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【高知】大人も楽しいぞ!ノスタルジックな「むろと廃校水族館」へ行こう
水族館といえば、子どもが好きなレジャースポットのひとつ。全国にも数多い水族館の中でも大人がノスタルジーに浸れる珍しい水族館が高知県にあります。それが「むろと廃校水族館」です。その名の通り、廃校となってしまった校舎をリノベーションした水族館で、大人もタイムスリップを楽しめると話題なのです。
目次
遥かなる室戸岬を目指せ
今回ご紹介する「むろと廃校水族館」があるのは高知県室戸市。室戸市は高知県の東南に位置し、台風銀座として有名な室戸岬がある、室戸半島を中心とし太平洋に突き出たような形をしています。
そもそも室戸市はアクセスが良くありません。市内を通る鉄道路線はなく、高速道路も通っていないため、目指す起点となる高知市、もしくは徳島市から目指すにもなかなか遠い道のりになることは間違いないでしょう。
しかし世界ジオパークにも認定されるダイナミックな自然の景観は一見の価値あり。太古の地球の息吹を感じる火山活動や地殻変動の痕跡が今に伝わっています。また室戸岬は弘法大師が修行をした地としても有名です。空海を名乗るきっかけとなった洞窟、御厨人窟などの見どころも多数点在しています。
そんな室戸市ですが、高知県内では最も人口の少ない市でもあるのです。基幹産業であるマグロ漁や捕鯨などの水産業の衰退などで室戸市ではかつて16校もあった小学校は2023年現在では5校にまで減ってしまうなど過疎化が進んでいるのです。
廃校を大胆にリノベーション!廃校水族館の誕生
そして室戸岬に程近い場所にあった室戸市立椎名小学校も、1874年(明治7年)に開校した歴史ある小学校だったのですが、2006年(平成13年)7に閉校されてしまったのです。こうした廃校となった建物の活用法には各自治体が頭を悩ませているのも事実。
そこに名乗りを上げたのが2003年から室戸に職員を常駐させ、定置網に迷い込んだウミガメの調査や研究を続けてきたNPO法人日本ウミガメ協議会。
実は室戸の海にはちょっとした特徴があって、海岸からしばらくするとすぐに深海が広がっているのです。今ではお馴染みになった海洋深層水ですが、日本で初めて海洋深層水の取水施設ができたのはここ室戸。陸から急に海が深くなるという室戸の地形から、深層の海流が湧き上がってくる湧昇域と呼ばれる独特な海が室戸にはあったのです。そんな室戸の海には珍しい海の生き物も多数生息していて、想像以上に豊かな海だったのです。
廃校となってしまった学校を、室戸の豊かな海の生き物を紹介する施設にしてはどうかと考えたところから始まったのが「むろと廃校水族館」。廃校をリノベーションして宿泊施設に、というパターンは全国的にもよく目にしますが水族館として利用されるのは極めて珍しいもの。
学校であることを前面に出しつつ、遊び心が随所に見られる展示には子供だけでなく大人の心にも響き、2018年4月オープンから3か月程で年間入場者数目標の4万人を記録。実に閉校から10年以上経過した、廃校の大復活劇となったのです。
学校であることを生かした展示が素晴らしい
むろと廃校水族館は正直なところ、客寄せになりそうな魚や動物はいません。それがここまで有名になったのは、廃校であることを逆手に取って展示や仕掛けにこだわった点に尽きるのではないかと思います。
こちらは入口なのですが、入口からして遊び心に満ちています。営業時間の表示が、"始業"と"下校"になっていますね。
そして入口からすぐの所にある人体模型とAED。人体模型はちゃんと小学校で使われていたものですね。
ちなみにもともとAEDはちゃんとボックスの中に格納されていたそうですが、機種の更新でボックスに納まらないサイズになったため、代わりに水槽が入ってしまっています。こうしたちょっとした仕掛けには大人もついつい見入ってしまいます。
こちらはいかにも小学校の教室に飾ってありそうな書道の作品。ちなみにイカスミで書かれています。
不意打ちで視力検査が出来たり、身長や座高の測定も可能。ついつい測ってしまいますね。
手洗い場はタッチプールにリノベーション!中にはナマコやヒトデ、カニやエビまでもいますので見て、触って、楽しみましょう。生き物は水から出さないようにご注意!
