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根津美術館の建築&館内ガイド~国宝を含むコレクションや庭園も紹介~
高級ブランド店がひしめくファッションストリート・青山みゆき通り。その通りを抜けた閑静な一角に建つのが根津美術館です。
根津美術館は、「鉄道王」として名を馳せた実業家・初代根津 嘉一郎による国宝・重文含む一級品ぞろいの古美術コレクションに、本格的な日本庭園など見どころが満載です。根津美術館自体が、現代日本建築の傑作でもあります。
今回はそんな根津美術館の具体的な見どころ、魅力について徹底ガイドしましょう。
※館内は原則撮影禁止です。一部の画像は、特別な許可を得て撮影しています。
目次
<8. 根津美術館ならではのグッズがたくさん!「ミュージアムショップ」>
1. 南青山に根津美術館あり
日本庭園まで有する美術館がこのような場所にあるのかと、その立地に驚く人も多いのが根津美術館です。
南青山のど真ん中に位置する「根津美術館」
根津美術館は、庭園を含めた敷地面積がおよそ2万平方メートル、南青山という都会のど真ん中にありながら、緑豊かな本格日本庭園を楽しめる「都会のオアシス」ともいわれています。
2. 根津美術館の歴史と概要
まずは、根津美術館誕生の歴史と概要についてご紹介します。
根津美術館誕生の歴史~初代根津嘉一郎とは
山梨の豪商の家に生まれた初代根津嘉一郎(ねづかいちろう、1860~1940)は、政治家として活動する一方で、東武鉄道や南海鉄道(現・南海電気鉄道)など鉄道会社の経営再建に尽力し、「鉄道王」として名を馳せた近代日本を代表する実業家の一人として知られています。
他方、若い頃から古美術品に深い関心を寄せ、特に日本を中心とした東洋の古美術品の蒐集に熱中していた初代嘉一郎。その蒐集ぶりは豪快を極め、やがて嘉一郎が訪米した1909年、日本国内における一級の古美術品が海外に多く流出している事実を知り、その状況を憂いて流出を防ぐため、いっそう蒐集に励んだといわれています。
<画像提供:根津美術館>
また、初代嘉一郎の理想は、蒐集したコレクションを広く公開し、「衆とともに楽しむ」ことと考えていました。
その遺志を継いだのが息子の二代目根津嘉一郎です。まだ戦前の昭和15年(1940年)に財団を設立、その翌年には根津家の邸宅があったこの地に美術館を開館させます。やがて、戦禍に見舞われ建物は焼失するも、疎開させていたコレクションはかろうじて無事で、昭和29年(1954年)に美術館を再建、その後2度の増改築を経て、平成21年(2009年)、三代目館長の根津公一氏のもと、新本館として現美術館が完成しました。
根津美術館コレクションとは
財団設立当初は4,643件であった根津美術館のコレクションは、2020年3月末時点で、国宝7件、重要文化財88件、重要美術品94件を含む7,600件にのぼります。
これらのコレクションは初代嘉一郎が蒐集した作品に加え、没後に購入された作品、さらに篤志家から寄贈された作品も含まれています。
コレクションは日本・東洋の古美術品を中心に、絵画や書蹟、仏教彫刻、金工、陶磁、漆工、木竹工、染織、武具、考古と多岐にわたります。中でも、「青山(せいざん)」の号を名乗る茶人でもあった初代嘉一郎は、膨大な茶道具のコレクターでもありました。そのため、展示室にその一室が割り当てられるなど、当館にとって茶道具は重要な柱になっています。
ちなみに、上記画像は中国で出土した紀元前13~前11世紀のものとされる古代の青銅器「双羊尊(そうようそん)」(重要文化財)。「尊」とは酒や水をためておく器のことで、2匹の羊が背中合わせに合体したユーモラスな形が特徴です。この双羊尊が現存するのはロンドンの大英博物館と当館だけとか。そんな貴重な双羊尊には根強いファンもおり、入場券やパンフレット、グッズのデザインにしばしば登場、関係者の間では「そんちゃん」の愛称で親しまれています。
