ドイツの音楽は有名なものが多い!?クラシックからポップミュージックまで解説

音楽の都といえばオーストリアのウィーンが有名ですが、お隣のドイツからも数々の世界的に著名な音楽家が生まれています。また、近年ではベルリンなどを中心に、ヒップホップやクラブミュージックなども人気です。

日本から音楽留学に行く方も多い、音楽の国・ドイツ。本記事では、筆者の友人であるドイツ人にもリサーチを行い、ドイツではどんな音楽が聴かれているのか、若い人にはどんな音楽が流行っているのかという内容をお届けしたいと思います。

各楽曲の解説で参考音源を掲載しているものもありますので、ぜひお家のBGMに、ここからドイツの音楽を知るときのきっかけ作りに、そしていつかドイツへ行ったときの予習にご活用ください。

目次

1. ドイツの音楽はどんなものがある?

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<写真はイメージです。Photo by Leonhard Niederwimmer on Pixabay(CC 0)

1_1. まずはドイツの音楽について概要を紹介

小学校の音楽室に飾ってあった、あの音楽家たちの写真。もしかしたらその音楽家はドイツを代表する音楽家かもしれません。誰もが知るベートーヴェンやワーグナー、バッハ、ブラームスなどドイツは著名音楽家を輩出しています。 ドイツでは世界トップクラスのオーケストラが活躍しており、ドイツ国内各地に歌劇場やフィルハーモニーがあります。

明治時代には日本の音楽家である滝廉太郎もドイツで音楽を学びました。 一方、ドイツでは1970年以降、2019年に来日ライブも行ったテクノポップ・ミュージックグループ「Kraftwerk(クラフトワーク)」が誕生して以来、現在もテクノミュージックを好んで聴く人も多いです。特に首都ベルリンは世界で最もクラブカルチャーが盛んであると言われ、ユニークな音楽の発信地として認知されています。

1_2. ドイツ人にとって音楽はどんな存在?

私たち日本人から見ると、世界的音楽家を輩出したドイツにはクラシック好きな人が多いのか、と思いきや、意外と日ごろからクラシックを好んで聴く人は多くないようです。実際にドイツ出身の友人に「学校でもクラシック音楽の授業があるの?」と聞いてみたところ、音楽の授業ではそれほど多くのクラシックは学ばなかったそう。

しかしながら、音楽の道に進みたい場合、音楽のギムナジウム(※)という専門教育を無料で受けることができるバックアップ体制が整っています。またドイツではクラシック音楽のほか、テクノミュージックやジャーマンポップ、ヒップホップなど、「ドイツ産」の音楽がたくさん。音楽は世界共通語という言葉の通り、ドイツでは多種多様な音楽があり、文化としてなくてはならない存在です。

※編集部註:ギムナジウムはドイツの教育制度の一種で、日本で言うと中高一貫教育の年数に該当します。ギムナジウムの卒業資格を得ると同時に、ドイツの大学入学資格を得ることにつながります。

2. ドイツの音楽紹介:伝統音楽・クラシック編

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<写真はイメージです。Photo by Funki50 on Pixabay(CC 0)

ここからは、ドイツの音楽を幅広くご紹介していきます。まずはドイツの伝統音楽、クラシックから。この項目では、伝統音楽とクラシックで分けて、それぞれの代表曲を解説します。

2_1. ドイツの伝統音楽

ドイツの伝統音楽といえば、なにを思い浮かべるでしょうか? 名前を聞いたことはあっても、意外とドイツから来たものだとは知らなかったという方もいらっしゃるかもしれません。ドイツの伝統音楽は下記のものが挙げられます。

【Ländler(レントラー)】
13世紀バイエルン地方、オーストリアのアルプス地方の農民が踊っていた「Weller(ヴェラー)」から発展した舞踊。4分の3拍子、または8分の3拍子で踊ります。ワルツの前身であり、ワルツが19世紀に盛んになり衰退してしまいました。この名称は、田舎を意味する「Ländlich(レントリヒ)」から由来しているという説があります。

【Walzer(ワルツ、英:waltz)】
前出のレントラーから派生した4分の3拍子の舞曲、舞踊。ドイツ語では「ヴァルツァー」と発音します。1814年のウィーン会議で踊られて以降、「ウィンナー・ワルツ」として洗練され、急速に人気が高まりました。ショパン、シューベルト、ブラームスなどのピアノ曲の作品も多いことで知られています。

【Schuhplattler(シュープラットラー)】
南ドイツのババリア(バイエルン州)、チロル地方に伝わる民族舞踊。男性がドイツの民族衣装であるレーダーホーゼンに身を包み、靴底、膝、太ももを叩いて踊る楽しいダンス。男性が女性に力があることをアピールするために踊っていたとされています。ドイツのオクトーバーフェストに行くと、実際にシュープラットラーを見ることができるかもしれません!

