地理オタクが選ぶ! 驚きの「地理トリビア」集

地理オタクが選ぶ! 驚きの「地理トリビア」集

地理・地図が専門のライターとして、Webメディアで地理系記事を多数執筆している細田貴洋さん。駒澤大学地理学科卒(都市地理学)、生粋の地理オタクとしてラジオにも出演され、ブログ「芸術地理学通信」やYouTubeなどで地理ネタを日々発信しています。

今回はそんな細田さんに、不思議な県境から立ち入り禁止の島、到達不能極についてなど、驚きの地理トリビアを教えてもらいました。

目次

<1. 地理トリビア1「なぜ細長い? 不思議な県境は福島にあり」>

<2. 地理トリビア2「北海道はほんの一瞬だけ、3県に分かれていた」>

<3. 地理トリビア3「村ごと移住で新十津川町ができた!」>

<4. 地理トリビア4「立ち入り禁止の島がある」>

<5. 地理トリビア5「到達不能極とは!?」>

<6. 地理目線で旅してみませんか?>

地理トリビア1「なぜ細長い? 不思議な県境は福島にあり」

福島県に飯豊山(いいでさん)という、新潟と山形、福島の3県にまたがっている山があります。山の大部分が新潟県と山形県に属しているのに、なぜか山頂付近だけ、ものすごく細長い形で福島県の領域になっているという、地形的に面白い場所です。

実は、飯豊山の山頂には飯豊山神社という、福島県民が古くから信仰している神社がありまして。明治の廃藩置県によって飯豊山が新潟県と山形県に属するよう新しく領線が引かれることになった際、福島県の方々が「神社だけでも、なんとか福島県のものにしてほしい」と反対をしたそうです。その結果、飯豊山神社に続く参道も含め、一番狭いところは道幅50mもない山の稜線だけが福島県、という現在のような特殊な県境が誕生したのでした。

県境関係で他に珍しいケースとしては、飛び地があります。和歌山県の北山村は、日本で唯一、県境が飛び地になっています。地図で見ると、北山村は奈良県と三重県に挟まれ、完全に和歌山県から分離しているのですが、なぜか和歌山県の飛び地になっています。

もともと北山村は森林がとても多い、昔から林業で栄えた地で、伐採された木材は川を利用して筏によって木材集積地である和歌山県新宮市まで運ばれていたそうです。明治の廃藩置県で新宮市が和歌山県に編入された際、新宮市の木材業者と関わりが深かった北山村の住民の「新宮市と同様に自分たちも和歌山県にしてほしい」という願いで、今のような飛び地の県境になったそうです。

地理トリビア2「北海道はほんの一瞬だけ、3県に分かれていた」

今や当たり前のように思える47都道府県も、明治の廃藩置県で統廃合が繰り返されてきたという遍歴があります。実は、北海道が4年間だけ3県に分かれていた時代がありました。

北海道にかつてあった3県

蝦夷(えぞ)と呼ばれていた広大な大地を開拓するにあたり、明治15年に、函館の近くを「函館県」、根室や釧路、網走のあたりを「根室県」、札幌からこの中央のあたりを「札幌県」としたのですが、3県に分かれていると行政上やりにくかったようで、明治19年には3県は廃止され「北海道」になりました。

逆に、北陸地方には、石川県、富山県、福井県(若狭地方を除く)の3県を合わせて「石川県」とされていた時代があります。かなり広い地域が「石川県」とされていましたが、文化や歴史も違う3県。結局住民から反対の声があがり、今の3県に分けられたそうです。

地理トリビア3「村ごと移住で新十津川町ができた!」

北海道は、明治時代に全国から移住・開拓に人がやってきたという歴史的な背景があるので、本州にある地域の名前が町名の由来になっている場合が多くあります。

まずご紹介したいのが、新十津川町です。奈良県に十津川村というところがありまして、こちらで明治時代に大水害が起き、まち全体が壊滅的な被害を受けました。生活再建のため新天地を求めて2,000人余の住民が集団で移住し、当時何もない原野を開拓した、というのが新十津川町の町名由来になります。

最近、日ハムの新球場ができた北広島市も同じで、明治のはじめに広島県の東広島市から集団で移住してきた住民によって開拓された地として「広島村」と名付けられ、現在は北広島市になっています。地名からまちの遍歴がわかると面白いですよね。

