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【広島】高速観光クルーザー「シースピカ」で瀬戸内海の多島美を満喫してきた!
こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
私は5年くらい前に、外国の大型クルーズ船で瀬戸内海を横断航海したことがあります。その際、外国人旅行者も乗船していたのですが、彼らが瀬戸内海の風景を絶賛していたのをよく覚えています。いわゆる「多島美」と言われる、穏やかな内海にぽっかりと島が幾重にも連なっている風景、これは世界中見渡してもなかなか見られない、大変珍しく美しい景色なんだそうです。日本人の私たちは「瀬戸内海、ふ~ん」という感じであまりピンとこないのではないでしょうか。かくいう私も広島出身なのですが、瀬戸内海といっても素敵な観光地という印象は持っていませんでした。瀬戸内海はフェリーで中国地方と四国地方を結ぶ交通路、というイメージしかありませんでした。
2020年観光型高速クルーザー「シースピカ」という新造船が就航して、大変な人気を博していると聞き、乗船してきましたのでレポートします。
<目次>
- 観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」の概要
- SEA SPICA(シースピカ)が航行する瀬戸内しまたびラインのルート
- SEA SPICA(シースピカ)乗船体験レポート
- 瀬戸内しまたびラインSEA SPICA(シースピカ)の魅力とは?
観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」の概要
「瀬戸内しまたびライン」。観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」で瀬戸内の島々を巡る船旅をそう呼びます。瀬戸内の青い海の上で美しい輝きを放ちながら、人を自由で開放的な旅に誘う船、それがシースピカです。
SEA SPICA(シースピカ)の名前の由来
夜空に輝く乙女座の中で、最も明るい恒星を"スピカ"と呼び、そこから命名されました。日本語名では真珠星と呼ばれています。海に浮かぶ真珠星、ロマンチックですね。
SEA SPICA(シースピカ)の基本情報
- 全長:25.7m
- 全幅:6.8m
- 総トン数:90トン
- 定員:90名
- 航海速力:22ノット
- 建造:瀬戸内クラフト株式会社
- デザイン:川西康之氏(イチバンセン)
- 船内設備:フリーWi- Fi、AC電源、男女バリアフリートイレ、車椅子対応
SEA SPICA(シースピカ)構造
シースピカはいわゆる渡船ではなく、観光用に2020年に新しく作られた高速クルーザーです。座席数は90席。船の造りは双胴船で、揺れが少ないのが特徴です。座席は、船には珍しいソファ型の椅子を使用しており、船体の素材はアルミ製で軽い。高速性を重視しているからです。
窓側の席のソファは背もたれ部分が低めにデザインされています。外の景色が見えやすいようにとの配慮からです。船というよりも飛行機や列車の感覚に近い造りです。小型船で小回りが利き、小さな島にも簡単に寄港させることが出来ます。
SEA SPICA(シースピカ)が航行する瀬戸内しまたびラインのルート
<瀬戸内海汽船パンフレットより>
小さな島々が穏やかな海にぽっかり浮かんでいる、これぞ瀬戸内海の多島美です。その間を縫うようにシースピカは航行します。航行ルートは東向きコースと西向きコースがあります。
【東向きコース】
- 広島港発 8:30
- 広島プリンスホテル発 8:38
- 呉発 9:05
- 艦船クルーズ
- 音戸の瀬戸
- 安芸灘大橋
- 下蒲刈島着 9:55(70分上陸)
- 契島クルーズ
- 大久野島着 12:05(30分上陸)
- 瀬戸田着 12:50
- 三原港着 13:15
【西向きコース】
- 三原港発 13:25
- 瀬戸田着 13:50
- 大久野島着 14:05(30分上陸)
- 大崎下島(御手洗)着 15:20(60分上陸)
- 安芸灘大橋
- 音戸の瀬戸
- 呉着 17:25
- 広島プリンスホテル着 17:52
- 広島港着 18:00
※広島プリンスホテル、呉、瀬戸田、は乗下船客がいない場合、着岸しないことがあります
※シースピカの航行日:2020年10月2日~12月14日までの金・土・日・祝日 期間限定コース(それ以降は現状未定)
詳しくは瀬戸内しまたびライン公式サイトでご確認ください。
SEA SPICA(シースピカ)乗船体験レポート
2020年10月16日(金)、私は三原港発の西向きコースに乗船しました。三原から広島まで約4時間半の船旅です。まずはJR三原駅からスタートです。