引用:ARTE(フランスとドイツの公共放送)公式YouTubeより

2_2. ドイツのクラシック音楽

普段はクラシックを聴かないという方も、音楽の本場ドイツでクラシックの美しい音楽を鑑賞するという体験は、忘れられない旅の思い出となるでしょう。ここでは、ドイツを代表する音楽家とその代表曲を解説します。

【Johannes Brahms(ヨハネス・ブラームス)-交響曲第1番】
ヨハネス・ブラームスは19世紀に活躍したドイツ・ハンブルク出身の作曲家、ピアニスト。「交響曲第1番 ハ短調作品68 (独:Sinfonie Nr. 1 in c-Moll, op. 68)」の代表曲で、着想から完成まで21年もの年月を費やしたと言われています。ベートーヴェンを崇拝していたとされ、この作品にはベートーヴェンの「歓喜の歌」を意識して作ったとされる一部分があります。

引用:フランクフルト・ラジオシンフォニー公式YouTubeより

【Ludwig van Beethoven (ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)- 交響曲第9番】
言わずとも知れたベートーヴェンもまた、ドイツを代表する音楽家。ベートーヴェンはフランクフルトから電車で約2時間のボン(Bonn)で生まれ、22歳でオーストリア・ウィーンに移り住むまで、今でも観光地として知られる「ベートーヴェンの家(Beethoven-Haus)」に住んでいました。 この交響曲第9番 第4章で歌われる合唱は、日本の学校でも音楽の授業で学ぶ「歓喜の歌」として知られています。

これは同じくドイツの詩人として知られるフリードリヒ・フォン・シラー(Friedrich von Schiller)の詩に感動したベートーヴェンが歌詞として書き直ししたものです。

引用:シカゴ・シンフォニーオーケストラ公式YouTubeより

【Johann Sebastian Bach (ヨハン・セバスティアン・バッハ)- ブランデンブルク協奏曲】
「音楽の父」として知られ、16世紀に活躍したバッハもドイツの偉大な音楽家です。バッハは世界遺産のヴァルトブルク城で有名なドイツ中部、アイゼナハに生まれました。この「ブランデンブルク協奏曲」は彼の代表作としても知られ、6曲の合奏協奏曲集です。アイゼナハには当時の生活が再現された「バッハの家(Bachhaus)」があるので、興味のある方はぜひ行ってみてくださいね。

引用:HALIDONMUSIC公式YouTubeより

【リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner)-タンホイザー序曲】
リヒャルト・ワーグナーは東ドイツ・ライプツィヒで生まれたドイツの作曲家、指揮者、音楽理論家。ワーグナーの代表曲「タンホイザー序曲」は自身が5番目に完成させたロマンチック・オペラ「タンホイザーとワルトブルクの歌合戦(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)」で演奏される序曲です。ワーグナーは自身作の歌劇の台本はほとんど一人で執筆していたというのですから、驚きのひと言です。

タンホイザーの舞台、ワルトブルク城(またはヴァルトブルク城)はドイツ人の中でも人気ナンバーワンのお城として慕われています。ぜひタンホイザー序曲を聴いたうえで、足を運んでみてください。

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3. ドイツの音楽紹介:ポップミュージック編

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<写真はイメージです。Photo by Jefferson Santos on Unsplash

ポップミュージックは世界各地で発展を遂げていますが、それはドイツも同じ。今流行の音色やフレーズ、歌詞などが用いられているため、ドイツ音楽に親しむ入り口として最適かもしれません。この項目では、キャッチーで聴きやすい楽曲をピックアップしてみました。

1980年~1990年代生まれのアーティストも多く活躍していて、若い人を中心に幅広く親しまれています。

3_1. Max Giesinger-80 Millionen

Max Giesinger(マックス・ギージンガー)による80 Millionen(アハツィッヒ ミリオネン)というこちらの曲。マックス・ギージンガーは1988年生まれ、ドイツ出身のシンガーソングライター。この「80 Millionen」は日本語で「8,000万人」という意味で、ドイツ国内の人口を意味しています。つまり、8,000万人のなかから君を見つけた、という意味のラブソング。筆者のドイツ人女性の友人も、彼はハンサムだよねと言っており、人気のようです。