もちろん教室も入れたりしますし
とび箱はくりぬかれて水槽が入れられていますし
OHPですら、飼育箱になったりしています。
カニの水槽が乗っかってるのは、学習机の上・・・。
こういった細かい備品類は細かいところまで見てください。
学校備品がそこかしこでかなり活躍しています。
理科準備室はそのまま標本室になっていたり。
図書室はそのまま図書室として使われたりしています。
あくまで学校、校舎であることをいかした展示方法や、随所に光るアイデアが大人たちに小学校時代を思い出させてくれるのです。
そして、むろと廃校水族館の目玉ともいえるのが、25mプールをそのまま使った大水槽です。
誰もが記憶に持っている25mプールに優雅に泳ぎ回る魚やウミガメたち。なんだかとっても気持ちよさそうに見えるんですよね。プールの水槽は上からだけでなく、ちゃんとプールサイドも一周できるようになっています。じっくりと魚たちに近付いて見てみましょう。
廃校水族館にいる生き物たちとは?
一番大きな水槽である25mプールには、ジンベイザメはいませんがなんとシュモクザメ、いわゆるハンマーヘッドシャークが泳いでいます。
実はこのプールにはサバやカワハギなど、お馴染みの魚たちも一緒に泳いでいます。もちろんウミガメも泳いでいます。
ウミガメたちの姿もプールや校舎内でもたくさん見ることができるのですが、甲羅に色々付けたウミガメも多数見られます。水族館で見るウミガメの甲羅って綺麗な状態が多いのですが、ここではフジツボなどを付けた状態のウミガメがいくつもいるのです。つまりより自然に近い姿の生き物たちを見ることができる水族館なんですね。
むろと廃校水族館で見ることができる魚や生き物たちは世界中の海から集められた・・・というわけではなく、基本的に水族館にいるのは室戸の海に住んでいる魚たち。定置網にかかった珍しい魚などが地元の漁師さんから提供されているのです。
高知ではよく食べられるというウツボや大衆的なボラなど、室戸の海の多様性を知るには十分な魚が約50種類、1,000匹にも及ぶ数が展示されています。特にブリはちょっと推されていて、ブリのぬいぐるみがハズレなしで貰えるぶりくじは人気なのでやってみて!
そして生き物たちと同じ水槽でゴミも展示されているのは斬新で、我々の頭に刻み込まれるものがあります。実際に室戸の海でウミガメに絡まっていたゴミなどもあり、今ここにある環境問題へのリアリティが伝わります。
そして生態展示だけでなく、学術的にも価値ある生物たちのホルマリン漬けの標本などもズラリと並べられています。いわば、展示兼保存室といった側面もあるのです。
地域振興のモデルケースとしても注目
入口脇にある自動販売機には、学校名が記された石碑に見立てたラッピングが施されています。ここにはかつての室戸市立椎名小学校の名が記されていて、側面には校歌もあり、水族館の学校に対するリスペクトがよく分かる象徴的な一面なのです。
当初は廃校というネガティブな要素を水族館名に付けることに、地元からの理解を得られなかったとされています。しかしこうして上手く元々の学校の雰囲気を残しつつ、そしていつでも遊びに行ける状態で校舎も残されているというのは、卒業生にとってもとてもありがたいこととして、次第に地域にその活動が認められていったそうです。
そして室戸岬という僻地にありながら、多くの観光客を集める人気スポットと化したむろと廃校水族館には全国各地から足を運ぶ自治体の方も多いそうです。ただ単に海の生き物を展示する水族館だけではないむろと廃校水族館。人々をひきつけるいろんな要素がつまった、温かみのある水族館であることは訪ねてみればわかるでしょう。ちょっぴり遠くて大変な道のりではありますが、一度室戸の地を訪ねてみてはいかがでしょうか。
※記載の情報は2023年8月現在のものです。最新情報は公式サイトをご覧ください。
むろと廃校水族館
- 住所:高知県室戸市室戸岬町533-2
- 登校・下校時間:4~9月 9:00~18:00、10~3月 9:00~17:00
- 入館料:大人(高校生以上):600円、子供(小・中学生):300円 未就学児は無料です。室戸市民は割引があります。
- TEL:0887-22-0815
- 公式サイト:むろと廃校水族館
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bow
- 最北端、最南端などの端っこスポットや、日本一〇〇なスポットなど、どちらかというとニッチな観光スポットやB級スポットが好きです。