世界遺産モロッコ・マラケシュ滞在のすすめ【後編】

ベン・ユーサフ・マドラサの中庭

<TOP画像:ベン・ユーサフ・マドラサの中庭 ©Kanmuri Yuki>

モロッコ王国の古都マラケシュ観光のポイントと魅力を紹介する記事。前編では、主にマラケシュの紹介と、旧市街(メディナ)の魅力をお伝えしました。この後編では、具体的な観光スポットをご紹介します。ただし、私の個人的な好みが色濃く入っていることをあらかじめご了承ください!

>>前編:世界遺産モロッコ・マラケシュ滞在のすすめ【前編】はこちら

目次

必見なのはベン・ユーセフ・マドラサ

ベン・ユーサフ・マドラサは、16世紀サアード朝時代に建てられた元神学校の建物です。中心には言わずとしれた中庭があり、静寂が支配するスペースとなっています。緻密な彫刻で覆われた壁と柱がこの中庭を囲むさまは崇高な気配に満ちみちて、見学者もみな言葉を失うほど。学校だったこともあり、決して宮殿のような華美さはないのですが、個人的にはマラケシュで一番心に残った場所になりました。

ベン・ユーサフ・マドラサ、寄宿舎窓から中庭を見る
<寄宿舎窓から中庭を見る ©Kanmuri Yuki>

中庭を囲む四方の建物には遠方からの学生のための簡素な寝室が130数室ありそちらも見学可能です。この寄宿舎部分もまた、小さな共同スペースを数部屋が囲む構造となっています。

ベン・ユーサフ・マドラサ

モロッコの昔をうかがい知れる写真美術館

ベン・ユーサフ・マドラサのすぐ近くにあるマラケシュ写真美術館も興味深い場所です。写真というものが誕生してから近代まで、具体的には1879年から1960年代にかけて有名無名の写真家がさまざまな視点から切り取ったモロッコを、テーマに沿って展示しています。

マラケシュ写真美術館
<写真美術館 ©Kanmuri Yuki>

マラケシュ写真美術館(Maison de la Photographie de Marrakech)

ショッピングはスークとフンドゥク

スークの絨毯屋街
<スークの絨毯屋街 ©Kanmuri Yuki>

ところで、上述のベン・ユーサフ・マドラサはスークに隣接しています。スークと言うのは商店街のようなもので、多くの場合、同種商品を扱う専門店が同じ通りに固まっています。狭い路地に所狭しと商品が並ぶさまはなかなか圧巻で、ハンドメイドの小物などは見ているだけでも楽しいものです。

店の並ぶフンドゥク
<店の並ぶフンドゥク ©Kanmuri Yuki>

買い物なら、スークのほかフンドゥクにもぜひ足を運んでみてください。フンドゥクというのは、もともと隊商らの宿泊施設を指し、広い中庭を囲む建物内部には、商品のストックや、ラクダなどの収容ができるようになっていました。マラケシュに残る元フンドゥクには、改装されてハンドクラフト製品などのお店となっているところが少なくありません。特にスークからダル・エル・バシャ博物館へと伸びる道沿い右側にはフンドゥクを改装したおしゃれなお店が並んでいます。

ダル・エル・バシャ美術館中庭のオレンジの木々
<ダル・エル・バシャ美術館中庭のオレンジの木々 ©Kanmuri Yuki>

ついでに言えば、1910年築のダル・エル・バシャ宮殿は現在美術館として使われており、中には予約が必要なほど人気のカフェも入っています。入館される場合は、ぜひ建築そのものを楽しむおつもりでどうぞ。中庭の噴水を囲むオレンジの木々、それを囲む四方の部屋の細かな装飾など見どころも多くあります。

ダル・エル・バシャ宮殿

  • 開館時間:10時~18時
  • 休館日:月曜日
  • 入館料:60DH(外国人)、15DH(18歳未満)
  • 公式サイト:Dar El Bacha Museum

イスラム建築を堪能

バヒア宮殿一室の天井
<バヒア宮殿一室の天井 ©Kanmuri Yuki>

イスラムの様式美にもうちょっと浸ってみたい人には、バヒア宮殿がお勧めです。19世紀に若きスルタンの摂政としてモロッコを治めたアハメド・ベン・ムーサが建てたもので、その広さはなんと8万平方メートル。メインとなる広大な中庭を建物が取り囲み、それぞれ奥へと辿るとまた別な中庭とそれを囲む部屋部屋に行き当たる構造は、まるで迷路のよう。いくつもある庭園は、タイル張りの広い空間から菜園や果樹園と多彩で、160あるという部屋は、どれも見事な幾何学模様やカリグラフィーが扉から壁、柱、天井まで覆い尽くす贅沢さです。家具や調度品は殆ど残っていませんが、宮殿自体の鑑賞だけでおなか一杯な気分になれるでしょう。

バヒア宮殿

  • 開館時間:8時~17時
  • 入館料:70DH
  • 公式サイト:バヒア宮殿

ダル・シ・サイド美術館に展示された絨毯
<ダル・シ・サイド美術館に展示された絨毯 ©Kanmuri Yuki>

このバヒア宮殿のすぐ近くにあるのが、ダル・シ・サイド美術館です。実はこちらは、バーヒア宮殿を建てたアハメド・ベン・ムーサの兄弟シ・サイド・ベン・ムーサが19世紀後半に建てた邸宅なのです。バヒア宮殿と比べるとずっと規模は小さいですが、こちらもたいそう美しい建物です。現在は国立織物絨毯博物館として使われており、各地方ごとに豊富な織物のコレクションが鑑賞できます。