引用:Max Giesinger公式YouTubeより

3_2. Mark Forster-194 Länder

続いてはMark Forster(マーク・フォースター)の曲、194 Länder (194レンダー)。マーク・フォースターは1983年生まれでドイツ人の歌手・シンガーソングライターです。2020年のドイツ国内ヒットランキングで常にランクインしており、2020年3月には最も再生されている曲としてこの曲がランクインしています。彼のトレードマークはベースボールキャップで、帽子なしでメディアに出ることは滅多にないんだとか。

引用:Mark Forster公式YouTubeより

※編集部註:194 Länderという曲は、アンプラグド(電力を使わない楽器構成)バージョンもあります。こちらでは、Mark Forsterの歌唱力の高さをより実感できる構成となっています。

引用:Mark Forster公式YouTubeより

3_3. Johannes Oerding-An guten Tagen

ドイツのポップミュージック紹介3つ目は、Johannes Oerding(ヨハネス・オルディング)の、An guten Tagen(アン グーテン ターゲン)。ヨハネス・オルディングは1981年生まれの、2009年にデビューしたミュンスター出身のドイツ人ポップ歌手。2019年の年間ヒットチャートで、本曲が8位にランクインしました。2020年10月現在、YouTubeの再生回数1,300万回を超えるヒット曲です。

引用:Johannes Oerding公式YouTubeより

3_4. LEA, Cyril-Immer wenn wir uns sehn

ドイツのポップミュージック紹介で最後にご紹介するのは、LEA, Cyril(リア、シリル)のImmer wenn wir uns sehn(イマー ヴェン ヴィール ウンス ズィーン)。リアは1992年、カッセル生まれのドイツ人女性シンガーソングライター。 この曲はドイツのコメディ映画「世界で最も美しい少女(Das schönste Mädchen der Welt)」のテーマソングです。

アーティスト名に記載されている「シリル」は、この映画に登場するキャラクターの役名で、俳優のAaron Hilmer(アーロン・ヒルマー)が演じているとのこと。 そのため、この曲は現実のアーティストであるLEAと、架空のキャラクターであるCyrilのダブルネームによる表記となっています。すれ違った男女のかけ合いが切ないラブソングです。

引用:LEA公式YouTubeより

4. ドイツの音楽紹介:ヒップホップ編

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<写真はイメージです。Photo by aiden marples on Unsplash

ドイツのヒップホップミュージックの特徴は、ドイツの移民文化によりトルコやアラブ系のルーツを持つアーティストが活躍しているという点です。ドイツ語のラップってどんな感じ?と気になる方は、ぜひ聴いてみてくださいね。

4_1. Bushido feat. Shindy - Panamera Flow

ドイツ発のヒップホップとしてご紹介するのは、Bushido feat. Shindy(ブシドー、フィーチャリング シンディー)による、Panamera Flow(パナメーラ フロー)。 ブシドーはドイツ生まれのチュニジアにルーツを持つドイツ人ラッパー。ドイツ語圏では大御所のラッパーだそう。1998年から20年以上にわたり活動しています。日本語である武士道という名前を掲げたラッパーは、ドイツではクールに映るのかもしれないですね。

曲のタイトルの「panamera」は、ドイツ車・ポルシェの名前です。ブシドーのラップはスローテンポの曲もあるため、ラップを普段聴かない人にとっても聴きやすいのが特徴です。

引用:Bushido公式YouTubeより

4_2. Apache 207- ROLLER prod. by Lucry & Suena

続いては、Apache 207(アパッチ207)の、ROLLER prod. by Lucry & Suena(ロラー プロデューストゥ バイ ルーシー&スエナ)。アパッチ207は若干22歳の若手ドイツラッパー。ルートウィヒスハーフェン(またはルートヴィッヒスハーフェン)出身で、トルコのルーツを持ちます。2019年にリリースした当楽曲で一躍有名になりました。彼もまた2019年のドイツ年間ヒットチャートで、5曲がランクインするほどの人気ラッパーです。

