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【ペルー】リマ自然史博物館と、史上最も重い動物「ペルセトゥス・コロッスス」の化石
地球史上最も重い動物の化石として話題になった、「Perucetus Colossus(ペルセトゥス・コロッスス)」。8月2日に発表されたこのニュースは、発見の地ペルーを始め世界の人々をあっと言わせました。
ペルー南部イカ州サマカ地区の砂漠で発掘されたペルセトゥス・コロッススとは、いったいどんな生物だったのでしょうか?ペルセトゥス・コロッススについて、そしてその化石を展示しているリマ自然史博物館についてご紹介しましょう。
目次
リマの自然史博物館とは
今注目のペルセトゥス・コロッススの化石が展示されているのは、"リマの自然史博物館"の名で知られる「El Museo de Historia Natural de la Universidad Nacional Mayor de San Marcos (国立サン・マルコス大学 自然史博物館)」です。
1918年2月28日、国立サン・マルコス大学理学部によって創設されたこの博物館には、180万点を超える標本を含む植物学、動物学、地質学、古生物学の重要なコレクションが収められています。
入り口に置かれた館内マップ。チケット購入時に配られるパンフレットにも同じものが記載されているので、それを見ながら館内を回りましょう。
国立サン・マルコス大学 自然史博物館
- 住所:Av. Arenales 1256, Jesús María Lima
- 開館:毎週火~日曜日/10:00~17:00
- 入場料:大人10ソレス、学生および子供は5ソレス
- 公式サイト:国立サン・マルコス大学 自然史博物館
- 公式SNS:Facebook
博物館内に入ってすぐのメインホールには、オタリアやオットセイ、フンボルトペンギンを始め数多くの海鳥や野鳥のはく製が展示されていました。ペルー・コスタ(海岸エリア)の豊かな生態系を表しています。
さっそくペルセトゥス・コロッススの化石とご対面!
メインホール左手にある展示室が、ペルセトゥス・コロッススの部屋。壁に掲げられた横断幕には、「El Animal más pesado de la historia de la tierra(地球史上最も重い動物)」と書かれています。
まずはペルセトゥス・コロッススについて、簡単にご説明しましょう。
ペルセトゥス・コロッススは約3900万年前の始新世中期に生息していたという、バシロサウルス科の原始的なクジラです。体長は約20mで、現存する脊椎動物の中で最大種であるシロナガスクジラよりは少し小ぶりですが、その体重は約199tにも達し、約130~150tといわれるシロナガスクジラをはるかに上回っています。
パネルの想像画を見ると、巨大な身体にそぐわないとても小さな頭と口、ほとんど退化したようにみえる後ろ足が印象的。頭骨や歯が見つかっていないため何を食べていたかは謎のままですが、比較的浅瀬に生息していたと思われることから底生動物、つまり甲殻類や軟体動物、魚類を食べていたのではと推測されています。
一方で草食であった可能性も否定できず、もしそうであれば唯一の草食系鯨類になるのだとか。色んな想像が膨らみますね。
発掘された13個の椎骨(ついこつ/脊椎の分節をなす個々の骨)のうち、11個が展示されていました。ペルセトゥス・コロッススの椎骨の横には、比較のためにシロナガスクジラの椎骨も置かれています。こうしてみると、ペルセトゥス・コロッススの骨の密度が極めて高いであろうことが一目で分かります。
椎骨のほかにも4本の肋骨と骨盤の一部が発掘されています。こちらは4本の肋骨の中でも最も小さいもので、ざっと1m近くありました。
横断幕に描かれたペルセトゥス・コロッススの骨格図で赤く塗られたところが、今回発見された部位です。
なんとペルセトゥス・コロッススの化石を発見した古生物学者のマリオ・ウルビーナス氏が、地元メディアのインタビューに答えていました!2013年の発見から今日まで苦節10年、さぞやこの日を誇らしく感じていらっしゃることでしょう。
恐竜好きにはたまらない展示もいっぱい!