建築家・隈研吾の代表的作品でもある根津美術館
<画像提供:根津美術館>
平成21年(2009年)に新創された現在の根津美術館。設計者は建築家・隈研吾氏。地上2階、地下1階建てで延床面積約4,000平方メートル、日本家屋を想起させる切妻式の瓦屋根、壁には竹とスチール板、ガラスといった和と洋を融合させた和モダンなデザインが施されています。さらにホールの勾配天井にはスライスした竹を練り付けた(重ね合わせた)特殊な板が使用され、開放的で清潔感あふれる空間を演出しています。
美術館入口から本館入口までのアプローチは、片側に竹垣、もう片側には竹壁が配され、通路はまさに神社の参道のような雰囲気です。
※写真は入り口とは反対側から撮影しています。
<画像提供:根津美術館>
「庭」へと連続するイメージで設計されたというこの根津美術館は、隈研吾氏を代表する作品の一つとなり、海外の美術館建築で参考にされることも多いそう。そういった意味でも、日本の誇れる美術館の一つですね。
3. 根津美術館のマップ
およそ2万平方メートル(サッカーグラウンド約3面分)を有する根津美術館。各施設の位置関係は以下のマップをご参照ください。
<画像提供:根津美術館>
4. 根津美術館に入館! エントランスホールの美しい空間
それでは、さっそく根津美術館に入館してみましょう。
エントランスホール
本館入って左手に広がる「エントランスホール」。温かみのある竹素材で作られた高い勾配天井と、ガラス窓から差し込む陽の光が空間を柔らかく包み込んで、美しく洗練された空間です。
ガンダーラや中国の古代石像彫刻
ホールに展示されている作品は主に古代中国6~8世紀の仏教石像彫刻。しかし、一番手前の、鼻の下に髭をはやしたオリエンタルな風貌の「弥勒菩薩立像」は、3世紀頃作られたガンダーラ美術の作品です。保存状態がよく、端正な顔立ちが際立って、独特の存在感を放っています。
なお、館内は原則撮影禁止ですが、このホールだけは撮影OKとされています。ぜひ記念に写真に収めてくださいね。
音声ガイドレンタルを使った館内巡りがおすすめ
根津美術館の作品をより楽しみたいなら、音声ガイドをレンタルして館内を巡るのがおすすめ。詳しい解説で作品への理解と興味がより深まります。
受付はホール階段下のブースにて。1台500円で貸出されています。
5. 根津美術館のコレクションを鑑賞しよう
次に、各展示室の展示内容をご紹介します。
1階 展示室1・2(企画展示)
館内でもっとも広い1階の「展示室1・2」は、主に企画展に利用されています。
企画展は年間7回開催
根津美術館の展覧会スケジュールは年7回に分かれています。
テーマに応じて、根津美術館のコレクションを中心に他美術館や個人の所蔵から関連作品が集められ、見ごたえのある内容になっています。
2021年12月取材時の企画展は、2020年に重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風(2021年12月19日終了)」でしたが、2022年の最初を飾る企画展は「文様のちから-技法に託す-」です。開催概要は以下のとおり。
「茶地立涌雪持松模様縫箔(ちゃじたてわくゆきもちまつもようぬいはく)日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵」<画像提供:根津美術館>
<企画展「文様のちから-技法に託す-」の開催概要>
- 開催期間:2022年1月8日(土)~2月13日(日)
- 開館時間:10:00~17:00(最終入館は16:30)
- 休館日:毎週月曜日
- 料金:一般1,300円、学生1,000円 ※オンライン日時指定予約制