引用:Apache 207公式YouTubeより

4_3. SAMRA & CAPITAL BRA - HURACAN

SAMRA & CAPITAL BRA (サムラ & キャピタル・ブラ)の、 HURACAN(ウラカン)というこちらの曲。ドイツのラップミュージック人気ランキングでは常に名を連ねる、サムラとキャピタル・ブラ。サムラはレバノン、キャピタル・ブラはウクライナとロシアの血を引くドイツ移民です。

サムラは先にご紹介したブシドーと一緒に日本に来て、東京でミュージックビデオの撮影をしたこともあるそう。ともにドイツの年間ヒットチャートで少なくとも8曲以上ランクインするほど、ドイツ語圏で活躍しているラッパーです。

引用:SAMRA公式YouTubeより

5. ドイツの音楽紹介:クラブミュージック編

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<写真はイメージです。Photo by Pixabay(CC 0)

ドイツといえば、テクノ。クラブミュージックがお好きな方であれば、そうイメージされる方もいるのでは。テクノの本場ともいえるドイツでは、テクノミュージックはとても馴染み深い音楽です。ここでは、ドイツ出身で活躍する有名DJ、プロデューサー、テクノ音楽グループをご紹介していきます。

※編集部註:テクノなどクラブミュージックは、歌詞がないインストゥルメンタルの構成になっていることも多いです。

5_1. Christian Löffler - Haul (feat. Mohna)

Christian Löffler(クリスチャン・レフラー)-Haul feat. Mohna(ハウル、フィーチャリング モーナ)。 クリスチャン・レフラーはドイツのテクノ・エレクトリック音楽プロデューサー。ドイツ北部のバルト海沿岸に位置するGreifswald(グライフスヴァルト)出身で、14歳から音楽を始め、アルバム 「A Forest (ア・フォレスト)」でデビュー。2020年1月に初来日を果たしています。絵の創作も行っており、彼の音楽は情景が思い浮かぶような繊細で深みのあるサウンドが特徴です。

引用:Christian Löffler公式YouTubeより

5_2. Sven Väth

続いてはSven Väth(スヴェン・ヴァス)。スヴェン・ヴァスはドイツのDJ、プロデューサー。50歳を超えても一線で活躍し続けるレジェンド的存在です。日本でも1994年に初来日して以降何度もライブを行っており、近年ではお台場で開催されたエレクトロニック・ダンス・ミュージックイベントである「ウルトラジャパン 2018」に出演。2019年にも東京・大阪でパフォーマンスをしています。

引用:Mixmag(DJカルチャーマガジン)公式YouTubeより。※編集部註:こちらはSven Väthがスペインのイビサ島で主催するパーティー「Cocoon」でのDJプレイです

5_3. DIXON

DIXON(ディクソン、本名:Steffen Berkhahn)はベルリンで活動するハウス、テクノDJ、プロデューサー。音楽Webマガジン「Resident Advisor(レジデントアドバイザー)」の読者投票で、4年連続ナンバーワンDJとして君臨しました。パーティーアイランドとして知られるイビザ島のクラブでも、彼のパフォーマンスは大盛況なんだそう。2019年には日本での来日公演も行っています。

引用:Boiler Room公式YouTubeより。※編集部註:Boiler Roomは、イギリス・ロンドン発のオンライン音楽放送プラットフォームです。世界各国に支部があり、実際の会場には限られた人数が入場でき、その様子をYouTubeで公開しています。

5_4. Moderat-Intruder

最後に、筆者のドイツ在住の友人からおすすめされたアーティストModerat(モデラット)の曲、Intruder(イントルーダー)をご紹介します。モデラットはベルリンをベースとして活動するドイツのエレクトロ、ハウス、テクノの音楽グループ。本曲のイントルーダーは2016年ドイツ国内ヒットチャート最高5位を獲得したアルバム「Ⅲ」に収録されています。

※編集部註:ModeratはModeselektor(モードセレクター)と、Apparat(アパラット)というアーティストによって結成されたグループです。

引用:Moderat公式YouTubeより

今回ご紹介した中で、好きな音楽は見つかったでしょうか? 特にドイツ語を学んでいる人にとっては、好きなドイツ人アーティストを見つけて日頃からドイツ語を耳にするようになると、より勉強のモチベーションが上がるかもしれません。ドイツの音楽は日本ではあまり知られていませんが、この記事をきっかけにドイツの音楽やドイツを身近に感じてもらえたらうれしいです。

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