火山の種類や噴火警戒レベルとは~観光できる活火山も紹介~

火山の種類や噴火警戒レベルとは~観光できる活火山も紹介~

ダイナミックに噴煙を上げる姿や雄大なカルデラなど、観光地としても人気の火山。そんな火山にも、いろいろな種類があり、また安全のために噴火警戒レベルが運用されています。

そこで、主な火山の種類や噴火警戒レベルの内容について、詳しく解説。日本を代表する火山から、知る人ぞ知る世界の火山まで、観光を楽しめる火山も紹介します。この記事を参考に、より安全に火山への旅に出てみてください。

目次

<1. 火山はどのように観光できる?>

<2. 火山のしくみ>

<3. 火山の種類>

<4. 活火山の定義とは>

<5. 噴火警戒レベルとは>

<6. 日本の有名な火山>

<7. 世界の有名な火山>

火山はどのように観光できる?

ときに大きな噴火を起こすこともある火山ですが、その雄大で美しい景観は、観光資源としても大切なもの。日本の富士山やアメリカのイエローストーン国立公園のように、たくさんの観光客を集める火山が多くあります。

また、火山は噴火によって、湖や湿原、島などを生み出し、それが観光スポットになることも。カルデラ湖である屈斜路湖や摩周湖、高層湿原の尾瀬、またギリシャのサントリーニ島などは、いずれも火山の噴火によって生まれたもの。火山そのものはもちろん、噴火によって作られたスポットも含めて、人気の観光地になることが多いのです。

日本にとって、火山が生み出した最大の観光資源といえば、なんといっても温泉でしょう。温泉のメカニズムにはいくつか種類がありますが、火山性温泉の場合、地下水がマグマ溜まりの熱で温められて地表に湧き出すことで温泉が生まれます。

環境省の調査によると、2020年の日本の温泉地数は2934ヶ所、源泉総数は2万7970ヶ所にも及びます。まさに温泉は、火山のエネルギーが生み出してくれた、日本にとっての宝物。噴火災害も多い日本ですが、美しい景観や温泉を楽しむ旅ができるのも、各地に火山があるおかげなのです。

火山のしくみ

そもそも火山とは、どのようにして生まれるものなのでしょうか?

まず、地球の表面を覆うプレートが大陸の下へと沈み込むとき、地球内部のマントルの一部が融けて、マグマが形成されます。比重の軽いマグマは地下の浅い場所でマグマ溜まりを形成し、さらに圧力が下がることで、炭酸ジュースのふたを開けたときのように、地表まで上がってきて噴出するのです。こうした噴火によって、溶岩が流れたり火山灰が降り積もったりして生まれるのが火山です。

噴火
<出典:写真AC

噴火が1回で終わる火山もありますが、何回も噴火する火山も多くあります。この場合、噴火による形成と破壊を繰り返し、火山は少しずつ成長していきます。また、噴火による噴石や降灰、火砕流など、ときに大きな災害をもたらすことも。まさに火山とは、地球が生きていることの象徴なのです。

火山の種類

火山と一口に言っても、成り立ちや形状の違いによって、いろいろな種類に分かれます。そこで、主な火山の種類について紹介します。

成層火山

火山の中で最も数が多いのが、富士山に代表される成層火山。山頂火口で噴火が繰り返され、溶岩の流出と火山砕屑物(さいせつぶつ)が積み重なって形成された、大型の円錐形火山です。大きな山体と小さな火口が特徴で、遠くから見たときの景観の美しさは成層火山ならでは。羊蹄山や鳥海山、浅間山など、日本の火山のほとんどは成層火山に分類されます。

羊蹄山
<羊蹄山/出典:写真AC

カルデラ

カルデラとは、火山活動によって生まれた円形のくぼ地のこと。火口よりもはるかに大きく、陥没によって生まれたものがほとんど。日本では九州に多く、4回の超巨大噴火によって誕生した阿蘇カルデラのほか、現在は海水が流れ込んで錦江湾になっている姶良(あいら)カルデラなどが有名。屈斜路湖や十和田湖、芦ノ湖のように、カルデラ湖になっている例も多くあります。

溶岩ドーム

粘り気の強いマグマが噴出した結果、溶岩が流れることなくドーム状の丘になったのが、溶岩ドームです。溶岩は火口近くに積み重なるため、独特な山容がみられるのも特徴。日本では昭和新山や雲仙普賢岳、由布岳などが代表例です。

