世界遺産モロッコ・マラケシュ滞在のすすめ【前編】

マラケシュのメディナ内

<TOP画像:マラケシュのメディナ内で ©Kanmuri Yuki>

アフリカ大陸の北西端にある国モロッコ。スペインからは、ジブラルタル海峡を挟み目と鼻の先に位置し、歴史の中でも深くかかわってきた地域です。今回は、このモロッコの古都マラケシュに1週間滞在した経験を元にマラケシュ観光のポイントと魅力を2回に分けてご紹介したいと思います。

目次

マラケシュの歴史と地理

マラケシュは、モロッコ王国の真ん中から少し西寄りに位置する町で、南方にはアトラス山脈が控えています。11世紀にベルベル人ムラービト朝の首都として築かれたのがその起こりで、12~13世紀にかけてはムワッヒド朝の首都にもなり、北アフリカの重要な交易都市として文化的にも経済的にも重要な役目を担ってきました。時代を下って後年のサアド朝も16世紀に首都をマラケシュに置いています。

12世紀に建てられたクトゥビーヤ・モスクとメディナ
<12世紀に建てられたクトゥビーヤ・モスクとメディナ ©Kanmuri Yuki>

900年の歴史を持つマラケシュの旧市街(メディナ)は、1985年にユネスコの世界遺産にも登録されました。

スペインやフランスの保護領になるなど、さまざまな変遷を経たのち、モロッコ王国が独立したのは、今から67年前の1956年のことです。その直前には44年間フランスの保護領だった影響で、今でもフランス語を話す人が珍しくありません。マラケシュに関しては、英語も同じくらい通じる印象でした。

宿泊は断然メディナ内がおすすめ!

ぐるっと城壁に囲まれたマラケシュのメディナ(旧市街)は、おおよそ10平方キロメートルの広さです。とはいえ、観光スポットの多くはメディナ中心と南部にかたまっていますから、徒歩でも回れる距離です。

マラケシュのメディナ(旧市街)
<普通の家のようなリヤドの入り口©Kanmuri Yuki>

旅行の基点となる宿選びですが、断然おすすめしたいのは、城壁内メディナ、中でもリヤドでの宿泊です。リヤドというのは、モロッコの伝統的な建物をリニューアルした宿泊施設のことで、建物の中心に吹き抜けの中庭スペースがあり、それを四方の部屋が取り巻く構造となっています。中庭には多くの場合、噴水などの水場があり、屋上にはテラスやジャグジープールが備わっていて、暑い季節を涼しく過ごす工夫が感じられます。

リヤドの利点は多々ありますが、一番は、扉を出ればそこは既にメディナで、気楽に散策が楽しめるということ。また、ホテルと違って部屋数が限られているためアットホームな雰囲気が楽しめます。観光情報や車の手配などの相談も気軽にできます。

リヤドでサービスされたミントティーとお菓子
<リヤドでサービスされたミントティーとお菓子©Kanmuri Yuki>

私たちも、歩き疲れて帰った時ミント茶やお菓子をサービスしてもらったり寒い夜には温かいスープをふるまってもらったりと、数々の心にしみるもてなしを受けました。みなさんにもぜひご自分だけの自慢のリヤドを見つけていただきたいものです。

リヤド探しのチェックポイント

私見ながら、リヤドを探すときに必ずチェックしたい点は2つです。まずは、空港からリヤドへの送迎の有無。リヤドの場所を知る運転手を手配しておいてもらえると、到着時のストレスがぐんと少なくて済みます。加えて、宿泊代と一緒にリヤドへ支払う形であれば、レートの悪い空港で両替を行う必要もなく助かります。

リヤド
<すれ違うのがやっとの路地も多い ©Kanmuri Yuki>

もうひとつは、泊まるリヤドの近くまで車が入れるか否かです。メディナ内は狭い道が多いため、リヤドによっては、路地を長く歩かなければたどり着けないこともあります。それはそれで趣があるかもしれませんが、移動をスムーズに済ませたい場合は、車が近くまで入れるかどうかを最初に確認しておきましょう。

メディナ内の移動

上述の通り、メディナ中心部には広い道がなく、バスはおろか車も入れないところがほとんどです。それもあり観光はもちろんのこと、メディナの端から端に移動する時も、基本の移動方法は徒歩になります。石畳の道も多いので、靴底の厚い歩きやすい靴で出かけましょう。