三原駅から三原港まではなんと300メートルほどの近さです。普通、港と駅は離れているケースが多いですが、ここは徒歩10分もかかりません。三原駅から歩いてまっすぐ南下するとすぐ港が見えてきます。
三原港のビルです。こちらは海側から見た外観です。
13:25三原港発です。乗船口も、昔の駅の改札のようで簡素です。受付は10分前までに済ませればOKで、名前と乗船人数を言うだけで手続きはあっという間に終わります。
受付口では、自分が座る座席番号をもらいます(座席表シートはプランによって違いがあります)。シースピカは全席座席指定です。
こちらが乗船券です。観光クルーザーなので、乗船券も良い記念品になります。
三原港は各地に向かうフェリーが多数往来しており、この日シースピカには桟橋の2番から乗船しました。
広島港からやってきたシースピカの雄姿。初めて生で見ましたが都会的でカッコいいです。まさに"クルーザー"という感じです。
<乗船口>
<JR西日本職員さん達も歓迎>
シースピカは瀬戸内海汽船が航行していますが、広島ディスティネーションキャンペーンの一環でJR西日本の職員さん達もお客さんをお見送り・お出迎えされていました。
船内も観光船というよりは正にクルーザーという言葉が似あう、最新型のおしゃれな船です。瀬戸内海をこんなおしゃれな船が航行するなんて、私が子供の頃は考えられませんでした。
2階はテラスデッキです。航行中は座席に座りっぱなしでなく、船内を自由に動くことができます。私も乗船中の半分以上を2階デッキで過ごしました。
トイレは男女共用でひとつしかありませんが、バリアフリー、ウオシュレット付きで機能性抜群です。スペースも広めでゆったりと使用することができます。
2階のテラスデッキへ上がる階段はやや急ですが、車椅子用のリフトが付いています。
船内ではスタッフがガイディングをしてくださいます。ガイドさんは航行中はほぼ喋りっぱなしで、たくさんのお話を聴かせてくださり、約5時間の船旅はまったく退屈することがありませんでした。2階のテラスデッキにいても、ガイディングは聴こえます。
1階後方にはスピカウンターという売店があります。
こちらが船内で販売しているメニューです。観光船では、なんとかグッズとかいう商品が多いですが、ここでは地元の名産品をリーズナブルに買うことができます。その中でもスタッフのイチオシ商品がこちらです。
芋菓子450円(税込み)。渋いでしょう?岩城島名産のさつま芋をつかったお菓子です。江戸時代、飢饉で人々が苦しんでいた時、薩摩(鹿児島)からさつま芋の苗を持ってきて育て、飢えをしのいだそうです。当時さつま芋は薩摩の外に出すことは禁止されていました。それを農家に頼み込み、仏像の中をくりぬいてさつま芋の苗を忍ばせて持ち出したそうです。そのさつま芋が今は岩城島の名産として脈々と受け継がれています。私も買って食べましたが素朴であじわい深い、懐かしい甘さの芋菓子でした。テレビで有名なある芸能人の方が、番組でこの地に訪れた時、この芋菓子をたいそう気に入って、100袋もお土産に買って帰られたそうです。
三原駅では青空でしたが、船上では曇ってきて残念でした。が、多島美を存分に楽しむことはできました。
高速クルーザーということで、思っていたよりかなり早いスピードが出ました。
動画の方がわかりやすいと思いますのでご覧ください。
私が船に乗る時、一番好きな場所
私が船に乗る時、一番長く居る場所、それは船尾です。そこで航跡を見るのが大好きなのです。何も考えず航跡を眺めていると心が落ち着くんですよね。
瀬戸内海は「橋の博物館」
「橋の博物館」、瀬戸内海はそう呼ばれています。この瀬戸内しまたびラインでも数多くの橋を見て、くぐりました。
それでは「動く橋の博物館」をお楽しみください。どうぞ~
安芸灘大橋です。
さて、このコースでの一番の見どころともいえる「音戸の瀬戸」。赤い音戸大橋、第二音戸大橋の二つの橋をくぐります。「瀬戸」とは海峡という意味で、かなり狭いところを船は通過します。
瀬戸内しまたびラインでは、橋以外にも見どころはあります。
海辺の島の雰囲気が漂っている象徴的な風景ですね。
上陸した島 その① 大久野島
瀬戸内しまたびラインでは2つの島に上陸観光します。西向きコースの場合、最初に上陸するのが大久野島です。上陸時間は約30分です。
大久野島には桟橋がふたつあり、今回は第一桟橋に着きました。桟橋から休暇村まで往復してちょうど30分くらいでした。
大久野島は昔、毒ガス工場があった島でしたが、最近では「うさぎの島」として世界的にも有名になりました。島内は1周約3.3kmの小さな島です。
なぜ「うさぎの島」と言われるようになったのでしょうか。1971年地元の小学校で飼っていたうさぎ8羽を放し、それが繁殖して増えていったという説が有力で、現在では約900羽の野生のうさぎがいます(ウイキペディアより)。
では愛くるしいうさぎさん達を動画でご覧ください。