「紅浅葱段籠目草花模様唐織(べにあさぎだんかごめそうかもようからおり) 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵」<画像提供:根津美術館>
「雲龍堆朱盆(うんりゅうついしゅぼん) 中国・明時代 万暦17年(1589) 根津美術館蔵」<画像提供:根津美術館>
年に一度お披露目される「国宝 燕子花図屏風」
根津美術館を代表する「国宝 燕子花図屏風」。本作の展示だけは、庭園の燕子花(かきつばた)が見頃を迎える時期に合わせ、毎年ゴールデンウィークを含む4月中旬から5月中旬の約1ヶ月間、定期開催されています。
年に一度、国宝が拝める貴重なチャンス。2022年の開催概要は以下のとおりです。(2021年10月現在)
「国宝 燕子花図屏風 尾形光琳筆 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵」(画像上:右隻、下:左隻)<画像提供:根津美術館>
<特別展「燕子花図屏風の茶会―昭和12年5月の取り合わせー」の開催概要>
- 開催期間:2022年4月16日(土)~5月15日(日)
- 開館時間:10:00~17:00(最終入館は16:30)※5月10日(火)~15日(日)は10:00~19:00(最終入館は18:30)
- 休館日:5月2日を除く月曜日
- 料金:一般1,500円、学生1,200円 ※オンライン日時指定予約制
1階 展示室3(仏像彫刻)
1階の「展示室3」は、ホールに並ぶ仏教彫刻の流れをくんで、こちらは仏像を含む仏教美術が展示されています。
2021年12月訪問時には木造彩色の仏像を中心に、平安期~鎌倉期に制作された不動明王や毘沙門天の立像が展示されていました。
2階 展示室4(青銅器)
2階の「展示室4」では、根津美術館が所蔵するコレクションの中から、主に中国古代の青銅器が展示されています。
中央に展示されているのは、中国・殷時代(紀元前13~前12世紀)の「饕餮文方盉(とうてつもんほうか)」(重要文化財)。古代中国の神を表す「饕餮」がデザインされた四脚の大型酒器で、3対1セットとなっており、殷王の所有物であったと推定されています。
このほか、冒頭でご紹介した「双羊尊」もこの部屋に展示されています。
2階 展示室5(工芸)
2階の「展示室5」は、根津美術館のコレクションの中から、毎回異なるテーマに即した様々なジャンルの作品が展示されます。
2021年12月訪問時は、「筆墨の魅力 禅僧たちの書」として、主に13~14世紀の日本や中国で活躍した禅僧らによる墨蹟(ぼくせき)を展示。禅に関する儀式や説法の法話、詩や手紙など、作者の人柄が感じられるような、個性あふれる書の数々でした。
2階 展示室6(茶道具)
2階「展示室6」は、「茶道具」をテーマにした展示室で、茶人であった初代根津嘉一郎の膨大な茶道具コレクションから、開催時期に応じた季節の茶道具を展示しています。取り扱う茶道の流派やどんな展示内容にするかは、そのとき担当する学芸員次第とのこと。
ちなみに、2021年12月訪問時のテーマは、遠州流における「炉開き-祝儀の茶会-」。炉開きとは、畳の下に備え付けられた囲炉裏のことで、5~10月の間、閉じていた炉に火をくべる茶の儀式の一つ。これにより本格的な冬の訪れを感じ、また無事に一年を迎えることができた感謝の意を表す大切なイベントだそうです。
6. 根津美術館の庭園
古美術鑑賞を堪能した後は、根津美術館自慢の庭園を散策しましょう。関係者の間では、この庭園を「第7の展示室」と呼んでいるそうです。
順路はないため、興味の赴くままに自由に散策してみましょう。所要時間はおおむね30分~1時間前後。なお、庭園での撮影は自由です。
初代根津嘉一郎が愛した庭園
根津美術館の庭園はおよそ1万7,000平方メートル、西の明治神宮の杜と対を成すかのような緑豊かな庭園は、都会のオアシスとも言われています。