リヤド
<お仕事中のロバ ©Kanmuri Yuki>

ちなみに、土地の人の交通手段も徒歩が一番多いようでした。次いで自転車やバイク、また運搬仕事ではロバの引く台車などもよく見かけました。自転車もバイクも、人混みの狭い隙間すれすれをすり抜けていくので、散策時にはくれぐれもお気をつけください。私も何度か「右側に寄って歩くと良いよ」とアドバイスを受けました。

まずは歩いてみたい迷路のような路地

マラケシュの見どころのほとんどは、城壁内のメディナに集中しています。ミュージアムと呼ばれる施設も数多く、建物自体がすでに美術品のように煌めきを秘めていたりします。とはいえ個人的には、マラケシュの最大の魅力は、生活の匂いがぷんぷんする活気にあると思いました。

商品
<宝物のような商品たち ©Kanmuri Yuki>

ですので、もし時間が許すようなら、目的地を定めず町中をぶらぶら歩く時間もぜひ取ってみてください。赤い土の色そのままに町全体を染める家々、彫刻の施されたドアや格子のはまった窓など、一般住居にも目を引くか所は多々あります。商店は商店で、壁や軒下に色とりどりの布や革の製品を吊るしたり、モザイクのようにぴっちりと小物や食品を並べたり。そこにもここにも独特の美的センスを感じるはずです。

通り
<通りがショーウィンドー©Kanmuri Yuki>

実際、マラケシュは、多くのアーティストや著名人にインスピレーションを与えてきたことでも知られています。デザイナーのイヴ・サンローラン、画家のマティスやマジョレルなど、マラケシュの光と色に魅入られる人は後を絶ちません。

町歩きで気になる治安ですが、個人的には、意外なほど良いように感じました。もちろん、スリなど皆無ではないでしょうが、私の周りでは滞在中にそういった話は聞きませんでした。お店なども押し売りまがいの勧誘はなく、声を掛けられてもいまは不要と笑顔で返せば、それ以上しつこく言われることはありませんでした。

メディナの基点はジャマ・エル・フナ広場

迷路のように路地が入り組むマラケシュのメディナで、一番の目印となるのは、ジャマ・エル・フナ広場です。標識自体あまり見かけないメディナでも、たまに立っている標識には、ほとんどすべて「Jamaa el Fnaa(ジャマ・エル・フナ)」という文字と矢印が書いてあります。また、道を探しているようなそぶりをすれば、通りがかりの土地の人誰もが「ジャマ・エル・フナはあっちだよ!」とうるさいくらい親切に声をかけてくれます。言い換えれば、たとえ迷子になったとしてもジャマ・エル・フナ広場には必ずたどり着けるわけです。ですので最低、ご自分のリヤドとジャマ・エル・フナ広場の位置関係だけしっかり頭に入れて出かければ、迷子にはなりません。

ジャマ・エル・フナ広場
<歩いているだけで楽しい ©Kanmuri Yuki>

なおジャマ・エル・フナ広場は、特に夕刻からの露店屋台のにぎやかさが有名で、飲食物の屋台のほか、大道芸人の曲芸なども見られる場所です。2009年にこの広場の文化的空間が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。

両替所と馬車乗り場

ジャマ・エル・フナ広場の周辺にはそのほかにも観光に便利なスポットがあります。まず両替には、この広場南側にある郵便局周辺の両替所をおすすめします。いつ通りかかっても外国人の列ができているので、すぐ見つけられるはずです。

観光馬車
<カスバを行く観光馬車©Kanmuri Yuki>

また、ジャマ・エル・フナ広場とクトゥビーヤ・モスクの間には、観光馬車乗り場があります。値段はどこにも書いていないので交渉が必要です。私たちの泊まったリヤドのオーナーによれば、2023年2月時点での相場は、40分で180~200ディナールということでした。それでカスバや王宮など主な観光名所を回ってくれます。相場は変化するので、みなさんもご自分の宿であらかじめ相場を聞いてから交渉に挑むようにしてください。

ここまで、マラケシュ旅行で私が大切だと思うポイントと、旧市街の魅力をご紹介しました。続く後編では、個人的に推す観光スポットを具体的にご紹介したいと思います。

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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