昭和新山
<昭和新山/出典:写真AC

楯状火山

溶岩ドームとは反対に、粘り気の弱いマグマが噴出し、溶岩となって広範囲に流れることで形成されたのが、楯状(たてじょう)火山です。傾斜が緩やかで裾野が大きな山体が特徴で、かつて騎士が使用した楯を伏せたような形から、その名が付けられました。ハワイ諸島やアイスランドに多く、なかでも世界最大の楯状火山がハワイ島のマウナ・ロア。一方、日本には楯状火山の典型例はありません。

マール

マールとは、火山ガスや地下水が火山の熱によって熱せられ、水蒸気爆発を起こして生まれた円形の火口のこと。直径は100~1,000m程度で、地下水が溜まって湖になることが多いのが特徴です。日本では、秋田県の男鹿半島にある一ノ目潟、東京都の伊豆大島にある波浮港(はぶみなと)、鹿児島県の鰻池などが代表例になっています。

一ノ目潟
<一ノ目潟/出典:写真AC

活火山の定義とは

ところで、活火山の定義とはどのように定まっているのでしょうか?

日本の火山噴火予知連絡会による定義では、「概ね過去1万年以内に噴火した火山および現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定めています。つまり、阿蘇山や桜島のような現在も噴気活動が活発な火山だけでなく、富士山や鳥海山のような近年は噴気活動がみられない火山も、概ね過去1万年以内に噴火していれば「活火山」に含まれるのです。これは、たとえ数千年にわたって活動を休止している火山でも、その後に活動を再開した事例もあるためです。

国際的にも、過去1万年間の噴火履歴で活火山を定義するのが一般的。人間には及びもつかないような長い歴史を、火山は今日まで生きているのです。

噴火警戒レベルとは

2023年1月現在、日本の気象庁は、全国49の火山において、噴火警戒レベルを運用しています。これは、火山活動の状況に応じて、「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標。観光客にとっても大事な指標なので、各レベルの内容について紹介します。

【噴火予報】

      • レベル1:活火山であることに留意。火山活動は静穏。基本的には観光も自由にできる

【噴火警報(火口周辺)または火口周辺警報】

      • レベル2:火口周辺規制。火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生、あるいは発生すると予想される。観光客にも火口周辺への立ち入り規制等が行われる
      • レベル3:入山規制。居住地域の近くまで重大な影響を及ぼす噴火が発生、あるいは発生すると予想される。観光客にも登山禁止や入山規制など、危険地域への立ち入り規制等が行われる

【噴火警報(居住地域)または噴火警報】

      • レベル4:高齢者等避難。居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想される。高齢者等の避難のほか、住民の避難の準備等が必要
      • レベル5:避難。居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生、あるいは切迫している状態にある。避難等が必要

観光で火山を訪れるときは、事前に気象庁のホームページなどで最新の噴火警戒レベルを確認するようにしましょう。

日本の有名な火山

北海道から沖縄県まで、日本には111の活火山があります。その数は世界の活火山の約7%と、日本は世界的に見ても火山の多い国。そこで、観光地としても人気の日本の火山を3つ紹介します。

阿蘇山(熊本県)

世界最大級のカルデラがあり、現在も活発な噴気活動を続けているのが、熊本県の阿蘇山です。阿蘇五岳を中心に、外輪山やカルデラが広がる二重式火山で、ユネスコ世界ジオパークにも認定。巨大なカルデラ内に約5万人の人々が生活するなど、火山と人間が共生している世界的にも珍しい火山です。

また、活動中の火口を間近に見られる火山としても知られ、規制がされていなければ、噴煙を上げるエメラルドグリーンの中岳火口を見学できます。このほか、かつての大火口の跡である草原・草千里ヶ浜は、馬がのんびりと草を食む風光明媚なスポットとして人気です。

阿蘇山
<阿蘇山の草千里ヶ浜/出典:写真AC

桜島(鹿児島県)

鹿児島県のシンボルといえば、錦江湾に浮かぶ桜島。約2万6,000年前に誕生し、1914年の大正噴火で流れた溶岩によって、大隅半島の一部となりました。現在も毎日のように小規模な噴火を繰り返し、その回数は年平均で約800回!