庭園の敷地は高低差約10mある窪地で、初代嘉一郎はこの起伏に富んだ土地を好み、地形を生かした庭園づくりにいそしみました。ちなみに、購入した当時の敷地面積は今の倍はあったというから驚きです。
根津美術館では、庭園の四季の移ろいを一冊にまとめた『青山緑水』というタイトルの写真集を出版しています(ミュージアムショップにて販売)。「青山緑水」とは「青々とした山々、緑をたたえる水、すなわち天地森羅万象を育む雄大な自然の情景」を意味する禅語の一つ。
都会のど真ん中にありながら深山幽谷のたたずまいを見せる本格的な日本庭園が楽しめます。
4つの趣ある茶室
庭園内には4棟の茶室が存在します。通常、一般の方が茶室内部を見学することはできませんが、お茶会などで貸し出されたり、特別なイベントで公開されたりすることもあるため、興味のある方は当館にお問い合わせください。
>>>根津美術館の茶室利用に関する詳細は公式サイトのこちらをご参照ください
弘仁亭・無事庵(こうにんてい・ぶじあん)
<画像提供:根津美術館>
本館庭園口を出て道なりにまっすぐ階段を下りたところに見えてくるのが「弘仁亭・無事庵」。明治末に建てられた書院造の茶室を移築したもので、四畳半の無事庵が併設、また向かいには腰掛待合も用意されています。
閑中庵・牛部屋(かんちゅうあん・うしべや)
庭園東側、NEZUCAFÉからほど近いところに位置するのが「閑中庵・牛部屋」。
元は斑鳩庵に付随した、五畳台目下座床(ごじょうだいもくしもざどこ)の珍しい茶室で、平成3年(1991年)に現在の場所に移築されました。四畳半囲炉裏構えの牛部屋が併設されています。
※「台目畳」とは通常の丸畳の4分の3サイズのもの。「下座床」とは茶を点てる亭主から見て床の間が下の位置にある間取りのことを指す。
披錦斎・一樹庵(ひきんさい・いちじゅあん)
<画像提供:根津美術館>
庭園南部、薬師堂寄りに位置するのが「披錦斎・一樹庵」。
明治32年(1899年)に大阪伏見町で建てられた茶室を移築した一樹庵が併設されています。また、壁に掛けられた扁額(建物の高い位置に掲げられた書画などの額)は、二代目嘉一郎の筆によるものです。
なお、通常は立ち入り禁止である披錦斎ですが、秋の紅葉の特別期間のみ茶庭が開放されることがあります。根津美術館の公式Twitter @nezumuseum などで情報発信されますので要チェックです。
斑鳩庵・清渓亭(いかるがあん・せいけいてい)
<画像提供:根津美術館>
庭園南部、天神の飛梅祠(ひばいし)寄りにある茶室が「斑鳩庵・清渓亭」。
江戸末期の建築で、益田克徳邸にあったものを昭和30年(1955年)に移築、清渓亭が併設されています。
こちらも秋の紅葉キャンペーンなどで茶庭が開放されることがあるので要チェックです。
根津美術館八景
根津美術館の広い敷地内には、季節の移ろいを感じる8つの絶景スポットが用意されています。
月の石船
根津美術館入口すぐ横にある最初の八景「月の石船(いわふね)」。
かつて根津家の広い邸内に置かれていたこの舟型の蹲(つくばい、茶室前に置かれた手水鉢のこと)は、来客への道標として使われていました。それを2009年の改装に合わせ朝鮮灯籠の長明燈(ちょうみょうとう)とともにこの場所に設置、灯籠の光を月光に、石舟のかたちを三日月に見立てて、来館者を出迎えています。
弘仁亭の燕子花
<画像提供:根津美術館>
弘仁亭の茶室前に広がる燕子花の池。毎年4月末頃から5月中旬のゴーデンウィークにかけて燕子花が咲き誇り、それに合わせて尾形光琳筆「国宝 燕子花図屏風」の特別展が開催されています。
東熊野(ひがしくまの)
弘仁亭の西側に位置するのが「東熊野」。水を引くための竹筒の筧(かけい)に目を向けると一筋の水流に突き当たります。それを熊野山中の那智滝に見立てて「東熊野」と名付けられました。
ほたらか山
