【ペルー】教会の街アヤクチョと、ミイラが眠る博物館

ミイラが眠る博物館 イポリト・ウナヌエ ペルー

ペルー中央アンデスの街アヤクチョ。"民芸品の首都"と呼ばれるほど多種多様な民芸品・工芸品を生み出すこの街には、33もの教会があり、"教会の街"とも称されています。インカの重要拠点のひとつだったため、早くからスペイン人が入植したアヤクチョには、植民地時代から続くカトリック信仰が深く根をおろしています。

一方、そのインカに多大な影響を与えたとされるのが、紀元600年から1000年ごろに栄えたワリ文化。アヤクチョに興ったワリはペルー海岸エリアにまで拡大し、多くの文化に影響を与えました。

スペイン人が残した威風堂々たる教会と、インカ以前のアンデス世界を支配したがワリ。異なる2つの文化を楽しめるのがここ、アヤクチョなんです。

目次

アヤクチョで最も古い「サン・クリストバル教会」

サン・クリストバル教会

アヤクチョ最古の寺院、Iglesia de San Cristóbal(サン・クリストバル教会)。おそらくは1540年ごろの建築だろうと考えらえており、1542年の記述にはすでにその名が刻まれています。石を積み上げたシンプルな構造で、屋根は石とアドベ(日干しレンガ)を組み合わせたもの。当時はまだ建築技術がおぼつかなかったのでしょうか、建物に窓がないのが大きな特徴です。

サン・クリストバル教会(Iglesia de San Cristóbal)

  • 住所:Jr. Moore, Ayacucho

金箔の祭壇が見事な「カテドラル」

アヤクチョのカテドラル

アルマス広場にあるCatedral de Ayacucho(アヤクチョのカテドラル)は、スペイン国王フェリペ3世の勅命により1632年に着工され、40年の歳月を経て完成しました。

まばゆいばかりの金箔・銀箔で装飾された見事な祭壇や説教台のほか、植民地時代の貴重な名画や宝飾品も見逃せません。セマナ・サンタには、ここから数百本ものロウソクを組み上げた真っ白な大神輿が出発することでも有名です。1972年、ペルーの歴史文化遺産に指定されました。

アヤクチョのカテドラル(Catedral de Ayacucho)

  • 住所:Jr. 2 de Mayo, Ayacucho

買い物ついでに立ち寄れる「サンタ・アナ教会」

サンタ・アナ教会

1569年に建設されたIglesia de Santa Ana(サンタ・アナ教会)は、ワマンガ州(現在のアヤクチョ州)初のカテドラルになると考えられていたことから、"上位のパロキア(パロキア=小教区)"を意味するHanay Parroquia(ハナイ・パロキア)と呼ばれていたそう。

サンタ・アナ教会があるサンタ・アナ地区には、民芸品、工芸品のギャラリーや工房が集中しています。付近には他にもたくさん教会があるので、お買い物がてら教会巡りを楽しむのもいいかもしれません。

サンタ・アナ教会(Iglesia de Santa Ana)

  • 住所:Frente a Plazoleta de Santa Ana, Ayacucho

アンデスならではの"最後の晩餐"は必見!「サンタ・テレサ教会・修道院」

サンタ・テレサ教会・修道院

17世紀に建設されたTemplo y Monasterio de Santa Teresa(サンタ・テレサ教会・修道院)。ヘレニア様式のシンプルなファサード(正面)の中央には、聖女テレサの像が祀られています。この像を擁す黄金に輝く主礼拝堂や説教台の他、数々の名画や絵画も見もの。

最後の晩餐の絵には、食卓にクイ(アンデスモルモット)の丸焼きが乗っていますよ。副王領時代から続くカルメル会修道女の住まいとして現在も機能しており、神に仕える女性たちが静かに暮らしています。

サンタ・テレサ教会・修道院(Templo y Monasterio de Santa Teresa)

  • 住所:28 de Julio 630, Ayacucho

アヤクチョ市内にはほかにもたくさんの教会があります。最も重要な7つの教会を巡るツアーもあるので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか?

ミイラが眠る博物館「イポリト・ウナヌエ」

地方歴史博物館 イポリト・ウナヌエ

スペイン統治時代の歴史的建造物を堪能したら、今度はアンデス文化に触れてみませんか?1824年にペルーの独立を決定的なものにした「アヤクチョの戦い」。Museo Histórico Regional "Hipólito Unanue(地方歴史博物館『イポリト・ウナヌエ』)は、この戦闘の150周年を記念し、1974年に建てられました。館内には5つの展示室があり、地元アヤクチョにおけるプレヒスパニック期のアンデスの発展について紹介しています。

ティワナク文化の影響を受けたと考えられている石像

ボリビア・ティティカカ湖畔に栄えたティワナク文化の影響を受けたと考えられている石像たち。

様々な時代の土器

モチェやナスカ、チンチャ、チムー、チャンカイ、インカなどの他の時代の土器なども展示されています。

ワリ文化 展示

展示のメインは、なんといってもワリ文化。ワリはこのアヤクチョを中心に紀元600から1000年頃に栄えた文化で、あのインカにも多大な影響を与えたといわれています。

ワリ文化の発展には、ワルパと呼ばれる人々が大きくかかわっているそう。彼らは太平洋岸のナスカや、ボリビアのティワナクの人々と積極的な交流を図りました。それぞれの産物や原材料の交易だけでなく、芸術や信仰、工芸品の生産技術、社会組織の在り方、人と世界に対する概念なども取り交わされていたといいます。

男性器と頭上にネコ科動物の頭を乗せたどくろを模った土器

右は男性器、左は頭上にネコ科動物の頭を乗せたどくろを模った土器。ワリの人々は生殖や死後の世界についても独自の世界を持っていたようです。

ナスカ文化の影響を受けたと思われるワリの土器

ナスカ文化の影響を受けたと思われるワリの土器。描かれた人物がすべて舌を出しているので、恐らく敵将の首級か生贄の首を表しているのではないでしょうか。彼らが被っている帽子や装飾、肌の色がそれぞれ違うことから、ワリの支配地域の広さを彷彿とさせます。

幸せな死後の世界を信じて

人工的な頭蓋変形が施された頭蓋骨

アンデス文明全体に共通する習慣のひとつである、人工的な頭蓋変形が施された頭蓋骨。まだ骨が柔らかい乳児期から頭部を板で挟んだり紐で縛ったりするため、頭部への痛みに加え、脳圧の上昇や血液循環に伴う障害を引き起こしたと考えられています。

ワリ時代のミイラ

ワリ時代のミイラ。ワリの人々は死後の世界を信じていたのだそう。ミイラ包みのそばからは、たくさんの埋葬品が見つかっています。

嬰児と子供のミイラ

嬰児と子供のミイラもありました。

嬰児と子供のミイラ

この赤ちゃんミイラは、まるで今にも起き出してきそう!この子の頭にも人工頭蓋変形の跡がありますね。現代の我々からみるとただ「なんとも酷なことを」と思ってしまいますが、ワリの人々にとってこの習慣は当然、いや、生まれたらすぐ処置しなければならないほど重要なものだったのでしょう。

地方博物館ながら見応え十分なイポリト・ウナヌエ博物館。ワリ文化の魅力を余すところなく伝えてくれる地方博物館です。

地方歴史博物館「イポリト・ウナヌエ」(Museo Histórico Regional "Hipólito Unanue")

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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