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【奈良】赤膚焼は奈良絵をうまく引き出した伝統的な陶器
こんにちは!たびこふれライターの中尾です。
今回は奈良県奈良市で赤膚焼(あかはだやき)を見学しましたのでご紹介します。
目次
- 赤膚焼(あかはだやき)とは?
- 訪問した陶房は?
- 赤膚焼の特徴は?
- 赤膚焼の製作方法は?
- 陶芸教室も開催しています!
- 赤膚焼「大塩正史陶房」の紹介
- 大塩正史陶房を紹介いただいた「奈良ウェルネスツーリズム」とは?
赤膚焼(あかはだやき)とは?
陶器の窯元は日本各地にありますが、奈良県の窯元と聞くと意外と知られていないのが現状ではないでしょうか。僕自身も奈良の窯元と尋ねられても答えられなかったのですが、ふとした人の繋がりから赤膚焼(あかはだやき)を紹介していただきました。まずこの『赤膚焼』の読み方すら分からなかった...。『あかはだやき』と読むのだよと教えてもらい、赤膚焼について調べてみました。
『赤膚焼(あかはだやき)の歴史は古く、垂仁天皇時代(およそ2000年前頃)から続くやきものの地・赤膚山に豊臣秀吉の弟、秀長公が開窯したのが起源とされています。また、江戸時代に小堀遠州が自分好みの茶器を作らせたことでも知られ「遠州七窯」の一つにも数えられています。』
訪問した陶房は?
訪問したのは近鉄奈良駅前に陶房を構える「大塩正史(おおしおまさし)陶房」です。陶人の大塩正史氏が出迎えてくれました。
近鉄奈良駅を降りて、西側すぐのところに、このようなレンガ造りの建物があります。営業時間にはこのような赤膚焼(あかはだやき)の看板が立っていますのですぐに分かります。
赤膚焼の特徴は?
僕は素人なのでうまく説明できませんが、大塩正史氏によりますと、
『陶土を素焼きにしたときに生まれる陶肌の美しい赤み。なかでも乳白色の釉(うわぐすり)と地肌とのきわにそっと柔らかな赤みがさす景色が赤膚焼(あかはだやき)ならではの味わい。また雅な奈良絵の絵付けも、大和の窯元ならではの作風として人気があります。』
とのこと。
こちらは絵付けされた赤膚焼(あかはだやき)なのですが、どこか可愛らしくユーモラスな絵が特徴でもあります。
絵も陶器全体ではなく、ワンポイント的な感じで描かれています。
奈良といえば鹿ですが、このようなほのぼのとした鹿の絵は素敵だと思いました。
こちらはカップや湯呑みです。使いやすさにもこだわりがあるそうです。
花柄も季節によって変化をつけています。
このあたりの陶器はすぐに奈良と思い浮かぶものですね!
器の中で鹿が遊んでいるようにも見えます。
こちらは酒器。
このように3つに分かれます。湯煎もできるので燗酒にはぴったりですね。
大塩正史氏が特にこだわって作り上げた作品。口の部分に装飾が施されています。
ひとつの型にはまらず色んな作品を制作されています。
こちらはマグカップなのですが、内側の構造はこのようになっています。
香炉も堅苦しいものだけではなく時代に合わせたものも作られています。
ひねりをつけた花瓶。遊び心も素敵ですね。
この色合はどうやって出したのだろうかと考えてしまいました。
赤膚焼の製作方法は?
大塩正史氏によると、まずは土の選択から始まります。赤膚焼の原料となる土は奈良県西部の赤膚山から掘り出します。僕が驚いたのは土といってもこのような石のような塊で掘り出すそうです。
この石のような塊を砕いて粉にして、不純物を浄化して、数種類の粉を配合して、陶器用の粘土を作り上げるのだそうです。
粉を配合して最後は機械でこのような土にするそうです。僕は山からこのような粘土の状態で掘り出すものだと思っていました...。ここまでの作業も大変なので、窯元によっては最初の作業を行わず出来上がった土を買ってくることもあるそうです。なお、調合した粘土を「室」と呼ばれるところに寝かすのですが、なんと3年も寝かすそうです。
土作りの工程を動画で見せていただきました。ぜひご覧ください。
いかに土づくりが大変か...。土づくりをおろそかにすると良い作品は生まれないということを教えていただきました。
陶器の制作は手動ロクロや電動ロクロを使うことが多いのですが、大塩正史氏は手ごねにこだわっています。ロクロも最初は手動を使うこと勧められていて、そこそこ経験がある方でも電動ロクロはお勧めしないそうです。
まずは粘土をこのように「ひも」と呼ばれる棒状に伸ばしていきます。
そして器の「糸底」と呼ばれる土台を作ります。この「糸底」で陶器の良し悪しが分かるそうです。
陶器を購入する時はぜひひっくり返して「糸底」の部分を確認してくださいとのこと。
「糸底」の上に先程棒状に伸ばした「ひも」を丸く積み上げていきます。
糸底から形を作っていきます。
慎重にゆっくりと伸ばしていきます。
しっかりこねます。
しっかり伸ばします。
このように器へと仕上げていくのです。
出来上がったものは1ヶ月間乾かします。
乾かした後、800℃の高温で1日かけて素焼きにします。
そこでこのような釉薬をかけます。
釉薬のかけかたや配合でこのような模様ができます。
そしてさらに1250℃の高温で2日間焼き、その後、2日間冷まします。
ようやく2ヶ月後に作品が出来上がります。途中、何度か修繕も行うそうです。
陶芸教室も開催しています!
