「味パン」はとっても美味しいらしいです(今回は買えなかった、残念!)
対馬北部の魅力 まとめ
対馬を初めて訪れる際には、厳原エリアが中心となるでしょう。
しかしせっかく対馬に訪れるなら、最低でも2泊、できれば3泊して、北部まで足を延ばされることをおすすめめします。(今回私は4泊しました。)
それだけ北部には意味のある奥深い要素が詰まっています。
【対馬北部の魅力】
- 日露戦争時、殿崎で起こった日本人とロシア人との心のふれあい
- 権現山公園 山頂広場から見える絶景
- 西泊の静かな浜、素敵な民宿
- 美味しい魚料理
- 比田勝港ターミナル近辺のまるで外国のような雰囲気
対馬の北部には「わざわざそこまで行く価値がある」スポット、人たちが存在しているのです。
ぜひ会いに行ってみてください。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。