ダル・シ・サイド国立織物絨毯博物館

  • 開館時間:10時~18時
  • 休館日:火曜日
  • 入館料:30DH(大人)
  • 公式サイト:Dar Si Said Museum

サアード朝墳墓群とエル・バディ宮殿

エル・バディ宮殿跡
<コウノトリが巣をつくるエル・バディ宮殿跡 ©Kanmuri Yuki>

メディナの南には、現王室がマラケシュ滞在時に用いる王宮があります。この界隈は歴史的に城塞地域にあたり、カスバと呼ばれます。現王宮の北側に残るのは、サアード朝のスルタンが16世紀に16年かけて建てたエル・バディ宮殿。宮殿とはいっても廃墟に近いものですが、その広大な敷地には一見の価値があります。かつてはトルコ石や金、クリスタルなどで装飾されていたという300を超える部屋を想像してみてください。城壁からの眺めもなかなか素晴らしく、地域や歴史に関する展示も興味深いものがありました。また、季節によっては、子育て中のコウノトリの姿も多く見えます。

エル・バディ宮殿

  • 開館時間:9時~17時
  • 入館料:70DH
  • 公式サイト:Palais El Badiî

サアード朝の墓地
<サアード朝の墓地 ©Kanmuri Yuki>

カスバのサアード朝墳墓群も人気の観光スポットです。その名の通りサアード朝の王族の墓ですが、大理石と色とりどりのタイルをふんだんに使った美しい建築に、現代においても観光客の脚が途絶えません。

サアード朝墳墓群

アフリカ大陸随一の誉れ高いラ・マムーニア

クトゥビーヤ・モスク
<クトゥビーヤ・モスク ©Kanmuri Yuki>

イスラム教の寺院であるモスクは町のそこここにありますが、もっとも大きくまた有名なのはジャマ・エル・フナ広場近くに建つクトゥビーヤ・モスクです。12世紀の建築当時は、イスラム世界最大のモスクでもありました。高さ69mあるミナレは遠くからもよく見えます。祈りの場であるモスクは見学対象ではないので、中には入れませんが、その威容は外から眺めても感じることができるでしょう。

このクトゥビーヤ・モスクからほんの数分西方へ足を延ばしたところにラ・マムーニア・ホテルがあります。2018年にはアフリカ大陸のホテルランキング1位に輝いたこともある超のつくラグジュアリーホテル。宿泊費用はオフシーズンでも1泊6万円を下りません。とはいえ、ロビーや庭は誰でも入ることができます(セキュリティチェックあり)。観光に疲れた時など、喧騒から遠く離れた庭園を散策し、優雅な気分でお茶を楽しみにいくのもおすすめです。

ラ・マムーニアホテルの入り口
<ラ・マムーニアホテルの入り口 ©Kanmuri Yuki>

余談ながら、こちらのラウンジでお茶をいただいているとき、BGMの中に日本の楽曲が流れました。南佳孝の『夜間飛行』と伊藤銀次の『こぬか雨』という渋い選曲で、異国で聞くとエキゾチックな日本語にしばし耳を傾けました。

>>ラ・マムーニアの公式サイトはこちら

他にも見どころは複数

ところで、マラケシュで最も観光客を集めるスポットはマジョレル庭園。仏画家ジャック・マジョレルが手掛け、その後デザイナーのイヴ・サン=ローランが晩年を過ごした場所です。メディナの外にありますが、マジョレル・ブルーをはじめとする独特の色彩に見学者がぞくぞくと集まるので、できれば前もってネット予約することをお勧めします。

マジョレル庭園

  • 開館時間:8時~18時半(入場は18時まで)
  • 入館料:150DH(大人)
  • 公式サイト:マジョレル庭園

メナラの貯水池
<メナラの貯水池 ©Kanmuri Yuki>

メディナの外では、他にも12世紀からあるメナラ庭園もおすすめです。今残るのは16世紀に建造された人工貯水池と小さな建物で、広いオリーブ園に囲まれたのどかなスペースで、晴れていれば地平線にはアトラス山脈も見えます。

メナラ庭園

  • 開園時間:8時半~18時
  • 入場料:庭園は無料、パヴィヨン見学は20DH
  • 公式サイト:メナラ庭園

この貯水池の水は、700年以上前に作られたシステムを使い、マラケシュから30kmも離れた山から引かれており、この水のおかげで、オリーブ園の灌漑が可能となっています。

秘密の庭園
<秘密の庭園 ©Kanmuri Yuki>

遥かなアトラス山脈から水を引いてくる仕組みは、古くからメディナ内の宮殿でも使われていました。メディナ中心にある「秘密の庭園(ル・ジャルダン・スクレ)」では、かつて用いられたこの仕組みを復活させ、その素晴らしい知恵をわかりやすく解説しています。

秘密の庭園(ル・ジャルダン・スクレ)

  • 開館時間:2~10月:9時半~18時半、3~9月:9時半~19時半、11~1月:9時半~18時
  • 入館料:80DH、塔の見学料は+40DH(24歳以下は割引あり)
  • 公式サイト:ル・ジャルダン・セクレ

1週間まるまる滞在しても全部を見て回るのは難しいほど見どころの多い町マラケシュ。みなさんもマラケシュの迷路のような魅力に捕らわれに行きませんか?

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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