北海道の地名には、こういった開拓民の出身が由来となった町名のほか、札幌、登別、洞爺、室蘭など、本州とは異なるアイヌ語由来の地名も多いので、地名を通して、地理と同時に歴史も学べることも多いです。

「どうして北海道に北広島市なんだろう?」などと疑問に思ったら探ってみると面白い発見があるので、気になる地名に出会ったらぜひ調べてみてください。

地理トリビア4「立ち入り禁止の島がある」

沖縄県の大東諸島にある、台風のニュースなどでおなじみの南大東島のさらに南に、沖大東島という島があります。

今は一般人の立ち入りが禁止されている無人島ですが、農業の肥料に必要なリンの鉱石が発見されまして、明治時代、リンの鉱石を採掘するために多くの人が訪れ、開拓されたという歴史があります。最盛期にはこの狭い島に2,000人ほどの鉱山労働者がいて、長崎の軍艦島のような感じで、学校や病院なども島内にあったそうです。国家事業としてではなく、ラサ工業という民間企業が、港を作り、まちを作り、島の開発を進めてリンの採掘を行っていました。

太平洋戦争で沖縄本島と同様、沖大東島もアメリカの攻撃を受け、島民が皆疎開してしまい、無人島になってしまいました。終戦後はアメリカ領になり、現在は日本領になってはいますが、引き続きアメリカ軍の射爆撃場として、島自体を爆撃の標的として飛行機などから攻撃する訓練場になっているため、一般人は立ち入り禁止となっています。

これとは別の理由で立ち入れない場所として、インドにある北センチネル島という島があります。この島の住民は外部と隔絶しながら昔ながらの伝統的な暮らしをしています。もし島に近づく人がいれば、弓矢で追い払い、近年では島に近づこうとした人が殺される事件も発生しています。そのためインド政府もこの島への接近を法律で禁止しているそうです。

地理トリビア5「到達不能極とは!?」

地球上にある、一般人がなかなか到達できない、困難な場所を「到達不能極」と言います。具体的には、陸上で最も海から遠い場所と、海上で最も陸から遠い場所という2つを指します。世界的にも人は海辺の近くに集住しているので、海岸線から遠いところが到達困難な地となります。

陸上で最も海から遠い場所は、中国の新疆ウイグル自治区のウルムチから北の320キロのところにある、シュンガル盆地という砂漠地帯になります。

周りを高い山脈(アルタイ山脈、天山山脈)に囲まれ、超内陸で盆地のため、かなり寒暖の差が激しく、冬には雪も積もるとのこと。盆地最大の湖、マナス湖も干上がっているような、荒涼とした砂漠になります。

海上で最も陸から遠い場所は、南太平洋上にある、ニュージーランドとチリのほぼ中間地点。「ポイント・ネモ(ネモはラテン語で「誰もいない」)」とも言われる、本当に何にもない場所です。海岸線からあまりにも離れているため、この地点は海流の影響もあり、栄養分のある海水が来ないため、魚などの生物もいないそうです。そのため、大気圏に再突入した宇宙機(人工衛星など)を落下させて海底に沈めておく「人工衛星の墓場」に指定されているようです。到達不能極を調べたら、このように意外な役割を知ることができました。

ちなみに、日本における到達不能極、海から最も遠い場所は、長野県佐久市にあります。佐久市と群馬県南牧村との県境付近にあり、「雨川ダム」の南東約2,200メートルにあります。山の中にあるのですが、「日本で海岸線から一番遠い地点」という看板があるので、もし行ける人は看板と一緒に写真を撮ると面白いかなと思います。

地理目線で旅してみませんか?

「どうして、この地名なんだろう?」「この道は、なぜ曲がっているんだろう?」「なぜ、このまちはこの形なんだろう?」

地理的な興味を持つと、ただ観光スポットを巡って面白かったというだけでなく、その土地の歴史や文化などの背景がわかり、さらに何倍にも面白さが増すと思います。地理目線を持つと、もっと行きたい場所が増え、より旅行が楽しめるようになるかもしれませんね。旅先で、出かけた先で、何か気になる地理的疑問を見つけたら、ぜひみなさんも調べてみてください。

細田貴洋(ほそだ たかひろ)さん

ブログ:芸術地理学通信
Twitter:@geo_tv_design
YouTube:細田貴洋の地理ちゅーぶ【地理系YouTubeチャンネル】

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