桜島
<桜島/出典:写真AC

桜島の特徴は、火山災害を何度も受けながらも、今も火山とともに人々が暮らしていること。桜島には約4,600人が暮らし、海を挟んでわずか4kmの場所には約60万人が暮らす鹿児島市の市街地が広がります。市街地のすぐ向こうに噴煙を上げる火山が聳えるのは、世界でも類を見ない風景。日常の中に火山が当たり前にあることこそ、桜島の魅力なのです。

浅間山(長野県・群馬県)

標高2,568m、長野県と群馬県にまたがる浅間山は、10万年以上前から噴火を繰り返してきた火山。日本で最初に火山観測所が設置されるなど、噴火に対する備えもいち早く実施されてきました。かつては山岳信仰の対象として崇拝され、現在でもたくさんの登山客を集める火山です。

浅間山
<浅間山/出典:写真AC

そんな浅間山の魅力は、四季折々に移ろっていくその風景。春から夏にかけてはニッコウキスゲをはじめとする高山植物が咲き誇り、秋には鮮やかな紅葉が色付きます。そして冬、真っ白な雪が積もると、「ガトーショコラ」とも称される美しい姿へと変わっていくのです。

世界の有名な火山

世界に目を向けると、日本にはないタイプの火山も多くあります。そこで、旅先としても魅力的な、個性溢れる世界の火山を3つ紹介します。

キラウエア火山(アメリカ)

太平洋の真ん中に浮かぶ、アメリカ・ハワイ諸島。その最大の島・ハワイ島にあるのが、「世界で最も活発な火山」といわれるキラウエア火山です。標高1,247m、裾野が大きく広がる楯状火山で、過去30年間に大小50回以上も噴火を繰り返しています。

キラウエア火山
<キラウエア火山/出典:写真AC

世界最大の活火山であるマウナ・ロア火山とともに、「ハワイ火山国立公園」としてユネスコの世界自然遺産にも登録。火の女神ペレが棲むといわれるハレマウマウ火口をはじめ、黒光りする溶岩台地や噴き上がる硫黄の蒸気など、地球の息吹を肌に感じる火山です。溶岩は直接海に流れて冷やされ、やがて陸地となって、現在も島の面積は広がっています。

キラウエア火山については「大地の鼓動『キラウエア火山』を陸から攻める? それとも空から攻めてみる?」の記事もご覧ください。

エトナ山(イタリア)

エトナ山は、地中海に浮かぶイタリア・シチリア島にある活火山。標高約3,320m、ヨーロッパ最大の活火山で、成層火山としては世界で最も活発に活動している火山です。噴火の歴史は50万年前まで遡り、現在でもときに大きな噴火を起こすため、山頂部は人が立ち入ることができないほど。

エトナ山
<エトナ山/出典:写真AC

地球科学の研究上、貴重な存在であることから、ユネスコの世界自然遺産にも登録。なかでもリゾート地・タオルミーナから眺めるエトナ山の風景は、シチリア島を象徴する絶景です。またシチリア島第2の都市であるカターニアは、17世紀の噴火で街が壊滅し、溶岩を建材として街を再建したことで知られています。

ヤスール山(バヌアツ共和国)

南太平洋の島国、バヌアツ共和国。そのタンナ島には、「世界で最も火口に近づける活火山」として注目を集めるヤスール山があります。日中は勢いよく噴き上がる蒸気を、夜は暗闇の中で噴出する真っ赤なマグマを、それも火口の淵から間近に見られるのです。

ヤスール山は、18世紀にジェームズ・クックによって発見され、海の上からも頻繁に噴火が見えるため、「太平洋の灯台」とも呼ばれる火山。溶岩や有毒ガスなど危険と隣り合わせなので、信頼のおけるガイドを手配し、安全なツアーで訪れるようにしましょう。


火山の魅力は、「地球は生きている」ことを実感させてくれる、そのダイナミックな光景。そして、ときとして噴火が起きることもあるため、事前に噴火警戒レベルなどを確認して、安全に旅を楽しむことが大切です。私たち人間にとっても、明日を生きるパワーを与えてくれる、火山という存在。地球が歩んでいる歴史の一端に触れることで、きっと感じられるものがあるはずです。

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手塚 大貴

沢木耕太郎氏の『深夜特急』がきっかけで、アジアやヨーロッパ、南米など世界各地をひとり旅。オリンピックやサッカーワールドカップなど、スポーツ観戦の旅も好き。実は世界遺産検定マイスター。旅エッセイやコラムも得意としています。

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