リマ自然史博物館の本館はメインホールを始め、"mamíferos(哺乳類)"や"peces(魚類)"、"aves(鳥類)"、"reptiles y anfibios(爬虫類と両生類)"など13の展示室に分かれています。
"dinosaurios(恐竜)"の部屋で来館者を迎えてくれたのは、白亜紀中期の南米大陸(当時はゴンドワナ大陸の一角)に生息していた肉食恐竜「Carnotaurus sastrei(カルノタウルス)」の模型。名前の意味は「肉食の雄牛」で、頭部に牛の角のような突起物があったことからそう命名されました。体長約7.7m、重さは約1.85t。極端に短い前肢と、南米最速を誇る発達した後肢の対比がおもしろいですね。
カルノタウルスの頭蓋骨。頭部にはまるで鬼のような角が生えています。また優れた両眼視力を持っていたそうです。
「Titanosaurio de Bagua(バグアのティタノサウルス)」は、ペルーアマゾンのバグアで発見され、ほぼ完全な上腕骨から復元された竜脚類恐竜の模型。写真右下に映っているのがその上腕骨で、長さは90cmもあります。そこから推測するに、この個体の体長は14m、高さは5mだったと考えられています。
長く伸びた鞭状の尾がいかにも恐竜的。余りの長さに、尾が展示室の外にまではみ出していました!
ペルーに生息する鳥類を紹介するコーナー。"Bosque amazónico(アマゾンの森林)"や"Monte ribereño amazónico(アマゾン河畔の森林)"、"Bosque húmedo montano(山岳湿潤林)"など、それぞれの生息域を細かく分類し、とても分かりやすい展示になっています。
"Mamíferos(哺乳類)"の展示室では、ペルー各地に生息するさまざまな哺乳類を紹介。アルパカやリャマ、ビクーニャ、鹿類を始め、メガネグマやジャガー、ピューマなどお馴染みの動物たちがたくさんいます。
"Livyatan, La Ballena Asesina(リヴァイアタン、シャチ)"と命名された部屋には、思わずビクッとしてしまうような巨大な展示物がありました。これは「Livyatan melvillei(リヴァイアタン・メルビレイ)」の頭骨の一部。リヴァイアタン・メルビレイは1200~1300万年前に生息していたというマッコウクジラ上科に属するクジラ類で、2008年にペルーのイカ州ピスコで発見されました。
頭骨と一緒に発見された歯の長さは36cm、これは捕食に用いるものとしては現在知られている動物の中で最大であることから、史上最大級の捕食者だったと考えられています。
"Paleontología(古生物学)"の展示室には、「Scelidodon(スケリドドン)」の化石もありました。スケリドドンは2万2000年前の更新世(または洪積世)に生息していたという、ナマケモノ属の哺乳類です。この化石は1991年、ペルーアンカシュ州の標高4,300mに位置するヤナコチャ湖で発見されたもので、その背丈はヒトの大人と同じくらいだったそうです。
本館の外にも展示物がいっぱい!
自然史博物館の本館を囲むように緑地が設けられており、敷地内には別館のほか、クジラの骨格標本の展示などもあります。
この骨格標本は、2003年にリマの北232kmにあるパラモンガ区の海岸に打ち上げられたオスのマッコウクジラです。体長は約16m、現地で10日間ほどかけて解体し、その後自然史博物館で処理・展示されました。
こちらには体長13.8mのオスのニタリクジラで、2000年にリマ州ワウラ郡ベグェタの浜に打ち上げられたものです。
別館の一室は"Minerales, Rocas y Invertebrados fósiles(鉱物、岩石、無脊椎動物の化石)"として一般に公開されています。ペルー国内で採取されたさまざまな鉱物や岩石のほか、無脊椎動物や古代植物の化石などが展示されています。
通路には、猿人からヒトに至るまでの進化を示す足跡なんかもありました。
博物館の一番奥には、こんな巨大なワニの模型が。古代の爬虫類を紹介する部屋ができるのでしょうか。完成が待ち遠しいです。
ペルー内外から集められたさまざまな植物が息づく植物園は、博物館見学後の休憩にもってこい。外部の喧騒もこの辺りまでは届かず、ゆったりとした空間になっています。
ハーブ園を併設した"La Casa de Ania(アニアの家)"は、廃棄物の分別や再利用、リサイクルを学ぶためのエコロジースペース。子どもたちが楽しく学習できるよう、さまざまな工夫を凝らしています。またアニアの家のすぐそばには、ペルーのサボテンを集めたサボテン園もありました。
見どころ満載のリマの自然史博物館、いかがでしたでしょうか?
学芸員に尋ねたところ、ペルセトゥス・コロッススの展示期限は未定ながら、恐らく3~4か月は続けるだろうとのこと。いつまでかは決まっていないというところが、何かにつけて大らかなペルーらしいですね。仮にペルセトゥス・コロッススの展示が終了しても、見どころはいっぱいあります。
リマを訪れたらぜひ、リマの自然史博物館へ足を運んでみてください。
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原田慶子
- ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。