庭園南西部の小高い丘の上に、苔むした仏像や石塔が多く集められた「ほたらか山」。丘のてっぺんに鎮座するのは観音菩薩立像で、サンスクリット語で観音菩薩の浄土を示す「Potalaka(ポータラカ)」にちなんで「ほたらか山」と名付けられました。
苔むした大小の仏像が点在するほたらか山。入口左右を挟むように設置された二体の仏像のうち、この苔に覆われた仏の坐像がフォトジェニックとして人気です。
薬師堂の竹林
庭園南西端に位置する薬師堂。青々とした孟宗竹や黒竹など数種類の竹に囲まれ、そのたたずまいはまるで京都嵐山のような古都の雰囲気を醸し出しています。
薬師堂の新たな見どころの一つが「水琴窟(すいきんくつ)」。
水琴窟とは、手水鉢の下に空けられた空洞に水滴が滴り落ち、その落下音を反響させて地上に聴こえるよう設計された日本庭園の技法の一つ。
一定の間隔で鳴り響く水滴の音色は、心を鎮め、実に涼やかで、暑い日などは音で涼がとれそうです。
披錦斎の紅葉
披錦斎の周囲は秋になると真っ赤な紅葉で染め上がり、庭園屈指の紅葉スポットとなります。また初夏には新緑の青葉も楽しめますよ。
吹上の井筒(ふきあげのいづつ)
<画像提供:根津美術館>
斑鳩庵の前の池に据えられた四角い「吹上の井筒」。今でも地下水が湧き出しています。
<画像提供:根津美術館>
吹上の井筒の東側、斑鳩庵の目の前の池には、今にも朽ち果て沈んでしまいそうな寂れた屋形船が浮かんでいます。それもまた風流で、人気のフォトスポットとなっています。
天神の飛梅祠(てんじんのひばいし)
庭園南東端に位置するのは菅原道真公の渡唐天神像が祀られた「天神の飛梅祠」。
天神といえば学問の神様。そのため、学生などがお参りに訪れては時折天神の足元にボールペンなどをお供えしていくとか。とはいえ、ここは神社ではないので御守も御朱印も授与されないのでご注意ください。
ちなみに、祠の横には立派な銀杏の大木がそびえたち、紅葉の時期には辺り一面を黄金絨毯に覆い尽くします。それはまるで天神様の後光が差しているかのよう......。
隠れたフォトスポットですので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
庭園のその他の見どころ
庭師のこだわり
野趣にあふれながら手入れが行き届いた庭園。庭師のこだわりが随所に見られます。
たとえばこの「稲叢(いなむら)ぼっち(藁ぼっちともいう)」。
紅葉も見頃を過ぎた頃、冬の訪れとともに庭師が一つ一つ手で作り上げる藁巻きの一種。通常、藁ぼっちは牡丹や寒椿などを藁で囲った霜除け・風除けに作られますが、ここでは鑑賞用としてあちこちに設置されています。
稲叢ぼっちの頭飾りは松竹梅の3種類があり、上記画像は左が梅、右が松ですね。
庭園内に広がる延段(のべだん、庭に設置された敷石の通路のこと)の種類も実にさまざま。自然の石や切り出した石を巧みに組み合わせ、歩きやすいように工夫が施されています。
敷石には、石臼といわれる丸形や、上記画像のような歯車タイプの大きな石がはめ込まれており、遊びゴコロを匂わせます。
茶室へいざなわれるような整然と敷き詰まった延段。
庭園内の通路は段差を無くすなど、車椅子の方でも通行できるよう一部ルートが整備されています。
手入れの行き届いた苔と落ち葉の紅葉とのコントラストは、どこを切り取っても一枚の絵画のようです。
ユニークな仏像がたくさん
庭園内のあちこちに散らばる石像彫刻や仏像、石塔、石灯籠。中には「なぜこれが?」と思うようなユニークなものがたくさんあります。
本館庭園口近くに置かれた青銅製の象の置物。
仏教発祥の地・インドでは白象は聖獣とみなされ、お釈迦様や菩薩らを運ぶ乗り物として知られています。しかしこれは実にユニークな表情で、鼻には木材があてがわれ、鹿がデザインされた楼閣を背負い、なんとも言えない存在感です。
中には巨大な鬼瓦のような置物もあったり...
朝鮮由来の二対の石像もあったり...