大久野島にはヤシの木もあって南国リゾートムードが漂っています。また休暇村があり、夏のシーズンには世界中から多くの観光客が訪れるほどの人気スポットになっています。
<休暇村そばの海岸からの風景>
上陸した島 その② 大崎下島
瀬戸内しまたびラインでふたつめに上陸するのが大崎下島です。こちらの島には60分滞在します。
<大崎下島の桟橋>
御手洗とかいて「みたらい」と読みます。御手洗は重要伝統的建造物群保存地区です。この辺りの地形が「潮待ち・風待ち」に適した天然の良港として江戸時代に栄えました。北前船の西廻り航路も整備され、千石船などの大型船が往来し、その後、幕末動乱の舞台となり、お茶屋、船宿、町屋や史跡の数々が当時の面影を伝え、現在も江戸~明治~大正~昭和初期に建てられた建物が残っています。(御手洗重伝建を考える会資料より)
<趣のある土壁>
<医院です。表札には「医」の旧漢字が>
<薩摩藩船宿跡>
<絵になる風景>
<旧金子家住宅:庄屋 金子家屋敷跡 1867年広島藩と長州藩が挙兵の約定をこの場所で結びました>
この大崎下島の名産品がこちらです。
レモンとデコポンのマーマレード。なんとウイスキーが入っています。桟橋の屋台で買いました。1,200円と少々お高めですが、フレッシュでまろやかなコクがあり、ジャムがあまり好きでない私もとても気に入りました。マーマレードについていた紙がこちらです。
このマーマレードは桟橋の屋台で買うことができます。(売り切れの場合あり)
<大崎下島桟橋>
大崎下島を出発した以降も、「安芸灘大橋」や、「音戸の瀬戸」、「呉の艦船」などを見ながら広島港へ向かいます。
広島の宇品港には18:00に到着しました。上陸時間含め約4時間半の行程でしたが、揺れも少なく、退屈する暇もない楽しい船旅でした。
港からは広島の中心市街、広島駅まで路面電車(広島電鉄)が頻繁に運行しています。(広島駅まで所要時間約40分)
SEA SPICA(シースピカ)の魅力とは?
「瀬戸内海をこのように素敵に楽しむことができるようになったんだな~」、広島出身者としての率直な感想でした。感慨深いものがあります。改めて「瀬戸内海の価値(魅力)」を教えてもらった気持ちです。
これまで瀬戸内海航路は他の島や対岸へ渡る交通手段、という日常の乗り物だったように思います。このシースピカのようにいくつかの島に立ち寄りながら海を周遊する、まさにクルージングはメリハリもあって想像以上に楽しめました。船内でガイドさんから詳しい説明を聴くこともできたので歴史などの理解が深まりました。普段、橋は上を渡るものですが、橋をくぐるというのはまた違った趣きがあり、橋と海の雄大さがより感じられました。
船会社の方に伺ったのですが、瀬戸内海は4つの県に囲まれています(広島県、愛媛県、岡山県、香川県)。これまでは、いろいろな制約があり、瀬戸内海をひとつとしてこのような観光クルーズは正直企画しにくかったそうです。しかしようやくここ数年、4県、隣県が協力しあえるようになり、瀬戸内海をひとつの観光エリアとして扱えるようになったそうです。
私たち旅行者としてはとてもありがたいことです。外国人観光客が「世界中を見渡してもこれほど美しい多島美はない!」と絶賛した瀬戸内海の魅力がさらに広がっていってほしいと思いました。
おまけ
「瀬戸内しまたびライン」西向きコースの発着点である三原について触れておきたいと思います。三原は瀬戸内沿岸にある人口10万人の都市です。三原と言えば有名なのが「やっさ祭り」です。(今年は新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止となってしました)
<三原駅前にあるやっさ踊りの像>
三原のグルメというとタコが有名です。
駅前の地元の人たちが集まる大衆食堂で名物タコ天を食べました。
私が普段食べるタコ天とはまったく別のものでした。「こんなうまいタコ天、生まれて初めて食べた!」お世辞じゃなく、美味しいタコ天でした。ジューシーで柔らかくぷりぷりと弾力があり、食べごたえがあります。タコ天単品で600円。ご飯と味噌汁付きの定食で800円です。
三原駅で三原城跡を観光することが出来ます。駅舎から直結しています。
天守閣はありませんが、石垣が残っており、その上は公園となっていて、三原の町を見下ろすことができます。お堀も残っています。
町から石垣を見るとこう見えます。右に見える建物は山陽新幹線のホームです。
三原駅の西側に「西浜むかし町」というエリアがあり、むかしの街並みが残っています。
いかがでしたか?瀬戸内海ならではの多島美と昔の街並みを堪能しました。瀬戸内エリアがここ数年注目されていますが、まだまだ人気は続いていきそうです。とってものどかで落ち着いた気持ちになれるのでおすすめですよ。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。