大塩正史氏は赤膚焼の素晴らしさを知ってもらうために陶芸教室を開催しています。建物の2階に会場があります。会場と言っても大人数は避け、一人一人にしっかり教えられるように少人数で開催されています。
『伝統を継ぐ講師の指導と赤膚山の土。赤膚焼の魅力がわかります。手びねりで茶碗1つ程度のものをつくる、約2時間の陶芸体験です。ご用意させていただくのは赤膚山の土。希少な土を使い、正真正銘の赤膚焼を体験してください。赤膚山の土ならではの色合いと質感を楽しめる茶碗が完成します。じっくり成形できる手びねりは、初心者にも挑戦しやすい技法です。赤膚焼の伝統を受け継ぐ講師がやさしく教えます。毎日の食卓に赤膚焼の茶碗はいかがですか。』【陶芸教室HPより引用】
陶芸教室の情報
- 体験料:一人3,000円(税込)※土・釉薬・焼成代を含む
- 営業時間:体験教室10時00分~、陶房13時00分~
- 定休日:月曜日
- HP:https://nara-japan.wixsite.com/akahadayaki-masashi/1
- 予約TEL:0742-23-8000
※陶芸教室は事前に連絡が必要です。インターネットからの予約も可能です。
細かい作業ができるよう道具も揃っています。
次は僕も体験教室に参加したいと思います。
赤膚焼「大塩正史陶房」の紹介
大塩正史陶房は陶芸教室と同じ建物の2階にあります。
所狭しと作品が並んでいます。
作品を見るだけでも来る価値があります。近鉄奈良駅前なので観光に合わせて来てみてはいかがでしょうか。
建物の1階は喫茶店になっています。壁面にはこのように陶器が展示されています。
赤膚焼 大塩正史陶房
- 住所:奈良県奈良市高天町38-7
- TEL/FAX:0742-23-8000
- アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約3分、JR奈良駅東口から徒歩約15分。車の場合は近隣の有料駐車場へ
- 営業時間:体験教室10時00分~、陶房13時00分~
- 定休日:月曜日
- HP:https://nara-japan.wixsite.com/akahadayaki-masashi
大塩正史陶房を紹介いただいた「奈良ウェルネスツーリズム」とは?
今回の楽しい体験の情報は、奈良ウェルネスツーリズム(一般社団法人ウェルネスインバウンド協会)代表の井辻(いつじ)さんよりご紹介いただきました。
井辻さんは、演出型体験観光の促進を行っておられ、ただ奈良のお決まりの社寺を廻るだけではもったいないと「奈良の特別なストーリーを味わえる旅」を提唱されています。地元の多くの体験ホストさんやガイドさん達がワクワクするストーリーでお客様と一緒に楽しめる企画支援に力を入れておられるんです。
例えば、土自体のルーツや凄さもわからないまま、指示された手順通りに陶芸体験するだけではおもしろくないのではないでしょうか?今回の赤膚焼 大塩正史陶房のように「主人自らが豊臣家の時代と変わらず赤膚山から土を採取し、3年かけて精製して寝かせた土を使用して、参加者も一人の作家になって制作できるようにサポートする」というストーリーをつくり上げて、国内外に発信されているんです。
奈良ウェルネスツーリズムには、他にもユニークな体験観光の例がありますのでご紹介します。
【一例】
- 季節を和菓子で表現しよう!奈良の和菓子づくり体験
- 奈良骨董を愛でながらおいしい煎茶の淹れ方を教わろう
- 伝統的奈良の古色で染めるスカーフ作り体験
- 鑑真・空海も居た!修行パワースポット寺院で瞑想体験
- アニメヒロインのようにシルク組紐をつくろう
- 鹿角のビーズと勾玉、天然石でMYブレスレットづくり
- 春日山原生林でのリフレッシュウォーク
- 春日原生林と若草山でのヨガ体験
- 酵母と製法の違いを味わう奈良地酒利酒の会 など
★申し込み・問い合わせ窓口:奈良ウェルネスツーリズム 担当:井辻代表理事
奈良ウェルネスツーリズム(Nara Wellness Tourism):法人名 一般社団法人ウェルネスインバウンド協会
- TEL:0742-42-6342
- Eメール:concierge@gonarastay.com
- HP:https://www.gonarastay.com/(英語)※日本語ページ準備中
※当記事は2021年4月に取材した時のものです。訪問・体験の際は事前に連絡してください。
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中尾勝
- 旅が大好き!国内海外を問わず飛び回っていますが、海外へは2011年に渡航して以来、出国していません。今は原点に戻り国内を旅しながら日本の良さを体感中。