バラエティに富んだコレクションの数々、宝探しのような気分になります。
ちなみに、これらは初代根津嘉一郎の私邸時代からのものもあり、れっきとした古美術品です。
庭園の池には錦鯉が泳ぎ、カモが水浴びしています。
また時折、都会では珍しい白鷺やアオサギも訪れるそう。庭園内は小鳥のさえずりが響き渡り、バードウォッチングも楽しめそうです。
7. 自然に囲まれた「NEZUCAFÉ」
本館庭園口を出てすぐのところに建てられた「NEZUCAFÉ (ネヅカフェ)」。
根津美術館の入館者のみ利用が可能です。
まるで森の中のカフェ気分
2009年の本館改装当時、隈研吾氏によって設計された「NEZUCAFÉ」。
三面ガラス張りの大窓から見える自然豊かな庭園は、まるで森の中のカフェでくつろいでいるような錯覚を覚えます。
店内の天井には、和紙に見立てた加工素材が使用され、店内にやわらかな陽光が行き渡ります。
ちなみに、特等席は右奥のガラス窓に向いたカウンター席。庭園の絶景を眺めながら食事が楽しめ優雅な気分に浸れます。
「NEZUCAFÉ」おすすめメニュー
NEZUCAFÉおすすめメニューは「神戸牛のミートパイ&サラダ添え(800円税込)」。神戸牛を贅沢に使った具材のミンチがサックサクのパイ生地に包まれ、新鮮野菜といただく上質なひとしなです。
もう一つのおすすめはやはりデザート。
人気の生菓子ケーキ3種の中から、今回はオーソドックスなチーズケーキをチョイス(各種650円税込)。NEZUブレンドコーヒー(650円税込)と一緒にいただきました。
チーズケーキは甘さ控えめでチーズが濃厚、そしてなかなかボリューミーです。コーヒーはとてもマイルドで飲みやすい口当たりでした。
ちなみに、注目すべきはこの器。お皿とカップに燕子花の透かしが入っていて、必見です。
<NEZUCAFÉの基本情報>
- 営業時間:10:00~16:30(ラストオーダー16:00)
- 席数:20席
※コロナ感染防止対策により、座席数は減らしています
※NEZUCAFEは美術館入館者のみ利用できます
8. 根津美術館ならではのグッズがたくさん!「ミュージアムショップ」
最後はやっぱりお土産ショッピング! 根津美術館ならではの自慢できる限定アイテムを探してみましょう。
なお、ミュージアムショップの利用は、美術館入館者のみになっています。
ミュージアムショップでしか手に入らない根津美術館限定アイテム
本館入口横に設置されたミュージアムショップ。
展覧会の図録はもとより、絵はがき、カレンダー、ミニ屏風、文房具、各種生活雑貨からお香、茶道具、有田焼で作られた陶磁器まで、ここでしか手に入らないレアな限定アイテム満載です。
根津美術館はオンラインショップや通販を行っていないため、文字通り、ここでしか手に入らない逸品ぞろいです。
時代の趨勢に合わせて、さまざまな新商品が登場しています。また、デザインは国宝の燕子花図屏風をはじめ、開催中の展覧会に合わせたグッズ、当館コレクションの中から人気のあるキャラクターや図柄をモチーフにしたアイテムなど多岐に渡っています。
国宝や重文がデザインされたグッズを持ち歩けるなんて、何だか贅沢な気分ですね。
ミュージアムショップのおすすめ商品をご紹介
根津美術館で今イチオシの人気グッズは、この干支をあしらった「NEZU MUSEUMオリジナルピンバッヂ」。
12支の動物たちは、当館コレクションのうち、刀装具や青銅器、磁器などの装飾や図柄をモチーフとしています。
ちなみに2022年の干支は寅。画像は、根津美術館所蔵の刀装具「虎図縁頭」(江戸時代村上如竹作)の装飾に使われたデザインを用いたもの(金寅/銀寅2,000円税込、銀小寅1,800円税込)。
古来、虎は勇猛果敢の代名詞で、邪気払いや魔除けとして、また勇気を授ける聖獣として知られています。自分の干支を買うもよし、2022年にちなんで寅を買うもよしですね。
こちらも人気の当館限定グッズのいろいろ(いずれも根津美術館所蔵コレクションをモチーフにしたもの)。
(左上)子犬のあどけない表情がキュートな長沢芦雪作「竹狗児図」のクリアファイル(300円税込)
(左下)貴重な白檀を中心に各種香料、植物由来の精油を調合した気品あふれるオリジナルの香り袋「燕子花」(880円税込)
(右上)当館人気のキャラクター「双羊尊」がデザインされたおしゃれなガーゼハンカチ「双羊尊」(10色各800円税込)
(右下)侘び茶の開祖村田珠光(じゅこう)が愛用したとされる染織物のうち、重要文化財「肩衝茶入 銘 松屋」の仕覆(しふく、茶道具を入れる袋)「龍三爪緞子(どんす)」のデザインを復元した「珠光緞子」の「名刺入れ」(3種各3,000円)
この他にも、古美術ファン垂涎の限定グッズが目白押しです。ぜひ来館記念にいかがですか。
ここで根津美術館トリビアをひとつ。
ミュージアムショップの「双羊尊」コーナーでは、毎回恒例、会期中の展覧会の主役を飾った人物(時に神仏など)宛に、ゆかりのある人物から便りが届いた、という想定のもと、双羊尊変形はがきの使用例が展示されています。達筆な書面と粋なメッセージは思わずニヤリとすることうけあいです。
9. 根津美術館へのアクセス
最後は、根津美術館へのアクセスをご紹介します。
根津美術館の最寄り駅は、地下鉄千代田線・銀座線・半蔵門線の表参道駅。A5番出口からみゆき通りに出て、案内板が示す矢印の方向(右)へひたすら真っすぐ歩くとたどり着きます。徒歩5分程度です。
みゆき通りは高級ブランド店がひしめくファッションストリート。しばらく進むと、右手にひし形クリスタルが圧倒的存在感を放つプラダ青山店が見えてきます。そこを過ぎればもうすぐです。
バスを利用したい場合は、渋谷駅-新橋駅間を走る都バス「渋88系統」、あるいは赤坂見附駅-六本木ヒルズ間を走る「ちいばす(青山ルート)」がおすすめ。都バスの場合は「南青山六丁目」バス停にて下車、ちいばすの場合は「青南小学校」バス停にて下車、いずれもバス停から美術館まで徒歩1~2分です。
>>>根津美術館へのアクセスの詳細は公式サイトをご参照ください
10. 根津美術館の基本情報
国宝や重要文化財を数多く所蔵する根津美術館。
古美術品は非常に繊細で劣化しやすく、き損リスクが高いため、特に国宝や重要文化財級の古美術品は、文化財保護法に基づき、年間の公開回数や公開期間が決められています。そのため、一つの会期中に作品の入れ替えが行われることも少なくありません。
古美術ファンだけでなく、四季折々の表情を見せる庭園鑑賞がお好きな方などには、会員制「根津倶楽部」の入会がおすすめ。入館フリーパスは年会費大人8,000円(税込)。入館券は1回1,500円前後なので年間6回訪れればモトが取れ、同伴者1名も無料で入館できます。(根津倶楽部の詳細はこちら)
作品も建築も庭園も一級品揃いの「都会のオアシス」根津美術館へ、今度足を運んでみませんか?
それでは、根津美術館に関する基本情報です。
- 住所:東京都港区南青山6-5-1
- 開館時間:10:00~17:00(最終入館受付16:30)※オンライン日時指定予約制
- 電話:03-3400-2536(代表)
- 駐車場:9台(うち、身障者優先駐車場1台)
- アクセス:
<鉄道利用の場合>
・地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道駅A5出口より徒歩5分
<バス利用の場合>
・【都バス(渋88系統)】渋谷駅前59番のりばより新橋駅方面に乗車、「南青山六丁目」バス停にて下車(所要時間約6分)、そこから徒歩約2分(運賃一律210円)
・【ちいばす(青山ルート)】赤坂見附駅前(赤坂見附MTGビル前バス停)より六本木ヒルズ方面に乗車、「青南小学校」バス停にて下車(所要時間約17分)、そこから徒歩1分(運賃一律100円) - HP:根津美術館
※この記事は2021年12月に取材した内容に基づいています。期間限定の情報もありますので、最新情報は公式HPをご確認ください
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- 自称ミステリーハンターで絶景ハンター。訪れた国は80カ国以上。世界中の絶景を求めて地球を駆け回っています。